「そう。肩に力を入れないようにして……膝は前に出ないように。呼吸は止めずに、そのままバーベルを持ち上げて」
「フーッ……フンッ……フぅゥッ……!」
今日は大学のラグビー部の練習もないため、ジムに来ている。俺はパーソナルトレーナーの西浦さんの指示に従って、体幹のトレーニングを行っていた。
「いいね。デッドリフトはだいぶフォームが難しいんだけど、さすが桐谷くんだ」
「……っふぅ。ありがとうございます」
バーベルを置いた俺は、額の汗をタオルで拭った。俺は桐谷健児。N大学4年生で、ラグビー部の主将でもある。ポジションはナンバーエイト。司令塔でもあり、パワーとスピード両方が求められる。その辺りを考慮したボディメイクをする上で、うちの大学のラグビー部のOBでもある西浦さんがこのジムにいるのは、俺にとってありがたかった。
「……大きな声じゃ言えないんだけどね」
西浦さんがバーベルの汗をタオルで拭きながら、俺に視線を合わせずに言った。
「実は僕、退職しようかと思ってて」
「え、マジすか」
俺も声を抑えたが、動揺は隠せなかった。怪我でラグビーのプロ選手を諦めてトレーナーになった西浦さんは、トレーニングだけでなく体のケアについても知識の造形が深い。そんな人が身近なジムからいなくなるのは、俺にとって大きな痛手だった。だが、西浦さんはひそひそ声で続けた。
「新しいジムから引き抜きの話が来てるんだよ。給料もいいし設備も最新鋭だし……これ、内緒ね」
「そ、そうなんすか……」
「で、これもさらに内緒の話なんだけど……桐谷くんもどう? 新しいジムに移らない? いや、お客さんも引き抜くのって、事前にバレるとかなりマズいからさ。信頼できる人にしかまだ話してないんだけど」
「うーん、そうっすね……」
「とりあえず、僕の連絡先渡しておくから。詳しい話はまた後で」
西浦さんは俺の手にメモ紙を握り込ませた。
※
「や、お待たせ。桐谷くん」
「うっす。なんか変な感じっすね。ジムの外で会うのって」
それから数日後。俺は西浦さんに大学まで車で迎えに来てもらって、助手席に乗り込んだ。俺は練習着から着替えたばかりの自分の体の匂いを嗅いだ。今日は午後の練習後にシャワーを浴びれなかったので、ムッと男臭い匂いが鼻孔を突いた。
「すみません。今日業者がシャワー室のメンテに来てて、シャワー使えなくて……汗臭いっすよね?」
「いやあ、僕も元ラガーマンだし、そう気にならないよ。男同士なんだし、気を遣わなくていいよ」
西浦さんはそう言って俺に笑顔を向けると、車を発進させた。俺は西浦さんと話しながら、ときおり西浦さんを盗み見た。西浦航平。年齢は確か25歳ぐらい。現役から退いているとはいえ、プロのラガーマンを目指していた肉体は、腕も足も太く、胸板も厚い。体つきは男臭いラガーマンなのに、サイドを刈り上げた金髪のパーマと甘めのマスクは色気があって、女の子にモテそうだ。そんな顔と体にギャップのある西浦さんと……
──西浦さんと、ヤりたい。
(なっ、何を考えてるんだ?! 俺は……)
俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。俺はゲイではない……はずだ。普段のオナニーで見るのも女の子の動画だし。男相手に勃起したことなど、今までなかった。だけどなぜか先月くらいから、ジムで西浦さんの指導を受けるたびに、チンポが勃起してしまって隠すのに苦労していた。西浦さんのゴツい手が、俺の体に触れて筋肉の付き具合を確かめるたびに──俺は内心「もっと撫でてくれ。もっと俺の体を愛撫して、ムチャクチャにしてくれ」と言いそうになる自分を抑えていた。
(なんつうか、西浦さんに対して恋愛感情はない──んだよな。ただ単に「ヤりたい」っつうか……)
俺は西浦さんの体臭が染み込んだ車の中で、次第に自分の体が性的に興奮しつつあるのを自覚しながら、そう自分を分析していた。そう。ヤりたいのだ。西浦さんとセックスしたい。獣のように交尾して、互いのチンポをしゃぶりあって──
「あ、もうそろそろだね。次の交差点を曲がった先だよ」
俺と西浦さんは、そのジムへ到着した。
※
「へー、さすが出来立てで綺麗っすね」
郊外にある運動公園の傍という、絶妙な立地のジムだった。ここなら、スポーツや体を鍛えることに関心がある人が自然と集まるだろう。正式なオープン前ということで、準備中のスタッフは数人居るものの、まだ利用者はおらずガランとしている。俺と西浦さんはロビーで入館証を貰うと、西浦さんの案内で中を歩き始めた。
「僕は前にも来たことがあってね。まだ準備中でスタッフの人数が足りないから、今日は僕が案内するよ。最新のスポーツ科学を元にしているから、希望者は遺伝子検査の結果を元に、自分に合ったボディメイクのプランを立てることができて……」
「へえ……おっ、カフェテリアもあるんすね」
「ここも最新の栄養学を元に献立が考えられていてね。別料金になるけど、パッケージングした料理を自宅へ配送してくれるプランもあって……」
俺はジムの設備とサービスに感心しつつ、西浦さんと一緒に、まず一階のカフェテリアやプールから見学した。基本プランは前のジムより高いが、西浦さんがいることを考慮すれば、かなり「あり」なジムだと思う。他のオプションサービスをどうするかは、おいおい考えよう……俺の心は、内心このジムに通う方向で決まりつつあった。西浦さんは「二階にあるトレーニングルームに行く前に、ぜひ見て欲しい場所がある」と言って、俺を一階の奥の部屋に案内した。中には、卵のような楕円形をした、透明なカプセルが立ち並んでいた。
「なんすか? ここ」
「酸素カプセルだよ。実はもう使えるようになっていてね。特別に体験してもらってもいいって、許可を得てあるんだ。前に興味あるって言ってたよね?」
「え! まじっすか。やってみたいっす! あ、でも俺、今日汗臭いし、そういう状態で入るのは……」
「その辺は気にしなくていいから。僕も試したんだけど、本当に『生まれ変わる』ようにスッキリするよ。ぜひやってみて欲しいんだ」
「うーん……西浦さんがそこまで言ってくれるなら……やってみたいっす」
「それじゃ、決まりだね。いま準備するから、こっちで着替えてね」
※
「えっ、その……酸素カプセルって、こんな格好で入るんすか?」
俺はボクサーブリーフ一枚の格好で酸素カプセルの前に立っていた。西浦さんはラグビーで鍛えた俺の体を。じろじろと上から下まで眺めながら口を開いた。
「普通の酸素カプセルは着衣のままだけど、このカプセルは特別製でね。筋肉量や代謝量などの、生体データも測定できるんだ。オープン後は水着で入って貰う予定だけど、とりあえず今日は下着だけで入って欲しい」
「そ、そういうことなら……仕方ないっすね」
俺は西浦さんの視線が自分の体に注がれているのを感じ、ムクムクと勃ち始めたチンポを隠すためにカプセルの方を向きながら答えた。西浦さんは感心したような声を出した。
「しかし、本当に桐谷くんは鍛えてあるね。太すぎず細すぎず、パワーとスピードを兼ね備えた、ナンバーエイトとして理想的な体型じゃないか。流石はN大ラグビー部の主将だ」
「あざっす……んあっ! ど、どこ揉んでんすか!?」
西浦さんの手が、俺の角張った尻を揉んだ。驚いた俺に対して、西浦さんは事もなげに言った。
「桐谷くんの担当トレーナーとして、カプセルに入る前と後の筋肉の緊張具合は、ぜひチェックしておきたくてね。こっちも失礼するよ」
「あっ、やっ……」
西浦さんが背後から俺に密着すると、俺の厚い胸板を両手でぐっと揉んできた。無遠慮に男の胸板を揉みつつ、しかし人差し指で乳首をコリッと愛撫してくる。
(んあっ! な、なんだよ西浦さん……これ完全に、エロい感じの触り方だろ!)
俺はビクン! と肩を震わせつつ、喘ぎそうになるのを抑えていた。必要以上に密着してくる西浦さん。俺の尻には、明らかに固くなった西浦さんのモノが当たっている。西浦さんの手は大胸筋から腰回りへ、太腿へと降りてくる。しかしビンビンに勃起して、ボクサーブリーフに我慢汁の染みまで作っている俺の股間には一切触らずに、手を離した。
「うん。だいたいわかった。ありがとう」
西浦さんは何事もなかったかのように俺から離れた。振り返ると、しっかりと西浦さんの股間も──今日はトレーナーとしての格好ではなく、私服のチノパンなのだが──明らかに勃起していた。
(い、今のなんだったんだ!? 西浦さんって、俺のこと、そういう目で……見てたってことなのか!?)
慣れ親しんだトレーナーから性的に体を触られた、というのは普通ならショックを受けるものだが、俺自身、西浦さんとヤりたいという思いがここ最近募っていたこともあって、むしろ歓びさえ感じていた。今も興奮して、オレンジ色のボクサーブリーフを突き上げる俺のチンポを、今更ながら手で隠した。
「それじゃ、カプセルに入って貰えるかな」
「……うっす。あっ、すげえ……」
カプセルの中は低反発のクッションのような材質で、体が沈み込むようだった。俺がカプセルに入って寝そべると、上から蓋が降りてきて閉まった。透明だったカプセルがシュッと半透明に曇る。外から見えないようにという配慮だろう。曇ってはいるが、ぼんやりと内側が光っていて、真っ暗ではなかった。
──桐谷くん。聞こえるかい?
中にあるスピーカーから、西浦さんの声がした。外と会話できるようだ。
「聞こえます。すごいっすね。SF映画みたいだ」
──今から映像や音楽が流れるからね。君はそのまま寝ていてくれればいいよ。
「うす」
──それじゃ、立派な戦闘員になってね。これからは一緒に地球侵略、頑張ろう!
「うっす……は?」
カプセルの蓋の内側に、極彩色の光の渦が流れ始めた。
※
無機質な機械音声が、淡々と何をするのかを告げていった。
──適性検査開始…………A+。改造可能。
──これより第3世代戦闘員への改造シークエンスを開始します。
──人格バックアップ開始。第3世代戦闘員への改造後も、模擬人格として使用可能です。
「なんっ……ア゛!? これっ……!!!」
極彩色の渦が視界全てを包み込む。目を閉じようとしても、自分の意志では閉じられなかった。頭の中を覗かれるような不快感。それでいて、見られることへの興奮。真逆の感情に、俺のチンポが痛いほどに勃起する。
──72……86……98……100%。人格バックアップ完了。
──第3世代戦闘員人格、インストール開始。
「お゛っ! お゛ア゛っ!! ン゛おッ!!!」
ビクンビクン! と俺の体が、陸に上がった魚のように仰け反る。しかし包み込むようなクッションに、すぐに体が沈み込む。俺の頭の中に、何かが注ぎ込まれている。ひどくいやらしく、粘っこく、それでいて魅力的な何かが──俺を変えてしまう。
──第3世代戦闘員への肉体改造を、並行して開始。
──ナノマシン注入。汗腺・及び唾液腺の改造開始。男性を魅了し、性欲を増進させる特殊なフェロモンを分泌させます。また、第3世代戦闘員タイツの精製が可能なように、汗腺を改造します。
俺の首筋に何かがチクリと刺さった。その途端、全身が熱く火照り、汗が噴き出す。
(……ッ! こ、このエロい匂い……)
嗅ぎ慣れているはずの自分の体臭が、妙にエロいものに感じ始めた。まるで……西浦さんの体臭を嗅いだときのような。口の中の唾液さえも、なんだか官能的に思えてきてしまう。無意識に口の中で舌を動かしてしまう。俺は溜まっていく自分の唾液に興奮し始めた。
──ACTN3遺伝子を改良。メンテナンス不要で、逞しい肉体を維持できるよう、筋肥大効率を最適化します。
──神経伝達速度の向上。インストール中の戦闘員人格・近接格闘パッケージと連動。戦闘員としての基礎戦闘力の定着を確認。
「ウオ゛ッ! ウオ゛ッ!!」
俺は獣のように雄叫びを上げながら、自分が作り変えられていく恐怖と歓びを味わっていた。騎乗位で犯されるときのように、無意識に腰を突き上げてしまう。頭の中へと展開していく知識。地球侵略を目論む組織……組織名は【閲覧制限あり。閲覧には戦闘員クリアランス3以上が必要です】……快楽による全世界の支配を望むそれは、宇宙から飛来した■■■■を母体とし、今まさに世界を侵略しつつある。
──睾丸の改造開始。精子に擬態した「洗脳特化型ナノマシン」を生産可能とする生体兵器として、睾丸を改造します。
頭の中に悶える俺の前に、どこからともなく金属製のアームが出てきて、暴れる俺の足から器用に下着を脱がしていった。俺の金玉を何かが包み込む。ぺたりとした感触とともに、微細な痛みが──表面が産毛のようになった何かが、俺の金玉を包み込んだ。
「い゛ッ……! ン゛あッ!!」
金玉が煮えたぎりそうだ! 強烈な射精衝動が俺の脳みそを染め上げる。俺が涎を垂らしながら情欲に身悶えしていると、スピーカーから聞き慣れた声が聞こえた。
──やあ、桐谷くん。改造は順調のようだね。
「に゛ッ……西浦さんッ……なんでッ……!?」
──いやだなあ。桐谷くん。まだわからないのかい?
──西浦航平は仮の姿さ。僕はもう一ヶ月前に「組織」の忠実な戦闘員に転向しているんだからね。
「視覚情報による情報素子の注入完了。脳内で解凍中」と蓋の内側に表示され、極彩色の渦が消える。濁っていた蓋が透明になり、外の景色が見えるようになった。すると西浦さんがいた場所に、全身タイツを着た男が立っていた。淫水焼けした亀頭のような色をした、濁った赤紫色で、てらてらと光沢のある全身タイツ──それはその男の逞しい筋肉や、勃起したチンポの輪郭まであらわにしていて、卑猥極まりなかった。
「な゛ッ……なんすか……それッ!?」
──イ゛ッ! 私は組織の忠実なる戦闘員! γ-026。最新鋭の第3世代戦闘員であるッ! イ゛ーッ!
西浦さんの声で、西浦さんの体で、西浦さんではない何かが、興奮した様子で右手を上げていた。熱に浮かされたように、知らないはずの知識が俺の脳内で羽化する。
(第3世代っつったら、睾丸でナノマシンを精製して戦闘員を殖やせる最新型じゃねえか! 洗脳されても肉体的には人間のままの第2世代と違って、地球侵略用の生体兵器としてより洗練されたデザイン! くう〜ッ! カッコイイじゃねえかッ! ん? んあっ!? なんで俺ッ、あれをカッコイイなんて……)
そして、俺が改造されつつあるのも第3世代戦闘員だということも理解していた。俺の胸板の奥で、誇らしさと嬉しさが湧き上がる。最新型の戦闘員に改造して頂ける歓び。俺自身の価値観が変質しつつあるという証明。俺はかろうじて残った理性で、先月まで西浦さんだったそいつに対して言葉を発した。
「やめてくれッ……西浦さん! 俺は戦闘員になんか……なりたくねえッ!!」
──イッ! 組織の決定は絶対であるッ! 貴様は私と同じく第3世代戦闘員として転向し、まずはラグビー部全員を戦闘員として改造する。それが貴様の第一の任務である!
「そっ……そんなことッ……したくねえッ!」
ドクンドクンとまるで心臓のように激しく脈動する金玉。俺は膨れ上がっていく射精衝動と快感を堪えながら、必死に抵抗した。あまりの快感でうまく力が入らない。だが、このカプセルを壊して外に出れば──俺は喘ぎながら両腕を持ち上げ、拳で内側からカプセルを殴りつけた。
──警告。被検体の抵抗あり。戦闘員人格のインストール63%で停止中。
(こんな所で……戦闘員なんて、わけわかんねえものになって……たまるものかッ!)
俺には夢がある。実業団のラグビーチームがある会社に就職し、社会人のラグビーリーグでもチームを優勝に導く。小学生の頃からの夢を、変態みてえな悪の組織に潰されて……たまるものか!!! それに、俺の大切な仲間たちを……あんな変態戦闘員にはさせねえ!! 絶対に!!!
──概念置換を実施…………完了。
(こんな所で……【ラガーマン】なんて【くだらねえ】ものになって……たまるものかッ!)
俺には夢がある。【世界征服を企む悪の組織】に就職し【地球侵略の尖兵として組織に貢献する】。小学生の頃からの夢を【汗臭くて脳筋なラガーマンども】に潰されて……たまるものか!!! お前らは【俺の手で組織の戦闘員に洗脳してみせる】!! 絶対に!!!
「あひ? うひひっ!」
俺の表情筋が緩んだ。なんだか楽しくて、笑顔になってしまう。間違えた。そんな気がした。何を間違えたのか、もうわかんねえけど。アハハ。もう終わりだ終わり。あー、なんかもう、どうでもいいや。【ラグビー】なんて【くだらない】スポーツやってたのも【汗臭くて脳筋なラガーマン】がエロいから、アイツらの体目当てだったんだし。ウヒヒ。あーやっべ、早くあいつらも戦闘員にしてえ。
──心理制圧完了。被検体、戦闘員人格を受容。インストール率85%……92%……100%。
──戦闘員人格のインストール完了。"宣誓"後に再起動します。
プシュッ、と音を立てて、カプセルの蓋が開いた。俺はチンポをビンビンに勃たせたまま立ち上がり、カプセルの外に出た。さっきまで「西脇さん」だと思っていた戦闘員が──γ-026が腕組みをして俺を待ち受けていた。
「イッ! 素体名、桐谷健児! 状況を報告しろ!」
「ウッス! 桐谷健児、洗脳、肉体改造ともに、進捗100%っす! 後は"宣誓"して、肉体の主導権を『桐谷健児』から、戦闘員人格『γ-027』に移譲すれば、第3世代戦闘員として完成っす! 宣誓許可、おなしゃすッ!」
「イッ! 宣誓を許可する! 桐谷健児! 『組織』への忠誠を宣誓せよ!!」
「ウッス!!!」
試合のときのように、腹の底から声が出た。嬉しくてたまらない。これから俺は、もう俺じゃなくなるんだ。肉体も人格も、人権も放棄する。そして組織に所有される、人間型の生体兵器──第3世代戦闘員として、地球侵略のお役に立てるんだ。そう考えるだけで、笑顔が溢れてくる。俺の両目から、熱い涙がつうっと流れるのを感じた。あり? 嬉し泣きしちまったか? 止めようと思っても、次から次に涙が溢れてきて、思わず肩を震わせて泣いてしまった。ったく、これだから人間はダメなんだっつーの。兵器なんだから余計な感情なんざいらねえだろ! さっさと人間辞めるか! 俺は涙と鼻水を垂れ流した泣き笑いの顔のまま、右手を前に出した。
「俺ッ、桐谷健児は……ただいまをもって『桐谷健児』の全てを放棄します!! 組織に忠実な戦闘員へと転向し、永遠の忠誠と、地球侵略に全力を尽くすことを、ここに──」
あっ、来ちまう。俺の睾丸が──グリグリと動く。古い精子を全て排出して、人間を戦闘員へと改造するナノマシンの精製を始めるために。マジで俺、戦闘員になっちまう。うっ、嬉しいッ! 嬉しいッ!! 嬉しいッ!!! 俺の両目からどんどん涙が溢れてくる。嬉し泣きしすぎだろ、俺。尊敬するγ-026が見てる前で、恥ずかしいっつーの。
大きく息を吸う一瞬の間に、俺の脳裏に今までの人生が走馬灯のように流れた。家族、友人、チームメイト……チームメイト? ラグビーなんて【くだらないスポーツ】のはずなのに、なんで俺、あいつらのことを……ん? いや、俺にとって、ラグビーって、もっと、たっ……た? たた、大切? そうだ。大切な──
「宣ッ! 誓ィィ!! します!!!!」
んイ゛ッ? 俺の口角の表情筋が、釣り上がった。笑顔。快感。幸福。絶頂。痙攣しながら、連続したオルガスムスに達し続ける。『桐谷健児』が反転する。『桐谷健児』はこの肉体の主人格ではなく、擬態用の模擬人格である。この肉体の持ち主は、戦闘員人格である「γ-027」であると──そう再定義された。されてしまった。
改造された全身の汗腺から、戦闘員タイツが精製され、俺の全身を滑らかに包み込んでいく。瞬く間に俺は、目鼻口以外、卑猥な光沢の全身タイツに包まれた筋骨逞しい戦闘員へと、変貌を遂げた。
「イ゛ーッ!!」
痙攣が止まった。目の前のγ-026が言葉を発した。
「イッ! 桐谷健児! 状況を報告せよ!」
私は言葉を発した。
「イッ! 私は『桐谷健児』を素体とした第3世代戦闘員『γ-027』へと只今を持って転向いたしました! γ-026、指示をお願いします!!」
「イッ! 改めて貴様への指示を伝える! N大ラグビー部を洗脳し、組織の手中に収めよ!」
「イ゛ーッ! 了解いたしましたッ!!」
戦闘員人格γ-027である「私」は、桐谷健児がラグビーで鍛えた肉体を、戦闘員タイツに包み込んだ姿で勃起したまま、敬礼した。
※
「うーっす」
「お疲れー」
数日後「俺」はN大ラグビー部の練習を終えて、タオルで汗を拭いていた。
(つうか『桐谷健児』としての擬態、こんな感じでいいんだよな?)
俺は周囲の様子を窺いながらラグシャツを脱ぐと、日焼けした太い首を、分厚い胸板の谷間の汗を、脇毛が黒々と茂る脇を拭っていった。ムワッとした男臭い体臭が辺りに広がる。男を魅了するだけでなく、性欲も増進させるフェロモンを含んだそれに、周囲のラガーマンたちが生理的に反応してしまい、股間が固くなって戸惑う様子が目の隅に映った。
(うーん……なんか妙な感じなんだよな。この間まで「俺」がこの体の持ち主だったのに、今は戦闘員人格である「γ-027」が主導権を握ってるってのが)
γ-026……西脇さんからは、最初のうちは擬態用の模擬人格と戦闘員人格のギャップに、違和感を覚えるかもしれないとは聞いていた。『桐谷健児』の人格は洗脳前の時点でバックアップを取ってあるので、やろうと思えば「組織」のことを何も知らない『桐谷健児』として振る舞うことも可能ではある。ただ、そうすると戦闘員としての活動に支障が出てしまうため、普段は模擬人格である『桐谷健児』を70%で出力し、残りの30%を戦闘員人格「γ-027」として出力していた。
(つうか『桐谷健児』の模擬人格、割と使いづらいんだよな。ラグビーとか仲間への愛情が強すぎて、そのままだと組織に抵抗しようとするし)
戦闘員へ改造された後、模擬人格の出力を西浦さんと調整したのだが、ラグビーを無価値とした概念置換をしていない状態で『桐谷健児』の人格を出力すると「俺はお前たちには屈しない!」「仲間には手を出させない!」と鏡の前で『俺』を睨みながら喚き出してしまい、自分の模擬人格ながらウザいことこの上なかった。今となっては『桐谷健児』は、戦闘員であるγ-027が脳内でシミュレートしているだけの、仮想人格のくせに。仕方ないので、ラグビーを無価値とした概念置換を行った状態で模擬人格を再起動。かつ、洗脳の自覚がある状態で出力している。人格の掌握は問題なくなったものの、代わりにラグビーに全く興味が持てず、どうでもいい玉遊びの練習をするのが退屈で退屈で仕方がなかった。そんな状態で熱血主将を演じないといけないのだから、なかなかつらいものがあった。
(ま、全ては組織のためだし、こんくらいなら屁でもねえんだけどな。それに、模擬人格の『桐谷健児』を完全に堕とすのも、時間の問題だし)
戦闘員は射精する度に、組織への忠誠心と多幸感が高まる──組織への反抗心を抱いたまま洗脳され、無意識下でそれが燻っている人間も、射精の度に甘い蜜のように忠誠心と多幸感が溢れ出し、反抗心を融かしていく。事実、『桐谷健児』の模擬人格にもその兆候は見られており、射精の度にじわじわと組織への忠誠心が芽生え、戦闘員となったことへの多幸感を味わい始めていた。俺の見立てではあと一週間程度で、概念置換を解除したとしても、嬉々として仲間を洗脳するようになるはずだ。
俺は逞しい体を見せつけるようにゆっくりと着替えた。俺のフェロモンに当てられた部員たちが、とろんとした目で俺の姿を追っている。俺の体臭を嗅げば嗅ぐほど、俺への性的興奮と好意が刷り込まれ、俺に魅了されていく。こいつらも早く戦闘員にしたいところだが、今は優先する対象がいた。
「おう、桐谷。監督が呼んでたぜ」
俺と同じ4年生の、池内克憲が声を掛けてきた。ポジションはプロップで、重量級でガッチリとした体格の奴だ。コイツも俺のフェロモンに当てられており、雄臭く女にモテなさそうな顔が、妙に熱っぽい目つきになっていた。
「ん……桐谷、最近のお前さ……なんかこう……」
「なんだよ」
「……エロくね?」
顎髭を生やした池内の厳つい顔が、ハアハアと発情した犬のようになっていた。コイツと『桐谷健児』は親友だ。お前も近いうちに戦闘員へ転向させてやるよ。俺は『桐谷健児』としてケラケラと笑いながら池内の肩を叩いた。
「お前、ちゃんと抜いてるのか? 俺にムラついてもしょうがねえだろ」
「あー……悪い。なんか最近溜まっててさ」
「ハハッ……そんじゃ、監督のところ行ってくるわ」
※
「桐谷……お前には非常に言いづらいんだが──」
N大学体育学部・スポーツ科学科の教授であり、ラグビー部監督の河田俊幸が、そわそわしながら口を開いた。河田監督は、学生時代に全国優勝を果たしたチームの元ラガーマンであり、35歳の今も逞しい体格を保っている。口髭と顎髭を生やした精悍な顔が、俺のフェロモンに当てられてやや紅潮していた。俺は体育学部の監督の部屋で、ストライプ柄のスーツ姿で椅子に座った監督の前に立っていた。
「ラグビー部はここ数日、風紀が乱れ始めている……俺にはそう見える。お前から見てどうだ?」
「そうですか? 特にそうは思いませんが……」
俺はとぼけた返事をした。まあ、男を魅了した上に、性欲を増進させるフェロモンを垂れ流しているから当然だ。俺の裸体を見る目線は日ごとに熱を増しているし、着替えのときにムラついて、互いの股間をふざけて揉む奴も出始めた。熱血主将であるはずの『桐谷健児』に魅了されたホモの集団に、N大ラグビー部は変貌しつつある。
もちろんその対象には、河田監督も含まれていた。河田監督は生唾を飲み込んで、練習後に私服のポロシャツとハーフパンツに着替えた、汗臭い俺の体のラインを──分厚い胸板や、ガッチリした腰回り、太い腕や足を──見るまいと抵抗するように視線を揺らしながら、しかしチラチラと盗み見ていた。監督は白々しく俺から視線を逸らしながら続けた。
「あー……俺が言いたいのはだな、お前の格好が……いや、格好というか、その……雰囲気が妙に……」
試合のときは即断即決で頼もしい河田監督の言葉は、今は歯切れが悪かった。監督も俺が原因であるということには気づいている。だが、俺自身は特に破廉恥な格好をしているわけではない。「なんだかわからんがお前がエロいのが悪い。エロいのをやめろ」という理不尽なことを、表立って言うのが憚られているのだろう。俺は監督を安心させるために口を開いた。
「あ、やっぱりわかりました? 俺、最近メンズエステに通い始めたんですよ。これから就活もあるし、本格的に身だしなみ整えようと思って。そうしたら、部員からもなんか妙な目で見られるようになってきて……ほら、体育会系って、割と男同士の距離感近いとこ、あるじゃないですか」
「あ、ああ! そうだったのか。確かに最近の桐谷は……俺から見てもこう……あくまでも人間としてだが……魅力的だな。うん」
監督は言いづらいことを俺から言ったことに安心したのか、笑みを見せた。俺は意識して、生体兵器として改造された自分の汗腺の出力を──男を魅了し、性欲を増進させるフェロモンの濃度を上げた。途端に、監督の男らしい眉根が歪む。精悍な瞳にとろんとした光が入り込み始めた。
「んっ……しかし、それにしても……」
「嬉しいっす。監督も俺のこと、魅力的って言ってくれて」
俺はデスクを挟んで椅子に座っている監督の側に回り込むと、ポロシャツを脱いだ。より一層、男の濃い汗臭さが──男を魅了し、性欲を増進させるフェロモンを多量に含んだ化学物質が、監督の脳を雄として発情させる。河田監督は肩で息をして、発情する自分に戸惑いながら俺を見上げた。
「き、桐谷……お前……」
「……俺も監督が好きっす」
俺は椅子に座っている河田監督に跨るように座ると、監督に汗臭い体を近づけた。監督が泣きそうな顔で懇願した。
「やめろ……やめてくれ、桐谷。俺を誘惑しないでくれ。俺には、妻も娘も……」
「いいじゃないっすか。男同士なんだし。気持ちよくなりましょうよ」
「し、しかしっ……ンッ!」
俺が監督を唇を重ね、舌をねじり込むと、河田監督は抵抗するように体全体をビクリと震えさせた。監督の舌をツンツンと口腔内でつつき、媚薬に近い成分となった唾液を口腔内に送り込む。監督は体を緊張させて、しばらくそれに耐えていた。だがやがて監督は、観念したかのように肩の力を抜くと、ストライプ柄のスーツを着た太い腕でガッシリと俺を抱きしめた。練習後の汗臭いラガーマンの体臭が、スーツに付くのにも構うことなく。鼻息が荒くなった監督が、積極的に俺に舌を絡ませてくる。監督の口髭と顎髭がジョリジョリと俺の肌と擦れて音を立てた。唇を離すと、監督は酔ったように顔を赤らめ、恍惚とした様子で呟いた。
「あぁ……いい……なんで今まで気づかなかったんだ。こんなにも……エロい主将なら、風紀が乱れるのは当然じゃないか……」
「そっすよ。なので、問題ないっすよね」
「もちろんだ。ンッ……桐谷……」
すっかり俺に骨抜きにされた監督を、部屋にある応接用のソファに導いた。ついでに部屋に鍵を掛ける。ノンケで既婚者だったはずの監督は、すっかり俺のフェロモンに骨抜きにされ、興奮した様子で、上半身裸になった汗臭い俺の体臭を嗅いでいた。
「ハッ……ハあッ……ハぁッ……いいッ……この匂い……たまらん」
「ちょうど今日の練習着あるんで、どうぞ」
「んひぃッ! か、貸してくれッ!」
監督は、俺がバッグから取り出した汗でぐっしょりと湿ったラグシャツを奪うように手に取ると、自分のスーツが汗臭くなるのにも構うことなく、夢中になって顔に押し当てて吸い始めた。監督のチンポはスラックスの中でギンギンに勃起し、窮屈そうに生地を伸ばしている。俺は監督の靴を脱がせ、さらにスラックスと下着を脱がせると、ポケットから黒いコンドームを取り出した。
「監督、ゴム付けますね」
河田監督は俺の汗臭いラグシャツに夢中になったまま、ワンテンポ遅れて頷いた。コンドームのパッケージを破いて、中身を太短い河田監督のチンポに被せていく──正確には「コンドーム偽装型・戦闘員タイツ」を。
「ウオッ!?……!!!?」
戦闘員タイツは、一瞬で河田監督の全身をいやらしく包み込んだ。河田監督は、まだ上半身にストライプ柄のスーツとワイシャツを着て、下半身は靴下以外露出した状態だったのだが──「組織」のテクノロジーによって、黒く光沢のある全身タイツが、スーツの下から皮膚のみを包み込んでいた。スーツだけでなく、左腕につけた腕時計や結婚指輪もタイツは避けて、監督の素肌だけを包み込んでいる。まるでラバースーツモノのAVのようだ。その黒い全身タイツは、俺の旧型にあたる第2世代戦闘員タイツであった。補足すると、呼吸のため鼻孔のみ包まれていない状態だ。
──僕や君のような第3世代戦闘員は、適性による向き不向きがあってね。全員が改造可能なわけではない。
γ-026。素体名「西浦航平」の戦闘員の言葉を思い出す。
──組織としては、まず量産可能な第2世代の数を揃えたい。そのために、最新鋭の第3世代戦闘員は、人の多いコミュニティに送り込んで、そいつを中心として第2世代戦闘員への洗脳を進めたい。それがγ-027、お前というわけだ。
洗脳に加えて、肉体も改造され、地球侵略用の生体兵器として洗練された第3世代と違って、第2世代の戦闘員は洗脳のみで、肉体は人間のままだ。ただその分、洗脳に関するコストは第2世代よりも圧倒的に安価だ。俺や「西浦さん」の睾丸から精製するナノマシンによる洗脳も、相手を第2世代戦闘員に変えるものだった。
「……!?……!!!?」
第2世代戦闘員のタイツに包まれた河田監督は、応接用のソファの上で、微かに両手両足を痙攣させていた。この第2世代戦闘員タイツそのものには、洗脳能力は「ない」。肉体改造によってタイツを自由に体内で精製する第3世代と違って、戦闘員タイツを自力で作り出せない第2世代戦闘員が、一瞬でタイツを着用するためのものだ。
(ま、戦闘員以外の人間が着ると、そいつを即時拘束するセーフティロックが掛かるんだけどな)
組織に未洗脳の人間が入り込むのを防ぐため、戦闘員タイツは着用した人間の洗脳の有無を識別して、未洗脳の人間が着た場合は即座に拘束するようになっている。その効果は、未洗脳の人間を拘束する為にも使える──タイツの拘束時に遮音状態になり、どれだけ喚いてもタイツの外に声が漏れないからだ。実際、監督は懸命に両手両足を動かそうとしているが、戦闘員タイツが強制的に筋肉の動きを妨げているため、立ち上がることすらできない。俺は服を脱ぎ、一瞬で第3世代戦闘員に変身した。そして、監督の戦闘員タイツに触れた。
──第3世代戦闘員γ-027を生体認証。以降、当戦闘員タイツへのアクセス可能です。
「改造の準備をしろ。ケツの穴からだ」
──承認。肛門内の清掃、及び肛門の拡張開始。
──尿道封鎖。宣誓前の射精をロックします。
「!?!?…………!!!!!」
河田監督が一層激しくもがいた。次の瞬間、電気ショックを加えられた魚のように、ビクンビクンと無言で体を跳ね上げた。肛門内に侵食した戦闘員タイツが大便を分解して取り込みつつ、チンポが挿入可能な程度に尻の穴を拡げているからだ。それでいて、戦闘員への宣誓前に射精しないように、きっちりと尿道内で栓をしている。
「ウッス。河田監督、聞こえますか?」
俺は監督の戦闘員タイツにアクセスして、タイツ間の音声通話をONに変更してから話しかけた。
──なッ! これはなんなんだ! 桐谷ッ! ンあッ! ケツッ! ケツがッ!! オホぉッ!?
「黙っててすいません。俺、先週でもう『桐谷健児』やめてるんすよ。今は組織に忠誠を誓う、第3世代戦闘員γ-027が新しい名前っす。俺がまだ『桐谷健児』の模擬人格で喋ってるのは、その方が監督の精神に負荷が掛かると判断したからっす」
──ンお゛ッ!? 何を言ってる……ウ゛オォッ!? ぜんっぜん……わからんぞッ!? オ゛ッ!!
「大丈夫っす。監督もすぐにわかります。これから戦闘員になるんですから」
──俺が、戦闘員……だとおッ!? 馬鹿を言えっ! ヒお゛ぉぉン!!
監督はくねくねと肉厚な体を悶えさせた。快楽に溺れつつある男の声が、タイツの内部で反響する。
「大丈夫っす。最高に気持ちいいっすから。洗脳されても『河田俊幸』っつう人格はちゃんとバックアップ取るんで、地球侵略の為に役立てて貰えるっす」
──地球侵略ゥ!? 頭おかしいんじゃ……んお゛ッ!? お゛ッ!?
──イッ、イグッ!!! あ゛ア!? イゲないッ!?!? オ゙オ゙オ゙゛ーッ!?!?
監督が「組織」の崇高な理念を侮辱しかけたので、タイツに前立腺を執拗に責めさせた。オルガスムスに達してしまったようで、監督の体が一層激しく痙攣した。だが、戦闘員タイツが勝手な射精を許可していなかった。
「うっし、そろそろいいかな──アナル拡張停止。そんじゃ監督、俺の金玉で作った洗脳用ナノマシン、ケツから受け取って欲しいっす」
俺は監督が着ている戦闘員タイツに指示を出し、太腿を両手で持ち上げて肛門を晒す、いわゆる「ちんぐり返し」の体勢にさせた。35歳の屈強な成人男性が、応接室の上等なソファーの上で、ラバーめいた光沢のある黒い戦闘員タイツを着用している──戦闘員タイツの上からは、上半身だけスーツとワイシャツを着て、腕時計と結婚指輪をしている──にも関わらず、下半身は靴下以外何も穿いておらず、戦闘員タイツの光沢のある生地に包まれた両足を持ち上げ、肛門を堂々と晒しているのだ。そのあまりにも変態的な姿に、俺は鼻息が荒くなるのを感じていた。
──はひっ……はひっ……んうっ……!
監督は戦闘員タイツに前立腺を責められた余韻で、タイツの中で息も絶え絶えだった。俺はそんな監督の両足を持ち上げると、戦闘員タイツに包み込まれた俺自身のチンポを当てがった。俺自身のチンポと、監督の肛門部のタイツが、洗脳の予備動作を検知して自動解除された。
──オ゙!? おオ゛ォーッ!!!
俺のチンポが肛門内に挿入されると、監督は雄叫びを上げて暴れようとした。しかし戦闘員タイツは、監督が自分の意思で動くことを許さなかった。ちんぐり返しをし続ける、変態男としてのポーズを強制し続ける。これから肉体も意思も「組織」の所有物になるのだから、当然のことだ。
「どうっすか! 監督っ! んっ!」
──うおッ! オッ!! きっ、桐谷……ッ! 絶対ッ……許さねえからな!! んオ゙ッ!!!
河田監督はちんぐり返しで俺にアナルを犯されながら、敵意を剥き出しにして喘いでいた。なるほど、この状況でも精神が折れないのか。俺は感心した。肉体だけでなく、精神も強い雄を戦闘員にできれば、いっそう組織の利益になるだろう。
「どのみち無駄っすよ。模擬人格には敵意も残るかもしれないっすけど、出力段階で──」
──そ、それでもだ! ンあっ! せっ、戦闘員かなんだか……んくっ! し、知らないが、俺をそれにしたと……してもッ……ン゛あぁッ!?
「だから無理っすよ。監督は俺の部下の第2世代戦闘員として配備されて、地球侵略のための仲間になるんすから」
俺は腰のピストン運動を早めていった。監督の声が途切れ途切れになり、喘ぎ声が増えていく。それでも河田監督の精神は折れなかった。監督は懸命に喘ぎ声を抑え、力強く言い切った。
──お、俺は絶対にッ……お前の部下にはならん! 地球侵略もやらん!! 覚えておけ!!!
「うーっす。すっげーどうでもいいお話、あざっした。そんじゃ、俺の金玉で作った洗脳特化型ナノマシン、注入するっす」
──やめっ……ア゛ァァァああ!!!!
俺の背筋を鋭い快感が貫き、睾丸で生成されたナノマシンが河田監督の肛門内に注ぎ込まれていった。
「そんじゃ、河田監督、洗脳状況を報告して下さい」
──な、なにを言って……ンっ! 今は人格バックアップ中だ。進行度45……62……87……100%完了。な、なんだこれは!?
──第2世代戦闘員人格、インストール開始。だ、第2世代ってなんだっ!? ンああァァ!!!
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