pixivFANBOX限定作品 別れさせ屋① ~その女、私が追い払って差し上げます~
Added 2022-05-28 23:40:22 +0000 UTCある日の夕方、大学での授業終わりに買い物をして帰ろうとした時、ちょうど校門を出たところで携帯に着信があった。バイト先の事務所からだった。 「あ、志保ちゃん?悪いんだけど、今から行ける?」 「はい。行けますよ。どこですか?」 「駅前のサリーっていう喫茶店。四時から。赤いベストを着た黒髪の18歳で、栗山さん。お願いね。打ち合わせが終わったら事務所に寄ってね。じゃあよろしく」 事務所の女性はそれだけ告げると電話を切った。四時からなら、少し急がなくては。私は早歩きでサリーへと向かった。 店内に入ると、目的の女性はすぐに見つかった。というか、この時間帯で駅前という好立地にも関わらず、店内には数名しか客がいなかったのだ。まあ、こちらとしては探す手間が省けていいのだけど。 私は目的と思われる女性の席まで行き、声をかけた。 「あの、栗山さんですか?」 気の弱そうな子は、緊張したように答えた。 「あ、はい。そうです」 声が上ずっている。これから打ち合わせをしなきゃいけないんだから、こうも緊張されては支障が出るかもしれない。私はなるべく彼女の緊張をほぐせるように、明るめのトーンで笑顔で言った。 「初めまして。『別れさせ屋』の眉木志保 (まゆきしほ)です。この度はご依頼、誠にありがとうございます」 「あ、はい。あの、よろしくお願いします」 「はい。それではお話の方、させていただきますね」 私は依頼人の正面の席に座り、ノートとペンを取り出した。 「では早速ですが、ご依頼の方を確認させていただきます。今回、栗山さんが別れて欲しいと希望されているのは、カップルの方ですか?」 「はい。そうです」 「その理由は?」 栗山さんは少し恥ずかしそうにしながら、ゆっくりと話し始めた。 「えっとですね。・・・・その、男性の方に一目惚れをしてしまいまして、その方とお付き合いしたいなと思ってたんですけど、その人にはすでに彼女さんがいるっていうのが発覚して。悲しいことに、私では、その彼女さんと正面から競い合えないほど差があるんです。あちらの方は美人だし、胸も大きいですし。でもどうしても彼を諦めたくないので、別れさせ屋さんのお力で何とかそのカップルを破局させていただけないかと」 なるほど。よくあるパターンだ。自分ひとりの力では相手の女性に敵わないから、私たちによって別れさせて男性がフリーになったところを狙う。単純明快でいい。変に話がややこしいよりよっぽどマシだ。 私は今の話を要約してノートに記していきながら、私は次の質問に入った。 「では、そのお相手の男性と、できれば現在お付き合いされている女性の写真はありますか?」 「はい、あります。これです」 栗山さんは少しスマホを操作してから、その画面を私に向けた。 写っているのはカップルのツーショット写真だ。そこそこ良い顔をした男性と、その男性の腕に自分の胸を当てながら笑顔でピースをしている、こちらもそこそこ顔の良い女性。・・・・たしかに、この女性が相手では、栗山さんでは男性を奪い取るのは難しいかもしれない。 「この二人の情報など、話せる限りでいいので教えていただけますか?」 「はい。この男性は沖田友也(おきたともや)くんと言って、この近くのファミレスでアルバイトをしている大学生です。私はそのファミレスで彼を見て、一目惚れをしました。女性の方は・・・・すみません。ほとんど何も知りません。沖田くんと一緒に大学の校門を出るところを見かけたので、同じ大学生だということしか」 「なるほど、わかりました。そちらの方は私で調べておきます。・・・・では、事務所の方から話が合ったと思うんですが、事前の調査費用として二万円いただくことになっているのですが、よろしいですか?」 「あ、はい。どうぞ」 栗山さんは鞄から茶封筒を取り出して私へと差し出した。私は中身も確認しないでそれをそのまま自分の鞄に入れる。 それから私は二人のこと、主に沖田くんのことについて色々と栗山さんから情報を聞き、とりあえず調査をするにあたっての最低限の情報を手に入れた。 「ありがとうございます。とりあえず、今日はこれくらいで大丈夫です。後日、事務所の方からまた連絡があると思うので、そちらの対応もよろしくお願いします」 「わかりました。・・・・あの、依頼完了の目安って、どれくらいなんですか?」 「そうですね。・・・・一週間から二週間といったところでしょうか」 すると、栗山さんは驚いて目を大きく見開いた。 「え、そんな早く出来るんですか?」 「まあ、あくまで目安ですけど」 「あの・・・・ちなみに、どんな方法を使ってるんでしょうか。やっぱり、男性をハメて女性とのトラブルを起こさせて別れさせるとか、そういうやつですか?」 まあ、それが一般的な別れさせ屋の手段なのかもしれない。ただ私たちの場合はちょっと違う。もっとも、口外できるようなことではないが。 私は笑顔で答えた。 「そちらは企業秘密ということで。・・・・まあ、少しだけ言うとすれば「体を張る」ということですかね」 栗山さんは、よくわからないというような表情をしていた。
Comments
最高のシチュですね 彼女さんも意地がありますからね、、、
matfile
2022-05-29 11:49:20 +0000 UTC