笠原雄平の超能力による人格感染。感染経路は「股間を揉まれること」である。笠原雄平だけでなく、感染した者から股間を揉まれることでも感染は広がる。既に野球部が、そして担任教師の武石豊隆が感染していた。
感染すると「笠原雄平としての人格と記憶」が植え付けられる。それは元の人格や記憶とゆるやかに融合していく──ただし、絶頂に達すれば、その時点で完全に人格も記憶も混ざり合い、二度と元に戻らない──新しく感染した学年主任の松岡征治の脳内に、それらの情報が刷り込まれた。
「な、なんだっ! どうなっとるんだ、ワシは!」
教職員用トイレの個室で、学年主任の松岡征治は肩で息をしていた。先ほど、1組の担任の武石豊隆から股間を揉まれてから、頭の中も体も何もかもおかしい。松岡征治としての52年間の記憶だけでなく、笠原雄平としての18年間の記憶が、じわじわと脳内に広がってきていた。
(ワシはワシ……でいいんだよな!?)
思わず自分の体を確かめる。白いポロシャツをたくし上げ、柔道で鍛えた肉体を──胸毛の密生した分厚い胸板を晒すと、脂ぎった小鼻がムフリと膨らんだ。松岡は目を細めると、いやらしい手つきで自分の毛むくじゃらな胸板を揉み、ぷっくりした乳首を節くれだった指先で転がし始めた。
(んあぁ……やっぱゴリ岡、マジでエロすぎだろ……胸毛すげー濃い……)
いつの間にか、松岡は笠原の思考へと──異性愛者の中年教師から、同性愛者の男子高校生の思考へと切り替わっていた。自身のむさ苦しい肉体に興奮している松岡は、それに気づかない。そして、先ほど松岡に人格を感染させた、武石豊隆の言葉が脳裏に蘇った。
──そこの個室、さっき俺がオナったばかりなんで、まだザーメン臭いと思いますよ。よかったらどうぞ。
「んひっ! タケセンのザーメン、雄臭えっ♥」
笠原雄平にとって、武石豊隆は憧れの体育教師である──毎晩オナニーのオカズにしてしまうほどに。そしてそれは、笠原雄平の人格に感染した松岡にとっても同じだった。松岡は脂ぎったオヤジ顔を興奮で真っ赤にさせながら、忙しなく小鼻で匂いを嗅ぎ取っていた。トイレのアンモニアの匂いに混じって、精液特有の青臭さが確かに残っている。年下の体育教師のはずの武石豊隆が、松岡征治にとっての憧れの体育教師になってしまっていた。
(うへへ……タケセンの匂い……消える前に抜かねえとな!)
スーハーと忙しなく鼻孔を閉じたり開けたりしながら、松岡は毛深い右手を下着の中に突っ込んだ。既に松岡の太短いチンポは、ジャージの内側で既にギンギンに固くなっている。そしてそれを扱き始めようとしたところで、ふと我に返った。
「いかん!……ワシがおれになっちまう! んあっ♥」
しかし、もはや松岡の意思だけでは、興奮を抑えきることはできなかった。既に松岡に感染した笠原の人格は興奮し、一刻も早く射精したがっているのだから。右手は彼の意思に反して、ゆっくりとチンポを扱き始めた。
「や、やめろっ! ンガっ……!」
抵抗しようとした松岡の左手が、他ならぬ松岡の口を塞いだ。「自分自身に強姦される」──その恐怖に、松岡の目に恐怖の色が浮かぶ。右手の動きは次第に早くなり、先走りを垂れ流すチンポをリズミカルに扱いている。
するとそこに、新しく誰かが職員用トイレに入ってくる気配がした。そいつは小便器の前で立ち止まると、ジョロロ……と音を立てて放尿し始めた。
(た、助けてくれ! 誰か!)
松岡は必死に声を出そうとしたが、左手は彼の口を固く塞いでいる。そもそも唇も縫い付けられたように開くことができず、松岡は声を出すことのできないまま、毛深く肉厚な体を個室の中で身悶えさせ、高まっていく快感に抗い続けていた。
「ふ〜っ……」
用を足した誰かが、ため息を吐いて立ち去っていく。
(アッアッアッ! わ、ワシももう……限界だッ! イクイクイクッ!)
「〜〜〜〜〜ッ!!」
松岡の背筋を快感が突き抜けた。ガニ股になった太腿がピクピクと痙攣し、快感から逃れようとガッシリした腰をくねらせてしまう。太短いチンポは大量の精液を吐き出し、下着の中を粘つかせて陰毛を海藻のように濡らしていく。赤いジャージの股間に、じんわりと染みが浮かび上がっていく。口を塞いでいた左手は外れ、唇もようやく開くようになった。もはや必要ないからだ。涎が、髭の剃り跡の濃い顎をつうっと伝って、床に垂れた。
「ハヒッ……ハァッ……んっ……」
松岡の目尻には涙が浮かんでいた──それは自分が自分でなくなる恐怖のために浮かんだ涙だったはずなのだが──しかし現在の松岡の表情には、微塵も恐怖が感じられなかった。その厳つい顔は快感の余韻に浸り、恍惚としていた。
「あぁ……たまらん……ワシがおれになるとは、こういうことか……」
先ほどの「自分自身に強姦される」「自分が自分でなくなる」恐怖は、松岡も覚えてはいるのだが……しかし、なぜそれを恐れていたのか、今の松岡は微塵も理解できなかった。
もはや松岡征治と笠原雄平は、同一人物であるのだから。
「自分自身に強姦される」──しかし松岡征治が笠原雄平になってしまえば、それは単なる「強姦されるというシチュエーションで楽しんだオナニー」と同義であった。
「自分が自分でなくなる」というのは「松岡征治と笠原雄平が同一人物になる」ということである。いざそうなってしまえば、現在の松岡にとってごく当たり前のことに思えた。むしろ先ほどまで、自分がただの松岡征治であったことの方が、異常な事態に思えてしまう。表と裏のどちらか片面がないコインが存在しないように。
松岡はまるで初めて自分のカラダを触るかのように、毛深い胸板や乳首の感触を確かめたり、脇の下の匂いを嗅いでいた。
(まったく。ゴリ岡の分際で抵抗などしおって。ワシのように雄臭い体育教師は、皆、おれのものになるべきなのだ。なぜそれがわからんのだ?)
松岡はムフリと小鼻を広げ、自身の毛深い肉体から漂う加齢臭を吸った。先ほどまで厭わしかった濃い加齢臭が、今では性的興奮を煽るスパイスになっていた。松岡は自分の毛深い肉体を確かめるように愛撫すると、ジャージの中に再び手を突っ込んだ。亀頭と陰毛に絡みつく精液の塊を指先に取って、それをしゃぶる。ノンケの中年体育教師として残ったわずかな価値観によって、松岡はわずかに濃い眉を歪めたが、しかしホモの男子高校生としての興奮がそれを上回り、厳しい眼差しが情欲でギラついた。
(んっ……午後の授業は……柔道だったな。感染を広げるのにうってつけではないか……やはりワシを『おれ』にしたのは正解だったな。後でタケセンとセックスするときに、礼を言っておくか)
松岡はノンケの中年体育教師であると同時に、ホモの男子高校生であるという自身のアイデンティティを、違和感なく受け入れていた。そして、人格感染を広げることと教師としての仕事を、自分にとって当たり前のことだと受け入れ、熱意を持って感染拡大に取り掛かろうとしていた。
「うっし! 授業はじめっぞー。今日は寝技だな!」
午後の体育の授業は柔道だった。柔道部の寺田剛司にとっては、なんてことのない授業だ。しかし柔道部の生徒は、技の実演に指名されることがあるため、気は抜けなかった。授業しているのが柔道部顧問の松岡であるため、なおさらだ。
「横四方固めからだ。まずは手本を見せる。そうだな……寺田、こっちに来い」
「うっす」
案の定指名された。坊主頭で厳つい体躯の寺田は松岡の元まで参じると、指示に従って松岡に技を掛けられ始めた。
「こうやって、相手の上体に、自分の上体を横向きに乗せてだな……」
松岡は寺田を組み敷いて、横から覆いかぶさるようにした。松岡の右手が寺田の左の太腿の裏へと向かう──その途中で、松岡は寺田の股間をさり気なく握った。
(んあっ!?)
ビクン! と寺田の肉厚な体が跳ねる。漏れそうになった声は押し殺した。先ほどまで嗅いでいた松岡のオヤジ臭い体臭が、ひどく魅力的なものに思えてしかたがない。寺田は柔道着の中で、自身のチンポが固くなり始めるのを感じていた。
(やっべ、なんで勃つんだよ! しかも松岡先生で……!)
「よし! それじゃあ二人一組で……始め!」
寺田が発情しはじめた己の肉体に困惑しているうちに、松岡との実演が終わって開放された。寺田の無意識下で「笠原雄平」としての人格が芽吹き、根を張っていく。
(んっ……勃起とまんねーけど……とりあえず今は「寺田剛司」のフリをしとかねえとな……ん?)
一瞬、何か異常な考えが浮かんだ気がしたが、寺田はそれが何なのか自覚できなかった。松岡が寺田の肩を軽く叩き、ニヤリと笑った。
「おう、寺田。お前も他の連中に教えてやってくれ。手分けして『広げる』ぞ」
「うっす」
(広げるってなんのことだ……? あぁ……そっか)
不意に寺田は理解した。先ほど、松岡に股間を握られて「笠原雄平」の人格に感染したことを。そして他人の股間を握ることで、さらに感染を広げられることを。既に部員全員が感染済みの野球部員は、さりげなく寝技の相手の股間を握り、感染を広げている──
(うっし! おれも張り切ってチンポ握ってくか! おれもまだ寺田の体乗っ取れてねーけど、全員感染させちまえば、どうとでも……ん? さっきから何考えてんだ? おれ)
寺田は自身の思考に首を傾げながら、同級生たちに寝技のコツを伝授し始めた。さりげなく股間を握って「笠原雄平」の感染を広げながら……。
※
「おう! これで全員が『おれ』に感染したようだな! そんじゃ、こっからはしっかりと射精して、コイツらのカラダを乗っ取っていくぞ!」
柔道着で腕組みをして、満足気にそう話す松岡。豪放磊落な体育教師の雰囲気はそのままに、しかし話している内容は異様なものだった。鋭い目つきは生徒に人格汚染を広げた悦びで細められ、柔道着の股間は勃起して盛り上がっている。そしてそれを聞いている生徒たちも皆、同じように勃起して柔道着の股間を盛り上げていた。
「そうだな……69(シックスティナイン)で、互いのモノをしゃぶり合うか。ワシと寺田で実演するから、しっかりと見ておくように! 寺田、下穿きを脱いでこっちに来い」
「うす」
松岡と寺田は、互いに柔道着の下穿きと下着を脱いで、下半身裸で向かい合った。松岡の濃い陰毛の中心にある太短いチンポが勃ちあがり、ビクッビクッと興奮で痙攣しているのを、寺田は生唾を飲んで見つめた。松岡が話を続けた。
「69っつうのは、互いにチンポをしゃぶり合う体位のことだな。ひとりが仰向けに寝て、もうひとりがそいつのチンポをしゃぶりつつ、自分のチンポを仰向けに寝ている奴の口に挿れて、しゃぶってもらう。その体位が、数字の69に似ているから、英語でシックスティナインっつうわけだ」
松岡はそう言うと、柔道場に横になった。
「そんじゃ、さっそくやってみるか。おう、寺田。ワシの上に跨がれ」
「うっす……」
(すっげ、エロ……)
寺田は、毛深く厳つい中年体育教師である松岡が、変態化して授業で69を教えるというシチュに興奮していた。寺田も勃起したまま、松岡と頭の位置が逆になるように跨った。寺田の頭の下には松岡のチンポがあり、松岡の頭の上には寺田のチンポがある。
「で、これで互いにチンポをしゃぶり合い、同時に気持ちよくなるってわけだ。体格差がありすぎると上手く咥えられないから、気をつけろよ。そんじゃ、ワシと寺田でこのまましゃぶり合うから、よく見てろよ……寺田、腰を落とせ」
松岡に言われて、寺田は言われるがままに腰を落とした。寺田のチンポが松岡の顔に触れて──唇に咥えこまれる。生の粘膜が亀頭をぬるりと包み込む刺激に、寺田は思わず悶えた。
「んっ、あぁっ!」
松岡が手でぺちりと寺田の太腿を叩いた。お前もさっさと咥えろと言っているのだろう。寺田は下半身からくる快感に震えながら、目の前の太短く、淫水焼けして紫色がかって黒光りするチンポを咥えこんだ。
(んあっ!? すっげ、雄臭ぇッ!!)
松岡のチンポを咥えた、と思った瞬間。ノンケの男子高校生、寺田剛司としての人格は、反射的にチンポを吐き出そうとした。それを笠原雄平としての人格が強引に押し留め、むしろこの雄臭さこそ好ましいものであると──急速に価値観を書き換えていく。寺田は一瞬不快感を覚えたことも忘れ、無我夢中で中年オヤジのチンポをしゃぶり続けていた。
(すっげ! すっげ! すっげぇッ! おれっ! 松岡先生のチンポ、しゃぶっちまってる! おれのチンポも、松岡先生がしゃぶってるッ!)
チンポを相互にしゃぶり合い、男同士の官能を高めあっていく松岡と寺田。共に「笠原雄平」に感染しているということは、「どちらも笠原雄平」であり「二人は同一人物である」とも言えた。故に、二人の生理現象が連動して、同時に絶頂を迎えることは必然でもあった。
(ンッ! イクっ!!!)
鋭い快感が背筋に走り、寺田剛司は、体育教師の松岡征治の口腔内に射精した。それと同時に、寺田の口腔内で松岡も射精を遂げる。苦味と塩味、そして濃厚な雄臭さを放つそれを、寺田は鼻息荒く飲み込んでいく。松岡も夢中になって寺田のチンポを舐め取り、精液を飲み込んでいる。互いに口腔内の粘膜にチンポを愛撫される感触に、教師と教え子は鼻息荒く悶えた。
(あぁ……おれ……さっきまで「寺田剛司」だったのに、「笠原雄平」になっちまった)
寺田の感染が完了し「笠原雄平」としての人格を受け入れていた。まるで柔道の試合で強敵に負けたかのような敗北感があるが、しかし不思議と穏やかな気持ちだった。なぜなら──負けたのも自分であれば、勝ったのも自分でもあるのだから。寺田は、自分を「笠原雄平」にしてくれた愛おしい柔道部顧問のチンポを、愛情を込めて舐め取った。松岡の肉厚なカラダが、寺田の舌でビクッビクッと震えた。
「ふーっ……ざっとこんなもんだな。よし! おまえらもやってみろ」
快感の余韻が残るまま、松岡が精液臭い息を吐きながら立ち上がった。生徒たちは一斉に下穿きを脱ぎ、思い思いの相手と69を始めた。
寺田も射精後の気怠さを感じながら、ゆっくりと立ち上がった。
(すっげ……学校中……柔道部も、他の部活も……つか、電車でも感染広げられるよな? みんなこんな変態になったとしたら……)
破廉恥な妄想で涎を垂らしてしまう寺田。その横に立って授業を監督する松岡も、同じく締まりのない表情で、口から涎を垂れ流していた。
(うおっ! 今日は一段と混んでるな……)
岩崎雅義は逆三角形の巨体をワイシャツとスラックスに押し込み、身を捩って満員電車に乗り込んだ。岩崎は41歳。既婚者で妻と高校生の娘がいる。岩崎は20代半ばまでボディビルに打ち込んでいた。現在はもうやっていないが、ジムに通って逞しい体型を維持している。
(なにか……今日の電車、雰囲気がおかしくないか?)
電車のドアが閉まって走り出すと、岩崎はそう感じた。やけに男たちの鼻息が荒く、目つきがギラギラとしている。それだけではない。チュッ、と唇を重ね合うような音や、押し殺した男の喘ぎ声が、電車の走行音に混じって聞こえてきた。それになにより、満員電車には似つかわしくないあの匂いが──精液特有の青臭い匂いが、エアコンの冷風に乗って岩崎の鼻孔にムワッと届いてきた。異様なのは、それだけではなかった。
岩崎の目の前の吊り革を掴んでいたサラリーマン──30代くらいの、ツーブロックの髪型で、浅黒く日焼けした体育会系のサラリーマンが、後ろにいた50代くらいで脂ぎったサラリーマンに抱きつかれ、公然と痴漢され始めたのだ。
「おいっ! 何するんだ!」
30代のサラリーマンは当然のように抵抗するが、しかしそれを周囲の男たちが、腕を掴んで阻んだ。阻んだ男たちの年齢はバラバラで、サラリーマンもいれば、大学生や高校生くらいの男もいる。なぜか統率のとれた動きだった。そして岩崎の身にも危険が迫っていた。
(あっ! な、なんだ!?)
岩崎の固く引き締まった尻が、撫でられた。それは明らかに男の手だった。振り返ろうとする岩崎の体が、周囲の男たちによって押さえつけられる。20代くらいのサラリーマンもいれば、岩崎と同年代くらいの40代くらいのサラリーマンもいる。ガッシリした体格で、タンクトップを着た大学生くらいの年代の男が、ニヤつきながら岩崎の股間を握った。
「んあっ❤」
股間を握られた途端、岩崎の股間から脳天へと、快感が一直線に貫いた。岩崎の日焼けした厳つい顔はデレっと緩み、小鼻はむふりと膨らんでいる。唇の端からは涎が垂れそうになり、彼は無意識にずびっと啜った。射精こそしていないが、男性器は一瞬で勃起している。下着の中でさらなる刺激を求め、岩崎のチンポはヒクヒクと切なげに痙攣していた。岩崎とほぼ時を同じくして、目の前で痴漢されていた30代のツーブロックの男も、股間を握られ、天を仰いで体を仰け反らせた。
「ハヒッ❤ んヒヒ……」
「んあぁ……❤」
(やっぱ満員電車、すっげーいいな。こんなマッチョなオヤジも『おれ』にできたし……ん? マッチョなオヤジって、おれのことか? おれは高校生なのに、なんだよオヤジって──)
高校生の笠原雄平としての人格と、サラリーマンの岩崎雅義としての人格との矛盾で、岩崎の認識が揺らぐ。ふと岩崎は自分の格好を見て、ギョッとした表情で口を開いた。
「うおっ! おれの雄っぱいすげぇっ! こんなエロい雄っぱいしてたのかよ!」
(ん? つーかなんでおれ……学校の制服じゃなくて……ワイシャツとネクタイなんだ?!)
笠原雄平としての記憶の中に、岩崎雅義としての記憶が浮かぶ。郊外の一戸建てで妻と娘と暮らしていること。自分は41歳のサラリーマンで、若い頃はボディビル経験があり、今はジム通いが趣味である──岩崎雅義という名前の中年男であること。
(おれ、高校生で……い、いや、昨日も会社行ったし……妻と娘もいる中年のマッチョなオヤジで……岩崎雅義って名前……なのか?)
岩崎は困惑して、車内を見渡した。完全に感染を終えた者たちは──男だけでなく、女にも「笠原雄平」は感染可能であるため、女たちも──互いに抱き合って唇を重ねたり、愛撫し合ったり、中には公然と性器同士を擦り合わせる者たちもいた。しかし、まだ感染したばかりの者たち──岩崎のような者たちは、自分のカラダを触って興奮したり、違和感を覚えて首を傾げたりしている。それは岩崎の前の吊り革を掴んでいた、ツーブロックの色黒の男もそうだった。ツーブロックの男は困惑したように岩崎に話しかけてきた。
「なんかその、妙な感じっすね……」
「そうだな……みんな『おれ』だし……なあ、あんたも『おれ』なんだよな?」
「おう」
岩崎はツーブロックの男に──成田知憲という33歳のサラリーマンを抱き寄せ、親しげに鼻の頭をコツンと合わせると、チュッと唇を重ね合わせた。「笠原雄平」に感染した者同士は、言い換えれば「全員が笠原雄平という同一人物」である。肉体や性格が違っても「笠原雄平である」という点は共通しているため、彼らは「鏡を見たら他人の姿が映っていた」ような倒錯感を覚えながら、自分自身のカラダを弄るような気安さで「笠原雄平同士のセックス」──彼らの感覚で言えば、オナニーとそう変わらないのだが──乗客同士で性行為に及んでいた。それは岩崎も成田も同じだった。どちらともなくチャックからチンポを取り出すと、互いの腰に腕を回し、満員電車の中で擦りつけ合い始めた。岩崎の脳内で「岩崎雅義」としての理性が悲鳴を上げる。
(な、何をしてるんだ俺は!? 満員電車で、見ず知らずの男を相手にチンポを擦り合わせて……! こんなの変態すぎるだろう!?)
しかしその思考に「笠原雄平」が混じっていくことに、岩崎は気づけない。
(んっ……し、しかし今は……とりあえず射精して、俺を……「岩崎雅義」を完全に乗っ取らないと……いけないし……んあっ! これくらいの変態行為……しょうがない……よな?)
自分自身を洗脳する言い訳をしながら、岩崎は成田と唇を重ね合い、腰を振るってチンポを圧しつけ合う。その間も電車は駅に停まり、乗客を吐き出し、呑み込み、新たな「笠原雄平」を増やしながら進んでいく。そして──
(ッ! イクっ!)
ビクンビクン! と肩を震わせ、暑苦しい体育会系サラリーマン二人は抱き合い、射精した。岩崎と成田の元の人格と、植え付けられた「笠原雄平」が統合され、二人が恍惚とした溜め息を吐く。その快感は石を投げ込んだ水たまりのように他の「笠原雄平」にも波及し、さざなみのように周囲の男たちが、女たちが喘ぎ声を上げる。電車が性交直後のラブホテルのような匂いと雰囲気になったところで、電車がターミナル駅に着いて、乗客たちがどっと車両から吐き出された。岩崎と成田もその人波に紛れて駅のホームへと降り立った。二人とも、既に露出していた陰茎をスラックスに仕舞い、持っていたハンカチで互いに精液を拭き取っている。その息のあった動きは、初対面の男同士とは思えない。しかし二人とも「笠原雄平」になり、一心同体ならぬ「一心他体」になったので、取り立てて驚くことではなくなっていた。
「やっべ……すげー気持ちよかったっす。岩崎さん……」
成田はとろんとした表情で歩きながら口を開いた。その口調は「笠原雄平」のものである。岩崎も下着の中で精液でヌメるチンポの位置を直しつつ答えた。
「おれもっすよ。成田さんと『おれ』になれて、マジで気持ちよかった……」
電車に乗る前までは既婚のノンケサラリーマンだった二人は、ホモの高校球児の人格を植え付けられたことに違和感を抱かないまま、精液でべとつくゴツい手を、人混みの中で恋人繋ぎにしてはにかんだ。成田が、本来の「成田知憲」としての口調で口を開く。
「とりあえず、週末どこかで呑みましょうよ。僕の会社でも、良さそうなやつを『おれ』にしておくので」
「いいですね。うちの職場でも増やしておきます。いやあ、自分自身だと、気兼ねなく集まれていいですね」
岩崎も元の自分の口調で──岩崎雅義として答えた。一見すると意気投合したサラリーマン同士が飲み会の約束をした会話なのだが、二人とも精液でべとついた手を握り合い、快感の余韻に浸ってうっとりとした表情なのが異様であった。飲み会の後に何をして楽しむのかは、二人とも言外に理解しており、射精を遂げたばかりのチンポが再び固くなり始めていた。
警察官である畠山敏弘の感染経路は、高校生の息子からだった。
息子の畠山弘毅は高校でラグビー部に所属しており、その顧問である武石豊隆は、笠原雄平本人から感染させられていた。顧問が「笠原雄平」に感染したことで、その日のうちに速やかにラグビー部内に感染が広がり──息子である畠山弘毅も「笠原雄平」に感染した状態で帰宅した。
その日の敏弘は、夜勤明けで昼過ぎから仮眠を取っていた。遮光カーテンを閉め切って暗くなった寝室に、部活動を終えて帰ってきた息子の弘毅が、そっと忍び込む。そして暑さから下着とランニングシャツだけで眠っている父親の股間を、無造作に掴んだ。
「んぁ……❤」
敏弘は夢見心地のまま、うっとりとした声を漏らした。グレーのブリーフが盛り上がる。ラグビーで鍛えている息子に負けず劣らず、警察官として訓練や武道で鍛えてきた父親の肉体が、緊張で強張る──まるで、セックスの際の筋肉の緊張のように。それは息子である弘毅がこっそりと寝室から立ち去った後も続いた。
「……あっ、あっあっあっ❤」
まるで誰かと性交に及んでいるかのように、敏弘は上擦った声を漏らす。快感に抗うかのようにときおり首を横に振っている。陰茎はブリーフの中で怒張し、ビンッと生地を突き上げ、先端に染みを作っていた。毛深く太い腕が、凌辱に抗うかのようにシーツを掴む。
「ンッ……んくぅっ❤」
やがて、腰を突き上げるかのような動きをすると、敏弘は生理的にオルガスムスに達した。どぷっどぷっと亀頭から精液が溢れ出す。ブリーフの生地を貫通し、精液が雫となって溢れた。絶頂に達した敏弘は、突き上げた腰をドスンとベッドのマットレスに落とした。髭の剃り跡の濃い、角張った男らしい顔は涎を垂れ流して弛緩している。眠っている間に「笠原雄平」の人格に感染し、夢精によって元の人格と統合されてしまう──いまだに夢の中にいる敏弘は、そんなことになっているとは露も知らず、ただ眠り続けていた。
※
「おい、親父。そろそろ晩飯だってよ」
しばらくすると、素知らぬ顔をして息子の弘毅が敏弘を起こしに来た。弘毅は、辺りに漂う精液の残り香と、グレーのブリーフに浮かび上がった精液染みに興奮しつつ、父親の体を揺する。夢精によって眠っている間に「笠原雄平」になってしまった父親が、目覚めてどう反応するかは、弘毅としても関心があった。
「んぁ……?」
敏弘がまだ眠たげな様子で目覚めた。とろんとした目で弘毅を見ると、改めて口を開いた。
「ふぁ〜……すっげー寝た……あれ? お前、3組の畠山じゃん。なんでおれんちにいんの?」
発する声は間違いなく45歳の父親の声なのだが、しかし話の内容は同学年の男子高校生になっている様子に、弘毅は鼻息を荒くしつつ答えた。
「まだ寝ぼけてんのかよ。お前はおれの親父だろ?」
「ん? あぁ……そうだっけ? あ! そうだったそうだった! えっと、弘毅……だったよな? うん」
息子の名前をうろ覚えで確認する父親。まるで普段そこまで親しくはない、高校の同学年の生徒の下の名前を確認しているようだった。しかし笠原雄平であると同時に、畠山敏弘でもあるため、寝起きのぼんやりした状態から目覚めれば、後は造作もないことだった──畠山敏弘の記憶で、畠山敏弘の人格で振る舞うのは。
「おい弘毅、ちゃんと一声掛けろよな? 寝てる間に『おれ』になってたから、さすがに驚いたぞ」
敏弘は、本来の「畠山敏弘」としての口調で話しながら、タンクトップから剥き出しになっている毛深く太い腕で、ガッシリと息子と肩を組んだ。父と息子は互いの体臭を嗅ぎ、ムラムラとした様子を隠そうともせずに互いの体を愛撫し始めた。
「なあ親父、その下着……」
「おう。いい歳して夢精しちまったみたいでな。まあ、45歳ノンケ警察官とかエロすぎるし……しょうがねえよな!」
あっけらかんと笑う敏弘。価値観が「笠原雄平」になっているため、自分の体がエロく思えて仕方がない。弘毅は淫猥な性格になった父親の様子に生唾を呑み込んだ。敏弘はそんな弘毅に流し目を送ると、おもむろに体を離し、ブリーフを脱いだ。いまだに粘り気のある生地が、亀頭との間に糸を引く。精液染みのあるブリーフを、敏弘は弘毅の顔に押し付けた。
「んあっ❤ お、親父ッ❤」
「俺もお前も『おれ』なんだから、考えてることはお見通しだぞ? 45歳中年警察官の夢精ブリーフ……『おれ』ならこれをおかずにするのは当然だろ?」
敏弘も弘毅も「笠原雄平」であるため、互いに心が通じ合っている──互いに何で興奮するのかも。弘毅は父親のブリーフの内側に残っている、粘り気のある精液染みの匂いを嗅ぐと、恍惚とした表情で呟いた。
「あぁ……マジで助かる……おれも晩飯の後で、ラグビー部で使った練習着、持ってくるよ」
「もちろんだ。母さんにバレないように……いや、母さんも『おれ』にしたほうが手っ取り早いな。下着や練習着をちまちま交換しなくても、がっつりヤレるようになるし。うし! 晩飯の前に母さんも『おれ』にするぞ」
ブラブラとチンポを揺らしながら、タンクトップ一枚だけの姿で降りていく敏弘。父親から借りた夢精ブリーフを片手に後を追う弘毅。その日、どこにでもある家族が「笠原雄平」に飲み込まれていった。
「おーす」
「やべっ、昨日やった数学の宿題、忘れてきちった」
一ヶ月後。「笠原雄平」の人格が爆発的に広がったことなど嘘のように、みな普通に学校生活を送っている──ように見えた。
「あー、すっげムラムラする。昨日抜き忘れたんだよなー。なあ、吉川。ちょっと口貸してくんね?」
「おう、いいぞ」
水泳部の西島という生徒が、後ろの席の吉川という野球部の生徒に対して頼んでいた。野球部の吉川が快諾すると、水泳部の西島は立ち上がり、吉川の机に跨るように座った。そして西島は、自分の制服のズボンを膝下までずり降ろした。水泳で日焼けした引き締まった下半身と、包茎チンポを晒す。その股間に野球部の吉川が顔を埋め、くちゅくちゅと音を立ててチンポをしゃぶりはじめた。
「あっ、いいっ……あっ、あっ……!」
上擦った声を漏らして肩を震わせる西島。同じような光景は、教室のあちこちで見受けられた。
「あっちー。塩分補給しねえとな」
「で、そいつのバイト先でさ……んあっ!……んっ、きっ、金曜日の夜に──」
友人と話していたラグビー部の飯川が、突然背後から首筋を舐められ、喘ぎ声を漏らした。背後から舐めたのはサッカー部の福嶋だ。日焼けした福嶋の精悍な顔は、ラガーマンの汗を舐め取る興奮で赤らんでいた。ラグビー部の飯川の方も、首筋は感じやすいのか、太い首に舌が這う度にビクッビクッと肩を震わせている。会話中にいきなり首筋を舐められたというのに、飯川は福嶋に対して何の抗議もしない──二人とも「笠原雄平」であり、ある意味では同一人物であるのだから。何なら「笠原雄平」同士は相手のことが理解できるため、本来は会話する必要もないのだが──しかし「笠原雄平」に感染した者たちは、自分たちの肉体や性格の違いを楽しむため、あえて元の人格として振る舞う事が多かった。
「おーし、そろそろホームルーム始めるぞー。席につけー」
担任である武石豊隆が教室に入ると、クラスの生徒達の視線が集中した。武石は上半身に白いポロシャツを着ているものの、下半身には何も穿いておらず、ブラブラとチンポが揺れている。これは「下半身露出してるのに、普通に授業するタケセン、エロくね?」という笠原雄平の発案であり、それには他の「笠原雄平」たちも──当然、武石も同意するところであったため、まるで露出狂のような格好で授業やホームルームを行っていた。さすがにグラウンドでの授業は通行人の目があるためジャージを穿いているが、下半身を露出して行う柔道や水泳の授業は「笠原雄平」たちに大人気であった。
「来週は地域での職業体験があるからなー。それ自体も大事だが『おれたち』を広げるチャンスでもあるからな。めぼしい大人はしっかりと仲間にしておけよ」
武石は平然とした顔で、しかし異常な言葉を口にしていた。右手は当然のようにチンポを扱き始めている。憧れの体育教師が変態になり、しかも自分たちと同一人物である──そのような倒錯した関係に「笠原雄平」たちは一様に恍惚とした表情になっていた。互いの興奮が相乗していく。中には堂々とオナニーを始めている生徒もいる。この事態の原因となった、オリジナルの笠原雄平もそうでった。まるでハウリングのように高まり続けていく興奮と官能にチンポを固くし、制服を下着ごとずり降ろして、短小包茎のチンポを弄っていた。
(やっぱ変態っぽいタケセン、すっげーいいよな〜……「おれたち」の興奮もすっげービンビンに感じるし……あっ、気ぃ抜くとイッちまいそうだ! でも……「おれ」って、どこまで広がるんだ?)
※
既に笠原本人の手を離れて、人格感染はパンデミックを起こしていた。満員電車で、会社で、街で、あるいは家庭で。男も女も関係なく、感染は拡大していく。
「いやあ、急な申し出ですみませんな」
「いえいえ、松岡先生にはお世話になっていますか……んあっ❤」
柔道部顧問の松岡征治は、練習試合の相手校の顧問の股間をおもむろに揉んだ。30代の顧問の角張った顔が喜悦に歪む。
「さあさあ、まずはこちらへ」
「は、はひっ……❤」
学校の廊下から、男子トイレへと押し込まれる他校の顧問。くぐもった喘ぎ声と共に、彼が「笠原雄平」の仲間入りをしたのは、その後すぐのことだった。
※
(今日は一本電車の時間をずらしてみるか……おっ、あの金髪の不良、すっげーガタイいいっ! 周りのリーマンから「おれ」にして……)
柔道部の寺田剛司は、電車で周りの男の股間を揉むことで、感染を拡大させていた。目撃者が出ると面倒なので、結局は周囲の女も巻き込んで「おれ」がどんどん増えていく。電車から降りる頃には、彼らの中身はすっかり別人になり、寺田同様に、感染を広げたくてたまらなくなっている。今日も周囲のサラリーマン2、3人の股間を次々に揉むと、彼らは困惑と興奮のまま、他の男達の股間を狙い始めた。
「おい! 何するんだ」
「やめろ!」
「んあっ❤」
「はぁぁん❤ チンポッ! チンポ揉ませろッ❤」
まるでゾンビ映画のように騒然としていく車内。次第に喘ぎ声が満ちていく車内の様子を、寺田は陶然と眺めていた。
※
「Stop it! What are you doing out of the blue? I'll sue you in court!……んあっ❤ マジでなんなんすか!? あ、あれっ!? おれ……なんで日本語喋ってんだ?」
岩崎雅義は、取引先の会社の40代のアメリカ人サラリーマンの股間を揉み「笠原雄平」を感染させていた。日本に赴任したばかりだと言っていた、褐色の髪と髭を蓄えたアメリカ人の彼が、突然流暢な日本語を──まるで日本の男子高校生のような口調で喋り始めたことに、本人が一番困惑していた。
「大丈夫ですよ。ジョンソンさん。すぐに『おれ』になりますから」
「なんなんすか!? 岩崎さん! さっきから変っすよ! つーかおれ、なんで外国人のオッサンなんだっけ?……うわっ! 胸毛すごっ! つーか体臭キッつ!」
アメリカ人のサラリーマン、アンディ・J・ジョンソンは応接室のソファで岩崎に押し倒されると、ワイシャツのボタンを外されていった。そして剥き出しになった胸毛が生い茂った自分の胸板に、鼻息を荒くした。日本人よりも濃い体臭がガツンと鼻孔に刺さる。そして、スラックスもベルトを緩められ、下着ごとずり降ろされた。
「うおっ! おれのチンポ! 超でっけーじゃん!」
自分のチンポを初めて見たかのように、目を輝かせる40代のアメリカ人サラリーマン。岩崎はそんな彼の様子を愉しみつつも、その日本人よりも遥かにデカいチンポをしゃぶり始めた。執拗に亀頭を攻められ、酔ったように胡乱な目つきで喘ぎ始める。
「あっ! やっ! な、なんかこれ、ヤバっ! Oh, oh, oh, oh……oh my god!」
毛深く肉厚なアメリカ人の肉体が痙攣し、亀頭から大量の精子を噴き出す。岩崎はそれを漏らすことなく口腔内で受け止めながら、丹念に舌で射精直後の亀頭を舐め取っていく。強烈な快感でヒクヒクと痙攣する彼が──先ほどまでアンディ・J・ジョンソンというアメリカ人だった彼が、荒い呼吸をしながら立ち上がった。
「Is this what you call "Japanese hospitality"? マジですげえよ……さっきまでおれ、アメリカ人のオッサンだったのに、頭の中が日本の高校生になっちまった……うへへ」
褐色の髪と髭を蓄え、学生時代はアメフトで鍛えた屈強な「笠原雄平」が、はにかんだ笑みを浮かべた。
※
「はいはい。ストップストップ。ちょっといいかな」
「なんですか〜?」
「俺たち、酔ってませーん!」
畠山敏弘は繁華街で酔ったサラリーマン4人組に声を掛けた。組んでパトロールをしている遠藤という20代の巡査に目配せする。当然、遠藤も「笠原雄平」になっている。
「ちょっと調べるだけだからね」
「あっ❤」
「えっ❤」
「んあっ❤」
「くぅぅ❤」
20代から50代くらいまでのサラリーマンたちが、遠藤に股間を軽く掴まれて、上擦った声を漏らした。畠山は困惑している彼らに優しく話しかけた。
「はい、ご協力ありがとうございます。皆さんだいぶ酔ってるみたいだし、どこかで休憩して行った方がいいんじゃないですか?」
「んんっ……それも……そうっすね❤」
「課長〜❤ ホテル行きましょうよホテル❤」
「うおっ❤ 課長の体臭、エロくないっすか❤」
「そ、そうか❤ んあっ❤ お、おれ、すっげーオヤジ臭くてエロッ❤」
酔った男たちは「笠原雄平」に感染して嗜好が変わったまま、男同士で近くのラブホテルへと消えていく。朝帰りする頃には、彼らも「笠原雄平」の一員だ。畠山と遠藤はこの手口で、次々に酔ったサラリーマンたちに感染を広げていた。
(あぁ……警察官冥利に尽きるってもんだ。こんなに簡単に感染を広げられるなんて……警察官になって、本当に良かったッ❤)
畠山は警察官としての誇らしさを感じながら、次の獲物を探して、性欲でギラつく目をぎょろりと動かした。
※
「笠原雄平」は、緩やかに広がっていく。それが全人類を飲み込むまで。異常が通常になり、平常になり、日常になり果ててしまうまで。
(終)
──────────
というわけで、人格パンデミック後編です。あれもこれも盛り込んでたら15,000字を超えてしまって、だいぶ時間掛かってしまいました。裏設定として、岩崎さんには娘がいまして、普段は「パパは汗臭いから洗濯物別にして!」って言ってるんですけど「笠原雄平」に感染してからは「親父! ちょっとチンポ貸してくんね? 昨日から抜いてなくてムラムラしてんだよ」と雄平の口調でチンポをおねだりする変態女子高生になっている……という光景も書きたかったんですが、女性への感染もあれこれ書こうとするとさらに膨らみまくってしまうので、今回はカットしました。機会があれば番外編として書くかも。
(800字小説の方は明日8/7に更新します)
→更新しました。
くろねこ@9605
2023-08-07 13:23:28 +0000 UTC黒竜Leo
2023-08-06 15:27:40 +0000 UTC