ある女子生徒の日記①
Added 2023-02-15 14:18:42 +0000 UTCどうしてこうなったのでしょう。 まさしくその一言に尽きます。今の私の境遇、心境、そのどちらにももっとも適切と言える一言です。ですがそれでは説明になっていません。この日記を読んでくださっている読者様、つまりあなた様の為にも、この奇々怪々な状況を説明することにします。 初めに自己紹介をさせていただきます。この日記、これから続いていくエピソードの主人公がどんな人物なのかわからないと、あなた様も感情移入や話に集中できないでしょうから。まったく語ることの無い私の個人情報ですが、どうか頭の片隅にでも置いていただけると幸いです。 名前は高梨春(たかなしはる)。喜里川(きりかわ)高校に通う1年生です。この日記を書いている時期は夏休みなので、まだ1学期分しかこの高校には来ていません。 容姿はと言いますと、これには2パターンあります。 まず1つは喜里川高校に入学する前の見た目。これは非常に地味です。幼稚園、小学校、中学校と地味に生きていくことばかりに精力を出していた私は、陰で「地味子」とありきたりなあだ名を付けられるぐらいに地味でした。長い黒髪は後ろは腰に届きそうなぐらいにあり、前は目がほとんど隠れるまで伸びていました。薄い顔立ちで、まあそんなに悪くはない顔の造りをしているとは自負していますが、だからといってめちゃくちゃ可愛いというわけでもなく、平均的な顔と言えます。 2つ目は喜里川高校に入学してからの容姿です。こちらは今までとは大きく変貌します。そうです。高校デビューというやつです。わざわざ隣県の偏差値の高い喜里川高校を進学先として選んだのは、今までの地味な自分にさよならをして生まれ変わるためなのです。 まず髪をミディアムほどの長さにまでカットし、赤みを含んだ茶髪に染めました。毎日欠かさずメイクをして、ヘアアイロンを使って髪を全体的にふんわりとカールさせつつ、前髪はシースルーバングに整えています。流行りを詰め込んだ今どきJKの容姿です。元々顔面の出来が悪くなかったのも相まって、高校デビュー後の容姿は、都心でイケメンたちとワイワイ遊んでいる女子グループに混ざり込んでても違和感のないレベルにまで到達しました。 これならば高校デビューできる。今までの地味な人生から脱却できると、私は大きく確信していました。入学式前日の私、ああ、愚かな私。 それ以外と箇所は特に明記するべき部分はありません。身長は160前後と平均的だし、体重もめちゃくちゃ重たいというわけでもないです。(乙女のプライバシーなので数字は書きません) 胸だって、まったく無いわけではないですが、それでもあるか無いかで言えば無い寄りです。とはいえ、そこに悲観的な感情を持っているわけでもありません。あっても仕方ないですし、無い方が色々と楽なので。強がりではありませんよ。 これにて自己紹介を終了させていただきます。これ以外の個人的な情報はこれから話が進むにつれて随時書いていこうと思っていますが、現段階ではこの程度がいいでしょう。 では本題。冒頭でどうして私が嘆いていたのか。高校入学から夏休みまでの1学期の約3カ月ちょっとに、私の身に何が起こったのか。 喜里川高校の入学式。早速問題は発生しました。 両親と共に車で高校に到着した私は、玄関口に張り出された張り紙で自分のクラスを確認します。1年3組でした。もちろん並んでいる名前に見覚えのあるものはありません。通っていた中学からこの喜里川高校に入学した生徒は私ただ1人だと、中学の先生が言っていました。 クラスに入ってさっそく、男子生徒に声をかけられました。なかなかのイケメンで陽キャ風な人です。中学までの私なら絶対に声なんてかけられなかったでしょう。本やネット、人間観察で得た会話術でその人との会話を盛り上げることに成功すると、それから次々と私の周りに陽キャの男子や女子たちが集まってきました。 この時点で、私は高校デビューの成功を確信しました。 それからホームルームまでの間に、私は2人の女子生徒と仲良くなることに成功しました。星羅(せいら)さんと美海(みう)さんです。(ここではさん付けして記載していますが、実際には呼び捨てです。陽キャは仲のいい子にさん付けなんてしないのです) 星羅さんも美海さんもバリバリの陽キャで、今までの人生を振り返ればこんな2人と仲良くなれるなんて奇跡的な事でした。日常的に行ってきた人間観察によって得た会話術が功を奏しました。2人は私の正体に気が付く様子もないまま、時間はホームルームへと移り、そして入学式へと続きます。 入学式も終わり、教室に戻って最後に簡単な自己紹介だけをしてその日の学校は終了となりました。ホッと息を吐いている暇などありません。星羅さんと美海さんは私を離してはくれませんでした。なんと、この後3人で遊びに行こうと誘ってきたのです。正直さっさと帰りたいところでしたが、ここで退いては高校デビューを意味がありません。仕方なく私は了承しました。 その時です。背後からいきなり、肩を掴まれました。 驚いて振り返ると、そこには不満げな表情の女性生徒がいました。暗めの金髪をしたボブカットの子で、とても気の強そうな美人な人です。 見覚えがありました。同じ3組の人です。今日その日でもちろん名前など憶えてはいませんが、式場の体育館に移動する際や教室の前に立って自己紹介をするときに、何度か目が合ったことを憶えています。 そんな女子生徒の表情は、あからさまに友好な態度ではありませんでした。むしろ嫌悪感、私に対して敵意を感じている様子です。しかも、それを隠そうともせずに剥き出しにしています。 何かしてしまっただろうか。咄嗟にそう思いましたが、心当たりはありません。それでも今までの私なら反射的に謝っていたでしょう。たとえ自分が悪くなくても、揉め事は起こさないに限りますから。 ですが今は星羅さんと美海さんと前です。ここで咄嗟に謝っては私が気の小さな弱い子だと思われてしまいます。私は陽キャ。私はバリバリのイケてるJK。そうです。謝るなどもっての外なのです。 私は肩を掴んでいた女子生徒の右手を払い、精一杯の(自宅の鏡の前で何度も練習した)睨み顔をします。 「なに?」 女子生徒も退かずに睨んできます。 「あんた気にいらないんだよね」 「・・・・は?」 「タイマンしようよ。負けた方は奴隷ね」 そう言われた時の私の心の絶望、あなた様にはわかりますか?