──あなたの心と体の悩み、割り切ります。
──このメールが届いたあなたを……
(なんだ。迷惑メールか)
飲み会の場でスマホのバイブが鳴った大貫宏典は、画面を一瞥して仕舞った。
「うーす。大貫課長。飲んでますか〜!」
「おう。飲んでる飲んでる……おっと、悪いな」
部下の宇野恭平が話しかけてきた。宇野からビールを酌されて飲む。大貫が七三分けの髪型で四角い黒縁メガネを掛けた、ビール腹の中年男であるのに対して、宇野の髪型はツーブロックで、肌は趣味のサーフィンで日焼けし、筋肉質な体躯をしている。女遊びも激しいらしい。
(妻とのセックスが、マンネリ気味である俺からすれば……羨ましい限りだな)
学生時代は柔道一筋で、妻以外の女性を知らない大貫からすれば、密かにコンプレックスを抱いている相手だ。
(ん?)
なんだか目の前がくらりとした。それは宇野も同じようだった。
「うおっと!? あぶね。ちょっと太ったか?」
「……え!?」
大貫は驚愕した。宇野の格好は、筋肉質な体躯に贅肉が付いて、固太り気味になっていた。
「宇野……なのか?」
「うっす。なんすか?」
宇野が振り返った。宇野の髪型はツーブロックのままだが……前髪は大貫のように七三になっていた。そして、大貫と同じ黒縁メガネも掛けている。日焼けした肌と精悍な眼つきは宇野のままで、しかし鼻と口は大貫と宇野の両方の特徴があった。そして太い眉や髭の剃り跡の濃さは、明らかに大貫のそれだった。
「課長〜! トイレ行きましょうよトイレ」
「宇野、課長とホント仲いいよな」
「だって俺、課長と双子みたいにクリソツっしょ。女の子の趣味も合うし、すげー気が合うんすよ。ね? 課長」
「あ、あぁ……」
大貫は「妻と彼女をスワッピングするほど宇野と仲がいい」記憶が唐突に浮かび上がり、ごくりと生唾を飲み込んだ。
(終)
「媚び媚びィ〜! 乱暴はやめて媚びィ!」
「おい! まとわりつくな!」
ヒーロー・ブレイズブラストは舌打ちをした。彼は40代のベテランヒーローで、赤と黒のヒーロースーツで覆われた肉体は、鋼のように鍛え抜かれている。怪人の目撃情報を追って廃工場に向かったが──顔にハート型の面を付けた怪人は、小突いただけで倒され、命乞いを始めた。
「オイラは媚び媚び怪人・コビーハート❤ 媚びて媚びて媚びまくるのが、特技だ媚びィ!」
「ったく……何なんだよこの雑魚は」
ヤクザ顔負けの厳つい風貌のブレイズブラストは、足元にすがりつく怪人を引き剥がそうとした。
──その時ハート型の面が、ヒーローの股間に触れた。
「んいっ❤」
「おうっ❤」
怪人とヒーローの口から同時に甘い声が漏れる。ヒーローは涙目になると、くねくねと身をよじらせて口を開いた。
「もうっ❤ もういい加減にする媚びィ! んあっ! な、なんだか……オイラの頭の中……変だ媚びィ!」
「へへへ……お似合いだぜ。ヒーローさんよぉ」
先ほどまで弱気だった怪人が、急に荒っぽい口調と共に立ち上がった。
「俺をただの雑魚怪人だと思ったか? 互いの性格を入れ替えて、ヒーローを媚びるだけの無能に変えちまう──それが媚び媚び怪人・コビーハート様の能力ってわけだ。ガハハ!」
「やっ! オイラ、そんなのイヤ媚びィ! んあっ❤」
ブレイズブラストは怪人に股間を掴まれ、喘ぎ声を漏らした。怪人はさらに続けた。
「おうおう。テメエはもう、弱気で怪人に媚び媚びの雑魚ヒーローになったんだよ! 金玉握り潰されたくなけりゃ、俺に媚びてみせろや!」
「あううっ! やっ❤ 乱暴はやめて媚びィ❤ オイラの体で……エッチなことしていい媚びから……❤ あんっ❤」
ブレイズブラストは強面な顔で恥じらいながら、角張った尻を振って怪人に媚び始めた。
(終)
「おう! ファンの野郎ども! 今日はワシらのカワユ〜イ歌とダンスに、萌え萌えキュンしてってや!」
ジュニアアイドル・ピュアプリンス48の地下ライブ。センターの芦田優人はステージ上でそう宣言した。紺と白のセーラー服風の衣装と短パンを着た、華奢な少年アイドル──にしては、言葉遣いが荒っぽい。なぜなら、ピュアプリンス48のメンバーは、龍総組というヤクザの組員たちと精神が入れ替わっているからだ。
しかも入れ替わりは世界中全員に、無自覚なまま起きていた。無論、芦田優人の「中の人」である龍門雄三も、入れ替わりを認識できていない。
(グヘヘ……今日もオタク共から、たっぷり金を搾り取ってやるぜぇ!)
「握手会はこちらでーす」
ライブ後、別室で握手会が始まった。CD1枚に付く1枚の握手券で、5秒間の握手が可能だ。列に並ぶファンの中に、大量のCD入り紙袋を両手に持った、屈強な中年男がいた。パンチパーマで口髭を蓄えた強面の中年男──龍門雄三であった。彼の「中の人」は芦田優人である。雄三は野太い声で、元の自分に媚び始めた。
「ゆ、優人きゅんっ! 今日のライブ、すっごくよかったよぉ!」
「おう! 雄三のおっちゃんやないか! こないだの総選挙、ホンマ助かったで!」
「えへへっ! ボクみたいなオジサンが、優人きゅんの役に立てて……うれしいっ!」
雄三は厳つい体躯に「優人しか勝たん!」と書いてあるピンクのTシャツと鉢巻を着て、応援うちわやサイリウムをズボンに挟んだ、限界オタク丸出しの格好ではしゃいでいた。ヤクザらしい格好で周囲を威圧しないようにという配慮である。握手が終わると、雄三は名残惜しそうに手を振りつつ去っていった。
(うへへ……かわいいオヤジだよなぁ。俺のチンポでヒイヒイ言わせてえぜ)
優人は下品な笑みを浮かべると、勃起した包茎チンポを短パンの上からぐりっと弄った。
(終)
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お題を元に800字で小説を書いていくチャレンジ。
まだ腕が本調子でないので、数を減らして縮小版でお送りしております。今回は、
①「堅物上司とチャラ男部下」+「等分」
②「ヒーローとヴィラン」+「性格の入れ替え」
③「ジュニアアイドルとヤクザ」+「入れ替わり」
の3本でした。
800字小説のお題のリクエストは、基本的には「2つの単語」までOKです。具体的には「催眠」+「体育教師」などですね。ただ、入れ替わりや立場交換の場合は、単語2つだけだとリクエストの幅が狭くなってしまうので、交換したい組み合わせまで書いて大丈夫です。例:「立場交換」+「家庭教師と教え子」
簡易的なリクエストとして、思いついたものがあればコメントしてみてください。リクエストしたいお題は、今まで通り800字小説のコメント欄にどうぞ。
くろねこ@9605
2023-08-12 06:15:29 +0000 UTCゆきの
2023-08-09 14:18:02 +0000 UTCくろねこ@9605
2023-08-08 12:39:20 +0000 UTCくろねこ@9605
2023-08-08 12:33:07 +0000 UTCくろねこ@9605
2023-08-08 12:31:09 +0000 UTCタカムラ
2023-08-08 00:15:11 +0000 UTC黒竜Leo
2023-08-07 15:05:40 +0000 UTCPrinceBeggar
2023-08-07 13:47:14 +0000 UTC