「おーし、2on2のパスキャはこんなもんだろ。10分休憩したら次の練習行くからなー」
「うっす!」
4月。桜が咲き誇るN大学のグラウンドで、ラクロス部員たちが練習にいそしんでいた。その中にはN大学三年生、遠藤祐樹の姿があった。カレッジスポーツと呼ばれるラクロスは、大学から始める初心者が多く、誰もがほとんど同じスタートラインからレギュラーを目指すことができる──高校では水泳をしていた遠藤も、その言葉に惹かれて大学入学からラクロスを始め、今ではレギュラーの座を勝ち取っていた。ポジションはAT(アタック)。攻撃の基点となるため敵選手との接触が多く、ある程度の頑健さが求められるものの、しかし瞬発力や走力も重視されるため、鈍重な体格では務まらない。高校まで水泳で鍛えた遠藤は、ラクロスを始めてからみるみるATとしての素質を開花した。日に焼けた精緻な筋肉でフィールドを駆け回りつつも、敵選手にも当たり負けしない逞しさも兼ね備えている。遠藤は元々甘めの顔立ちではあったが、ラクロスで鍛えられた結果、精悍さのある顔立ちになっていた。その若武者のような顔に、たくさんの汗が浮かんでいる。
「遠藤。さっき、コーチが呼んでたぜ」
遠藤に声を掛けたのは、同じく三年生のレギュラーで、西村雅史。ポジションはG(ゴーリー)──サッカーで言うゴールキーパーであり、こちらはみるからに骨太でゴツい体格をしていた。新入生だった当時、遠藤をラクロス部に誘った張本人であり、入学以来二人は親友であった。
「おう。サンキュ。ちょっと行ってくるわ」
遠藤はタオルで汗を拭いつつ、コーチの元へと駆けた。
「ああ、遠藤。君の友人という人が、用があるみたいでな。話が終わったら、練習に戻ってきてくれ」
N大学ラクロス部のコーチである、青山英之が手招きしていた。36歳であり、元ラクロス日本代表である青山コーチは、まだ現役でも通用しそうな逞しい体躯をしている。青山コーチは、次の練習の準備をするためにその場を離れた。そして、どこかで見覚えのある太った男がその場に残っていた。
「いやあ。久しぶりだなぁ、遠藤」
(誰だ……?)
みるからに太っていて、不細工な男だった。太っているから年齢がわかりづらいが、遠藤と同じくらいだろうか? 顎も腹回りにもでっぷりと脂肪がついており、無精髭が二重顎にまで生えている。遠藤のような体育会系の人間とは縁がなさそうな男なのだが──
「俺だよ俺、新谷だよ」
「げっ!」
新谷という名前を聞いて思い出した。遠藤が高校生だった頃、水泳部の合宿に忍び込んだ変態男子生徒がいた。それが新谷だ。新谷は遠藤の部屋にいつの間にか忍び込み、空きベッドで眠っていたのだ。その事件は遠藤が通っていたN大附属高の監督と、合宿場所を提供していたT高校の監督とで話し合いが持たれ、厳重注意という形で新谷は放免されたそうなのだが──まさか、大学に入ってから再会することになるとは。遠藤は不機嫌さを隠そうともせずに、憮然と言い放った。
「なんだよ。俺はお前に用なんてないんだけど」
「やだなぁ。俺たち親友だっただろ? 今日は遠藤に渡したいものがあってさ……」
「あー、そういうのいいから。お前、水泳部のときは警察沙汰になってないけど、俺につきまとうなら警察呼ぶからな。とっとと帰れよ」
遠藤はそう言い捨てると、なにかを鞄から取り出そうとしていた新谷を置き去りにして練習に戻っていった。しかし新谷は、不細工な顔ににんまりとした笑みを浮かべて、遠藤を見つめていた。
「んふふ。遠藤も俺と『同じ』にしてやるからな……」
その手には、何やら金色のチケットのような物が握られており、新谷は愛おしげにチケットを撫でていた。
※
「ったく、なんだったんだよあいつは……」
アパートに帰った遠藤は、汗臭い練習着を洗濯かごに入れると、郵便受けから抜き取ったチラシやダイレクトメールを適当にこたつの上に置いた。新谷は遠藤のことを「親友だった」と語っていたが、そんな記憶は遠藤にはなかった。
「つうか、水泳部の合宿に忍び込むとか、変態すぎるだろ……」
水泳部の合宿の日、新谷はよりにもよって遠藤の部屋に忍び込んで、朝まで眠っていたのだ。幸いなにもされなかったとはいえ、遠藤にとってかなり気持ち悪い体験であった。そんな変態が今になって自分の身の回りをうろつき始めたことに、気色悪さを感じてしまう。ふとこたつの上に置いたダイレクトメールの中に、キラリと金色に光るものが見えた。その高価そうな輝きに興味を覚えた遠藤は、輝くものを抜き取った。それはなんらかのチケットのような形状をしており、遠藤は表面に書いてある文字を読んだ。
「なんだ? 肉体交換チケット……? んあっ!?」
遠藤の全身を甘い快感と違和感が包みこんだ。ガツンと後頭部を殴られたかのような衝撃に、思わず身をよじる。妙に鼻息が荒くなりながらチケットを裏返すと、そこには次のような文章が書いてあった。
”肉体交換チケット”
”当チケットを受け取った時点で、あなたはチケット譲渡者との肉体交換を承諾したものとみなします”
”交換の進み方はチケット譲渡者の意思によって変化します”
”新谷健吾様と遠藤祐樹さまの間で、肉体が徐々に入れ替わります”
”入れ替わりは体の内部から始まり、時間経過と共にゆるやかに進行します”
”遠藤祐樹さまが射精すると、入れ替わりの進行が加速します”
”入れ替わりの進行と共に、遠藤祐樹さまは入れ替わりフェチになっていきます”
”それでは、入れ替わりをどうぞお楽しみください”
「な、なんだよこれっ……!!!」
そこに書いてあるのは信じられないような文章だったが、しかしチケットを受け取った遠藤はあることを思い出していた。
「そういや新谷……新谷って、あんなデブじゃなかったよな……まさか、新谷もこのチケットで!?」
チケットに触れたことで、遠藤に掛かっていた認識改変が解除され、遠藤は新谷の本来の姿を思い出していた。高校一年の頃の新谷は、あんなに肥え太った気色悪い男ではなく、精悍な容貌で水泳部期待の新人だった。それに遠藤とも親友だったのだ──しかし、T高校との合宿を境に別人のように外見が変わり、しかも自分も他の部員たちも「新谷は元から太っていた」うえに「水泳部の合宿所に忍び込んだ変態デブ」だと思い込んでいたのだ。
「嘘だろ……俺も周りも、なんで気づかなかったんだ……?」
あまりに信じがたい記憶に遠藤は愕然としていたが、チケットの余白に走り書きがあることに気づいた。携帯番号と新谷の名前が書いてある。認識改変が解けたことで、遠藤から新谷への認識も変化し「合宿に忍び込んだ変態」から「変態になってしまった親友」へと印象がガラリと変わっていた。遠藤は親友が変わり果てた理由を確かめるべく、その番号に掛けてみた。コール音のあとに、太った男のくぐもった声が聞こえた。
「もしもし……遠藤? あのチケット、受け取ったんだな?」
「あ、新谷……なのか? その、お前がそうなったのって、このチケットのせい……なのか?」
「おう。高校の頃、すげー太ってた変態顧問の畠山っていただろ? しょっちゅう水泳部員の尻を触ってきたやつ。あの先生も、元はマッチョだったのに、このチケットで変態デブになっててさ。俺も畠山先生からの紹介で、T高校のデブと肉体を交換したってわけ。これがすんげえよくてさぁ……!」
うっとりと自分の肉体がデブになったいきさつを語る新谷。遠藤はその心情が理解できず、嫌悪感を隠さずに口を開いた。
「お前……なんでそんな嬉しそうなんだよ。かなり水泳の才能あったし、あのまま続けてたら全国大会も狙えてただろ!? それなのに、なんでこんな……デブになったのを、喜んでんだよ!!」
「うひっ! しょうがねえだろぉ? このチケットを受け取ると『入れ替わりフェチ』になっちまうんだ。俺んときは最初からそうなったけど、お前にあげたやつは、ちょっと違うみたいだな。俺の深層心理? を反映して、効果が変わるらしくって……んっ、ふーっ、んくっ! んくぅっ……! あぁ……!!」
電話している新谷の声に、切なげな鼻息が混じっていた。遠藤は鳥肌が立つのを感じながら、新谷に尋ねた。
「お前、なに変な声出してんだよ……まさか……」
「おう。遠藤も俺と入れ替わるって考えたら、すげー興奮しちまってさ。あー、ちんぽちんぽ! んくぅ〜〜っ! やっべ。マジでちんぽ捗るっ……んっんっんっ! んあっ!!」
あまりの気持ち悪さに、遠藤は途中で電話を切った。いずれ自分も、新谷と入れ替わってしまう──荒唐無稽なようでいて、しかし以前の新谷の記憶を思い出したことで、遠藤は切実な危機感を感じていた。
(俺の体が……新谷と入れ替わったうえに『元からそうだった』ってことにされちまう……?)
あまりにもおぞましい予感に、気分が悪くなる。才気あふれる水泳選手だった新谷でさえ、肥え太った変態になってしまっているのだ。遠藤はチケットを破ろうかと思ったが、しかしチケットを手に取った途端、悪寒が背筋に走った。ふと、警告のような文章が裏面に書いてるのが目に入った。
”このチケットを汚損した場合、人間であることを辞めて頂きます”
「うげっ、な、なんだよ。なにが起こるんだよ……」
それが新谷との入れ替わり以上に、致命的ななにかである予感だけはある。遠藤は自分の心身が変わり果ててしまう恐怖に、アパートの部屋で鼓動が早くなるのを感じていた。
※
チケットを受け取ってから一週間くらいは、見た目の変化はないように思えた。
「ふーっ……」
遠藤は朝起きると、真っ先に鏡を見ることが日課になっていた。寝ている間に、新谷になってしまっているのではという恐怖がどうしても拭いきれなかった。
「今日も大丈夫……だよな?」
入念に鏡で自分の顔をチェックする。甘さと精悍さがある日焼けした顔立ち。どこからどう見ても、遠藤祐樹の顔に他ならない。体格も筋肉質なままであり、新谷のような肥満体型とはほど遠い。そこまで確認してようやく安堵した。顔を洗おうともう一度鏡を見たところで、違和感を感じた。
「こんなに肌……脂っぽかったっけ……?」
甘さと精悍さのある顔立ちはそのままだが、やけに肌が脂ぎって艷やかであった。それに、妙に酸っぱい匂いがすることに遠藤は気付いた。おそるおそる自分の鼻を指で触ると、その脂でギトついた指先から臭ってくる。
「ウゲッ! 嘘だろ!?」
慌てて自分の体臭を確かめる。寝汗で湿ったTシャツからは、ツンと酸味のある体臭が匂ってきた。それは、まるで新谷と遠藤の体臭をブレンドしたような匂いだった。鼻腔に入ってきて最初は、新谷の酸味のある体臭を感じるのだが、後から遅れて遠藤の元の体臭が匂ってくる。割合で言えば、新谷2:遠藤8くらいだろうか。
”入れ替わりは体の内部から始まり、時間経過と共にゆるやかに進行します”
というチケットの文言通りに入れ替わりが進行している──それを思い出した遠藤は、吐き気を感じながらも自分の顔を洗い、入念にシャワーを浴びた。
「だ、だいぶマシになった……よな?」
シャワーを終えると、元の遠藤の体臭に近いところまで持ち直した。遠藤は、シャワーを浴びたあとに噴き出る汗を何度もタオルで拭い終えると、大学へ行く準備をした。
※
体臭の変化だけでなく、チケットは徐々に遠藤の心身を蝕んでいった。
「遠藤、最近食いすぎじゃねえ? 太るぞ」
数日後。学食で一緒に昼食を食べていた西村が、呆れたような声を出した。遠藤は唐揚げ定食と豚骨ラーメンを注文し、トレイに載せてテーブルに持ってきたところだ。遠藤は顔を赤らめて口を開いた。
「しょ、しょうがねえだろ? どうにも腹が減っちまって……」
胃が新谷と入れ替わったことで、遠藤は大食漢になっていた。さらに舌も入れ替わったことで、脂っこい味を好むようになっていた。まだラクロスでの運動量があるため、遠藤の体格はそこまで太ってはいない。しかし、遠藤の精悍な顔は脂っぽいままであり、さらにニキビが多い顔つきになっていた。
(くそくそくそッ! こんなんじゃ新谷みてえにデブっちまうのに……!)
だが、どうしても食べることをやめられない。何度も食事の量を減らそうとしたのだが、そうすると夜中に食べたくなってしまうため、遠藤はしかたなく昼間の食事の量を増やしていた。
変わったのは食事だけではなく、性的な好みもだった。
「おつかれー」
「うっす! おつかれっしたー」
ラクロス部の練習が終わり、部室で練習着を脱ぎだす部員たち。遠藤は部員たちの逞しい裸体に、鼻息が荒くなり始めるのを感じていた。
(な、なんで俺ッ! 男の裸に興奮してんだよ……! こんな……くそっ!)
練習中も先輩や同学年の部員たちの逞しい筋肉に目がいってしまう。尊敬する青山コーチの精悍な顔にも、惚れ惚れとしてしまう。そしてなによりも──
「どうしたんだよ、遠藤。ぼーっとして」
親友の西村のゴツく男臭い肉体にも、ムラムラと情欲が湧き上がってしまう。西村の逞しい肉体で組み伏せられ、快感を味わったのなら、どれほど気持ちがよいだろうか。たとえその結果、射精して新谷になってしまったとしても──不意に、そんな妄想に耽りそうになってしまった。遠藤はゴクリと生唾を飲み込むと、口を開いた。
「いや……ちょっと最近、疲れが溜まっててさ」
「そっか。なあ、またそのうち、俺のアパートで飲み会しようぜ。この間、いいのを先輩から貰ってさ──」
「そうだな……んっ……た、楽しみだ」
西村と雑談しながら、遠藤は練習着を脱ぐ。自分の厚い胸板とバキバキに割れた腹筋があらわになり、うっとりとした気持ちになる。ツンと匂いが強くなった体臭を嗅ぐと、妙にチンポが疼くのを感じていた。
※
チケットを受け取ってから一ヶ月が経過した。その間も遠藤は禁欲を守り、一度も射精することはなかった。そのおかげで、遠藤の外見は大きく変わってはいない──ように見えた。
「おい遠藤、大丈夫か? 少し休んでいたらどうだ?」
「ふーっ……ふーっ……ふぅぅぅ……う、うす! 大丈夫っす!」
N大学のグラウンドでのラクロスの練習中、青山コーチから声を掛けられた遠藤。遠藤はチケットを受け取ってから一ヶ月間、全く射精せずに耐えてきたが、何もしなくとも時間経過でゆっくりと入れ替わりは進行している。外見はあまり変わっていないが、遠藤の内臓で入れ替わりが進行していた。そのため以前よりもスタミナが落ち、疲れやすい体になっている。遠藤は日々のトレーニングでどうにか維持しているが、かなりギリギリの状況ではあった。青山コーチは練習中に、盛大に息を切らせている遠藤を心配した様子だった。
「とりあえず、水分の補給はしっかりしとけよ」
「う……うっす!」
どうにか練習も終わり、部員たちは着替えてそれぞれ帰っていく。がらんとした無人の部室には遠藤一人きりになった。
「くっ、くせぇっ! ますますひどくなってんじゃねえか!」
遠藤はユニフォームをたくし上げて、脇の下の匂いを嗅いだ。ラクロス蒸れした、酸味のある新谷の体臭がガツンと鼻腔を刺激する。体臭の比率は逆転し、新谷8:遠藤2の割合になっていた。比率が増した新谷の体臭は酸味があるだけでなく、干し柿のような饐えた甘い匂いも含んでいた。元の遠藤の体臭は、その甘酸っぱく臭い体臭の後にわずかに香る程度である。遠藤はこの体臭をどうにかしようと、最近は銭湯に通ってサウナに入るようにしていたが……単にサウナを終えると、汗だくになった遠藤の屈強な肉体が、全身から甘酸っぱいデブ臭を放つようになるだけだった。そんな濃厚なデブ臭が、日焼けしたいかにもスポーツマン然とした遠藤の肉体から臭うのは、なんともミスマッチであり、他のサウナの客たちも怪訝そうな顔をしていた。
遠藤もこの体臭に嫌悪感を抱いていたが──しかし、遠藤のチンポは発情期の犬のように、反射的に勃起した。
「んくっ!……く、クソっ! こんな、臭えのにっ……!」
発情した犬のように、反射的にチンポが勃起する。遠藤自身は新谷になることに嫌悪感を感じているが、しかしいまや遠藤の肉体の細胞のひとつひとつが、新谷になりたがっていると言っても過言ではない。新谷に近づいた体臭を嗅ぐたびに、遠藤は頭で嫌悪感を感じているにもかかわらず、肉体は性的に興奮してしまう。遠藤の外見はチケットを受け取ってからほとんど変わっていないが、肌は常に脂ぎっているし、ニキビ面のままだ。遠藤自身は気づいていないが、ムダ毛をケアしようという意欲が最近落ちてきており、今の遠藤は鼻毛が伸びて眉毛も繋がっていた。遠藤本人は男前な顔つきをしているのに、どうにも雰囲気が不細工になりつつあった。
「っ……!」
遠藤は白と青を基調とした、半袖のユニフォームを胸までめくった。胸板が厚く、腹筋も割れた逞しい体躯──ではある。しかし、妙に乳輪がデカい。まるで太った男の乳輪のようであった。乳首も肥大している。さらに以前はなかった乳毛が、乳輪の周りに生えており、妙に汚らしい印象である。臍の下からはギャランドゥが生え、陰毛と繋がってしまっていた。
「しゃ、射精しなきゃ……大丈夫だよなっ……!」
鼻息を荒げながら、遠藤は指先で乳首をコリッと弄る。遠藤の厚い胸板についているデカめの乳輪も肥大化した乳首も、新谷と入れ替わったものだ。新谷が乳首オナニーで開発済みの乳首に、遠藤はすぐに夢中になった。射精さえしなければ問題ない──そう言い聞かせながら、部員たちがいなくなった無人の部室で、乳首オナニーに耽るのが日課になっていた。遠藤の下着の中では、新谷のチンカスがこびりついた遠藤のデカマラが、勃起してヒクヒクと痙攣していた。
「ンクッ! んんぅ〜〜〜〜っ!!!」
ビクンビクンと肩が痙攣し、遠藤は乳首だけでドライオーガズムに達した。あくまでも射精を伴わないオルガスムスであるため、入れ替わりは進行しない。しかし脂ぎったニキビ面で、眉毛も繋がり鼻の穴から鼻毛も出た顔で、全身から甘酸っぱいデブ臭を撒き散らして快楽に酔いしれる遠藤は、健全なスポーツマンとはほど遠い姿であった。それは鋭く美しい日本刀が、脂でべっとりと汚れて切れ味が鈍くなった姿に似ていた。
「はひっ……はひっ……んぅぅ……!」
ドライオーガズムの余韻に酔いしれながらも、遠藤はもどかしい情欲を抱えていた。射精していないため、体の芯に熱が残っている。全身から酸味と甘味が混じった、腐りかけの果実のような匂いを漂わせながら、遠藤は他人のロッカーに──西村のロッカーの扉を開けた。中には、大したものは入っていない……が、西村が持ち帰り忘れた着替えの袋がロッカーに残っていた。
「こっこれっ! に、西村の……だよな」
遠藤は脂ぎったニキビ面に好色そうな笑みを浮かべると、中からオレンジ色のボクサブリーフを取り出し、顔に押し付けた。濃い草いきれのような、若い男の体臭。男に欲情するようになった遠藤にとって、それは極上のおかずであった。
「はっあぁぁぁぁぁぁん……西村ぁ……」
もう我慢できなかった。遠藤はユニフォームである紺のハーフパンツを、下着ごと膝下までずり降ろした。反り返ったチンポが、ヒクヒクと切なげに痙攣する。この一ヶ月、うっかりオナってしまわないように、ずっと触れることを避けてきた。理性では触れてはいけないと思いつつも、寸止めすれば問題ないという欲望が、新谷の脳みその中で膨らんでいく。新谷のチンカスがたっぷりと付いた雁首を、緩やかに扱いた。
「あぁ……」
思わず、恍惚とした声が漏れた。これだ。ずっとこうしたかった。我慢汁で濡れた亀頭を、チンカスまみれの雁首を、ゆっくりと扱く。もっと、もっと扱きたい──
「んっ……んくっ……!」
ぐりんぐりんと睾丸が上下する感覚に我に返った遠藤が、チンポから手を離した。遠藤は気づいていないが、既に右の睾丸は新谷の睾丸と入れ替わっていた。睾丸の中では、遠藤と新谷の精子が、左右それぞれにたっぷりと詰まっているのである。
(ちょっとくらい穿いても……いいよな?)
遠藤は繋がった濃い眉毛を悩ましげに歪めると、逞しい両足を西村のボクサブリーフに通した。そうして派手なオレンジ色のボクサブリーフを穿きおえると、ゆっくりと生地の上からチンポを揉んだ。我慢汁でみるみるボクサブリーフの生地に染みが広がっていく。
「あぁ……いい……西村……!」
んっんっんっ……と切なげな息を漏らしながら、我慢汁でヌルつく生地の上から亀頭を愛撫する遠藤。媚薬代わりにスーッと自分の脇の匂いを嗅ぐ。ラクロス蒸れしたその甘酸っぱいデブ臭に顔に、チンポがいっそう固さを増し、亀頭がぶるりと震える。新谷健吾になりつつある体臭──それが遠藤の金玉に煮え立たせる。このまま西村のボクサーブリーフを穿いたまま射精して、新谷健吾になってしまったら……脇の匂いからそんな妄想をしてしまい、じゅるりと涎が垂れる。ついチンポを扱く手つきが早まる。止めようと思ったときには、既に遅かった。
「あ。だめだめ駄目だッ! ンあっ! あっ!」
引き際を間違えた。精管と尿道を、精液が駆け上がってくる感覚がある。まずい。射精してしまう。新谷になってしまう──
「んくっ! んあぁぁぁぁ〜〜〜〜っっ!!!」
遠藤は筋肉質な肉体をくねらせながら、オルガスムスに達した。
※
それはまるで、遠藤祐樹の全身の細胞が、新谷健吾になる喜びに打ち震えているかのようだった。
「ンお゛ッ! オォぉおぉ〜〜〜〜っっっ!!」
一ヶ月貯め込み続けた精液が次から次へと溢れ、西村のボクサブリーフを粘っこく汚していく。
射精と共に遠藤の大胸筋には、肥大した乳輪や乳首にふさわしい、でっぷりとした贅肉が付いていく。15%ほどだった体脂肪率が、1秒ごとに1%ずつ上がっていく。腹筋の割れ目が消えて、腹回りに贅肉が溢れ出す。引き締まった尻もみるからに重たそうなデブの尻へと変じていく。筋骨逞しい太腿も、みるみる肥え太っていく。
「オ゛ッ! 俺ッ! んくぅぅぅぅ〜〜〜〜っっ!!!」
精悍さのあった顔立ちも不細工になっていく。頬や顎にも贅肉が付いて、顔が丸みを帯びる。まるで顔合成アプリのように、遠藤の顔をベースにしつつ、新谷の顔の特徴が現れていく。遺伝子レベルで、新谷健吾へと近づいていく。顔の変化度合いは、おおよそ新谷6:遠藤4程度の割合だろうか。きれいな歯並びも、新谷の汚らしい乱杭歯になっていく。
「ンオ゛ッ……おぉ……」
長い射精がようやく終わり、射精の余韻に打ち震える遠藤。最初は遠藤と新谷のブレンドされた精液が出ていたが、射精が終わる頃には左側の睾丸も新谷の睾丸と入れ替わり、完全に新谷の精液を出すようになってしまった。チンポの太さは遠藤のデカマラのままだが、長さは亀頭ひとつ分ほど短くなっていた。
「あうっ! おっ、俺っ……」
すっかりデブった自分の胸板を押さえて、ゼイゼイと荒い息を吐く遠藤。口周りに違和感を覚えて、口を開けたり閉じたりすると、粘っこい唾液にまみれた乱杭歯が不快な音を立てる。まだ新谷ほど太ってはいないが、とてもラクロスには向かないデブになっていた。
「やっ……ああっ……!」
すっかり酸味を帯びた体臭を吸い込むと、射精したばかりのチンポがぴくりと反応するのを感じた。めくり上げたユニフォームの下から見える、肥えた胸板の肥大乳首を無意識に弄りそうになる。ラクロスのユニフォームは贅肉でパツパツになっており、なんとも不格好な姿であった。遠藤の深層心理に植え付けられた入れ替わりフェチが芽吹き、新谷の肥満体に近づいたことに、性的な興奮を覚えてしまう。今まで守ってきた筋肉質な肉体はもはや見る影もなく、そしてそれを悦ぶように心も変えられてしまった。
こうして、遠藤祐樹の堕落が確定した。
(続く)
──────────
コミッション第三弾の作品です。以前書いた肉体交換チケットの水泳部員の話で、新谷健吾の親友だった遠藤が今回の主役になっています。
https://kuro96neko05.fanbox.cc/posts/5375666
納品したバージョンだと堕ちた遠藤の姿と、他の部員たちにも異変が起き始めたラクロス部の光景を少しだけ描いて終わるのですが、FANBOX版では加筆と再構成をしたいと思い、前編と後編に分けることにしました。ラクロス部のパートを増量する予定です。青山コーチや西村くんがどうなってしまうのか……お楽しみに。
くろねこ@9605
2025-02-28 12:53:03 +0000 UTC黒竜Leo
2025-02-28 05:50:13 +0000 UTC