「あークソッ! マジでなんなんだよ、あのデブ山ッ! バスから降りるときも、俺の尻触ってきたし!」
N大学附属高等学校一年、新谷健吾は腹立たしげにロッカーを閉めた。新谷がジャージを脱いでいくと、日焼けした筋肉質な肢体と整った精悍な顔立ちが相まって、同性から見ても惚れ惚れするような魅力があった。おまけに新谷は中学時代から水泳の大会で何度も一位入賞を果たしており、N大附属高校でも一年生でありながら、団体戦メンバーに選ばれている。同学年の遠藤佑樹も、そんな新谷に憧れるような視線を一瞬送ると、ため息交じりに呟いた。
「ホント、なんであんなキモいデブが、水泳部の監督なんだろうな」
N大附属高校の水泳部は、都内でも有数の強豪である。その監督が、水泳どころか運動部歴のない、畠山隼人という肥満体型の中年男であるのは、部内でも理由が謎だった。あまりにも水泳部に似つかわしくないので、理事長の弱みを握っているのではという噂さえある。畠山は顎や腹回りに贅肉がたっぷりとついた、水泳部よりも相撲部の顧問が似合う巨デブだ。常に半袖ポロシャツを着ているが、汗染みが目立つほど多汗である。49歳という年齢も相まって、汗臭さと加齢臭が混じった酸っぱい匂いを常に撒き散らしていた。畠山監督は、ハゲ散らかした髪とブサイクな顔つきをし、そして何よりも、水泳部員の引き締まった肢体にことあるごとに触ろうとしており、部員たちからは嫌われていた。
「それに比べていいよな〜、ここの高校の監督は。いかにもスポーツマンって感じでさ」
新谷は今回の合宿先である、T高校水泳部監督の姿を思い起こした。松本嘉男というその監督は、名前の字面こそオヤジ臭いが年齢は28歳で、いかにもスポーツマンらしい精悍な容姿をしていた。猛禽類を思わせる鋭い目つきに、今も鍛えていることがわかる引き締まった体躯。部員たちに性的な視線を送る巨デブ監督とは、まるで正反対だ。
「ホントホント。うちの監督と変えて欲しいよなー。なんだよ『隼人』って。あんなデブの名前に、隼って字が入ってんのおかしいだろ。どっちかっていうと豚だろあれは」
「アハハ! 豚っつーか、むしろカバじゃね?」
新谷と遠藤が笑いながら競泳水着に着替え終えると「おい、一年!」と二人を嗜める声が響いた。三年生で水泳部部長の、浦野鉄平だ。浦野は濃い眉をしかめて口を開いた。
「ここは合宿先だぞ。互いの顧問同士を比べて、笑いものにするのはよせ。N大附属の品位が疑われる」
「でも部長、畠山監督ってかなり問題があると思いますけど。この間の田所先輩の下着の件は、どうなったんですか?」
「……その件について、監督が関わっているという証拠はない」
浦野は苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。水泳部の練習が終わったあと、田所という三年生の下着がなくなっていることがわかり、部室で騒ぎになったのだ。幸い、下着はすぐに見つかった。部室内のベンチ下に、やけに汗臭く酸っぱい匂いを放つ状態になって落ちていたのだ。その匂いは、畠山監督の体臭と酷似していた。
「ていうか、部長も監督のこと嫌いだって言ってたじゃないですか。なんでそこまで庇うんすか?」
新谷は率直な疑問を浦野にぶつけた。浦野はうーん、と腕組みをしながら唸った。
「あの人も、昔からああだったわけじゃないんだ。俺が一年だった頃には世話になったし、体型だってもっと……ん? いや、俺が一年の頃から太ってたよな……」
「部長?」
「……ああいや、何でもないんだ。ともかく、俺も畠山監督に思うところはあるが……公の場で、自分の監督を馬鹿にするような真似はよせ。わかったな?」
新谷と遠藤は「わかりました」と答えたが、その後も浦野は首を傾げて呟きながら更衣室を出ていった。
「畠山監督、昔は……というより先週くらいまでは、もっと痩せてて、真面目だったような……いや、さすがにそんなわけないよな」
※
普段なら合宿の参加は任意だが、今回は顧問の畠山により、全部員が強制的に参加させられていた。部員たちの中には反発する声もあったが、T高校の水泳部も実績があり、合宿相手として悪いものではないため、結局は皆が参加していた。
(ただ……なんだったんだ? あの太ったやつ。水泳部じゃないらしいし)
T高校に到着してバスから降りた新谷たちは、T高校の水泳部員たちや顧問と挨拶をしたのだが、その部員の中に、一人だけやけに太った男子生徒が混じっていた。畠山のように水泳とは縁遠そうな贅肉たっぷりの巨漢だ。プールに移動する間にT高校の水泳部員にそれとなく新谷が訊いてみたところ、その太った男子生徒──岡崎卓也は水泳部員でも何でもなく、T高校の松本監督の指示で特別に合宿に参加しているのだという。
「俺たちもわからないんですよ。あの松本監督がわざわざ参加させるくらいだから、何か事情はあるんでしょうけど」
T高校の水泳部員は、信頼する監督が行った突飛な行為に、困惑しながらもそう答えてくれた。
※
「わりい、俺ちょっとトイレ行ってくるわ。先に行っててくれ」
「おう」
そんな到着時の光景を思い出しながら、男子更衣室で競パンに着替え終えた新谷は、プールに併設されているトイレに立ち寄ろうとした。その時、背後から野太い声が掛けられた。
「あっ、あの……新谷健吾くん……だよね」
「うおっ! なんだよ、おどかすなよ」
例の肥満体型の男子生徒──岡崎卓也がいつの間にか背後にいた。脂ぎった髪と肌をしていて、畠山監督と同じくらいブサイクな面構えだ。競パンを穿いているが、腹が出すぎて大量の贅肉が競パンの上に乗っかっていた。新谷は大嫌いな畠山監督を連想して、若干の苛立たしさを覚えた。
「あー、なんか……俺に用すか?」
「えへへ……コレ、貰って欲しいなって思って」
岡崎が差し出したのは、金色をした何かのチケットだった。その高価そうな外見に興味を覚えた新谷は、チケットを受け取り、印刷されている文字を読んだ。
"肉体交換チケット"
"当チケットを受け取った時点で、あなたは受け取った人間との肉体交換を承諾したものとみなします"
"あなたは肉体交換に対する一切の抵抗の意思を放棄し、積極的に望むようになります"
"交換の進み方はチケット譲渡者の意思によって変化します"
「んなっ!? なんだよ、コレっ……!?!?」
新谷の日焼けした精悍な顔が、羞恥と興奮で赤らんでいった。
(入れ替わりとか、あるわけねえだろ! それに、俺がこんなデブと入れ替わるなんて……!)
新谷は想像してしまった。N大附属高校水泳部の新人エースとしての自分が、こんな脂ぎったデブと入れ替わってしまったら、どうなるか。こんな贅肉まみれの肉体では、もはや水泳で表彰台に立つことはできないだろう。水泳の才能も、今までの努力も全てこのデブに譲り渡すことになる──それを想像した時点で、新谷の答えは決まっていた。
「どう? 新谷くん。僕と入れ替わってくれる?」
「あのなあ、んなもん【入れ替わりたいに決まってんだろ!】んあっ!? おっ、俺……なんで?!」
新谷は自分の口から出てきた答えに耳を疑った。
(何だよ! こんなデブと入れ替わるなんて【最高に決まってる】じゃねえか! あっ! へ、変だぞ俺っ! 【こういうブサイクなデブと入れ替わって、人生めちゃくちゃになってみてえッ!】あっ、えっ……あれっ!? 俺っ、そんなこと……【前からずっと思ってたッ!】)
新谷は興奮して鼻息を荒げていた。何度考えても【入れ替わりたい】という結論になってしまう。新谷の凛々しい瞳は性的な興奮で潤み、いつの間にか肩で息をしていた。
「じゃあ、僕と身体を入れ替えるってことで、いいんだね?」
「ああ……た、頼む! 【お前みたいなデブになりたくて、もう我慢できねえんだ!!】 んあっ!」
水泳で鍛えた新谷の逞しい胸板が、きゅぅんと切なく疼いた。チンポは競パンの中で痛いほどに勃起を遂げると、いつの間にかはみ出していた。早く、このデブになりたい。こんなブサイクな顔になって、みっともない姿を晒したい──そんな理解不能な欲望が、新谷の中でみるみる肥大化していく。
「じゃあ、入れ替わろっか。ええっと、おちんちん同士を重ねて、キスをして──」
「おう……やっべ……【マジで楽しみすぎるッ!】 ンあっ!」
新谷は岡崎と共に、競パンを膝下までずり降ろした。鍛えられて凹凸のある新谷の腹筋と、毛深くでっぷりと肥えた岡崎の腹肉とが重なり、新谷のデカマラと岡崎の粗チンの亀頭同士が、どうにか触れ合う。そして新谷は、頬と顎に贅肉がたっぷりとついたブサイクな男子高校生が、目を細めて嬉しそうにキスを迫ってくるのを、鼻息を荒げながら受け入れた。
※
最初に入れ替わったのは、顔とチンポだった。
午前中の合宿は順調だった。精神が高揚し、新谷はバタフライの自己ベストを更新した。そのタイムに、合宿先のT高校の水泳部員たちからも称賛の声が上がった。
「N大附属の新谷……すごくね? あれで一年かよ」
「中学の頃は個人で全国まで行ったって」
プールから上がった新谷の耳に届く、T高校の水泳部員たちの声。普段から浴びなれている称賛の中に、今日は普段と違って嘲笑も混じっていた。
「でも、すんげーブサイクだよな」
(んあっ♥)
その嘲笑に、新谷は緩みそうになった頬を懸命に引き締めた。整えていない太眉。好色そうな目つきの両目と、肉付きがよく盛り上がった頬。鼻っ柱の太い鼻。分厚い唇。贅肉が揺れる二重顎。どこからどう見てもブサイク極まりない顔ではあるのだが、首から下は競泳部員特有の、日焼けした逆三角形の肉体のままなのだ。そのギャップが、より顔のブサイクさを強調してしまっていた。
「新谷、雑音は気にするな」
浦野部長がそれとなく新谷に声を掛けてきた。T高校の部員が新谷のブサイクな顔を嗤った声が聞こえたのだろう。浦野部長は真剣な顔で新谷を励ました。
「余計なことを言う連中は、タイムで黙らせてやれ。合宿が終わる頃には、誰もお前に軽口を言えなくなっているはずだ」
「……うす」
神妙に頷く新谷。しかしその内心は、興奮と悦びで塗りつぶされてしまっていた。
(やっべ! 俺……ブサイク過ぎてT高の連中に顔を嗤われてるし、部長にも気を遣わせてる……【すんげー興奮しちまうッ!】)
"肉体交換チケット"の効果により、入れ替わりに関するあらゆる否定的な感情や思考を改竄されてしまった新谷は、自分がブサイク扱いされることに多幸感を覚えてしまっていた。競パンの中で新谷のチンポが──否、岡崎の粗チンが勃起していく。睾丸はまだそのままなのだが、竿の部分は完全に入れ替わってしまっていた。競パンの中でチンカスをたっぷりと蓄えた短小包茎の粗チンが勃起していく感覚に、新谷は感動さえ覚えていた。
(おっ、俺ッ! ブサイクで粗チンになって、しかもこの後、どんどん岡崎と入れ替わってデブっていくんだよな……ウヒヒ)
新谷は岡崎を盗み見た。肥満体型ではあるが、やけに精悍な顔をした水泳部員──ついさっきまで自分の顔が、新谷がやりそうにない気色の悪い表情をして、こちらに視線を送っていた。
※
入れ替わりの進み方は、岡崎によって任意に定められていた。「最初に顔とチンポが交換される」「その後は、どちからがイク度に何かが交換されていく」
"肉体交換チケット"によって、あらゆる思考が「入れ替わりたい」という結論に至ってしまう新谷が、その欲求に抗うことは不可能だった。
「んっんっんんっ♥ イッ、イクッ!」
午前中の練習が終わり、昼休み。一旦ジャージを着た新谷は、人気の少ない土曜日の校舎の男子トイレの個室に向かった。そして今朝まで岡崎の股間に生えていた短小包茎チンポを弄り、絶頂に達した。包皮の名からどぷどぷと精液が溢れてくる──それに伴い、新谷と岡崎の間で、さらに入れ替わりが発生した。
「んあっ! く、臭えッ♥」
新谷の浅黒く日焼けした逆三角形の肉体から、肥満男特有の酸っぱい体臭がムワッと立ち昇った。二人の間で「生理現象」が入れ替わったのだ。射精途中だった精液さえも、途中から睾丸の機能が入れ替わり、岡崎の精液になっていた。新谷は、自分の口腔内でやけに臭い唾液が分泌されるようになったのを感じ、ブサイクな顔を恍惚に染めて自身のデブ臭を懸命に嗅ぎ取っていた。
「あぁん……♥ 岡崎、臭すぎだろ。この体臭が、今日から俺のモノになるのか……【たまんねえぜ】」
新谷はじゅるりと涎を垂らしながら、個室を出た。洗面台で手を洗いながら、鏡に映るブサイクな己の顔に、悩ましげなため息が漏れてしまう。同じ頃、岡崎も別なトイレで絶頂に達した。さらに続けて二人の間で入れ替わりが発生していたことに、まだ新谷は気づいていなかった。
※
「おい新谷……お前はこれから水泳部のエースとして引っ張っていく立場なんだ。いくら大会で成績を残していようが、俺はお前を特別扱いするつもりはない……わかるよな?」
「……うす。すみませんでした」
午後の練習が始まった直後、新谷は浦野部長から叱られていた。いつの間にか、新谷と岡崎の「体毛」が入れ替わり、新谷の日焼けした逞しい肉体が、毛深くなっていたのだ。腕毛や脛毛だけでなく、胸毛とギャランドゥも密生した、逆三角形の雄臭い肉体──だがタイムを縮めるために体毛の処理を欠かさない水泳部員としては、あまりにもだらしのない姿だった。陰毛の処理も怠っており、競パンの脇からはみ出している始末だった
「幸い、畠山監督もT高の松本監督も、このまま練習に参加していいと仰っている……ひとまずはこのまま練習を続けて、今夜風呂場でちゃんと処理しておけよ。それと……お前、ちゃんと風呂入ってるのか? ちょっと臭うぞ」
「うす。今夜よく洗っておきます」
浦野部長に叱られている間も、新谷の短小包茎チンポは勃起しっ放しだった。
(おっ、俺ッ! こんな毛深くて臭い身体になって、部長にまで叱られてるッ♥ 情けなさすぎて……【勃起しちまうッ!】)
自分が自分でなくなっていく。水泳とは程遠い肉体になっていく。恐怖を恍惚に書き換えられた新谷は、神妙な顔をして頭を下げていた。
そして午後の練習が中ほどまで過ぎた頃、岡崎がトイレへと行った直後──再び入れ替わりが起こった。岡崎がトイレで射精したのだ。
(おごっ……ゴボッ!)
華麗なフォームでバタフライをしていた新谷の動きが、急にぎこちなくなり、足がもつれてプールに沈んでいった。
「おい、新谷! 大丈夫か!」
新谷が他の部員たちによってプールサイドに引き上げられると、浦野部長が呆れたような声を漏らした。
「新谷……ここはレギュラー用のコースだぞ。お前はまだ泳げないんだから、あっちのコースだろう」
「えっ……あっ……おっ、俺っ! さっきまで、レギュラーでッ!」
「だから、ここはレギュラー用のコースだっつってんだろ? おーい、遠藤。新谷の面倒みてやってくれ」
今回入れ替わったのは「身体能力」だった。自分自身の誇りであった、水泳の才能──それに付随した努力や経験値、全てが岡崎に奪われた。そして新谷は、水泳どころか運動とは無縁な岡崎の身体能力を押し付けられた。外見は日焼けした毛深い逆三角形の体型のまま、運動音痴のカナヅチになってしまったのだ。
「うおっ! T高のデブすげえな……なんであんな体型で泳げるんだ?」
一方、岡崎は贅肉まみれの巨漢の肉体のまま、新谷の身体能力を手に入れて、悠々と泳いでいた。さすがに贅肉が多すぎるので大した速さではないが、それでも体型から考えれば驚異的な速さだった。浦野部長が感心した声を出した。
「見ろよ、新谷。あんな体型でも、努力すればあれだけの速さで泳げるんだ。お前はガタイはいいんだから、あっちでまずクロールから始めてみろ。な?」
先ほどまで自分のものだった身体能力を奪われ、それをお手本にしてみろと言われる屈辱──新谷が感じるはずだった屈辱はチケットによって多幸感へと改竄される。新谷は新入生向けのコースへとプールサイドを歩きながら、逞しい肉体を震わせてオルガスムスに達した。さらに入れ替わりが起こり──
※
「だ、だんだん……太ってきてる。んひ♥」
土曜日の練習を終え、合宿所で布団に入った新谷は、ジャージの中で自分の腹を確かめ、小鼻を膨らませた。凹凸のある腹筋ではなく、贅肉がついただらしのない腹回りに変わりつつある。「身体能力」を奪われた後の射精から、二人の体型が徐々に入れ替わり始めたのだ。といっても、かなりの巨漢である岡崎の贅肉が一気に入れ替わるのではなく、新谷が徐々に太り、岡崎が徐々に痩せ始めていた。今の新谷はぽっちゃりとした体型の水泳部員だった。
(遠藤……俺のこと、すげえ面倒臭そうな目でみてたなぁ♥ 【入れ替わりの醍醐味って感じで、すげー興奮しちまうッ♥】)
仲の良かった遠藤は、新谷が毛深く、臭く、水泳の才能もないデブになっていくにつれて、徐々によそよそしい態度になっていった。「なんでこんな臭いデブの面倒を、俺が見ないといけないんだ」と、はっきり顔に書いてあるような、白けた表情をしていた。
(お、俺が完全に岡崎みたいなデブになったら、ものすごい嫌われそうだ。ウヒッ♥【親友の遠藤から、もっと冷たい態度取られてぇ〜ッ♥】)
消灯された部屋の中で、新谷は自分の太り始めた胸を揉みながら、包茎チンポを弄り始めた。
※
翌朝──新谷健吾の肉体は、完全に岡崎卓也の肉体と入れ替わってしまっていた。それどころか「水泳部員ではない」ことになってしまったため、ややこしい事態になっていた。
「ありえないっすよ! あのデブ! 水泳部の合宿に忍び込むなんて!」
遠藤が浦野部長に訴えている。あのデブ──そう呼ばれた新谷は、親友からの冷たい言葉に、自分の肉体が入れ替わったことを強く実感し、その多幸感に気色の悪い笑みを浮かべていた。
「その、新谷──だったか?」
遠藤に呼ばれて部屋にやって来た浦野部長が、冷めた目で新谷を見下ろしていた。新谷健吾は肉体こそ岡崎卓也と入れ替わったが、あくまでも入れ替わったのは肉体だけであり、周囲からの扱われ方は「N大学附属高等学校一年の新谷健吾」ではあった。ただし、水泳部員ではなく「水泳部の練習をよく覗きに来る、変態気味の男子生徒」という立場になっていたが。そのため、朝目覚めて同室に新谷が寝ていることを発見した遠藤は、新谷を合宿に忍び込んできた変態男子生徒として、浦野部長に突き出していた。
「監督には俺から報告してある。すぐに……あっ、おはようございます」
「おはよう。君が新谷くんだね?」
遠藤たちの部屋に到着したのは、T高校水泳部顧問の松本嘉男監督だった。28歳の日焼けした精悍な水泳部顧問は真剣な表情をしながら、浦野部長と遠藤に告げた。
「畠山監督から事情は聞いている。この場は私が預かろう。君たちは朝食に向かいなさい。新谷くんのことはこちらで対処するから」
「……わかりました。よろしくお願いします」
遠藤と浦野部長が部屋を出ていくと、我慢しきれないといった様子で松本監督は吹き出した。
「プッ! アハハハッ! とんでもないブサイクになったもんだな! 新谷!」
「え? 松本監督……?」
「肉体交換チケットだよ。あれはな、俺が岡崎に融通してやったものなんだ。俺にはアレを手に入れるツテがあってな。自分で入れ替わったり、他人同士を入れ替えさせたりして楽しんでるんだ。なんなら今の俺の身体も、元の俺の身体じゃないしな」
「そ、そうだったんですか……!?」
「この身体、お前も知っている奴だったんだぜ。おっと、噂をすれば……遅いぞ、デブ山! なにチンタラしてんだ」
遠藤たちの部屋に、畠山監督が遅れてやってきた。走ってやってきたのか、全身が汗だくで、白いポロシャツには盛大な汗染みがあり、濃厚なデブ臭を放っていた。49歳と28歳。年上のはずの畠山監督に、松本監督は威圧的な態度で接していた。それに対して畠山監督は、ヘコヘコと卑屈な態度で、バーコード状にハゲた頭を下げた。
「ハヒッ! すっ、すみません……! この身体、どうしても足が遅くて……」
「なんだぁ? 俺がせっかくお前の為に用意してやった身体に、文句でもあんのか?」
松本監督は畠山監督の正面に立つと、畠山監督の紺のジャージの股間を掴んだ。その途端、畠山監督は「あんっ♥」と情けない声を発した。
「と、とんでもないです! こんな……【ブサイクな】【デブハゲオヤジの身体にして頂いて】……【とても幸せですッ!】」
畠山監督は、肥えたカバのようにブサイクな顔を、デレッと蕩けさせた。手入れなどしていない鼻毛が飛び出した小鼻が、ムフームフーとすぼんだり閉じたりしている。松本監督がその様子をせせら笑いながら促した。
「おいデブ山、お前のチケットを出せよ」
「はっハイッ! ほら、新谷……これが俺のチケットだ。もう使い終わってるが……触れば俺が、前はどんな体だったのかわかるぞ」
畠山監督が、ジャージのポケットからくしゃくしゃになった肉体交換チケットを取り出した。新谷がそれに触れると、途端に記憶が蘇った。先週まで畠山監督は、こんなブサイクなデブハゲオヤジではなかった。畠山隼人、年齢は28歳。いかにもスポーツマンといった逞しい風貌だった──ちょうど、松本監督のような。新谷は松本監督を見た。記憶の中の畠山監督は、まさに今の松本監督の姿だった。
「ま、松本監督が……畠山監督だったんですか!?」
「ああ。肉体だけ入れ替えたんだ。肉体以外にも何をどこまで入れ替えるかは、チケットの持ち主の意思で変えられるからな。相手の立場ごと入れ替えることもできるし、肉体だけ入れ替えることもできる」
松本監督は、畠山監督の金玉をジャージの上から強めに揉みながら言った。畠山監督は野太い声で「あっあっあっ」と喘ぎ始めた。松本監督が続けた。
「そもそも俺は『松本嘉男』という人間でもないしな。何ヶ月か前に、元の『松本嘉男』の肉体と立場を入れ替えたんだが、それにも飽きてきたんで、すんげーブサイクなデブオヤジと肉体だけ入れ替えたうえで、その肉体を畠山と入れ替えたんだ。おう、どうだ? デブ山、今の気分は」
「ハヒッ! 【最高ですッ!】【妻も息子もいたのにッ!】【独身の変態オヤジになって!】【水泳で鍛えてきた身体もッ!】【こんな贅肉まみれのデブになって!】【男子生徒の下着を盗む変態オヤジになったのがッ!】【最ッ高に興奮しますッ!】」
畠山隼人は、かつての若く、逞しかった自分の肉体に金玉を揉まれながら、絶頂に達した。二重顎を揺らし、野太い声をあげながら、白いポロシャツを盛り上げるでっぷりした胸板を豪快に揉む。かつてN大学附属高校水泳部の顧問として、生徒たちから慕われていた逞しいスポーツマンの面影は、もはやどこにもなかった。肉体交換チケットの効果により、入れ替わりを徹底的に肯定するようになった畠山監督の価値観からすれば、若く逞しかった自分がデブハゲ変態オヤジとなるのは、マゾヒズムの極地であり、最高の陵辱であった。松本監督が畠山監督の股間から手を離して言った。
「岡崎の入れ替わり相手として新谷を推薦したのは、この畠山なんだ。新谷は感謝しないとな?」
「は、畠山監督……【あざっす!】【俺も、畠山監督みたいなデブになれて】【マジで感謝してます!】」
本来、新谷が感じるはずだった怒りや屈辱は、畠山監督に対する感謝の念にすり替えられた。新谷は汗臭さと精液臭さを放つ畠山監督に近づくと、その出っ張った腹同士をくっつけあって抱擁し始めた。
「んああ……あんなにカッコよかった畠山監督が、こんなデブオヤジに……♥」
「んくっ! 前途有望な水泳選手を、こんなデブにしてしまうとは……♥ なんて変態な監督なんだ、俺はッ♥」
贅肉まみれの変態男たちが暑苦しい抱擁を交わすなか、この入れ替わりのもうひとりの当事者──岡崎卓也が現れた。「T高校の岡崎卓也」という立場はそのままだが、肉体は新谷のものを奪っている。今の岡崎は、競泳水着が似合う、褐色に日焼けした精緻な筋肉質のイケメンになっていた。さらに新谷の水泳の才能や経歴も奪い取っていたため「T高校の水泳部に所属する期待の新人エース」になっている。
「失礼しまーす、松本監督。うわっ、元の俺キモすぎ……デブ同士で盛ってんのかよ」
「おう。岡崎。見違えたな」
「松本監督のおかげっすよ〜! んっ、ちょっ……あっ!」
「いいだろう? 俺のおかげでその身体を手に入れたんだから、少しくらい味見させろよ」
松本監督が岡崎を──見た目の上では畠山監督が新谷の肉体を布団の上に組み敷き、筋肉質な男同士のまぐわいを始めた。一方の新谷と畠山監督は、互いの汗臭さや加齢臭を堪能しあい、贅肉たっぷりの肉体を愛撫していた。やがて感極まった畠山監督が、新谷の股間に顔を埋め、新谷のチンカスだらけの短小包茎を肉厚な舌を這わせ、濃密なフェラチオを始めた。新谷は興奮し、喘ぎながら実感した。
(おっ、俺っ……この合宿に来て【本当によかったッ!】)
将来有望な競泳選手から変態男子生徒に生まれ変わった新谷健吾は、逞しいスポーツマンから変態オヤジに変わり果てた畠山監督の口腔内に、濃厚なチンカスと精液を大量に注ぎ込んだ。
(終)
──────────
というわけで、4つめのコミッション作品です。以前書いた入れ替わりチケットを使ったものですね。こういう風に以前の作品のスピンオフや続編の依頼を受けるのも中々面白かったです。顔はブサイクだけど体つきは逞しい、っていう途中の状態も結構好きですね。
くろねこ@9605
2023-04-09 13:30:30 +0000 UTCブウ
2023-04-05 14:08:14 +0000 UTCくろねこ@9605
2023-02-27 12:50:36 +0000 UTC黒竜Leo
2023-02-26 19:04:49 +0000 UTC