橋本ゆゆこ 【桜花学園】
Added 2022-07-24 17:41:01 +0000 UTC〈1〉 10 あとわずか二週間で、1年3組の「クラス内格付けランキング」で一位を取る。 それが、立花が私に要求した内容だった。 立花と別れた後、私は自分の教室へと戻りながら、『裏掲示板アプリ』を立ち上げる。何をどうするにせよ、まずは今の自分の順位を確認することが最優先だ。 私が所属する1年3組のランキングは、一位は二名いた。「橋本ゆゆこ」と「斎川心寧(さいかわここね)」で、共に勝利数6。二位は私で勝利数5。その下に、この前逝かせ合いをした田村臨や体育館で殴り合いをしていた青木世羅が勝利数4で続いている。 ランキングなんて気にしないで、売られた喧嘩を買い続けていただけなんだけど、思っていたよりも高順位だった。単純に言ってしまえば、「橋本ゆゆこ」と「斎川心寧」の二人さえ何とかしてしまえば、一位になれると言うことだ。 とは言っても、二人のことは正直言ってよく知らない。クラスの中に仲のいい子なんていないし、仲良くなる気もない。だから、入学して一カ月半が経過した今でも、クラスメイトで名前をちゃんと覚えているのは田村臨や青木世羅、そしてその他数名程度だ。橋本も斎川も、名前だけ見ても顔すら浮かばない。 とりあえずクラスに戻って二人を確認しよう。私は少し足早に、1年3組のクラスへと戻った。 教室へと戻った時には、朝のHRの3分前だった。クラスには生徒たちが大勢揃っていて、自分の席でスマホを触っている者、本を読んでいる者、友達同士で集まって談笑している者などに分かれている。 さて、どうしたものか。少し悩んだ結果、私は教卓へと進むと、黒板を手のひらで勢いよく叩いた。 バンッ!! 教室中に衝撃音が響く。クラスメイト達は談笑を止め、あるいはスマホから目を離し、一斉に私の方へと視線を動かした。 クラスメイト、およそ三十名以上の生徒たちが、全員私の方を注目している。ほとんどが、「急にどうしたんだこいつ」というような困惑顔だ。中には、半ギレ顔で睨んでくる女もいる。 静まり返った教室に、私の声だけが響く。 「この中に、橋本ゆゆこと斎川心寧って奴、いる?」 その途端、私を見ていた女たちの数名の視線が、私から外れて教室の右斜め前の席へと集まる。視線を集まる先を見てみると、そこには、席に座って文庫本を手に持った黒髪の子がいた。 「・・・・私が橋本だけど」 その女は、私の方を真っすぐに見返しながら、落ち着いた口調でそう言った。