ズガアアアァァァァン!! 勤大さんがスラックスに包まれた長い脚を振り、近くに立っていたビルへと強烈なキックをぶち当てる。 破片を撒き散らし、もくもくと煙を立てながらあっけなく倒壊するビル。 「はははっ、やっぱり巨人になった俺様の力ってのはすげーよなぁ!」 自画自賛するように笑う勤大さん。 自分の力を振るうことに相当な興奮を感じているようだ。 普段であれば、鼻持ちならない傲慢な振る舞いに見えるだろう。しかし、勤大さんの暴れる姿は、むしろ大胆不敵さの方が強調されているかのようで、不思議と魅力的に映った。 今度は、逃げ惑う群集や渋滞を起こして上手く逃げられずにいる車が溢れかえる道路へと目を向ける勤大さん。 「そういえばキミ、プロフに「踏まれたい」って書いてあったけど、 こんな光景を目の当たりにしても同じことが言えるのかなぁ?」 足元で走り去ろうとしていたバスの上へと革靴を履いた足を乗せる。 ミシミシッ まだごく軽く体重を乗せているだけのようだが、それでも巨大な革靴の下で、金属がひしゃげる音が響く。 同時に、車内から「うわあああ!」「ぎゃああっ!」と、くぐもった悲鳴も上がった。 しばらく車内にいる人たちを弄ぶように、わざとゆっくりと体重をかけていった後、 「じゃ、そろそろ潰すぞ」 ズシイイイィィィンン 勤大さんは全体重をバスにかけた。 「ははっ、見てみろよ、バスがこんなにぺちゃんこになっちまったよ」 そう言いながら、金属の板一枚のようになってしまったバスを路上からはがし、僕の目の前へと晒す勤大さん。 「あ……あっ……」 僕が呆然と見上げていると、 「おっ、いいねぇいいねぇその表情。恐怖一色って感じでさ。 もしキミがその辺を歩いてるただの小人だったら、可愛すぎて思わず潰してるところだったよ」 そんな恐ろしいことさらっと口走りながら、ペラペラになったバスをまるでティッシュかのように団子状にして、その辺にポイっと投げ捨てる勤大さん。 あまりにも桁違いなパワーを目の当たりにして、僕は相変わらず言葉を失っていた。 そんな僕の様子などお構いなしに、 ズシン、ズシンと歩を進め、勤大さんは、僕が今立っている駅ビルの向かい側にある、背の高いビルの前へと移動する。鏡張りの立派な高層ビルだ。 そしてこちらへとくるりと振り返ると、そのビルを指差しながら言う。 「ここ、俺の取引先の会社が入ってるビルなんだけどさ。前からムカついてたんだよなぁ。俺の会社よりも立派なビルに入りやがってよぉ!」 言い終えると勤大さんはビルに向き直り、ボクサーのような構えを取ったかと思うと、突如として強烈なストレートパンチを繰り出した。 ドゴオオォォン!! 凄まじい衝撃音と共に、キレイな鏡面の中央部がごっそり持っていかれたような、大穴が出来てしまったビル。 「ははっ!あーすっきりした!」 そうあっけらかんと宣言しつつ、こちらを振り返る勤大さん。 まるで一仕事終えた後のように手の甲で額の汗を拭うような仕草をする勤大さんの後ろで、大穴の開いたビルは見る見るうちに自壊していった。その崩れ落ちたビルの上部を目に留め、ズシンズシンと追い討ちをかけるように念入りに足を振り下ろす勤大さん。 ズオオオォォン!! グシャグシャグシャ!!! 僕の視線には、ビルを粉々に踏み潰している勤大さんの革靴に釘付けになっていた。 「さてと。じゃーお次はこっちの方にも行ってみようかな」 鏡張りのビルを完全に破壊してそう漏らすと、ズシーン、ズシーンと足音を立てながら、今度は駅の反対方向へと足を進める勤大さん。こちら側はまだ避難できていない人々が大勢いるようで、地上では人々がくもの子を散らすように逃げ惑っている。そんな人々を見下ろしていた勤大さんは、何かを発見したかのようにニヤリと口元をゆがめる。 「おっ、結構ガタイの良いヤツ発見」 急にしゃがみ込んだかと思うと、足元を逃げ惑う群衆の中からひとりの男を摘まみ上げる。 ジタバタともがくその男は、勤大さんの言うとおり、ジムで鍛えたりしてそうな見た目をしていた。 その男を摘まみ上げた手を、勤大さんは自身の頭の上まで上げていく。そしてペロリと舌を出して自分の唇を舐める。 「俺、結構voreもイケる口なんだよね」 そう口走ると、勤大さんは男を摘まんでいた指を放した。絶叫と共に落下する男。 そんな男を待ち構えていたのは、勤大さんの大きく開いた口だった。 男を口でキャッチすると、勤大さんはそのまま口を閉じていく。 男が何か叫んでいるのか、微かにくぐもった叫び声が聞こえてくるが、勤大さんの喉仏がゴクリと動き、その叫びはピタリと止んでしまった。勤大さんは満足そうな表情を浮かべて、自らの腹をさすっている。 「うーん、やっぱりこの味は何度味わってもたまらないな」 そんな独り言を呟きながら、再びしゃがみ込んで、お眼鏡にかなう体格の人間を摘まみ上げては、口の中へと放り込み、ゴクリと嚥下していく勤大さん。 「あー、クソ雑魚共が何の抵抗も出来ずに俺の腹ン中に落ちていくのかと思うとマジたまんねー……」 そんなことを呟きながら、こちらを見下ろして再び舌なめずりをする。 僕はvoreも好きだとプロフィールに書いていたが、こんなにも近くで簡単に他人の命があっけなく捕食されているのも目撃すると、震えが止まらずにいる。 「……ふふ、怯えちゃって本当に可愛いなぁ。 月並みだけど、食べてしまいたいほど可愛いってのはこういう時に使うんだろうね。 あーー、キミみたいな子に見上げられてると興奮しっぱなしだよ……!流石にそろそろぶっ放したいな……」 そう言いながら、僕の立つ駅ビルの近くまで歩いてきたかと思うと、そのままズカズカと何本も敷かれている線路のほうへと歩みを進めていく。やがて足元で何かごそごそと掴むような素振りをした後、こちらへと引き返してきた。 「キミが立ってるビルに突っ込むのと、コレに突っ込むの、どっちが見たい?」 ニッと笑った勤大さんの目がこちらを見下ろす。 その手には、新幹線の先頭車両が握られていた。 突如として示された選択肢に、僕はただ呆然と突っ立って何も言えずにいた。 すると、じれったい様に息を荒くし、目をギラギラとさせた勤大さんが口を開く。 「ほらほら、呆けてないで早く選んでよ。そろそろ収まりも着かないんだよな」 そう言いながら自身の股間を指差す。確かに勤大さんのスラックスの股間部分は、大きく膨らみテントを張っていた。 「わ、わかりました……っじゃ、じゃあビ、ビルの方で……」 僕は震える声でとっさにそう答えてしまった。 勤大さんが新幹線を使うよりも、足元にあるこのビルを使うとなれば、衝撃や振動に巻き込まれる危険もあるんじゃないかという危惧も頭を過ぎった。しかし、こんな機会めったにないんじゃと考えもあったのかもしれない。 「……ふぅん、なるほど、そっちを選ぶか。結構度胸あるね。ま、俺の気分的にはこっちでも良かったんだけどね」 手の中の新幹線を弄びながら独り言のように言う勤大さん。中にはまだ大勢の乗客が取り残されているようで、勤大さんがくるくると角度を変えるたびにワーキャーと叫び声が漏れてきているのが分かる。 「まぁ、だったら選択肢出すなよって話だよね。 ……じゃ、こっちは用がないから、潰しておくね」 そう言うや否や、勤大さんは手に持っていた新幹線にグッと力を入れて、あっけなく握り潰してしまった。 バスの時と同様に、両手を使ってくしゃくしゃとまるで紙でも丸めるようにして新幹線を潰した後、背中越しにぽいっと投げ捨ててしまった。 そして、自由になった手でカチャカチャとベルトをはずし、スラックスとパンツを脱ぎ去ってしまう勤大さん。 駅ビルの屋上の上に立つ僕の目の前にあるのは、勤大さんの、太く大きく怒張したペニス。 「す、すごい……」 思わずそう口にしてしまうと、勤大さんは自慢げにニヤリと笑った。 「いやー、街中ぶっ壊してる時からもう興奮してたまんなくて……。流石にもう我慢も限界なんだよね」 そう言いながら、勤大さんは僕のいる駅ビルのほうへ急激に歩み寄り、そして屋上の角に両手をかけた。 「じゃあ、今から突っ込むけど、まぁ当然だけどすごく揺れるけど、それでも俺が突っ込んでるところがみたいってことだもんね?まぁせいぜい頑張って耐えてよ」 「えっ、ちょ、ちょっと待っ……」 僕の制止など聞く耳も持たずに、勤大さんはその巨大なペニスを駅ビルの壁目掛けて突き立ててきた。 ズドオォォン! 「うあああっ!」 凄まじい衝撃と振動が僕を襲いかかり、思わず声を上げてしまった。 しかしそんな声すらかき消すような轟音と共に、勤大さんは何度も何度も腰を打ちつけてくる。 ドッゴオオォォン!! ズドオォォン! バゴッバキッ! そんな轟音と振動を何度も繰り返され、僕は屋上の床にしがみつき、揺れに翻弄される。 上を見上げると、勤大さんは恍惚の表情を浮かべていた。 「あー、ビルの内部の壁ブチ破ってるのを感じる……あと色んなモンもぶつかってるし、ブチブチ人間が潰れてる感触もする、あーたまんねぇ……」 ズガンズガンと腰を動かしながら、嬉しそうに言う勤大さん。 「あーー、もうそろそろ出そう……!」 勤大さんはそう漏らすと、さらに激しく腰を動かし始めた。 ドッゴオオォォン!! ズドオォォン! バゴッバキッ! そんな轟音が繰り返され、僕のいる屋上もいたるところでコンクリートがバリバリと裂けている。 そんな中でも情けないことに、僕自身もベルトを外しズボンを脱ぎ、股間へと手をやっていた。 身の危険を感じるような状況でも、自分のフェチには抗えなかったのだ。 「あ……ああ……」 頭上に広がる勤大さんの巨大な顔を見上げながら、思わず声を漏らす僕。そんな僕のところに、勤大さんの恍惚とした声が降ってくる。 「……あーー出る出る……!……イクっ!!」 その声とともに、勤大さんは射精に至った様だ。 ドビュッ!!ドビュウウウウウゥゥゥ!! ここからでは見えないが、のペニスの先から途轍もない量の白濁液が勢いよく発射され、ビル内部を満たし、それだけでは飽き足らずビルを貫通して外まで飛び出させたのだろう。 「あーー、気持ち良かったぁ……」 そんな声が上から聞こえ、恐る恐る目を開けると、そこには満足げな勤大さんの顔があった。 「あ、なんだ。俺だけが気持ちよくなっちゃったかなぁと思ってたけど、キミもちゃんとイッちゃってたんだね」 勤大さんの巨大な目が見つめる先……それは、僕の股間だった。 勤大さんに比べればごく微量の液だろうが、確かに僕も勤大さんとほぼ同じタイミングで達していたのだ。 僕は顔がカッと赤くなるのを感じる。しかし勤大さんはそんなことお構いなしに、脱ぎ捨てたスラックスを拾い上げ、身なりを整える。 そしてポケットからスマホを取り出すと、画面の中央でメラメラと燃えるようなエフェクトを放つ、大きな「DESTRUCT」と書かれたボタンをタップする。次いで現われた「終了しますか?」の問いかけに「YES」を押す。その瞬間、街を覆っていた七色に煌くオーロラのような光がスマホへと収束し始めた。しかも、オーロラのような光が消え去ったところに建ってあったビルは、ビデオの逆再生のような動きで、たちどころに元の姿を取り戻していく。先程まで瓦礫だったのが嘘のようだ。やがて空間自体がぐにゃりとうねったような感覚の後―― 気が付くと、僕は待ち合わせ場所の噴水の前に立っていた。 周囲を見渡しても、普段どおりの喧騒や行き交う人で溢れている。どこもかしこも、勤大さんが最初にボタンを押す前の状態に戻っている。 勤大さんの取引先が入っているという鏡張りのビルも、線路も新幹線の車両も、駅ビルもだ。 そして当の勤大さんも、僕の目の前できっちりとスーツを着こなした状態で立っており、僕を見下ろしてニヤリとした笑みを浮かべていた。 「どう?「DESTRUCTION」のアプリ、すごいでしょ。ボタンひとつでさっきまでの大暴れもなかったことに。だから容赦なく暴れられるんだよね」 そう。マッチングアプリ「DESTRUCTION」は、 僕みたいな縮小化願望の人と、巨大化願望の人をマッチングさせる、サイズフェチ専用アプリである。 しかも、巨大化願望の人が実際に巨人となった姿を見て、自分のフェチとのマッチング度を測ることが出来るという、まさに夢のようなアプリなのだ。 一口にサイズフェチといっても、踏み潰すのが好き、小人を弄ぶのが好き、voreが好き、ただ小人と一緒にいるだけで満足……例をあげればきりがない程、嗜好や小人との関係性は多種多様だ。 後々ミスマッチにならないように、こうやってお互いのフェチのマッチング度合いを確認できるというのは、とても画期的なアプリだと思う。 しかも、ことが終われば、何をしたって元の状態に回帰させることも出来るというなんともすごい機能付き。 アプリをインストールする際にもそんな説明が書かれていたが、その時はまだ信じられなかった。 噴水の前で会った直後に勤大さんに尋ねてみても半信半疑だった。 しかし、勤大さんの身体が巨大化し、大暴れを目の前で見せら、ボタン一つで元の状態に戻る様を見せられてしまったら、これは本当のことだったんだと、否が応でも納得せざるをえなかった。 「で、どうだった?俺の暴れっぷりは。キミの嗜好とマッチしたかな?」 先程までの残酷な視線とは打って変わって、爽やかな営業マンモードに戻った勤大さんが、優しく僕を見下ろしながらそう問いかける。 「は……はい!とっ、とてもすごい体験をすることが出来ましたっ!」 僕はこの1時間ほどの間のめまぐるしい体験をうまく言葉に出来ず、小学生みたいな答えをするので精いっぱいだった。 しかしそんな僕の言葉を聞いて、勤大さんは嬉しそうに笑う。 「そっか。よかった。俺のほうも、キミみたいに純粋に俺の破壊に驚いて興奮してくれるような子に見られてると思うと、興奮も増したよ。 お互い、性癖とのマッチ度もそここ高いみたいだし、これからも俺の大暴れに付き合ってくれたら嬉しいな」 勤大さんは改めて僕に向き直ると、大きくて頼りがいのありそうな右手を差し出してくる。 「はい!こちらこそ、よろしくお願いします……!」 その手を、僕はおずおずと握り返した。すると、勤大さんは僕の手を優しく握り返してくれるのだった。ニッコリと笑った勤大さんは、爽やかな声でこう言った。 「今度会った時は、新幹線にぶち込むところを見せてあげるよ」 終