ある日常の修羅場 ~寝室にて~
Added 2023-01-14 23:00:00 +0000 UTC【「新年は闘乳と共に 結」は現在執筆中です。もうしばらくお待ちください】 大学生の拓真(たくま)は、これまでに何人もの女性と愛し合い、そして別れてきた。初めて女性と付き合ったのが小学校5年生の時。あれから何人もの彼女を乗り継いでいき、ついにようやく、心の底から愛していると確信できる女性に巡り合えた。それが今の彼女、梨子(りこ)である。 梨子とは大学のサークルで出会った。初見で可愛い子だとは思ったが、自分とは合わないタイプの人間だと思った。口数も少ないし愛嬌も無い。ただ他の人の話を小さい相槌を打ちながら聞き流しているように見えた。大人数で和気あいあいと楽しみたい自分とは、正反対な性格の子だ。 しかし、そんな印象がある日覆った。大学の帰りに、いつもは寄らないスーパーに何気なく立ち寄った時だ。スーパーの制服を着ている梨子を見かけた。どうやらここでバイトをしているようだった。 いつもは流している長い黒髪をポニーテールで纏め、同じバイトと思しき同年代の女子と笑顔で話す梨子の横顔を、拓真は新鮮な感覚で見つめていた。可愛いとは思っていたが、笑顔になるとあそこまで輝くとは、思ってもいなかった。親しい人間の前だとあんなに笑顔で喋るのかと、何か秘密のようなものを知ったような気がして拓真は胸がドキドキした。その日から、拓真は梨子のことを意識するようになった。 梨子へとアプローチを始めたのは、その翌週のことだった。基本的には自分から動かず、いつも相手の女子から好意を責められていた拓真にとって、自分から積極的に異性に近づこうとするのはほとんど初めてのことだった。 初めは、梨子は拓真の話を他の人にする対応と同じように、興味のなさそうな顔で適当な相槌を打って聞き流していたが、ある日、お酒の場で積極的に話しかけた際は、酔いの影響もあってか、いつもよりも梨子は拓真に笑顔を見せた。 気が付けば、拓真は梨子を自分が一人暮らしをしている自宅へと招き入れていた。今まで何人もの彼女やセフレと一夜を共にしたベッドの中で、拓真と梨子は身体を重ねた。 大人しそうな見た目に反して、梨子はベッドの上では激しく拓真を求めた。酔いの影響もあったのかもしれないが、終始、セックスは梨子の主導の下で行われた。拓真が疲れて動きを鈍くした時は、梨子は拓真の胸元を拳で叩きながら睨みつけ、よだれを垂らしながら激しく拓真を罵った。 翌日の朝、拓真と梨子は付き合うことになった。梨子は人前では普段通りの大人しさを見せていたが、拓真と2人きりになると、とろんとした目で拓真に甘えた。そして少しでも拓真は他の女性と話すと、それを激しく嫉妬し、その日のセックスで以前以上に拓真に激しさを求めた。 その日の前日、夜遅くまでセックスをしていた2人は、大学の授業をサボって昼頃まで寝ていた。夕方になり、梨子はバイトに出かけるために拓真からシャワーを借りた。 「じゃあね、拓真くん。また夜、来てもいいかな?」 人前では感情を読み取れないような梨子の瞳も、拓真の前ではとろんと溶けている。その甘えた口調に拓真が頷くと、梨子は嬉しそう笑って部屋を去った。 それから数時間後、拓真の部屋に新たな訪問者が現れた。 それは、拓真のセフレの1人、愛海(あいみ)だった。拓真とは別の大学に通っているが、共通の知り合いを介して知り合った。愛海は拓真に惚れているが、拓真は返答を有耶無耶にし、セフレの関係に落ち着いている。彼女にするには愛海は少しクセが強すぎるが、だからといって手放すのは惜しいという、拓真の汚い心から産まれた関係だった。 拓真は突然の来客に動揺した。愛海はこの部屋には入れないことにしている。セックスをする時も、決まってラブホを利用していた。愛海はピンク色のボブヘアをしていて、その抜けた髪の毛が以前付き合っていた彼女に部屋で発見され、関係を問いただされた過去があるのだ。だから拓真は、愛海に限らず、目立つ髪色の女は部屋に入れない様にしているのだ。 当然、セフレの存在は梨子には内緒にしてある。もし梨子が、抜け落ちた愛海の髪の毛を見つければ、間違いなくセフレの存在、もしくは浮気を疑われるだろう。それは避けたかった。 拓真は慌てて愛海を追い返そうとするが、トイレだけ借りたいという愛海の要望に渋々屈して、仕方なく部屋に上げた。 トイレを終えて洗面台で手を洗っていると、愛海はシャワー室が濡れていることに気付いた。しかし、唯一の居住者である拓真の髪はボサボサで、シャワーを浴びたようには見えない。 「・・・・」 愛海はまさかと思い、拓真に声をかけた。 「ねー。今日の夜やろうよー」 それはセックスの誘いだったが、拓真は用事があると言ってそれを断った。愛海は深く追求しなかったが、心の中で一つの核心を得た。 そして、帰宅の際に拓真に見つからない様にこっそりと、玄関口で『ある物』を盗ってポケットに入れると、拓真の家を後にした。 夜、バイトを終えた梨子が拓真の家を再び訪問した。部屋で簡易的な食事をした後、お互いにシャワーを浴び、2人はまた裸でベッドに入った。 梨子はこの夜もまた、激しく拓真を求めた。少しの休息も許さず、少しでも多くの肌の密着を求めた。時間が進む後に2人の表情からは笑顔が消え、段々と獣のように相手に食らい合った。 少し経ち、流石に体力の限界になった2人は、しばらく抱き合いながらキスをし合った。 「ねえ、好き。拓真くん。私から離れないで・・・・」 梨子の甘い囁きが拓真の脳を刺激した。そしてその直後、そのぬくもりを破壊するかのような音が、玄関の方から聞こえてきた。 ガチャン 気のせいだろうか。拓真はぼんやりとする脳で考えた。今のは、まるで玄関の鍵が開く音だ。 しかし、その次に扉がゆっくりと開けられる音がして、靴を脱ぐ擦れ音、床を歩く音が聞こえてくる。拓真は急に意識が覚醒し、扉の方を見た。梨子も、ぼんやりとした瞳を拓真から扉の方に移す。 やがて足音が扉の前で止まり、勢いよく開かれた。入ってきたのは、愛海だった。 拓真は声にならない音を喉から出しながら、慌てて立ち上がろうとする。しかし、そんな拓真の身体を梨子が手で押さえた。見れば、さっきまでとは違い、睨みつけるような視線で梨子が愛海を見ていた。 愛海はベッドの上の2人を見て、焦る拓真を尻目に、梨子を見て言った。 「何してんの?」 「セックスだけど、見てわかんない?」 お互いに、相手への敵意を全開にしたトゲのある声色だった。 「そうじゃなくて、そこはあたしの場所だって言ってんの」 「何言ってるの?誰か知らないけど、部外者はどっかいって」 「は?」 「あ?」 梨子と愛海は睨み合う。今まで見たことの無い2人の剣幕に圧倒されながら、拓真は声を絞り出した。 「な、なんで、入れたんだよ」 「あ、夕方ここに来た時、間違えて鍵持って帰っちゃったんだー。ごめんねー」 「夕方?・・・・拓真くん。私が出た後、この女と会ってたの?」 梨子が拓真の顔に手を当てて訊いた。優しい声色だが、責めるようなトゲが含まれている。 「あ、いや・・・・」 「あ、やっぱあのシャワー使ったのお前だったんだ」 「だったら何?彼女なんだからいいでしょ?」 「彼女?・・・・へー。拓真、今はこんなブスと付き合ってるんだ」 「あ?どの顔で言ってんの?」 「お前よりは可愛いだろうが」 「ブスだろ。いいから帰れよ、邪魔な部外者は」 「やだね。あたしは拓真とセックスしに来たんだから」 「だったらなおさら帰れ。もうここは私の定位置だから」 「下手くそブスが調子乗ってんな」 「下手くそはお前だろクソ」 「黙れよブス」 「お前が黙れ。なんなら私が黙らせてやろうか?」 「出来んの?お前に」 「やってやるから。脱げよブス」 「上等だよ」 もはや拓真のことなど見えていない2人は、激しく罵り合いながら潰し合う覚悟を決めていた。愛海は梨子を睨みつけながら服を脱ぎ始め、梨子は拓真に抱き着きながら愛海を睨み返していた。 愛海が全裸になると、梨子は拓真に顔を近づけて囁いた。 「邪魔女を片付けるから、ちょっと降りててくれる?」 お願いのようで命令のようでもあった。拓真は逆らいはせず、黙ってベッドを降りて部屋の隅に移動した。代わりに、全裸になった愛海がベッドに上がって梨子と相対した。 女子座りをしてベッドの上で向かい合った梨子と愛海は、キスをするように顔を近づけて口を開いた。 愛海が挑発するような目つきで言う。 「ルールは?決めていいよ」 「じゃあ、5回先にイッたら負け。時間は無制限」 「いいよ。じゃあまずキスから」 すると、梨子の返事も待たずに愛海は梨子の唇に食らい付く様にキスをした。梨子も応戦し、舌を交えながら濃密なキスをやり合う。 すっかりと蚊帳の外に置かれた拓真は、そんな2人のキスを唖然としながら見つめていた。 この後、彼がどのような運命を辿ることになるかは、この勝負の勝敗が大きく影響してくる。だが今の拓真にできることは何もなく、ただ、2人の女の潰し合いを黙って見ていることしか出来なかった。 修羅場はまだ、始まったばかりである。