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曹達(ソーダ)
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シティフラッグ―巨人ライフセーバーの訓練―

暑い日差しがジリジリと照り付ける大都会。 高層ビルが立ち並び、路上には人々が慌ただしく行き交い、ビルの間を縫うように車が走っていた。 活気あふれる、平穏な日常――。だが、その平穏は突然、異様な地響きによって掻き消されることとなった。 ズン……ズゥン……ズシィン……ズシィィィン……! それは、まるで大地が呻き声をあげているような不気味な響きだった。 地面が小刻みに震え始め、次第に大きくなっていく。それに伴いビルが軋み、ガラスがビリビリと振動する。 「な、なんだ……?」 街を行き交っていた人々は、不安げに顔を上げ、音の出所をさぐる。地響きや重低音は、遠くから徐々に街へと近づいてくるようで、ますます不安を募らせる。 ズズウウウン! 一際大きな地響きによって、ようやく地響きの発生源に気が付いた人々が、その方へと一斉に顔を向ける。 そしてその全員が息を呑み、目を見開いた。 彼らの目が捉えたのは、遠くから悠然と歩いてくる、とてつもなく巨大な影――それも、赤い競パン一丁という、3人の巨人の姿であった。 ライフセーバーらしき格好をした彼らの周囲にあるビルは、膝の高さにも満たないものがほとんどだ。距離感がおかしくなりそうなほどの大きさは、まるで神話の巨神が降臨したかと錯覚するほどに圧倒的だった。 巨人達と比べれば小指ほどの大きさしかない街中の人々は、迫り来る脅威を前に凍りつき、驚きと畏怖に震え上がる。 「巨……巨人だ!」「逃げろ、みんな逃げろ!」 悲鳴が上がり、パニックが爆発的に広がった。 巨人が足を踏み出すたびに、ビルがズズズウウン!ガラガラガラ!と音を立てて崩れ、アスファルトが容易に陥没し、逃げ惑う小人たちが悲鳴を上げる。しかし、3人の巨人のはそんな惨状を全く気にも留めずに、軽快に言葉を交わしていた。 「うーん! いい感じに晴れて訓練日和だなぁ! 今日も絶対に勝ちますよ、先輩!」 先頭を歩いていた巨人・救大(やすはる)が、後ろを歩いている巨人の方へと振り返り、力強く拳を握った。身長72.4メートルという途轍もない大きさの救大。褐色の肌に汗が光り、意志の強そうな眉と大きな瞳が、爽やかな雰囲気を漂わせていた。だが、その足元では、巨大な裸足が雑居ビルを一瞬で粉々にし、アスファルトにはべったりと赤い染みを残していた。 「ふん……俺だってやるからには本気だ、救大。負けるつもりはない」 救大が先輩と呼んだ巨人・頼斗(よりと)が冷静な口調で返す。 身長73.6メートルの体は、しなやかで無駄のない筋肉に覆われている。整った顔立ちをしているが、今は鋭い目つきで救大を捉えていた。そして、彼の足もまた、容赦なく街を踏み潰し、ビルを瓦礫の山に変えていく。 「俺だって、ぜってー負けないっすよ、先輩たち!」 最後に、新人巨人ライフセーバーの丞(じょう)が、少し生意気な笑みを浮かべて叫ぶ。身長71.6メートルで、3人の中では最年少だが既に他の2人に引けをとらない、がっしりした体つきをしている。 そして若い故の弾けるようなエネルギーを発散させるかのように、勢いよく足を振り下ろし、道路を踏み抜き、逃げ遅れた小人たちを無残にぺしゃんこに潰していた。 3人が小人の街までやって来た理由、それは「シティフラッグ」だった。 「おい、丞。お前、今回がシティフラッグ初参加だろ? ちゃんとルール分かってんのか?」 救大がニッと白い歯を見せ、丞に話しかける。 丞は「うっす、だいたいは覚えたつもりっすけど……」と少し自信なさげに答えたのを聞き、救大は笑いながら続ける。 「じゃあ、ちゃんと教えてやるよ。シティフラッグはな、要はビーチフラッグをする場所を、砂浜から小人の街へと移したものだ。 普通の砂浜なんかより、ちっせービルとか車とかががゴチャゴチャ密集してるだろ? そういうのを踏み砕きながら全力疾走していって、フラッグを最初に掴んだ奴が勝ち。シンプルだろ? でもこうやって普段より足場が悪いところを走り抜くことで、足腰や瞬発力を鍛えるってのが、俺たち巨人ライフセーバーの訓練方法ってわけだ!」 丞は目を輝かせ、「なるほどっす! そういう理由で小人の街でやるんすね!」と感心したように声をあげる。 「じゃあ、思いっきり街ぶち壊して走らないとっすね!」 救大は「はは、その意気だ!」と爽やかに笑う。 そうやって話しているうちに、3人は街の中心、比較的背の高いビルが多いエリアにまで足を踏み入れていた。 頼斗が「ルールの確認はそれで充分だろう。それに、この辺が丁度良さそうだ。早く始めよう」と口を挟み、訓練の開始を促す。 救大もそれに同意。 「そうですね、先輩。よーし、じゃあゴール地点を設定しますよ!」 彼は手に持っていた、赤い三角フラッグのついたポールを、槍投げの要領で遠くへ思いっきり放り投げた。 ドズッ! 鋭く尖ったポールの先端は、遥か遠くに建っていたビルの一棟を貫通し、そのままザクッと地面に突き刺さった。 次に、救大は近場のビルの屋上に「開始合図装置」を設置した。 適当なタイミングで号砲を自動で鳴らす、簡単な仕掛けだ。 これで準備が整い、3人の巨人はフラッグとは反対方向を向いて、ビル街のど真ん中でうつ伏せに寝そべった。 グシャグシャグシャ……と、身体の下や股間の下にあったビルが押し潰されていくのが何とも小気味良い。 「んっ……」 その感触に、すこし声が漏れてしまう救大。 地面すれすれまで顔が近づいたことで、普段の立った状態では視界に入ることもない小人の街の細部が、救大の目に映る。 逃げ惑う小人たちの人影、恐怖に歪む顔、崩れゆくビルから舞い上がる砂埃。 救大はそんな光景を見下ろしながら、内心でほくそ笑んだ。 (お前ら、この辺にいてラッキーだったな。フラッグまでの進路上にいたら、これから大変なことになってたからさ) しかしそんな内心などおくびにも出さず、小人たちにはニッと爽やかな笑みを向けてやった。 その隣では、頼斗が無言で、慄いて腰の抜けた小人をじっと冷たく刺すような視線で見下ろしている。 そして丞は間近で見る小人の慌てふためきっぷりが興奮を刺激したのか、「へへっ、小人共、ビビりすぎだろ……!」と呟きながらニヤついていた。 うつ伏せの姿勢のまま、開始の瞬間を待つ3人。 やがて、バァン!と開始合図装置から甲高い号砲が響き渡った。 瞬間、3人の巨人が一斉に跳ね起きた。 ズシィン! ズドォン! 立ち上がる衝撃だけで、足の下敷きとなったビルが次々と倒壊し、道路にひび割れ走る。3人は猛烈な勢いでフラッグを目指し、駆け出し始めた。 救大は先頭に躍り出、ビル群をまるでビーチの砂遊びの城のように蹴り崩していった。 「よーし、この勢いでフラッグを掴むぞ!」と叫ぶ声は、街全体に轟き、ビルのガラスをビリビリと震わせる。 ズズン! バキバキッ! 救大の巨大な裸足が、街のシンボルであるコンサートホールを一瞬で踏み潰した。ガラスと鉄骨が砕け散り、華やかな外観は一瞬にして瓦礫の山と化す。 観客席も舞台も、彼の足裏の圧力でペシャンコになり、逃げ遅れた小人たちの悲鳴が一瞬響いた後、沈黙に包まれた。 救大の激しい勢いで走る姿は、真面目に訓練に取り組む実直な好青年のような様相を見せる。が、その心の奥では、表層とは全く異なるものが渦巻いていた。 足裏に伝わる、ビルが崩れる感触、小人がプチプチと潰れる微かな弾力――それらが彼の心を高揚させるのだった。 「へへ……」 救大は、足元を見下ろしながら進撃を続ける。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 大学生の水球部員、祥太郎は、休日を満喫するために繁華街を歩いていた。20歳の彼は、水球で鍛え上げた筋肉を持ち、引き締まった体にTシャツと短パンを身にまとっていた。 買い物を済ませ、カフェにでも行こうかと思っていた矢先、突然地面が揺れるのを感じ、足を止めた。 ズシィン! ズシィン! 祥太郎が顔を上げると、遠くのビル群の向こうから、真っ赤な競パン姿の巨人の姿が迫ってくる。 「なっ……!?」 日に焼けた肌に白い歯。一見すると、感じのよい男前といった印象を受ける。しかし、巨人が一歩、一歩と足を踏み降ろすたびに、地響きと共にビルが倒壊していくという、何とも恐ろしい光景が祥太郎の前には広がっていた。 しかし、祥太郎は巨人から目をそらせずにいた。恐怖に足がすくんだからではない。その巨人の70メートル以上はありそうな筋骨隆々の体躯が、息を呑むほど、あまりにも圧倒的だったからだ。 厚い胸板、隆起した肩、彫刻のような腹筋――水の中で自在に動くライフセーバーの筋肉は、祥太郎のような水球選手のそれと通じるものがあったが、そのスケールはまさに桁違いのものだ。 祥太郎は自身の肉体に自信を持っていたが、巨人の驚異的な肉体を前に、自分の体が惨めに思えてくるほどの衝撃を受けた。その肉体に目を奪われ、畏怖を感じながら、祥太郎はしばし立ち尽くし、見とれてしまう。 だが、それが命取りとなった。 ズシィン! 先程よりも自身に近い場所に、巨人の巨大な足が踏み降ろされた。衝撃波でアスファルトがひび割れ、ビルがガラガラと崩れる。巨人の足が再び持ち上げられ、祥太郎が見上げた視界には、瓦礫と血痕がこびりついた巨大な足裏が広がっていた。 「ああ……そんなっ……!」 祥太郎の呟きは、グチャッ!という濡れた音とともに途絶えた。鍛え上げた肉体は一瞬でミンチと化し、救大の足裏に無残にへばりつく新たな赤い染みとなった。 巨人、救大はそんな惨劇にいちいち目を向けることなどなく、涼やかな笑みを浮かべたままフラッグを目指して突き進んだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 救大の豪快な破壊を伴う疾走とは対照的に、頼斗のシティフラッグは、いつも冷静で計算づくだった。必要最低限の精密な動きでフラッグへと距離を詰める。だが、それゆえに、そのルート内の小人たちにとっての恐怖は計り知れない。頼斗は、足を踏み下ろす地点に辿り着く遥か前から、どのビルをどう踏めば最大効率で破壊できるか、足運びを計算しているのだ。 ズン! ズン!ズン! ズン! 頼斗の足が、駅と、それに直通する大型のショッピングモールを立て続けに正確に踏み潰していく。ガラス張りのモールは一瞬で粉々に砕け、看板や店舗が瓦礫の山と化す。 そして、頼斗の目が、逃げようとする小人の一団を捉える。 「逃がすか……」 駅とは反対の出口から逃げ惑う小人たちへ、容赦なく巨大な足を踏み降ろす。 ズズウウン!グチャグチャっ! 小人を踏むのは、建物を壊すより足腰への負荷が少なく、トレーニングとしてはさほど有用ではない。だが、頼斗にとってそれは訓練へのモチベーションを高め、気分を高揚させるスパイスとなる。だから時折こうして、小人だけを踏み潰すルートを足運びの中に組み込むのだ。 「ふん……」 冷静な鉄仮面を被る中、内心では、小人たちの絶望的な逃走劇に冷酷な興奮を感じ、唇の端に意地の悪い微笑みが浮かびそうになるのを抑えるのに苦労するほどだった。 それでも、彼の足は可能な限り無駄なく動き、最大限効率的に訓練に臨む。無残に残されたショッピングモールの崩壊は、彼の性格を象徴しているようだった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 小人の高校球児・由宇次は、兄の由宇一と一緒にショッピングモールに野球用具を買いに来ていた。スポーツ用品店で必要なものを買い終え、屋上の自動販売機出でジュースを買い、一息ついていたとき、突然の地響きがモールを揺らした。 「な、なんだ……!?」 由宇次と由宇一は顔を見合わせ、不安げに周囲を見回す。 由宇一が遠くを指差す。 「あれ、なんだ!?」 由宇次がその方向に目を向ける。野球で鍛えた目の良さで、すぐに異様な光景を捉えた。赤い競パン姿の3人の巨人が、ビルを蹴散らし、道路や自動車を踏み潰しながら走ってくる。そのうちの一人――整った顔立ちに冷静な目つき、しなやかな筋肉に包まれた体躯の巨人が、兄弟のいるショッピングモールへ向けて突進してくるではないか。 「なんだ、あれ! に、逃げるぞ、由宇次!」 由宇一の叫びに、由宇次は慌てて頷く。買ったばかりの野球用具を放り出し、他の屋上にいた客たちと一緒に階段を駆け下りる。階段を何段も飛ばし、一目散に1階の出口を目指す。なんとか出口を抜け、巨人の進路から離れるようにがむしゃらに走る二人。しかし、背後からズズウウン! ドゴオオン!と凄まじい轟音が響く。巨人がショッピングモールに隣接する駅を踏み潰し、続けてモール自体をあっけなく踏み砕いた音だった。ガラスとコンクリートが粉々に砕け、瓦礫が空を舞う。巨人はもうすぐそばまで迫っている。 由宇次が振り返り、見上げると、巨人の冷徹な目が自分たちを見下ろしていた。血肉と瓦礫がこびりついた巨大な足裏が、兄弟と周囲の客を覆うように振り下ろされようとしている。 「危ない!」 由宇一が叫び、咄嗟に由宇次を突き飛ばす。由宇次が巨人の足が落とす影の範囲から転がり出た瞬間――ズズウウウウン!! 途轍もない轟音とともに、巨人の足が地面を踏み抜いた。 由宇一を含む、足の影の下にいた者たちは悉く踏み潰され、肉片と血痕が巨人の足裏に新たな染みを加えた。巨人はそんな惨劇を一顧だにせず、巨大な振動と足音を響かせながら走り去る。 「は……?」 由宇次は、尻餅をついて呆然とする。やがて、立った今命の危機に直面していたこと、そして兄が自分をかばって巨人に踏み潰された事実を、脳がじわじわと認識していく。 「ぁ……ああぁ……!うわっ……兄貴ぃ!兄貴ぃっっ!!」 地面を叩きながら慟哭する。だが、その頃には巨人、頼斗の姿は遠く、ビル群の向こうに消えていた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ シティフラッグ初参加の丞は、小人に対する己の強大さを強く実感しながら、一歩一歩力強く踏み出していく。 その度、足の下にあったビルや自動車は、あっけなくペチャンコに潰れていく。 「これも足腰を鍛える一環だよな!」などと嘯きながら、丞はあえて人通りやビルが密集した箇所を狙い、巨大な足を降ろす。 グシャ! バキバキッ! オフィスビルが一瞬で瓦礫の山と化し、逃げ惑う小人たちの悲鳴が響く。 足元でビルや小人が無様に潰れる光景に、丞はすっかり心を奪われていた。 「ははは! すげぇ! 俺の力!」と叫びながら、ビルを蹴り倒し、車を踏み潰す。 だが、興奮のあまり無鉄砲に突っ走っていたところ、踏み降ろした足が突如として道路を深く踏み抜いた。 ズズゥン! 丞が踏み込んだ道路の下には入り組んだ地下街が広がっており、そこに足を取られてバランスを崩し、前のめりに転倒しそうになる。 「うぐぅ! くっそぉ!」と唸りながら、なんとか体勢を立て直す。 瓦礫と血痕がこびりついた足裏を地面から引き抜き、視線を前に向けた彼の目には、先輩である救大と頼斗の背中が映る。 そこで気が付いた。街の破壊や小人にばかり気を取られていてはダメだ。フラッグに辿り着かなければ意味がない。それに、2人の先輩に追いつき、いや、追い越して認められたいという承認欲求が胸を焦がす。 この短い間でシティフラッグの奥深さを実感した丞は、ニィッと生意気な笑みを浮かべて全力でフラッグを目指して駆け出した。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 33歳の警察官、健一は、シングルファーザーとして小学1年生の息子、結翔(ゆうと)と一緒に休日を過ごしていた。仕事に忙殺される日々の中、家族水入らずの時間は貴重だった。 健一は結翔にアイスを買い与え、笑顔で手を繋ぎながら道路を歩いていた。だが、突然の地響きに街が揺れるのを感じ、健一の身体に緊張が張り詰める。 ズシィン! するとビルの間から、若い巨大な男の姿が視界に飛び込んできた。坊主頭、赤い競パン、虫でも見下ろすかのような瞳――圧倒されていると、巨人の足がビルを一蹴りで粉砕するのを目撃する健一。 「うわああ! 結翔、逃げるぞ!」 健一は息子の手を引き、人混みに紛れて走り出す。だが、結翔がアイスをアスファルトに落とし、転倒してしまう。 「パパ、アイスが……!」 「いいから、早く!」 健一が息子を抱き上げようとした瞬間、巨人の巨大な足が迫る。見上げた視界には、瓦礫と血肉がこびりついた足裏が広がり、死の影が親子を覆う。 「結翔!!!」 健一は咄嗟に結翔を地面に押し付け、自身が覆いかぶさるようにして守る。 ズシイイイイン! 巨大な足が地面を踏み降ろされ、衝撃波で周囲のビルが崩れる。だが、奇跡的に巨人の足の進路はわずかに親子を外れ、1メートルほど先で踏み降ろされた。「ははは! すげぇ! 俺の力!」と叫ぶ巨人の声が遠ざかる中、健一は息子を確かめる。 「結翔、大丈夫か!?」 「パパ……怖かった……」 健一は息子を強く抱きしめ、生き残ったことに涙を流す。猛烈な勢いで走り去る巨人の背中を見上げ、呆然としながらも、息子の温もりに安堵する。だが、街の壊滅は止まらず、巨人の足音が遠くから木霊するのだった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 三人の巨人は、フラッグを目指して小人の街を容赦なく破壊しながら突き進む。フラッグまでのルートに、高速道路が横たわっていたが、三人の巨人は簡単に踏み潰してしまう。 逃げ惑う群衆は次々と押し潰され、小人たちの悲鳴は巨人の足音と破壊の轟音にかき消されていく。だが、巨人の三人はそんな惨状をまるで気にも留めず、ただフラッグだけを見据えていた。 ズシィン! ズドォン! 阿鼻叫喚の地獄絵図の中、三人の巨人はついにゴール地点――赤い三角フラッグが突き刺さる地点に迫る。 「ここだ!」 救大が叫び、真っ先にヘッドスライディングで突進する。地面がズズン!と揺れ、彼の巨体が滑り込む衝撃で周囲のビルが瓦礫と化して吹き飛ぶ。頼斗もほぼ同時に正確なフォームでスライディングしてフラッグに手を伸ばす。丞も、勢い任せに思いっきり飛び込み、地面を抉りながらフラッグを目指す。 ドズズズウウウウウン……! 三人の巨体が一気に地面を滑り、発生した衝撃波によって周囲のビルがガラガラと崩れる。激しく土煙が巻き上げられた中に、3人の巨人の人影が やがて土煙が収まり、少しずつ視界がクリアになっていと、フラッグを手にしていた勝者――救大の姿を現れる。 「よっしゃああ! 俺の勝ちだ!」 救大が立ち上がり、フラッグを持った手を突き上げて勝利の雄叫びを上げる。白い歯が輝く笑顔には喜びが浮かんでいるが、周辺には対照的にスライディングによって潰された小人やビルの残骸が無残な姿を晒している。 「ちぃっ……」 頼斗は静かに立ち上がり、整った顔立ちに一瞬苛立ちが浮かぶが、すぐに冷静さを取り戻し、瞳の奥に闘志を燃やす。 「これで勝ったと思うなよ。次は負けない」と救大を一睨みし、キリッと眉に力をこめる。 「くっそぉ! まだまだ負けないっすよ、先輩!」 丞も立ち上がると、生意気な口調で叫ぶ。未熟ながら若さ溢れるエネルギーで次の勝負への意気込みがみなぎっている。 そんな2人の様子を見て、救大は「へへっその意気だ、丞! それに、頼斗先輩も!次も俺が勝っすけどね!」 ニヤリと笑った救大が、そうやって二人に負けじと言い返す。彼は開始合図装置を回収し、街のまだ破壊されずに残っている遠くのビル郡を見やった。 「よーし、じゃあ次のゴールはあそこあたりだ!」 手に持った赤い三角フラッグを、再び槍投げの要領で勢いよく遠くへ放り投げる。 ザクッ! フラッグは、遠くの無傷なアスファルトに貫通し突き刺さる。 救大は2人へと向き直り、白い歯を見せ、清々しい笑みを浮かべる。 「よーし、それじゃあ第2回戦の開始だ!」 そうして、シティフラッグの第2回戦が開始され、第3回、第4回と続き、最終的に計10回にまで及んだ。三人の巨人が駆けるたびに、街は広範囲にわたり壊滅し、ビルや道路、橋や駅――全てが瓦礫の海と化した。 ほんの数十分前までは小人たちの活気ある街だったが、今や完全に巨人の訓練場と化し、ビル、住宅、公園、病院、学校、繁華街などの街にあるあらゆるものが彼らの足元で無残に踏み潰され、跡形もなく消滅。逃げ惑う小人たちの悲鳴は、次第に弱まり、やがて沈黙に飲み込まれた。 最終的な競技の結果は、救大の圧勝だった。10回のうち、丞が第4回で一度、頼斗が第5回、第7回の2度、フラッグを掴み勝利を収めたが、残りは全て救大が制した。 三人の巨人は、瓦礫の海と化した街を見渡し、充足感に浸っていた。特に救大は筋骨隆々の体を大きく伸ばし、勝者の余裕を漂わせていた。 「ふぅっ!なかなかハードな訓練だったな……。でも、この廃墟が俺たちの訓練の成果ってところだな!」と豪快に笑い、瓦礫の山を満足げに見下ろす。 丞もニヤニヤとした笑みを浮かべ、同調するように話す。 「へへ……そうっすねぇ! いやぁ、それにしても俺達、ライフセーバーなのに、思いっきり小人の命奪いまくっちゃったっすねぇ!」 丞は足先で瓦礫をいじったり転がしたりし始めた。まるでまだ生き残った小人がいないか探すように、瓦礫を軽く蹴り飛ばす。 「おい、丞」 救大が突然、真剣な顔つきで丞の方を向く。その声の重さに、丞は「ハ、ハイッ!」と少し焦った様子で姿勢を正し、直立する。 救大は鋭い目で丞を見、巨人ライフセーバーらしい矜持を込めて言う。 「俺達が救うべきは、巨人の海水浴客の命だ。小人の命なんかに気を散らせてると、訓練に身が入らねえぞ」 続けて、諭すような口調で言葉を紡ぐ。「確かに、訓練のたびに多くの小人が巻き込まれ、犠牲になる。それは認める。だが、小人のビルを踏み砕くことによって、俺達の足腰は鍛えられ、救助活動の際に最大限のパフォーマンスを発揮することができるようになる。これは必要な犠牲なんだ」 頼斗も救大の言葉に静かに頷き、冷静な目で丞を見つめる。その視線と救大の言葉に、丞は一瞬気圧されたように身をすくめるが、すぐに感化された様子で反省の色を見せる。 「す、すみませんでしたっす……! 先輩の言う通りっす。俺、これからはちゃんと訓練に集中します!」 救大はすぐに普段のさっぱりとした口調に戻り、ニッと白い歯を見せる。 「まぁ、次からちゃんと集中しろよ、丞! これは訓練であって、遊びじゃねえんだからな!」 しかしすぐに彼はニヤリと笑い、自身の競パンに包まれた股間を指差す。「まぁ、小人プチッと踏み潰して気持ちいいっていう気持ちは分かるしな。俺だってこんなになってるし……」 その言葉に、丞が救大の股間に目を向けると、今にもはち切れんばかりの立派な膨らみがあるのが見て取れた。 「さ、訓練はこれで終わりだ。……で、今からは自由時間だ。……シティフラッグで敗れた者は、勝者への奉仕が必要だよな?」 救大がニヤリと笑い、真っ赤な競パンを躊躇なくずり下ろす。陽光の下、赤黒く怒張した巨根が露わになり、ムワッと雄の臭いが立ち込める。勝利の余韻と破壊の興奮で、既に激しく勃起していた。 「えー!? ついさっきまで巨人ライフセーバーらしくかっこいいこと言ってたのにー!」 丞が不満を口にし、坊主頭を振ってぶつくさ言う。 「それはそれ、これはこれだ!」 救大は瓦礫の海のど真ん中で仰向けに寝そべり、巨大な体を広げる。「丞はこっちな」と言いながら股間を指差し、続けて「先輩は乳首の刺激お願いしますね」と筋肉質な胸板をぱしぱしと叩く。丞は「ちっ、しゃーねえっすね!」とぶつくさ言いながらも、救大の股の前でしゃがみんだ。そして、渋々ではあるものの、救大の巨根に舌を這わせ、激しく舐め上げる。 頼斗も不服げに「ふん……だが、仕方ないな」と呟き、救大を一瞥する。頼斗は無言で救大の左側に立ち、乳首を舌先で刺激し始める。 ジュプッ……グポッ…… 淫靡な水音が、壊滅した街に響く。救大は目を閉じ、快楽に身を委ねる。「うおっ……、すげえ……! 丞、もっと力入れて良いぞ!」と気持ちよくよがり、勝利の余韻と肉体的な刺激に震える。頼斗の舌先の動きと、丞の荒々しい口使いが、救大をさらに高揚させる。 「あっ……! 先輩、もう片方の乳首も指で刺激してください!」 救大が興奮した声で指示を出し、頼斗は不服げに一瞬眉をひそめるが、渋々従い、指で反対側の乳首を摘まみ刺激し始める。丞は口いっぱいに含んだ巨根を舐めて、激しく刺激する。 そのうち、救大の巨根が膨張し、射精の気配を感じ取る。 「うおっ……! 出るぞ!」 その声に咄嗟に口を離した瞬間、 ドピュルルル! ドビュウウ! 救大の巨根から凄まじい量の白濁が噴出し、街中に撒き散らされ、瓦礫の山の一角を汚した。ビル跡地や陥没した道路に、粘ついた液体が流れ込み、壊滅した街に新たな被害を加える。救大は満足げに息を吐き、「ふぅ……気持ちよかったぜ。丞に先輩。やっぱシティフラッグは最高の訓練だな!」と笑う。 丞は口の端に残ったわずかな白濁をゴクリと飲み込み、「うおっ、濃えっすね……」と呟きながら顔をしかめる。 頼斗はやることはやったと言わんばかりに立ち上がると、静かに「次はこうはいかん」と呟く。丞は「お、俺だって、次は絶対俺が勝つっす!」と拳を握り、挑戦的な笑みを浮かべる。 救大は二人に「へっ、いつでもかかってこい!」と言い放ち、立ち上がる。三人は互いに軽く肩を叩き合い、満足げに笑いながら、壊滅した街を後にした。 残されたのは、無残に崩壊した瓦礫の海だけだった。かつての都会の輝きは消え、血と白濁にまみれた廃墟が、巨人の「訓練」の爪痕を静かに物語っていた。

シティフラッグ―巨人ライフセーバーの訓練―

Comments

ありがとうございます! 訓練という名目であっけなく使い潰されてしまいました! そうなんです、巨人みんな助けるとか頼り甲斐がありそうなニュアンスの漢字を取り入れてみました! 小人からしたら真逆なんで、相当皮肉な名前ですよね~! ビーチフラッグをするからにはこういう格好でスタートを待つことになりそうだなーと思って 自然と思いついて描写してみましたが、高い立ったままの巨人目線とはまた違った見え方がするシチュに丁度良くなってくれたシーンですね~。

曹達(ソーダ)

ああ……訓練で無残に使いされちゃう小人と小人の街……!! 巨人の皆さんが名前に助けるとか頼るとかそういう字入ってるのがより皮肉ですね~ うつぶせで寝そべっ三者三様小人の街の光景を見下ろしてるとこが個人的にツボでした!!

ichiya / ichiarrow

ありがとうございます! 巨人達側はあくまで訓練の一環といった感じですが、 小人側は穏やかな日常をめちゃくちゃにされてたまったもんじゃないでしょうね~。 そうですね、確かにたとえ一度は生き残っても、 次の試合で今いる場所が再びフラッグへの進路上となってしまったら……と考えると恐ろしいですね!

曹達(ソーダ)

ありがとうございます! 小人目線での日常シーンを挟むことで、 巨人の強大さやシティフラッグの恐ろしさが感じられるようにしてみました! 3人の巨人ライフセーバー、もしかしたらシティフラッグ以外にも 小人の街で“訓練”と称して色々やってるかもしれないですね……!

曹達(ソーダ)

3人の巨人ライフセーバーが楽しく訓練してる足元でなす術なく蹂躙される小人達。ギャップが堪らんです!様々な小人目線もあるのがとてもよかったです。3人の別の訓練も見てみたい🤤

クリ

70m台の巨人3人による、猛烈なシティフラッグ! 豪快な破壊と殺戮が最高ですねー! そして哀れな人間たちが、巨人の試合会場となった絶望感と恐怖の描写がまたいいです! 平和な日常が3人の巨人でめちゃくちゃにされるのは大興奮しかなくて! 10回も試合がされたのなら、奇跡的に生き残っていた由宇次も親子も最終的には……?

澤井 凌太


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