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呪術者の舞④

「・・・・生を、勝ち取る?」 娘が困惑したように尋ねると、呪蝶は怪しげな笑みのまま答えた。 「左様。性比べという勝負方法は知っておるな?」 「はい。・・・・たしか、後宮でたまに行われるという、帝への夜伽を賭けた妃同士の決闘方法です」 「そう。妃が愛する帝を自らの寝室へと誘い込むために、他の妃を蹴落とすために行われる勝負だ。肉体を傷つける暴力が禁じられている代わりに、互いの性を犯し合うことで決着を付ける」 妃の身体も帝の所有物の一つなので、妃たちの独断によって肉体を傷つけることは許されないことだ。故に、身体を傷つけずに行う決闘として、性比べが用いられることになった。 「・・・・もしや、その性比べを、私と呪蝶様が?」 「そういうことだ」 呪蝶の答えに、娘は一気に青ざめた。 「そんな、私は性比べなどやったことがございません。勝てる見込みなぞ、あるわけが!」 「安心せい。お前がその仮の魂で生きられるのは、五日間ある。最終日に我と勝負するまでの四日間、お前には時間があるということだ」 「・・・・その四日間で、経験を積めと?」 「そうだ。性比べは今や後宮のみならず、女同士の決闘方法として全土に広まっている。誘えば乗ってくる奴も多いだろう。そんな奴らを倒し進んでいけば、我と渡り合えるほどの実力を手に入れることもできようぞ。我の見たところ、お前には素質があるようだしな」 「・・・・私に、性比べの素質でしょうか?」 やったこともないのに、そんなわけがないと娘は思ったが、完全に否定することは出来なかった。なにせ、あの呪蝶の言葉だ。もしかしたら本当に、自分には性比べの素質があるのかもしれない。もしそうならば、勝てる見込みも無いわけではないのかもしれない。 「そうだ。それに、お前には選択肢がないのではないか?母君の魂を無駄にしたくなければ、我を倒すほかないぞ」 「・・・・わかりました。この四日間、必ずや呪蝶様を倒せるほどの実力をつけてまいります」 「・・・・ああ。楽しみにしているぞ。今日はもう帰れ。五日後、また来るがよい」 「はい・・・・」 そして娘は呪蝶の屋敷を去った。 そして、闘いの日々が始まった。 翌日、さっそく娘は町へと繰り出した。 呪蝶の話の通り、かつては後宮で妃たちの決闘方法に用いられていた性比べは、今では町民たちにとっても馴染み深いものになっていた。些細ないざこざや男の取り合いなど、女たちが雌雄を決する時に性比べは行われ、さらには、それを見世物にする店もあった。 娘が訪れたのは、そんな店の一つだった。昼間はただの茶屋だが、夜が耽ると屋敷の奥にある五畳ほどの狭い部屋で、憎み合った女同士の性比べが行われるという。そして、そんな熾烈な戦いを隣の部屋から見物するのだ。 娘はさっそく茶屋の店主に尋ねた。どうすればその性比べが出来るのか、と。しかし店主は困ったように答えた。 「うちは、闘いの舞台を用意してそれを見世物にすることで小遣いを得ているだけだ。つまり、闘いたいと名乗り出た女が二人がいて、初めて夜の商売ができるってことだよ。あんたが性比べをしたいのなら、相手を見つけてから来な。そうすりゃ、場所を貸してやるからよ」 娘は困った。自分には親しい友人もいなければ、性比べで雌雄を決したいと思うような憎い女もいない。だからといって、町中でいきなり見知らぬ人に性比べを申し込んでも、気味悪く避けられるだけだろう。一般的に行われるようになったと言っても、きっと、大半の女性は性比べなんてやったことないはずだ。 しかし、娘はふと、ある考えを思いついた。 「あの、でしたら、次に行われる性比べはいつでしょうか?」 「あ、次?今日だよ。今日の夜二時から。悪いけどもう満席でね、見ることは出来ないよ」 「いえ、いいのです。ありがとうございました」 茶屋を出た娘は、一旦家に帰って仮眠を取ることにした。今日の深夜に行われる性比べ。その勝敗が決した後、その参加者のどちらかを待ち伏せして戦いを挑むためだ。この方法ならば、確実に性比べの経験者と勝負をすることができる。 そして娘は、母がいなくなった寂しい家で、夜まで眠った。

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