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くろねこ@9605
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花嫁と花婿と花嫁の父の立場交換【未完成】

「何してるの? お父さん。早く早く!」


「そう急かすなって」


 岩村健造は苦笑いしながら、車から降りた。妻を亡くしてから男手ひとつで育ててきた娘の留美が、婚約者を連れてきてからというもの、健造の日々は目まぐるしく過ぎていった。今日は留美とその婚約者に誘われて、式場の下見に来たのだ。健造は、留美と連れ立って歩いている男に対して声を掛けた。

 

「しかし、俺なんかが付いてきてよかったのか? こういうもんは二人で選ぶもんだろう」


「いえ、僕もお義父さんの意見をぜひ伺いたくて」


 そう答えたのは、留美の婚約者である室田雅彦である。留美と同じ会社の先輩であり、社内恋愛の結果、プロポーズに至ったという話は聞いていた。ビヤ樽が服を着て歩いているような固太った体型の健造とは違い、いかにも爽やかなスポーツマンといった風貌の男である。学生時代はラグビーをやっていたらしい。体育会系らしく、年上をしっかりと立てるこの男に、健造もすっかり絆されていた。最初こそ身構えたが、今では健造も、彼を息子のように思っている。

 

「ここの式場、前にも下見に来たんだけど、ちょっと変わったオプションがあるの。それを付けると大幅に割引になるのよ。でも、お父さんにも協力してもらわないといけなくて」


 歩きながら留美が健造に説明する。式場の入り口まで来ると、あらかじめ電話してあったのか、プランナーの若い男が健造たちを待っていた。

 

「室田さまと岩村さまですね。ご来場お待ちしておりました。ささ、どうぞこちらへ」


 斉藤に案内され、ロビー横の応接室に通された健造たち。斉藤はパンフレットや料金プランの紙を机に広げると、留美と雅彦を相手に詳しい説明を始めた。健造も最初は聞いていたが、しばらくすると手持ち無沙汰になり、こっそりとあくびを噛み殺した。やはり俺が来たのは場違いじゃないか?と健造が考え始めた頃、留美が健造の身体をつついた。

 

「ちょっとお父さん。オプションの話聞いてた?」


「あ? あー……うん。聞いてた聞いてた。いいんじゃないか?」


 健造は思わずそう返事してしまった。それが、取り返しのつかない事態の始まりになることも知らずに。

 

「そう。よかった。じゃあ、雅彦くん、ここに決めちゃおうか?」


「そうだね。ここの式場以上に条件がいいところ、そうはないだろうし。僕もここでいいと思うよ」


「じゃあ、決まりね。このオプション付けて下さい」


「ええ。このオプションを付けられた方々は、皆様とてもお喜びになられますね。それではこちらに御署名を頂けますか?」


「はい」


 雅彦が書類に署名を行い、プランナーの斉藤に渡した。斉藤は書類を確認すると、笑顔で三人にこう告げた。

 

「ええ。契約の成立を確認致しました。これより【岩村留美さまは花婿の立場になり】【岩村健造さまは花嫁の立場になり】【室田雅彦さまは花嫁の父親の立場になります】」


「ん? なにっ!?」


 健造が驚くと同時に、奇妙な恍惚感が三人を包み込んだ。

 

「あぁ……」


 留美は悩ましげに眉根を寄せ、椅子に座ったまま、内股でもじもじと足を動かした。頬が紅潮し、感じてしまっているのか、父親と婚約者の前だというのに、喘ぎ声を漏らしてしまっている。


「ンッ、フーッ……!」


 雅彦は眼を閉じたまま椅子に深く座り直し、ギュッと力強く拳を握りしめて、快感に耐えていた。下半身は明らかに興奮の印があり、筋肉質な肩が、ときおりビクリと痙攣していた。

 

「ンイッ?! んあぁぁッ!!」


 快感に対して無警戒だった健造は、思わず椅子から立ち上がり、あられもない声を上げた。土方仕事で日焼けした厳つい顔が、情けなく歪む。白髪交じりの角刈り頭から、蒸れた足の爪先まで。自分そのものが、誰か他人として塗り替えられてしまう。それは健造に対して恐怖と……それを上回る快感をもたらしていた。金玉がぐりぐりとせり上がり、射精が近いことを示していた。健造は本能的に、股間を抑えた。射精してはいけない。射精すると……何かが変わってしまう。しかし、男の生理現象に意志の力だけでは抗い難く、健造はがに股のまま、娘とその婚約者の前で、オルガスムスに達した。

 

「んあ゛っ! い、いぐぅ〜!!」


 それが、岩村健造が男として最後に行った射精であった。

 


 射精の余韻が引いた後、健造は肩で息をしながら、どさりと椅子に座り込んだ。

 

(いったいぜんたい、今のは何だったんだ? 俺は一体……ん? 俺?)


 健造は熱っぽい頭を動かし、自分の身体を見た。式場ということで下見とは言え、普段は着ないスーツを引っ張り出して着ている。そのスラックスの股間に、先ほど射精したばかりの染みが、じっとりと広がっていた。それを見た健造の顔が、真っ赤に染まる。

 

「いっ、いやぁぁっ!? なんで、なんで私……ッ!」


 健造は股間を両手で抑えると、内股になった。濁声の悲鳴が響き渡る。

 

「なんで私が……お父さんなのっ!?」


 健造は混乱していた。自分は確かに岩村健造のはずだ。年齢は63歳。仕事は建設業。男やもめとして、娘を育ててきたことも覚えている。男として生きてきた人生を全て思い出せる。そのはずなのに──今の健造の脳は「自分は女であり」「結婚直前の花嫁である」と、矛盾した結論を認識していた。自分が男物のスーツを着ていることに違和感しか感じない。さらに、自身の股間にチンポが生えていることも、何かの間違いではないのかと錯覚してしまう。

 

「そりゃあそうだろう。さっきまで健造は、僕の父親だったんだからな」

 

 留美が、どこか男っぽい口調で口を開いた。見慣れているはずの留美の姿に、健造は思わずギョッとした。体格のよい男が、女装しているように見えたのだ。姿形は、先ほどまでの留美と全く変わっていないにも関わらず。

 

「おお……こりゃあいい。なんだか若返った気分だな」


 雅彦は、感動したように自分の身体を触っていた。シャツをめくりあげ、割れた腹筋を触っている。先ほどまで、三十代の精悍な元ラガーマンだった雅彦の印象が一変していた。なぜか、固太った中年男のように見えてしまう。確かに腹筋は割れているのだが、ビール腹で毛深い腹に……健造の腹を見ているかのように錯覚してしまうし、すらりとした足も、短足のように見えていた。

 

「ちょっと! どういうことか説明しなさいよ!」


 健造は精液でヌルつく下着の感触に涙目になりながら、プランナーに詰め寄った。プランナーの斉藤は、事もなげに説明を始めた。

 

「先ほど申し上げました通り、皆様の【立場】だけを入れ替えました。【花婿】【花嫁】【花嫁の父親】という三点のみが入れ替わっています。そのため、皆様の氏名や住所、職業はそのままとなっております」


(未完)



──────────


 タイトル通り、花嫁と花婿と花嫁の父の立場交換です。一気に交換するのではなく、じわじわと交換していく展開も捨てがたく、どうしようか迷っていて未完になっています。

花嫁と花婿と花嫁の父の立場交換【未完成】

Comments

ありがとうございます!

くろねこ@9605

面白い!

Will

そうですか! 事前にプランナーが暗示を掛けたから、易々そのプランを受け入れたんですね! 普通なら怪しいと思うはずです。

黒竜Leo

感想ありがとうございます。娘と花婿は何か企んでいるというより、暗示に掛かりやすく、立場交換が異常な出来事だと認識できていないです。父親の方は暗示に抵抗力があるため、異常な出来事が起きていると認識できている感じですね。

くろねこ@9605

無防備でいきなり変わった人と準備を持つ人の反応の対照はいつも面白いと思う。 やはり娘と花婿は何か企んでいるのでしょうか?

黒竜Leo


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