「なんでボディビル部が野球部の部室を使ってるんすか!?」
「全然納得出来ません!」
「待て待て、俺もいま聞いたばかりなんだ」
野球部主将である佐々木雄馬は、他の部員を伴って野球部顧問、原田哲史の元へ来ていた。30代前半で快活な男性教師である原田は、突然の騒動に困惑しつつ、ボディビル部の顧問を呼んだ。
「佐竹先生! 少しよろしいですか?」
「何かな? 原田先生」
佐竹大悟。ボディビル部の顧問である。50代前半でありながら、ボディビルで鍛えた屈強な体躯である。野球部の部室をボディビル部が突然占有したことを聞いても、佐竹はニヤついた表情を浮かべていた。
「あの、佐竹先生。勝手に部室を変えられては困ります。どういった事情なんですか?」
「いやぁ、スマンスマン。君たちの反応が見たくて、勿体を付けてしまった。だがまあ、これを見れば納得してもらえるはずだ」
佐竹が取り出したのは、野球部の部員の名簿だった。顧問である原田の名前も書いてある。
「見たまえ。これをこう……書き換えると……」
佐竹は手にしていたボールペンで、「野球部部員名簿」という書類のタイトルに二重線を引き「ボディビル部への転部希望者名簿」へと書き換えた。
「さて、原田先生、佐々木クン。何の話だったかな?」
「ええと……? これから元野球部一同、ボディビルのご指導をお願い……します……? ええ、そうです。ほら、お前たちも佐竹先生にご挨拶しろ」
首を傾げていた原田の表情が、徐々に自信に満ちていく。佐々木も坊主頭を下げて挨拶した。
「うす! ボディビル部への転部、認めて頂いてありがとうございます! これからよろしくお願いしますッ!」
野球部一同と野球部顧問の脳内からは、野球への情熱はきれいに消え去り、代わりにボディビルへの情熱が植え付けられたのだが──彼らがそれを不審に思うことはなかった
(終)
(何としても優勝して、恩赦による自由を勝ち取る……! ルモーデ王国の再興には、それしか道がない!)
剣闘士のウィリアムは、コロセウムで歓声を浴びながら、決意を新たにしていた。ルモーデ王国の王子であったウィリアムだが、バラゴ帝国による侵攻を受け、ルモーデ王国は滅亡。ウィリアムも捕らえられ、囚人としてコロセウムの剣闘士にさせられた。だが、数年に一度の大きな大会がちょうど巡ってきており、この大会の優勝者は恩赦を受け、囚人から解放されるのだという。ウィリアムの金髪と端正な顔は汗と垢で汚れていたが、剣の教練で鍛え抜いた精強な肉体と、王国再興を決意する凛々しい表情には、曇りひとつなかった。
──しかしそこで、剣闘士たちには内密に、帝国の魔導士が呪文を唱えた。ウィリアムを含め、500人近い剣闘士たちの外見が、チグハグに入れ替わる。観客たちはその様子を愉しみ、いっそうの歓声を上げた。
(ん? 何だ?)
ウィリアムの肉体は、オークと入れ替わった。肉体こそウィリアムを遥かに超える筋骨隆々だが、緑色の肌からは強烈な体臭が漂い、猪を醜くしたような愚鈍な顔には牙があり、睾丸は人間の3倍は大きかった。ウィリアムは愚鈍なオークの脳みそで、改めて王国の再興を誓った。
(お、オデ! 必ず王国を……再興するど! でもって、大勢のメスと、交尾……んひひ!)
「ぐひっ!」
ウィリアムの表情がデレっと緩んだ。情欲に満ちたオークの笑みが浮かぶ。後宮に美女を侍らせる妄想で、ウィリアムのオークチンポは勃起し、ブシュッと緑色の精液を散らした。他の囚人たちが、嫌そうな顔をしてウィリアムを見たが、ウィリアムは気にも留めなかった。
(オデの試合は……あのオークか!)
ウィリアムの最初の試合の相手は、入れ替わり相手のオークだった。ウィリアムは自分の肉体が敵だと認識できないまま、試合へと赴いて行った。
(終)
「RD値の低下はこの辺りか……?」
ヒーロー、スカイウィンドの正体である長瀬翔太郎は、凜々しい顔に怪訝そうな表情を浮かべた。「現実」の値であるRD値の低下。それを放置すれば、現実の崩壊を招きかねない。そのため、今日は私服姿で調査に出向いたのだが……
(どう見ても……ただの路地裏だ)
携帯端末が示した座標は、駅の繁華街の路地裏だった。時刻は夕方。そのとき、RD値の低下を告げるアラート音が携帯端末から鳴った。
(ん!?)
翔太郎は目を疑った。雑居ビルから出てきた30代のサラリーマンの姿が急にぼやけると、金髪で改造学ランを着た太ったヤンキーに変わっていた。男は訝しげな表情をしたが、首を傾げながらがに股で歩いていった。
「ギャハハハ!」
「やっべ! マジでウケる!」
二人の太ったヤンキーが爆笑していた。一人は金髪の坊主頭で、もう一人は金髪のパンチパーマだ。翔太郎は二人に話しかけた。
「なあ、君たち! いま、何を──」
「うおっ! バレた!?」
「俺、あと一回行けるわ」
パンチパーマの方が手をかざすと、翔太郎に異変が起きた。
ぼこっ
(ん? 腹の中に、何かが──)
パンチパーマの便が、翔太郎の腹部に瞬間移動したのだ。そして「その便を出すのにふさわしい肉体」へと、逆算する形で翔太郎の存在ごと改変する。
「はひっ!」
ぶるんっ!と翔太郎の顎に贅肉がついた。腹にはみっちりと。太股と尻にはでっぷりと。体型が目の前のデブヤンキーとそっくりになっていく。黒髪は金髪へ、髪型もパンチパーマへ。
「んあぁ……」
翔太郎のデブ顔が童顔になっていく。成人男性から男子高校生へ。目の前のデブヤンキーの後輩へ。ポロシャツとチノパンが、改造学ランへと変わった。翔太郎は我に返ると、目の前にいるデブヤンキーに頭を下げていた。
「うっす! 先輩方、お疲れっす!」
(終)
「松村課長、来週の会議で使う資料ができました。共有フォルダに入れてあります」
「ああ、三浦くんか。ありがとう。目を通しておくよ」
金曜日。俺と課長はごくありふれた会話をしていた。だが──1ヶ月前に起きた「異変」によって、俺と課長を含め、世界中の人間の姿が一変していた。
曜日ごとに、肉体や精神が様々に変化してしまうのだ。金曜日は「ラブドールの曜日」だ。男性も女性も全員──体がラブドールになってしまう。皮膚の材質はTPEという、ゴムのようなプラスチックで、骨格はアルミニウム合金製らしい。脳も心臓も筋肉もなく、どう考えても動けるはずがないのだが、動けるし喋れる……もっとも、元の自分の声をサンプリングしたような声が、内蔵されたスピーカーから出るだけなのだが。
けどまあ、他の曜日──全身が不定形のラバー状になる水曜日や、露出狂になる月曜日、色情狂になる土曜日に比べれば、まだ穏当な方だ。精神的な影響が少ないのは、肥満/筋肉質といった体型が逆転する火曜日と、性別が逆転する木曜日、何も起きない日曜日──といったところか。
松村課長も、ラブドールになっている。42歳で学生時代はラグビー部だった課長は、今も筋肉質な体型で、顔つきも精悍な男前だ。そんな課長の特徴を反映したラブドールになっている。課長のTPE製の柔らかな頭部には髪の毛や髭が植毛され、日焼け跡がプリントされた顔にはうっすらと笑みが浮かび、股間にはディルドが付いている。
「三浦くん……この後、時間あるかな?」
そわそわとした課長の声が、内蔵されたスピーカーから漏れた。ラブドールになった俺たちは、熱烈な「奉仕願望」を秘めている。誰かに性的に奉仕したい──だが、人類全員がラブドールになっているため、互いに奉仕し合っているのだ。
「ええ、大丈夫ですよ」
俺は自分の机に戻り、ローションを体内のタンクに補充した。
(終)
──────────
お題を元に800字で小説を書いていくチャレンジ。今回は、
①「野球部員」+「ボディビル部に強制転部」
②「コロセウムの囚人たち」+「外見だけの交換(自覚なし)」
③「デブヤンキー二人組と変身前の青年ヒーロー」+「糞便移植」
④「曜日」+「性質変化」
の4本でした。
個人的には④の「曜日」+「性質変化」が気に入っています。曜日ごとにどういう変化にしようかかなり悩んだのですが、ラブドール化は今まで書いたことがなかったので、メインに取り上げてみました。本人の声をサンプリングした電子音声で喋るのが、ラブドールっぽい挙動で、書いてて好きになった表現です。
800字小説のお題のリクエストは、基本的には「2つの単語」までOKです。具体的には「催◯」+「体育教師」などですね。ただ、入れ替わりや立場交換の場合は、単語2つだけだとリクエストの幅が狭くなってしまうので、交換したい組み合わせまで書いて大丈夫ですよ。例:「入れ替わり」+「水泳部と野球部」
簡易的なリクエストとして、思いついたものがあればコメントしてみてください。リクエストしたいお題は、今まで通り800字小説のコメント欄にどうぞ。
それと、どんなリクエストしたのか他の人に知られたくないときは、どうしたらいいですか?という問い合わせも頂きました。その場合は、TwitterのDMやpixivのメッセージでリクエストを下さい。それ以外の通常のリクエストは、今まで通り800字小説のコメント欄にコメントを下さい。
※リクエストする際のお題を「2つの単語」に絞っているのは、複雑な内容を文章でリクエストされても、800字という文字数では対応できないためです。ご了承下さい。
くろねこ@9605
2024-08-11 09:54:51 +0000 UTCブウ
2024-08-11 08:36:42 +0000 UTCくろねこ@9605
2024-08-03 08:00:26 +0000 UTCのすけ
2024-08-01 15:02:53 +0000 UTCくろねこ@9605
2024-08-01 13:15:52 +0000 UTCくろねこ@9605
2024-08-01 13:14:18 +0000 UTCくろねこ@9605
2024-08-01 13:10:52 +0000 UTCタカムラ
2024-08-01 02:08:46 +0000 UTCスキマチオ
2024-07-31 16:09:20 +0000 UTC黒竜Leo
2024-07-31 15:18:27 +0000 UTC