「あークソッ! マジでなんなんだよ、あのデブ山ッ! バスから降りるときも、俺の尻触ってきたし!」
N大学附属高等学校一年、新谷健吾は腹立たしげにロッカーを閉めた。新谷がジャージを脱いでいくと、日焼けした筋肉質な肢体と整った精悍な顔立ちが相まって、同性から見ても惚れ惚れするような魅力があった。おまけに新谷は中学時代から水泳の大会で何度も一位入賞を果たしており、N大附属高校でも一年生でありながら、団体戦メンバーに選ばれている。同学年の遠藤佑樹も、そんな新谷に憧れるような視線を一瞬送ると、ため息交じりに呟いた。
「ホント、なんであんなキモいデブが、水泳部の監督なんだろうな」
N大附属高校の水泳部は、都内でも有数の強豪である。その監督が、水泳どころか運動部歴のない、畠山隼人という肥満体型の中年男であるのは、部内でも理由が謎だった。あまりにも水泳部に似つかわしくないので、理事長の弱みを握っているのではという噂さえある。畠山は顎や腹回りに贅肉がたっぷりとついた、水泳部よりも相撲部の顧問が似合う巨デブだ。常に半袖ポロシャツを着ているが、汗染みが目立つほど多汗である。49歳という年齢も相まって、汗臭さと加齢臭が混じった酸っぱい匂いを常に撒き散らしていた。畠山監督は、ハゲ散らかした髪とブサイクな顔つきをし、そして何よりも、水泳部員の引き締まった肢体にことあるごとに触ろうとしており、部員たちからは嫌われていた。
「それに比べていいよな〜、ここの高校の監督は。いかにもスポーツマンって感じでさ」
新谷は今回の合宿先である、T高校水泳部監督の姿を思い起こした。松本嘉男というその監督は、名前の字面こそオヤジ臭いが年齢は28歳で、いかにもスポーツマンらしい精悍な容姿をしていた。猛禽類を思わせる鋭い目つきに、今も鍛えていることがわかる引き締まった体躯。部員たちに性的な視線を送る巨デブ監督とは、まるで正反対だ。
「ホントホント。うちの監督と変えて欲しいよなー。なんだよ『隼人』って。あんなデブの名前に、隼って字が入ってんのおかしいだろ。どっちかっていうと豚だろあれは」
「アハハ! 豚っつーか、むしろカバじゃね?」
新谷と遠藤が笑いながら競泳水着に着替え終えると「おい、一年!」と二人を嗜める声が響いた。三年生で水泳部部長の、浦野鉄平だ。浦野は濃い眉をしかめて口を開いた。
「ここは合宿先だぞ。互いの顧問同士を比べて、笑いものにするのはよせ。N大附属の品位が疑われる」
「でも部長、畠山監督ってかなり問題があると思いますけど。この間の田所先輩の下着の件は、どうなったんですか?」
「……その件について、監督が関わっているという証拠はない」
浦野は苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。水泳部の練習が終わったあと、田所という三年生の下着がなくなっていることがわかり、部室で騒ぎになったのだ。幸い、下着はすぐに見つかった。部室内のベンチ下に、やけに汗臭く酸っぱい匂いを放つ状態になって落ちていたのだ。その匂いは、畠山監督の体臭と酷似していた。
「ていうか、部長も監督のこと嫌いだって言ってたじゃないですか。なんでそこまで庇うんすか?」
新谷は率直な疑問を浦野にぶつけた。浦野はうーん、と腕組みをしながら唸った。
「あの人も、昔からああだったわけじゃないんだ。俺が一年だった頃には世話になったし、体型だってもっと……ん? いや、俺が一年の頃から太ってたよな……」
「部長?」
「……ああいや、何でもないんだ。ともかく、俺も畠山監督に思うところはあるが……公の場で、自分の監督を馬鹿にするような真似はよせ。わかったな?」
新谷と遠藤は「わかりました」と答えたが、その後も浦野は首を傾げて呟きながら更衣室を出ていった。
「畠山監督、昔は……というより先週くらいまでは、もっと痩せてて、真面目だったような……いや、さすがにそんなわけないよな」
※
普段なら合宿の参加は任意だが、今回は顧問の畠山により、全部員が強制的に参加させられていた。部員たちの中には反発する声もあったが、T高校の水泳部も実績があり、合宿相手として悪いものではないため、結局は皆が参加していた。
(ただ……なんだったんだ? あの太ったやつ。水泳部じゃないらしいし)
T高校に到着してバスから降りた新谷たちは、T高校の水泳部員たちや顧問と挨拶をしたのだが、その部員の中に、一人だけやけに太った男子生徒が混じっていた。畠山のように水泳とは縁遠そうな贅肉たっぷりの巨漢だ。プールに移動する間にT高校の水泳部員にそれとなく新谷が訊いてみたところ、その太った男子生徒──岡崎卓也は水泳部員でも何でもなく、T高校の松本監督の指示で特別に合宿に参加しているのだという。
「俺たちもわからないんですよ。あの松本監督がわざわざ参加させるくらいだから、何か事情はあるんでしょうけど」
T高校の水泳部員は、信頼する監督が行った突飛な行為に、困惑しながらもそう答えてくれた。
※
「わりい、俺ちょっとトイレ行ってくるわ。先に行っててくれ」
「おう」
そんな到着時の光景を思い出しながら、男子更衣室で競パンに着替え終えた新谷は、プールに併設されているトイレに立ち寄ろうとした。その時、背後から野太い声が掛けられた。
「あっ、あの……新谷健吾くん……だよね」
「うおっ! なんだよ、おどかすなよ」
例の肥満体型の男子生徒──岡崎卓也がいつの間にか背後にいた。脂ぎった髪と肌をしていて、畠山監督と同じくらいブサイクな面構えだ。競パンを穿いているが、腹が出すぎて大量の贅肉が競パンの上に乗っかっていた。新谷は大嫌いな畠山監督を連想して、若干の苛立たしさを覚えた。
「あー、なんか……俺に用すか?」
「えへへ……コレ、貰って欲しいなって思って」
岡崎が差し出したのは、金色をした何かのチケットだった。その高価そうな外見に興味を覚えた新谷は、チケットを受け取り、印刷されている文字を読んだ。
"肉体交換チケット"
"当チケットを受け取った時点で、あなたは受け取った人間との肉体交換を承諾したものとみなします"
"あなたは肉体交換に対する一切の抵抗の意思を放棄し、積極的に望むようになります"
"交換の進み方はチケット譲渡者の意思によって変化します"
「んなっ!? なんだよ、コレっ……!?!?」
新谷の日焼けした精悍な顔が、羞恥と興奮で赤らんでいった。
(入れ替わりとか、あるわけねえだろ! それに、俺がこんなデブと入れ替わるなんて……!)
新谷は想像してしまった。N大附属高校水泳部の新人エースとしての自分が、こんな脂ぎったデブと入れ替わってしまったら、どうなるか。こんな贅肉まみれの肉体では、もはや水泳で表彰台に立つことはできないだろう。水泳の才能も、今までの努力も全てこのデブに譲り渡すことになる──それを想像した時点で、新谷の答えは決まっていた。
「どう? 新谷くん。僕と入れ替わってくれる?」
「あのなあ、んなもん【入れ替わりたいに決まってんだろ!】んあっ!? おっ、俺……なんで?!」
新谷は自分の口から出てきた答えに耳を疑った。
(何だよ! こんなデブと入れ替わるなんて【最高に決まってる】じゃねえか! あっ! へ、変だぞ俺っ! 【こういうブサイクなデブと入れ替わって、人生めちゃくちゃになってみてえッ!】あっ、えっ……あれっ!? 俺っ、そんなこと……【前からずっと思ってたッ!】)
新谷は興奮して鼻息を荒げていた。何度考えても【入れ替わりたい】という結論になってしまう。新谷の凛々しい瞳は性的な興奮で潤み、いつの間にか肩で息をしていた。
「じゃあ、僕と身体を入れ替えるってことで、いいんだね?」
「ああ……た、頼む! 【お前みたいなデブになりたくて、もう我慢できねえんだ!!】 んあっ!」
水泳で鍛えた新谷の逞しい胸板が、きゅぅんと切なく疼いた。チンポは競パンの中で痛いほどに勃起を遂げると、いつの間にかはみ出していた。早く、このデブになりたい。こんなブサイクな顔になって、みっともない姿を晒したい──そんな理解不能な欲望が、新谷の中でみるみる肥大化していく。
「じゃあ、入れ替わろっか。ええっと、おちんちん同士を重ねて、キスをして──」
「おう……やっべ……【マジで楽しみすぎるッ!】 ンあっ!」
新谷は岡崎と共に、競パンを膝下までずり降ろした。鍛えられて凹凸のある新谷の腹筋と、毛深くでっぷりと肥えた岡崎の腹肉とが重なり、新谷のデカマラと岡崎の粗チンの亀頭同士が、どうにか触れ合う。そして新谷は、頬と顎に贅肉がたっぷりとついたブサイクな男子高校生が、目を細めて嬉しそうにキスを迫ってくるのを、鼻息を荒げながら受け入れた。
※
最初に入れ替わったのは、顔とチンポだった。
午前中の合宿は順調だった。精神が高揚し、新谷はバタフライの自己ベストを更新した。そのタイムに、合宿先のT高校の水泳部員たちからも称賛の声が上がった。
「N大附属の新谷……すごくね? あれで一年かよ」
「中学の頃は個人で全国まで行ったって」
プールから上がった新谷の耳に届く、T高校の水泳部員たちの声。普段から浴びなれている称賛の中に、今日は普段と違って嘲笑も混じっていた。
「でも、すんげーブサイクだよな」
(んあっ♥)
その嘲笑に、新谷は緩みそうになった頬を懸命に引き締めた。整えていない太眉。好色そうな目つきの両目と、肉付きがよく盛り上がった頬。鼻っ柱の太い鼻。分厚い唇。贅肉が揺れる二重顎。どこからどう見てもブサイク極まりない顔ではあるのだが、首から下は競泳部員特有の、日焼けした逆三角形の肉体のままなのだ。そのギャップが、より顔のブサイクさを強調してしまっていた。
「新谷、雑音は気にするな」
浦野部長がそれとなく新谷に声を掛けてきた。T高校の部員が新谷のブサイクな顔を嗤った声が聞こえたのだろう。浦野部長は真剣な顔で新谷を励ました。
「余計なことを言う連中は、タイムで黙らせてやれ。合宿が終わる頃には、誰もお前に軽口を言えなくなっているはずだ」
「……うす」
神妙に頷く新谷。しかしその内心は、興奮と悦びで塗りつぶされてしまっていた。
(やっべ! 俺……ブサイク過ぎてT高の連中に顔を嗤われてるし、部長にも気を遣わせてる……【すんげー興奮しちまうッ!】)
"肉体交換チケット"の効果により、入れ替わりに関するあらゆる否定的な感情や思考を改竄されてしまった新谷は、自分がブサイク扱いされることに多幸感を覚えてしまっていた。競パンの中で新谷のチンポが──否、岡崎の粗チンが勃起していく。睾丸はまだそのままなのだが、竿の部分は完全に入れ替わってしまっていた。競パンの中でチンカスをたっぷりと蓄えた短小包茎の粗チンが勃起していく感覚に、新谷は感動さえ覚えていた。
(おっ、俺ッ! ブサイクで粗チンになって、しかもこの後、どんどん岡崎と入れ替わってデブっていくんだよな……ウヒヒ)
新谷は岡崎を盗み見た。肥満体型ではあるが、やけに精悍な顔をした水泳部員──ついさっきまで自分の顔が、新谷がやりそうにない気色の悪い表情をして、こちらに視線を送っていた。
※
入れ替わりの進み方は、岡崎によって任意に定められていた。「最初に顔とチンポが交換される」「その後は、どちからがイク度に何かが交換されていく」
"肉体交換チケット"によって、あらゆる思考が「入れ替わりたい」という結論に至ってしまう新谷が、その欲求に抗うことは不可能だった。
「んっんっんんっ♥ イッ、イクッ!」
午前中の練習が終わり、昼休み。一旦ジャージを着た新谷は、人気の少ない土曜日の校舎の男子トイレの個室に向かった。そして今朝まで岡崎の股間に生えていた短小包茎チンポを弄り、絶頂に達した。包皮の名からどぷどぷと精液が溢れてくる──それに伴い、新谷と岡崎の間で、さらに入れ替わりが発生した。
「んあっ! く、臭えッ♥」
新谷の浅黒く日焼けした逆三角形の肉体から、肥満男特有の酸っぱい体臭がムワッと立ち昇った。二人の間で「生理現象」が入れ替わったのだ。射精途中だった精液さえも、途中から睾丸の機能が入れ替わり、岡崎の精液になっていた。新谷は、自分の口腔内でやけに臭い唾液が分泌されるようになったのを感じ、ブサイクな顔を恍惚に染めて自身のデブ臭を懸命に嗅ぎ取っていた。
「あぁん……♥ 岡崎、臭すぎだろ。この体臭が、今日から俺のモノになるのか……【たまんねえぜ】」
新谷はじゅるりと涎を垂らしながら、個室を出た。洗面台で手を洗いながら、鏡に映るブサイクな己の顔に、悩ましげなため息が漏れてしまう。同じ頃、岡崎も別なトイレで絶頂に達した。さらに続けて二人の間で入れ替わりが発生していたことに、まだ新谷は気づいていなかった。
※
「おい新谷……お前はこれから水泳部のエースとして引っ張っていく立場なんだ。いくら大会で成績を残していようが、俺はお前を特別扱いするつもりはない……わかるよな?」
「……うす。すみませんでした」
午後の練習が始まった直後、新谷は浦野部長から叱られていた。いつの間にか、新谷と岡崎の「体毛」が入れ替わり、新谷の日焼けした逞しい肉体が、毛深くなっていたのだ。腕毛や脛毛だけでなく、胸毛とギャランドゥも密生した、逆三角形の雄臭い肉体──だがタイムを縮めるために体毛の処理を欠かさない水泳部員としては、あまりにもだらしのない姿だった。陰毛の処理も怠っており、競パンの脇からはみ出している始末だった
「幸い、畠山監督もT高の松本監督も、このまま練習に参加していいと仰っている……ひとまずはこのまま練習を続けて、今夜風呂場でちゃんと処理しておけよ。それと……お前、ちゃんと風呂入ってるのか? ちょっと臭うぞ」
「うす。今夜よく洗っておきます」
浦野部長に叱られている間も、新谷の短小包茎チンポは勃起しっ放しだった。
(おっ、俺ッ! こんな毛深くて臭い身体になって、部長にまで叱られてるッ♥ 情けなさすぎて……【勃起しちまうッ!】)
自分が自分でなくなっていく。水泳とは程遠い肉体になっていく。恐怖を恍惚に書き換えられた新谷は、神妙な顔をして頭を下げていた。
そして午後の練習が中ほどまで過ぎた頃、岡崎がトイレへと行った直後──再び入れ替わりが起こった。岡崎がトイレで射精したのだ。
(おごっ……ゴボッ!)
華麗なフォームでバタフライをしていた新谷の動きが、急にぎこちなくなり、足がもつれてプールに沈んでいった。
「おい、新谷! 大丈夫か!」
新谷が他の部員たちによってプールサイドに引き上げられると、浦野部長が呆れたような声を漏らした。
「新谷……ここはレギュラー用のコースだぞ。お前はまだ泳げないんだから、あっちのコースだろう」
「えっ……あっ……おっ、俺っ! さっきまで、レギュラーでッ!」
「だから、ここはレギュラー用のコースだっつってんだろ? おーい、遠藤。新谷の面倒みてやってくれ」
今回入れ替わったのは「身体能力」だった。自分自身の誇りであった、水泳の才能──それに付随した努力や経験値、全てが岡崎に奪われた。そして新谷は、水泳どころか運動とは無縁な岡崎の身体能力を押し付けられた。外見は日焼けした毛深い逆三角形の体型のまま、運動音痴のカナヅチになってしまったのだ。
「うおっ! T高のデブすげえな……なんであんな体型で泳げるんだ?」
一方、岡崎は贅肉まみれの巨漢の肉体のまま、新谷の身体能力を手に入れて、悠々と泳いでいた。さすがに贅肉が多すぎるので大した速さではないが、それでも体型から考えれば驚異的な速さだった。浦野部長が感心した声を出した。
「見ろよ、新谷。あんな体型でも、努力すればあれだけの速さで泳げるんだ。お前はガタイはいいんだから、あっちでまずクロールから始めてみろ。な?」
先ほどまで自分のものだった身体能力を奪われ、それをお手本にしてみろと言われる屈辱──新谷が感じるはずだった屈辱はチケットによって多幸感へと改竄される。新谷は新入生向けのコースへとプールサイドを歩きながら、逞しい肉体を震わせてオルガスムスに達した。さらに入れ替わりが起こり──
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