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藤柵かおる
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雑談(19) セントラルドグマ

エヴァで有名になったっぽいやつです。


『セントラルドグマ』

声に出して読みたい生物学の単語ベスト3ぐらいに入ってるカタカナ単語です。

ちなみに残りの2つは『ショットガン・シークエンシング法』と『オルガノイド』です。


セントラルドグマってなんなんだ? っていう話ですが、

個人的にはすげぇっ! って思えるようなものではない気がします……。


提唱したのは、フランシス・クリックという人です。

クリックさんは、DNAの二重らせん構造を発見した『ワトソンとクリック』のクリックさんその人です。


セントラルドグマとは、

『遺伝情報は「DNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質」の順に伝達される』

と、いう分子生物学の基本原理である……それだけです。


ようは、生物の遺伝とかで「DNAだDNAだ」、と良く言われますが、

実際には途中でmRNAという状態をはさまないと、体を作るたんぱく質にはならないという事です。


もっと具体的に言うと、

「人間の体(たんぱく質)を作るためには『DNA』に書かれた設計図が必要なので、DNAがほしい」

「DNAそのものはあげられないので、中身をコピーした『mRNA』をあげます」

「貰った『mRNA』を元にして『たんぱく質』が出来ました」


といった感じです。DNAとmRNAはほとんど一緒なので、別に問題はないのです。

ただ、ごくごく稀にコピーに失敗することがあって、設計図通りに作れないときがあります。

これがいわゆる『突然変異』と呼ばれる現象です。


この原理は人間だけじゃなくて、哺乳類、鳥類、魚類、両生類、爬虫類はもちろん、虫、ミジンコみたいな微生物、植物、カビ、細菌まであらゆる生物に共通する現象です。

あれ……やっぱ普通にスゴイ発見じゃね?

さすが『セントラル(中心)ドグマ(原理)』


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……なんですけど、実は”あらゆる生物に共通する現象”違う、という話もあったりします。

エイズの原因であるHIVなどは”レトロウイルス”と呼ばれるのですが、こいつらは『逆転写酵素』というものを持っていて、自分の持っているRNAでDNAを書き換えるという作用を発揮します。


さっきのように具体的にやってみると…………


「今日から新しく貸し出し員になりました、”レトロウイルス”です」

「それじゃ、DNAが欲しいって人がいたら、mRNAにコピーして渡して上げてください」

「分かりました~」

「ふふふ、残念だったな。俺には『逆転写酵素』という能力がある! この能力は『俺が触れたDNAは全て俺の持っているRNAと同じになる』というものだ! こいつを使って本来は絶対に書き換えられないはずのDNAの原本を書き換えてやるぜ!」

こうして大本のDNAが書き換えられてしまいました。

そのことには誰も気がついていません。そして後日――――。

「人間の体(たんぱく質)を作るためには『DNA』に書かれた設計図が必要なので、DNAがほしい」

「DNAそのものはあげられないので、中身をコピーした『mRNA』をあげます」

DNAがもう元のものではないにもかかわらず、何事もなかったかのようにコピーして渡してしまいます。

「貰った『mRNA』を元にして『たんぱく質』が出来ました」

完成したたんぱく質は、書き換えられた設計図を元に作ったので、異常な状態でした……。


というのがレトロウイルスのヤベェところなのです。

こいつらは絶対触れないし、書き換えることも不可能なはずのDNAを書き換えてしまうのです。


エイズというのは、後天的免疫不全症候群、という病気で、文字通り体の免疫が落ちるという症状を起こします。つまりHIVによってDNAの中にある『免疫が強い』というところが『免疫が弱い』に書きかえらえれてしまったということです。

いくらコピーしてもずっと『免疫が弱い』しか作れない身体になってしまっています。


普通のウイルスは物量で攻めていくところを、レトロウイルスは静かに奥深くに侵入していき、

宿主の肉体の『常識を書き換える』ことで、完全な征服を果たす――恐ろしいですね。


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