その神殿には今日も新たな生き方を求める人々が集う。
剣技に人生を懸ける者。
魔法の学徒を志す者。
商いの道へ進む者。
享楽と遊興に身を投じる者。
そして、時に彼らは活気あふれるダーマ神殿の片隅に憩いを求める。
ルイーダの酒場では今日も未来を夢見る者たちが明日の英気を養っていた。
「あ~パスパス」
並べられた丸テーブルの一つ、椅子からはみ出るほどの大男が仲間に向かって掌を突き出し辞退の意を示す。
「それより先にパラディンを極めるべきだろ? せっかく僧侶なんて性に合わない職業をマスターしたんだからな」
「ハッサン、バトルマスターから僧侶に転職した時、歯痒そうだったもんね~」
ハッサンと呼ばれた男は分厚い胸板の前で腕を組み、逆立った紫紺の髪を揺らしながら深く頷く。
「ではアモスさんはどうですか?」
「いやあ私もバトルマスターを修めるのが優先ですな」
眼鏡をかけた少年が話を振ると、武人然とした鎧姿の男が頭を振る。
アモスもまた他の仲間とは一線を画す肉体を持ち、ハッサンに劣らぬ体躯で一行の前衛を務めている。
彼は先にパラディンをマスターし、今はバトルマスターとしての技を一心に磨いているところだ。
「……」
尖った青髪の少年の思案顔をよそに、二人の大男は口をそろえて言う。
「まあ俺たちには似合わねえな、魔物使いなんてよ」
「ええ、我々がしっかりお守りしますので、そういった細々した職業は皆さんにお任せしましょう」
二つの筋肉の塊のような男たちが肩を組み、豪快に笑う。
人ならぬ四つの瞳の粘つくような視線を広い背に受けながら。
平原を流れる川の傍、白馬に牽かれた馬車が留まっている。
馬車の主たちは洞窟探検に挑み、残った二人は川で裸身をさらし水浴びをしていた。
「剣を返す時はこの筋肉を使います。なので、こう……この動きで鍛えられるわけです」
「おお、なるほどなあ!」
ハッサンとアモスは気が合った。
もちろん、信頼の強さは他の仲間もまた変わりないが、年若く線の細い者が多いパーティーにあって二人の関係は男同士の気安さと熱血が作り出す心地良さがあった。
「「……」」
そして、馬車に残っているのは男たちだけではなかった。
二つの異形の影が幌の下から僅かに姿を見せる。
一匹は厚い唇を備えた巨大ナメクジのモンスター、リップス。
もう一匹は形容し難い姿の道化じみたモンスター、テンツク。
二匹とも「魔物使い」の職能によって仲間となったモンスターだった。
四つの異形の目が見つめる先、そこには鍛錬後の汗を流す筋骨隆々たる男たちの肉体があった。
魔物たちの倍はあろうかという身の丈に、比べる事もおこがましいハッサンの重厚な筋肉が陽光を弾いて輝く。
熱い肌を冷やす水はアモスの全身の体毛を伝い、一際豊かに繁茂する腋の下と股間に溜まっては滴り落ちる。
ただの水浴びであっても体術に優れた戦士たちの鷹揚な、しかし神経の行き届いた動きは見る者を魅了する。
しかし、その中で唯一男たちの意識に沿わない体の部位があった。
「「……」」
二匹の魔物が目を見張る。
肉塊と言って差し支えない太腿の間にぶら下がる器官がずっしりとした重量感を伴って跳ね上がり、振り回される。
男しか作れない生命の半分を日夜溢れさせる二つの楕円球とそれらを包み込む袋。
その有り余る精を打ち出し、母体の奥へと注ぎ込むための大筒。
ハッサン、アモスともに男神のそれと見紛うばかりの巨大な生殖器官を惜し気も無く強い日差しに晒していた。
「ん……?」
自身の股間に突き刺さる視線に気付き、男達はどちらからともなく馬車に背を向ける。
それでも脚の間からのぞく毛むくじゃらの睾丸の裏には粘ついた感覚が這い回り続ける。
快活な雰囲気は一転、落ち着かない空気が川辺に漂う。
前衛職を極めんと日々鍛錬を重ねる二人。
彼らが魔物使いへの転職を拒んだ理由は他にもあった。
──旅の武闘家と村の英雄は魔物使いに転職した!!(2/6)へ続く──
背景:アキ二号機様 (https://www.pixiv.net/users/61071305)
大人のつみき(レゴ)
2023-03-25 00:04:42 +0000 UTCBringCock
2023-03-24 22:15:38 +0000 UTC