私はあんたが嫌い①
Added 2023-03-08 12:03:51 +0000 UTCどんな人にでも、嫌いな人間、絶対に相容れない人間というのは必ず存在する。容姿や思想は人それぞれであり、人が感情を持つ人間である限り好き嫌いは必ずある。出会った人全員と仲良くなれる人なんて存在しない。 私の場合、それは三森桜子(みもりさくらこ)だ。 同じ高校に通う同級生で、なおかつ同じ図書委員。彼女を初めて見たのは、委員会に入って初めての集会の時だった。つまり今年度の図書委員の顔合わせの場だ。 それ時、私は「三森桜子」という名前だけは知っていた。女子界隈の中で行われる決闘儀「レズバトル」において、三森桜子はかなりの有名人だったからだ。中学の頃から換算して、今まで無敗で連勝は20を超えるというのだ。強いと自負する私だって一度や二度は負けたことがあるのに、無配というのは信じられない強さだ。 しかし知っているのはその名前だけで、顔は見たことが無かった。三森桜子が住んでいると噂される地区と、私が住んでいる地区は大きく離れている。当然中学は違うし、定期的に行われるレズバトル集会でも顔を合わせることがなかった。 家から何駅も離れているこの高校に進学したのだって、別に三森桜子と会いたいからってわけじゃない。単純に自分に合った偏差値で、なおかつ制服が可愛かったからだ。それ以外に特別な理由なんてないし、そもそもこの高校に三森桜子がいるだなんて知らなかった。 だからこそ、私は今年度初めての図書委員集会で驚くことになった。 同じく1年生の別クラスからやって来た図書委員名簿の中に、「三森桜子」という名前を見つけたからだ。 同姓同名だろうか。ありえない話では無い。確率は低いかもしれないけど、0パーセントではない話だ。しかしその顔を始めてみた時、それは確信に変わった。女の直感とでも言うべきか、同じレズバトルを興じる同類の女だからこそ私は確信した。 こいつが、あの三森桜子だ。 他の図書委員に向けて簡潔な自己紹介をする女は、間違いなく『闘う女』の顔をしていた。なるほど、無敗というのは本当なのかもしれない。確かにあの女からはそんなオーラを感じる。実力者特有の冷たいオーラを。 腰まで届きそうなほど長く艶のある黒髪で、前髪は大きな瞳の上で切り揃えてある。顔自体が小さくなおかつ瞳以外のパーツも小さいのばかりで、クールそうな印象を受ける。無表情だけど、どことなく他の人間すべてを見下しているような冷たい表情にも感じる。 心臓がドクンと跳ねて、秘部が熱を持ち始める感覚があった。 私はこの女とは仲良くなれないと、そう直感した。 あの眼が気に食わない。冷めたような、見下すようなムカつく眼つき。もし目の前で、面と向かってあんな眼を向けられたりしたら、きっと私はカッとなって三森桜子のマンコに手を伸ばすと思う。それくらい、気に食わない眼つきだった。 イカせたい。あの冷めた眼をトロンと崩して、だらしのない表情に変えてやりたい。私のテクで快感に溺れさせたい。私は集会の間ずっと気が気じゃなくて、おかげで委員長たちの話はまったく耳には入ってこなかった。 これが終わったらさっそく誘おう。そう心に決めた。 集会の時間が終わり、各自ぞろぞろと教室から出て行く。三森桜子は最後の方まで教室に残っていたが、やがてゆっくりとした足取りで出て行った。私はその後を追いかける。 女子界隈で決闘儀「レズバトル」が流行っているからといって、男子や男性教師の前で堂々と誘うことは出来ない。こういう決闘は、やっぱり女2人だけの空間でやるべきだと私は思っている。だからこそ、三森桜子が特別棟の方へと歩いて行った時は好都合だと思った。放課後の今、特別棟を利用している生徒は少ない。2人きりでゆっくりと話しをするチャンスだ。 しかしふと思う。どうして三森桜子は、特別棟になんて向かっているのだろう。 最初は、特別棟に部室がある部活動にでも入っているのだと思っていた。しかし三森桜子は迷いのない足取りでどんどんと階段を上っていき、ついに一番上の4階に到着した。私の記憶ではこの階には倉庫室と美術準備室しかないはずだ。倉庫室は言わずもがな、美術準備室もどこの部活の部室にも割り当てられていなかった気がする。真下の3階には美術部が部活動をしている美術室があるから、てっきり三森桜子はそっちに行くのだと思っていたけど、この4階に何があるのだろう。 足音を殺して尾行を続けていると、三森桜子は4階の角部屋にある倉庫室の前で立ち止まった。そして驚くことに、スライド式のドアに手をかけ、それを開けた。鍵がかかっているはずなのにどうして?三森が中に入ってドアを閉めたのを確認すると、私は慎重に歩みを進め、倉庫室の前に辿り着く。 「お待たせ」 「遅い。逃げたのかと思った」 中を見ることは出来ないけど、何やら話し声が聞こえてくる。三森の声以外にも誰かの声が聞こえる。こんなところで待ち合わせでもしていたのだろうか。・・・・だとしたら。脳裏にある予感が浮かび、私は唾を飲み込んだ。 「逃げる?それって見逃して欲しいってこと?」 「・・・・ウザ。さっさとやろ」 間違いない、レズバトルだ。 中から衣服を投げ捨てるような音が聞こえてくる。これからここで決闘が行われる。・・・・どうしよう、見たい。他人のレズバトルを覗き見する趣味はないけど、あの三森の実力を見ておきたい気もする。でもさすがに無理だ。窓はすりガラスだしドアは閉まっている。どれだけこっそり開けたって必ず物音がしてしまう。 「約束通り、手マンでいいよね」 「もちろん」 私はドアに耳を当てる。床を歩く音が聞こえ、そして奇妙な静寂が訪れた。私もレズバトルをやるからよくわかる。この時間は、互いのマンコに手を当ててその感触を確かめ合っている時間だ。睨み合い、息を激しくさせながら感情を高ぶらせるための時間。なんだか私も緊張してきた。 そして・・・・ 束の間の静寂の後、やや小さく水が弾ける音がした。