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くろねこ@9605
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【全体公開】集団頭部交換〜34歳ツーブロゴリラ営業マン、河野慶隆が外国人女性観光客の胴体に【わからせ】られて新しい人生を受け入れた顛末〜【無料サンプル】

 5月下旬だというのにまだ朝の空気はひんやりとしている。駅のホームで電車を待っていた河野慶隆は腕時計を見た。河野はジェルで固めたツーブロックの髪型で、日に焼けた逞しい体躯にダークネイビーのストライプスーツを着ている。年齢は34歳。いかにも体育会系の営業マンらしい風貌の通り、不動産投資会社で営業職として勤務していている。河野は電車を待ちながら、今日進めようとしている案件について考えていた。


(今日のアポイントメントで重要なのは、とりわけ田島氏だな。まだ様子見と言っているが、実際にはウチをキープしつつ、他社と比較している段階だろう)


 やがてホームに電車が滑り込むように入ってきた。車体が緩やかに止まり、河野の目の前でドアが開く。降りる人の流れを待ってから、河野は電車内に乗り込んだ。ホームで誰かが大声を出していたが、考え事をしていた河野はそれに気づかなかった。吊り革を掴みながら思案を続けた。やがてドアが閉まり、乗客ですし詰めの満員電車が走り出した。


(田島氏の予算額はかなりのものだ。適度にプレッシャーを掛けつつ、早めに決断してもらおう。あまり追い込みすぎると今後にも差しつかえるが、そのあたりの匙加減は──)


 電車内は乗客の体が放つ熱と微かな汗の匂いで、外よりも温度も湿度も高かった。他のサラリーマンの整髪料の匂いや、女性の香水の匂いも微かに混じっている。そんなとき、車内が妙に騒がしくなり始めた。電車の進行方向──車両の前の方の乗客たちが驚いたような声を上げ始めた。「えっ!」「うおっ!?」といった声が、男女問わず車内に広がっていく。乗客たちの視線は、車内の何かを追っていた。


(何だ……?)


 河野の前の吊り革を掴んでいたサラリーマン──40代くらいのビール腹気味の男が驚いた声を出しつつ、吊り革から手を離して、他の乗客から何かを受け取っていた。彼は目を見開いたまま河野の方に振り向くと「それ」を河野に手渡してきた。


 それは、精巧に作られた男性の頭部のように見えた。20代くらいの男性。茶髪でフェザーパーマの髪型が、やや甘めの顔つきと似合っている。奇妙なことにその頭部は瞬きをしており、しかも必死に言葉を発していた。


「おい! 誰か止めてくれ! 俺の体に頭を戻してくれ!」


 その頭部を視認したことで、河野慶隆の脳みそにも【常識】が刷り込まれた。


【これより、胴体と頭部の主従が逆になる】

【脳が思考して体を動かすのではなく、体が望む思考を脳が行う】

【あらゆる胴体は、頭部を体から取り外して、他人の頭部と交換せよ】

【胴体と頭部が同じ人間のままというのは、人間として恥ずべき状態である】

【頭部と胴体の組み合わせにギャップがあるほど、人間として魅力的な人物となる】


「はひっ!?」


 河野の口から間の抜けた声が漏れた。ぐりんと脳みそが裏返る感覚。週末にジムで鍛えた自分の肉体が、たまらなく恥ずかしいものに思えてしまう。まるで下着姿のままで外出してしまったかのような──そんな破廉恥な感覚に、河野はそわそわとゴツい腕で自分の胴体を抑えた。他のサラリーマンやOLたちも、皆恥ずかしそうに自分の体を抑えている。


(なっ、なんだこの体は……自分の胴体のまま電車に乗るなんて……【恥ずかしすぎる】。いや、こんな考えはおかしい……けど……【常識】なんだよな……!?)


 さっきまで脳内に存在していなかった【常識】に戸惑いながらも、河野は若い男の頭部を受け取った。そして後ろの乗客へ──30代くらいのOLに渡した。OLも頭部を見て驚いた顔をし、さらに【常識】が刷り込まれたらしく、ビクンと肩を震わせていた。


 そして若い男の頭部がやってきた車両前方の乗客たちから順に、奇妙な動きをし始めた。乗客たちが両手で頭部を掴み、体から取り外し始めたのだ。若いサラリーマンも、白髪交じりの中年のサラリーマンも、Tシャツを着た観光客の男性も、あるいは若いOLも、恥ずかしがっていた表情が、こわばった表情に変わる。それもそのはず、それは乗客たちが頭で考えた行動ではなく、胴体の側が望んだ行動だった。もはや肉体の主導権は頭部ではなく【胴体】が有するのが【常識】なのだから。


「うおっ!? な、なんだこりゃ!?」


「あっあっ! 俺の頭が……抜かれちまうッ!」


「ちょっ、戻せ戻せ!!」


「な、なんで体が勝手に動いとるんだ!?」


「おい待て! やめろやめろ!」


「なんなの!? いやっ! ちょっとやめなさいよ!?」


 車内で頭部を引き抜こうとする胴体と、それに抵抗しようとする頭部の混乱が広がっていく。そしてそれは河野も同じだった。


「ど、どうなって……うおっ!?」


 河野のガッシリとした手が、太い首を掴んで引き抜こうとしはじめた。まるでプラモデルのパーツを外すかのような気軽さで、それでいて女性器から男性器を引き抜こうとするような、淫靡な意味を持つような行為だった。やがて、きゅぽんという小気味いい音と共に、河野の頭部が胴体から取り外された。首から下の感覚が消えて、ふわりとした浮遊感を味わう。


「んあっ……!」


 妙な浮遊感──射精直前に背筋に走る予感のようなそれが、じんわりと続いているのを、ツーブロックヘアの頭部だけになった河野は感じた。


 騒ぐ頭部たちをよそに、乗客たちの胴体は、元の頭部を他の乗客たちの胴体に淡々と渡していく。元の胴体は、元の頭部に執着や関心がないようだった。一方、頭部を受け取った胴体は、まるで吟味するかのように頭部を眺めるような動作をしてから、他の乗客の胴体に頭部を渡していた。


「うおッ!?」


 河野の胴体も、河野の頭部を淡々と他の乗客の胴体に手渡していた。頭部がない30代のOLの胴体が、華奢な指で河野の頭部を受け取り、値踏みするかのように河野の頭部を掲げて確認すると、隣にいたTシャツを着たガッチリした男の胴体に手渡した。頭部のないTシャツ男の胴体が、河野の頭部を吟味している間、河野はあんぐりと口を開けて、異常な車内の光景を見つめていた。


(まさか……このまま俺は、他人の胴体とくっついちまうのか!?)


 やがて、胴体たちは「自分に合った」「ギャップのある」頭部を見つけると、次々にくっつけ始めた。


「な、なにが起きとるんだぁッ!? おほっ♡ おおぅ〜〜〜♡」


 パンチパーマで口髭を蓄えた厳つい中年男の頭部が、若いOLの胴体に取り付けられた。強面な中年男の顔が、デレっと緩みきって涎を垂らしている。


「おいやめろ! マジでふざけんじゃねえ! こんなオッサンの体に……ふひっ♡ んあぁぁ〜〜〜♡」


 その隣では、茶髪を後頭部で団子にまとめたマンバンヘアの若い男性の頭部が、太鼓腹の中年サラリーマンの胴体に取り付けられていた。嫌がっていたに関わらず、肥った体を揺らして快感を味わっている。


「や、やめてくださいっ! こんなの……はうっ♡ んくぅ〜〜〜♡ おちんちん、しゅごっ……♡♡」


 三つ編みで眼鏡を掛けた、いかにも文学少女らしい女の子の頭部が、Tシャツを着た逞しい男の胴体とドッキングして、顔を真っ赤にしていた。股間は明らかに勃起し、短パンの生地を突き上げている。男としての性的興奮が少女の頭には強すぎたのか、筋肉質な腕で吊り革を掴んで、ヒクヒクと逞しい肩を震わせていた。


「ま、待て! 俺には妻も娘も……んあっ♡ うへへぇ♡ なんだこりゃぁ〜〜〜♡♡」


 30代の顎のガッシリとした男の頭部が、太めの中年女性の胴体とドッキングして、豊満な胸を揺らしながら喘いでいた。まるでポールダンスのように電車の座席横の手すりに掴まり、中年女の体をいやらしく擦り付けている。


(なんなんだ……? 嫌がっていた人も、あんなに態度が変わって……?)


 河野は乗客から乗客へと手渡しで頭部を運ばれつつ、眉根を歪めていた。あちこちで次々に乗客たちの頭部と他人の胴体がドッキングしているが、そのたびに嫌がっていた声が悦びに満ちた声に変わっていく。そうこうしているうちに、河野の頭部を受け取った若い女の胴体が、丹念に河野の頭部を確認し始めた。


 若く、豊満な乳房の女の胴体だった。Tシャツにデニムのミニスカート。隣には恋人らしいゴツいタンクトップ姿の男の胴体がおり、女と体を密着させている。女の肌は白く、外国人の観光客に見えた。


(お、俺がこの女の胴体に……?)


 河野はゴクリと生唾を飲み込んだ。河野慶隆は性欲旺盛な34歳の体育会系のサラリーマンとして、この女の肢体に惹かれないものがないではない。ただし、それは河野自身の肉体でセックスする場合の話だ。


(ま、まあ……頭はなぜか、取り外せるみたいだし……いったんこの女の体になってから、元の俺の体に戻れば──)


 河野の頭部と若い女の体が、磁石のように吸い付くのと、【常識】が河野の脳みそを再び支配するのは、ほぼ同時だった。


【胴体は頭部を従え、支配するものとする】

【頭部を交換をした後は、胴体の側の社会的立場に従って生活をするのが、ごく当たり前の常識である】

【頭部は速やかに新しい人生を受け入れること】


「へひっ? んあぁぁ〜〜〜っ♡♡」


 それに伴い、胴体の女の記憶が河野の脳にフィードバックされ、河野のアイデンティティを染め上げていく。「俺の名前は河野慶隆だ」というアイデンティティの土台が、ぬるりと書き換えられる。


──俺の名前はミシェル・ガスト・エレンソンだ。


(ち、違っ♡)


 河野の鼻息が荒くなる。それは決して不快な感覚ではなかった。まるでセックスの主導権を女性に奪われ、騎乗位で抱かれるのに似た背徳感と興奮があった。


──俺の出身はアメリカのカリフォルニア州だ。

──年齢は24歳。

──職業はファッションモデルとSNSのインフルエンサーをしている。

──日本へは、恋人であるトラヴィスと共に観光にやってきた。

──俺が日本人のサラリーマン? おいおい、冗談だろ?


 普通ならば脳が肉体を従え、動かす。しかし新たな【常識】では、【肉体が脳を従える】【肉体に都合のいいように思考を動かす】──そのようになってしまっていた。ミシェルの胴体が、ミシェルの人生を生きるのに都合のいい思考を、河野の脳に考えさせる。河野はその思考に流されそうになったが、抵抗するように首を横に振った。


(こ、こんな馬鹿なことがあって、たまるか! 俺がミシェル……!? この派手な外国人女性に!?)


「んんぅ……は、はぁん……♡」


 以前と同じバリトンボイスが河野の口から漏れるが、快感のせいで妙に甘い響きになっていた。新たに繋がった胴体が、新鮮な感覚を一気に河野の脳に伝えてくる。重みのある乳房。軽やかな女性の体。そして股ぐらには、明らかに男性と違う性器が、内側で濡れ始めるのを感じていた。


「あ……あぅ……っ、う、うぅん……♡ おっ、俺は……!」


(河野慶隆として生きてきた34年間の記憶が俺にはある! 脳は俺のままだ! つまり、どう考えても俺は……!)


 ミシェルの胴体は、抵抗を続ける河野の脳を優しく導くと、新しい名前を【認めさせた】。


「どう考えても俺は……【ミシェル・ガスト・エレンソン】……だよな♡」


(んひっ♡)


 河野慶隆の日に焼けたゴリラ顔が、でれっと情けなく緩んだ。それは、ジェルで固めたツーブロックの男臭い髪の下にある河野慶隆の脳が、ミシェル・ガスト・エレンソンの胴体に屈服した瞬間だった。ミシェルの膣内でクリトリスが固く勃起し、ピクピクと痙攣する。股ぐらから愛液が溢れ、ミシェルの下着を温かく濡らしていく。河野は首から下がミシェルになった肉体をもじもじとくねらせた。女として初めて味わうアクメに、河野の男の脳みそがねっとりと包みこまれる。


「おお゛っ♡ ンお゛ッ♡♡ オ゛ぉ゛〜〜〜〜っ♡♡♡」


(ち、チクショウっ♡ はぁ〜〜っ♡♡ き、気持ち良すぎる……♡♡♡)


 【河野慶隆の脳は、ミシェル・ガスト・エレンソンの胴体に敗北した】──河野はそのことを理解しているし、理解させられている。「自分は河野慶隆である」と考えようとすると、脳内に違和感が広がってしまう。学生時代にラグビーで鍛えた精神力を振り絞り、敗北してもなお河野は抵抗を続けようとした。だが、胴体によって思考は簡単に【訂正】されてしまう。


(こ、こんなのおかしいだろう! おっ、俺はどう考えても【カリフォルニア州】出身の【女の子】だ! 昔から【可愛い】から【学生時代からモデルをやっていた】し、今は【インフルエンサー】で稼いでて……はうぅ……こ、こんなの絶対おかしいのに、俺……! 俺は絶対に【ミシェル・ガスト・エレンソン】なんだぁっ♡♡)


 そして河野の隣でも、別の胴体が新たな頭部を迎え入れていた。


「うおっ!? うおっ!? なんやこれ! どないなっとんねん!?」


 ミシェルの隣にいた屈強な外国人男性が、他人の頭部を迎え入れようとしていた──河野はその男性が、ミシェルの恋人であるトラヴィス・J・ウィリアムズの胴体だと自然と理解した。タンクトップから覗く筋骨隆々な腕が、M字に生え際が後退した日本人の中年男の頭部を、胴体とくっつける。


「あかん! あかんて! ワイがワイやのうなってまうやんかぁ!!……んひ〜〜っ♡♡」


 松倉嘉男という52歳の中年サラリーマンの脳に、カリフォルニアでパーソナルトレーナーをしているトラヴィス・J・ウィリアムズのアイデンティティが刷り込まれていった。自分よりも遥かに逞しい男性に屈服し、アイデンティティを明け渡す悦びに、松倉は唇を突き出して卑猥な表情をした。


「お゛ッ♡ おほう゛ぅ〜〜っ♡ こ、こりゃたまらんっ♡♡」


 松倉の──トラヴィスの白いハーフパンツの股間は明らかに勃起し、続いて精液染みが浮かび始めた。松倉は自分よりも屈強な男性の胴体とくっついたことが素直に嬉しいのか、脂ぎった好色そうな顔に笑みを浮かべている。脂ぎったスケベな中年男の頭部が、屈強なアメリカ人男性の胴体についているギャップが、河野の脳にはたまらなく魅力的に思えてしまう。トラヴィスの方が身長が高いため、河野は見上げる形になっている。


「と、トラヴィス?……でいいんだよな? 俺の、恋人の……?」


(こ、こんな脂でテカテカした、M字ハゲのオッサンなのに……♡ なんでこんなに……カッコよく思えちまうんだ?)


 トラヴィスの逞しい胴体に感嘆し、力こぶを作って興奮していた松倉は、河野に気づいて好色そうな笑みを浮かべた。


「おう。ミシェルちゃんもえらい男前の顔になったなぁ。ワイの好みやで、ほんま♡」


「あ、あぁ……ありがとう」


「なんや、他人行儀やなぁ! ワイとあんたは、昨日もホテルでズッコンバッコンやった仲やんけ。身体が覚えとるやろ? ええやんけ、もっと気楽にいこうや!」


 脂ぎった中年男の頭部になったトラヴィスが、そう言って河野の肩をバンバンと叩いた。するとミシェルの下腹の方から、ぐわっと熱い感覚が河野の頭へと込み上げてきた。


(なんだ?……あっ♡)


 それは本来のミシェルが経験した記憶だった。昨日、羽田空港に到着して東京駅近くのホテルに一泊したことも。その夜にトラヴィスに熱烈に愛された記憶も、河野自身が経験したように思い出せる。トラヴィスとの情事の記憶が、河野の脳みそをねっとりと染め上げていく。


(んっ……トラヴィス、チンポがデカいから挿れるの大変なんだよな。でも一度挿れちまうと、俺のまんことの相性は抜群で……♡ んうぅ……昨日は何回もイかされて、最高だったぁ……♡♡)


「ほぉ……その目ぇ、思い出しよったな。えらいスケベな顔になっとるやん。あんたの身体、正直やなぁ?」


 松倉がニヤリと笑みを浮かべ、河野は慌てて表情を取り繕った。


「し、仕方ないだろう! この体は、あんたと恋人同士なんだし……」


「せやせや。なんちゅうか、初めて会うたばかりやっちゅうのに、もう恋人やて? 妙ちきりんやなぁ……。なぁ、ワイもう我慢できひんわ、キスしてまおっか♡」


「んくっ……♡ や、やめてくれないか?……確かに俺はミシェルだが……頭は男同士だろ?」


 松倉の脂っこい顔が近づいてきて、河野は思わず体を遠ざけた。【恋人】の顔が近づいてきたことで、ミシェルの心臓は高鳴り、股ぐらの辺りでは男にはないはずの器官が、キュンキュンと疼く感覚がある。河野は一瞬、松倉とキスしたくてたまらなくなったが──懸命に精神力を振り絞り、どうにか体を離すことに成功した。だが松倉嘉男の方は、屈強な若い男の胴体になった喜びで、自分から新しい胴体とアイデンティティを完全に受け入れており、河野とキスするのになんの抵抗も無いようだった。松倉は不満そうに唇を尖らせたが、二カッと笑うと、ジェルで固めた河野のツーブロックヘアを撫でた。


「ふーん、まあええわ。しゃーないなぁ! でももうあんた、ワイの女やんか! ほな、じっくり時間かけて、あんたの股ぁ、ワイに開かせて、ヒーヒー言わせたるわ! 覚悟しときや、ワハハ!」


 次の停車駅のアナウンスが流れた。その頃にはもう、他の乗客たちも頭部の交換を終えており、車内には女性のうっとりとした溜息や、男性の荒い鼻息があちこちから聞こえてきていた。


 頭部はパンチパーマの強面の中年男で、首から下は若いOLの女が、気持ち良すぎたのか吊り革を両手で掴んで、ヒクヒクと肩を震わせていた。中年男の濁声で、酔いしれたような声が漏れていた。


「あ゛〜〜っ♡ まんこすげえっ……♡ 早く彼氏とも、一発やりてえなぁ……♡」


 隣では、髪を団子にした茶髪のマンバンヘアの若者の頭部で、首から下は太鼓腹の中年サラリーマンが、自分の太鼓腹を撫でてうっとりとしている。ときおり自分のワイシャツの匂いを嗅いで陶然とした様子だ。


「んくぅ♡ 加齢臭すっげ♡ 腹も肉付きいいし、エロすぎんだろ♡」

 

 その近くでは、頭部は三つ編みで眼鏡を掛けた少女で、胴体はTシャツを着た逞しい男が吊り革を掴みながら「あっあっ……♡」と小声で喘いでいた。よく見ると後ろから中年のおばさん──頭部は30代の顎のガッシリとした男で、胴体は中年女性の人間が、三つ編み男の筋肉質な肉体をまさぐっているのだった。30代の男の頭部をしたおばさんは、鼻息を荒げながら、三つ編み男を口説いている。


「なあ、俺みたいなおばさんじゃだめか? 最近亭主ともご無沙汰で、欲求不満なんだよ」


「えっ♡ でもぉ……♡ はうっ♡」


「うおっ! お兄さんチンポでけえな……はやく俺のまんこで咥え込みてえ……♡」


 俺には妻子がいる、と抵抗していたはずの30代の男は、すっかり中年女性の性欲とアイデンティティに飲み込まれてしまったようで、じゅるりと舌なめずりをしながら三つ編み男の体を愛撫することに余念がない。


 頭部と胴体がチグハグな乗客たちを乗せた電車が、ゆっくりと減速してホームに滑り込んでいく。松倉は車内を見渡すと、電光案内板の表示を見て河野に話しかけてきた。


「おっ、みんな楽しんどるみたいやなぁ! ワイらもここで降りて、観光に行こか!」


「そ、そう……だな」


 ミシェルの胴体もそうすべきだと強く感じているようで、河野は恋人であるトラヴィスから離れることが、到底できそうになかった。河野は戸惑いながらも電車のドアが開くのを待っていたが、そこで目が吸い寄せられるように動いた。見覚えのあるスーツを着た、体格のいいサラリーマンが目に入った。


(お……俺の体だ!)


 首から下は、ジムで鍛えた屈強な体格の体育会系営業マン、河野慶隆である──が、頭部は金髪のリーゼントヘアの不良へと変貌していた。目の前にいる胸の大きいOL──頭部は白髪混じりの口髭と顎髭を蓄えた、ダンディな中年男性であるOLを、熱心に口説いていた。毎朝河野が見かけていた、好みのOLの体のようだった。


「お姉さん、どこ住みっすか? いや、お姉さんって顔も声も渋いし、胸もでけえしでマジで俺好みで……」


「おいおい、いきなりがっつきすぎだぞ。アンタ、体はそこそこ歳いってそうだが、頭が若造だからか?」


「うっす♡ さーせん♡ で、どうっすか? 連絡先だけでも──」


「あー、わかったわかった。口説き方から抱き方まで、俺がしっかり大人の男のやり方を教えてやるよ。いいな?」


「あざっす♡ いや〜マジで楽しみっす♡ 今夜開けとくんで♡」


 不良の頭部を乗せた河野の胴体は、チンポをビンビンに勃起させて無邪気に喜んでいる。そしてダンディな中年男の頭部を乗せた若いOLは、白髪交じりで緩くパーマを掛けた前髪を掻き上げると、若い雄を調教する密やかな悦びに口元を緩めていた。胴体だけを考えれば、三十路すぎの逞しい男が、20代前半の若い女に今夜組み敷かれ、しっかりと「調教」されてしまうことを約束している構図である。


(おっ、俺の体が、あんな不良に勝手に使われちまうのか!?……元に戻るにはどうすれば……ん?)


河野は「元に戻る方法」を考えようとしたが、思考の主導権は【胴体】が握るのが【常識】である。そのため、河野慶隆の脳は、元に戻る方法を考えることができなかった。


(くう〜っ♡ そ、そんなことどうでもいいっ♡ 頭がオッサンの若い女に調教されるなんて、エロすぎだろッ♡♡ 頑張れよッ! 元の俺の体ッ♡♡)


 自分の元の胴体が勝手に使われて、若い女に調教されてしまうという状況への、性的興奮だけで頭がいっぱいになってしまう。ハアハアと肩で息をしてチラチラと「河野慶隆」とOLを見ていると、松倉もそれに気づいた。


「おっ! あの二人、ギャップの塊やんけ! オモロイなぁ! 男のほうはヤンキーみたいな頭しとるし、女のほうはなんやえらい渋い男前やんけ! ああいう……『女』と、ズッコンバッコン、朝まで乱れたいもんやなぁ……」


そこで河野の方を見て、松倉は自分の額をぺしゃりと軽く叩いた。


「あちゃー、ミシェルちゃんおるのに、つい本音が出てしもた! あーあ、やってもうたわ!」


「別に俺は気にして……うぐっ、と、トラヴィス……そういう冗談、やめろよな!」


 ミシェルの下腹の方から、急にムカムカする感情が湧き上がってきて、河野は松倉の耳をつねった。松倉が濁声で悲鳴を上げる。


「いてててて! あかんあかん! 勘弁してくれやミシェル! なぁ、ワイはミシェル一筋やて、知っとるやろ? 冗談やって、冗談!」


「ったく……今回だけだからな」


 河野はユーモラスな【恋人】の仕草に笑みを浮かべたところで、自分が他の女に嫉妬していたことに気づいた。明らかに河野のものではない思考が脳内に浮かんでいた。ミシェルの胴体が思考の主導権を握り、河野の脳に考えさせた結果だった。


(お、俺は今……何を考えてたんだ!? このオッサンが他の女をスケベな目で見てるのが、たまらなくむかっ腹が立ってきて……こんな調子でコイツと過ごしてたら、俺は……いったいどうなっちまうんだ!?)



 この奇怪な現象は「取り外された頭部」や「頭部と胴体がチグハグな人間」を目撃することで、伝染していくようだった。河野たちが観光に行った浅草でも、たちどころに胴体たちが結託して、頭部を交換し始めていた。


「OHHH GODDD! YES! YEEESSS! FUUUUUUUUCK! I'M COMIINGGGG! AAAAAHHHHHH!」

(オーーーー、ガァァァッド! イェス! イエェェェス! ファーーーーーーーーック! イッ、イッちまうぅぅぅぅ! アァァァァァァァァァァァァァ!)


 見るからに屈強な体格の外国人観光客の男性が、お団子屋の中年女性の胴体とドッキングして、凄まじい雄叫びを上げていた。髪型はソフトモヒカンに刈り上げた金髪で、伸びたもみあげが口髭と顎髭と繋がっている。


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〜集団頭部交換〜 34歳ツーブロゴリラ営業マン、河野慶隆が外国人女性観光客の胴体に【わからせ】られて、新しい人生を受け入れた顛末〜


【全体公開】集団頭部交換〜34歳ツーブロゴリラ営業マン、河野慶隆が外国人女性観光客の胴体に【わからせ】られて新しい人生を受け入れた顛末〜【無料サンプル】

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