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日中美人娘闘争記①

これは、およそ二年前の出来事になります。中国で遭遇した、自分と瓜二つの中国人女性との間で起こった、熾烈な喧嘩の話です。 その時の私は、高校を卒業したばかりでした。およそ半月後に控える大学の入学式を前にして、新生活のための準備期間だったのです。 幸いにして、私が志望した大学は実家から問題なく通える距離にあったので、一人暮らしをしなければならない友人たちと比べて、準備するものは少なかったのです。そうして暇を持て余した私は、同じく暇人だった姉と共に、中国の上海へと一泊二日の旅行に出かけることにしました。 中国を選んだのは、日本から近くで旅費が少なくて済むという理由の他に、姉が中国語を話せるという利点もありました。姉は、大学で中国語を教わっていたのです。 初めての海外旅行ということで、まだほんのりの寒い季節だというのに、私は調子に乗ってお気に入りの薄手の服を着ていきました。そのせいで私は寒さに襲われて到着早々に気を滅入ることになるのですが、それ以外にも、私を落胆させる要因がありました。それは、日本人観光客の多さです。 その時の中国には、私らと同じような考えの日本人が大勢いたのです。手軽に行ける海外観光地ということで、中国は恰好の場所だったのです。そうじゃなくても中国人と日本人は容姿が似ているというのに、その中に実際に日本人が大勢混じってしまうことによって、私は上海のどこを歩いても、ここが海外だという認識が持てずにいました。横浜の中華街を歩いているような気分だったのです。 それでも、しばらく上海の街中を練り歩いていると、段々と海外旅行の気分が戻ってきました。飛び交う言語は中国語だし(当たり前ですが)、屋台で販売している本場の中華は日本のものとは比べ物にならないほど刺激的で美味しそうでした。なにより、活気が日本の中華街とはかけ離れていました。中国人たちのパワフルな元気さが、ここは日本ではない異国の地であるということを思い出させてくれたのです。 そうしている内に一日目が終わり、二日目になりました。前日の疲れもあって昼頃までホテルで眠っていた私たちは、昼食を食べるために上海の街中へと繰り出しました。その日は前日よりも気温が少し高かったので、お気に入りの黒のワンピースでも寒さは感じませんでした。 どこか良さげな中華料理屋を二人で探していると、突然、後ろから大きな声で呼びかけられました。それは中国語だったので私には理解できませんでしたが、中国語がわかる姉は、私に言いました。 「なんか、うちらに言ってるみたいだよ。『おーい』ってさ」 振り返ってみると、同世代ぐらいの中国人女性がこちらへと駆け寄ってきていました。そして私の目の前で立ち止まると、いきなり私の手を掴み、楽しそうに喋り始めたのです。なんのことやらと困惑していると、その感情が私の顔に出ていたのか、中国人女性の方も段々と落ち着いた表情へとなっていきました。 そこで、姉が中国語でその女性に話しかけ、いくつか会話を始めました。その間、何の会話が行われているのかさっぱりの私は、ただ不安げに二人の会話を見守るしかありません。 会話が終わって、姉が説明してくれました。 「どうやらあんたのこと、知り合いの人と間違えたみたい」 姉がそう言うと、中国人女性は申し訳なさそうに頭を下げました。先述した通り、日本人と中国人の容姿は酷似しています。だから私にそっくりな中国人女性がいても、なんら不思議な事ではありません。この人は、そんな知り合いと私を見間違えただけの様でした。 何かのトラブルに巻き込まれてるんじゃなかと想像していた私は、ホッと胸をなでおろして姉に言いました。 「大丈夫、気にしてないですよって、この人に伝えて」 私の伝言を姉の中国語で聞き取った中国人女性は、嬉しそうに何度も頭を下げ、そしてまた、姉と中国語で会話し始めました。一通りの会話が終わると、さっきと同じように姉が私に説明してくれます。 「お詫びにお昼ご飯をご馳走してくれるってさ。あんたにそっくりな中国人の友達も電話で呼ぶって言ってる。なんか面白そうだし、行こうよ」 正直気乗りはしませんでしたが、姉はすっかり行く気になっていたので、仕方なく、付いていくことにしました。


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