いつまでたってもウダツの上がらない北内さん(44)が ある日見たテレビ番組に感銘を受け、いつか自分も母校の後輩たちに何かを伝授したいと考えていた しかし北内さんはただのおっさん、あの番組に取り上げられるような特筆すべき経歴や技量、当然知名度などあるわけもなく、その非情な現実に只々打ちひしがれる日々を過ごしていた... 「こんなことなら服飾デザインの学校でしっかり勉強しておけばよかった...」 北内さんは高校を卒業してすぐ上京し、都内にある服飾デザインの専門学校に通っていたが1年で挫折していた...当然勉強したからといって大成できる人間なんてほんの一握りの世界なのだが... 専門学校を中退してアメ横そばの洋品店で古着屋の店員をしていたが、それも3年持たずに辞め、それからはもう何十年もアルバイトを転々としている... 全てにおいて考えが甘い人間だった 中略 五月の街に響く五時のチャイム、気がつくと北内さんは母校の小学校の校門の外に佇んでいた 下校時間は過ぎていたが、まだ子供達の姿がある 校庭ではまだサッカーやバスケをしてる高学年の男の子たちもいる 「いいな〜あ〜おれもあの頃に戻りてえなあ〜」 「かわいい女の子見放題じゃんか〜くそお〜」 北内さんはロリコンだった またしても非情な現実に打ちひしがれ、居たたまれず家へ帰ろうとした時、家庭科室があったと思しき教室に数人の女の子がいるのが見え、北内さんは反射的に近くの紫陽花の茂みに身を潜めた もはや誰がどう見ても只の変質者だった 小学校の周辺には民家やアパートが点在しているものの、ほぼ雑木林に囲まれていて、人の気配といえば学校に通う小学生だけだった たまに町内会のじいさんが青パトに乗って見回りをしているが、反応が鈍いじいさん供に見つかるほど北内さんは間抜けではなかった いわゆる俊敏なデブだ 小学4年の頃から太り始めたが短距離走が得意で、50メートルを6秒フラットで走り、運動会のリレーではいつも小学校のヒーローになった 中学に入って更に太ったものの100メートルを11秒台で走り抜けた 周囲からは「ありゃ痩せてたら全国行けたよね」とよく囁かれていた 中学3年の運動会では13秒台まで落ちたが、それでも速いデブとして高校でもその名を轟かせた 家庭科室の電気が消え、昇降口から3人の女の子が出てきたかと思うと 校門を出たところで立ち止まり何やら話し始めた (あの女の子たちは家庭科部か...) 3人の中で一際かわいい女の子がセンターだな...北内さんは瞬時に嗅ぎ分けていた (スタイルいい女の子だな〜6年生くらいかな〜) (あれ?! どこかで見たことあるぞ...) 芸能界で活躍するかわいい女の子に目がないロリコンの北内さんには 校門の前で談笑する3人の女の子の中の一際かわいい女の子が誰であるか 判るまでにそれほど時間を要することはなかった (詩織ちゃんだ!間違いない...) ローティーン向けのファッション雑誌のモデルやCM等で活躍する、その筋の人々の間では話題の小学生だった (ま、まさかあの詩織ちゃんがおれと同じ小学校に通っていたなんて...) 北内さんは匍匐前進で茂みから茂みへと移動し、ついに詩織ちゃんから5メートルほどの距離にまで近づいていた... もはや我を忘れかけており、一歩間違えるととんでもない事態にまで発展しかねない状況だったが、北内さんは消え入りそうになる理性をなんとか呼び戻そうと、紫陽花の茂みの中で孤軍奮闘していた 友達「え〜詩織ちゃん、モデルの仕事きらいなの?」 詩織「うーん、もうあまりやりたくないかな」 (やっぱり詩織ちゃんだ!) (モデルの仕事大変なのかな...まさか、芸能事務の偉いおっさんにイタズラされて...) (許せん...) (くっそーおれも芸能事務所の社長になりてえ〜) 友達「え〜なんて贅沢な悩み!!」 友達「わたしにその容姿があれば詩織に変わってモデルでぶいぶい言わせるのに...」 (おれも詩織ちゃんみたいな美少女だったら...) (おれみたいなおっさんに優しくしてあげたい...) 詩織「デザインの勉強して...」 友達「デザイン?」 詩織「そう、洋服のデザイナーにね..なりたいな〜って」 友達「お〜 なんかかっこいいね!」 (ファ、ファッションデザイナー?!) (詩織ちゃんがおれの服飾デザインのノウハウを求めている!!) (おれは日本ではあまり知られていない世界を股に掛ける有名ファッションデザイナー!) 北内さんは完全にトチ狂って そして、あの番組のことを思い出していた
国道12号
2018-06-01 23:50:09 +0000 UTC国道12号
2018-06-01 23:18:19 +0000 UTC