NokiMo
くろねこ@9605
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チート級スマートスピーカーと巡る異世界冒険譚〜屈強な戦士がスケベ小説朗読で絶頂編〜

「あれが火竜の巣?」


「ああ。どうやら狩りに出ているようだ。さっきの歌が役立ったな」


 僕の問いに、戦士のアランが答えた。髪と顎髭の色は鳶色で、額から左目に掛けて斜めに傷のある、屈強な男だ。隣にいた魔術師のメルヴィルが、依頼主から預かって来た籠を背中から降ろし、留め金を確認している。メルヴィルが低い声で言った。


「戦士殿、ゴーレム使い殿。今一度手順の確認を」


 アラン以上に筋骨逞しいこの男は、オーク族にしては珍しい魔術師だ。暗褐色のローブの下には、オーク族の金色の眼と緑色の肌が見えた。メルヴィルが言葉を続けた。


「火竜が留守にしているこの隙に、各々の籠にひとつずつ卵を入れ、ノトカの村まで戻る──もし火竜に見つかった場合は、ゴーレム使い殿が戦闘か撤退かを判断し、適した歌をゴーレムに歌わせる……」


「ええ。どちらの曲も選んであります」


 僕も囁くように返事をした。いわゆる「異世界転移」でこの剣と魔法の世界に来てから、奴隷として売り飛ばされそうになったり、迷宮を探索したりと、なかなか刺激的な日々を過ごしている。今はその道中で知り合った戦士のアランと、魔術師のメルヴィルと一緒に、冒険者としてチームを組んでいる。一緒にこの世界に転移してきたスマートスピーカー「ミチクサ」が僕の相棒だ。道具屋に特注した革製のホルスターに収められて、僕の腰に括り付けられている。


「ミチクサ、バッテリー残量は?」


『私のバッテリー残量は86%です』


 Konozama社製スマートスピーカー「ミチクサ」は「道草を喰む豊かな人生のパートナー」をコンセプトに作られたスマートスピーカーだ。どうやらこちらの世界にやってきた人やモノは、元々の特性や技能が強調されて、いわゆる「チートスキル」に変化するらしい。ミチクサもその例外ではなく、搭載されたAIは人間とほぼ変わりない受け答えが出来るようになり、再生した音楽で様々な効果を得たり、僕の魔力を電力に変換して動くようになっている。そして、こちらの世界の人はミチクサを「言葉を喋るゴーレム」として認識しているらしく、その持ち主である僕を「ゴーレム使い」と呼んでいた。アランが周囲の様子を伺いつつ囁いた。


「よし、そろそろ行くぞ。さっさと帰ってエールで一杯やろうや」


 僕たちはコソコソと忍び足で火竜の巣に近づいた。樹齢数百年はあろうかという巨大な木のウロの中にある巣は、光り物を溜め込む竜の性質通り、冒険者の鎧や貴金属が溜め込んであった。アランが息を呑んだ。


「こりゃあ……噂通りだな。少し頂戴しても……」


「戦士殿、まずは卵を。それと持っていくなら、かさばらない宝石類にしてください」


「……わかった」


 僕たちは依頼主から渡されていた籠──水棲モンスターの皮で作られ、中に緩衝材としてスライムの死骸を加工したものが入った籠を、地面に降ろした。一人ひとつずつ貸し与えられた籠の中に、火竜の卵を入れていく。両手で抱えるとダチョウの卵のような大きさで、すごく重い。


「うわっ……これ背負って帰るのキツくない……?」


『警告。2時方向にこちらに移動する飛行物体あり。距離300』


「くっそ……宝石は諦めるか。一旦出るぞ!」


『距離250……220……』


 籠を背負って巣を出た僕たちだけど、思っていた以上に卵の重さで足取りが鈍る。アランが舌打ちした。


「こりゃ、逃げるにも戦うにも邪魔だな……」


「……音でバレるかもけど、まずは逃走用の曲で距離をとろう。うまくいけば逃げ切れるし。竜を僕が見てから、改めて戦うか決めるから。ミチクサ、逃走用の曲を再生。ギリギリまで音量を絞って」


『了解しました。チャイコフスキー【行進曲】』


 異世界転移したミチクサは、曲のイメージを過剰なまでに増幅する。あの有名なバレエ『くるみ割り人形』の一曲である【行進曲】は、プレゼントを渡された子どもたちの跳ねるような動きと喜びを表現している。その曲のイメージが増幅された効果は、現実をゲームのように捉え直す僕自身のスキル【ゲーミフィケーション】によって、【移動速度30%UP】【移動時のスタミナ消費30%DOWN】のバフとして認識出来ていた。


「うっわ、体が軽い……!」


 曲がかかり始めた途端、足取りが異様なまでに軽くなった。そのまま来た道を戻り始める。道と言ってもテンレタの森の最奥であるここは獣道で、木の根で起伏もあり、枝も張り出していて歩き辛い。30秒ほど再生が続いてバフが完全に掛かりきったところで、僕はミチクサに次の曲を再生させた。


『ワーグナー【森のささやき】を再生します』


 この曲は、ワーグナー作曲の『ニーベルングの指輪』の一幕だ。ジークフリートが森の奥で竜退治を成し遂げる場面の曲で【森林を困難とせず、平地のように移動できる】し、竜の血を浴びたジークフリートが、小鳥の声を聞けるようになったエピソードから【小鳥の言葉を理解できる】という効果もある。僕たちがあっさりと火竜の巣を見つけ、さらに小鳥たちの会話から、火竜が正午過ぎから狩りを始めることを突き止めたのも、この曲のおかげだ。曲が掛かり始めると、【行進曲】のバフと効果が乗算され、僕たちは凹凸のある森林地帯を風のように疾走し始めた。


『距離50……来ます』


 背後から火竜の吠える声が聞こえた。振り返りつつ【ゲーミフィケーション】で相手を視認する。相手の力量を、いわゆるレベルに換算して認識できるため、勝ち目があるかどうかの判断に役立っていた。


(火竜のレベルは……56か。アランが41で、メルヴィルが35となると……)


 駆け出しの冒険者のレベルは10前後で、一般的な冒険者はおおよそ20から30前後。それを考えるとアランはかなり技量の高い戦士なのだけど、火竜はそれよりも上だ。この世界はレベル差でダメージの通り具合にも補正が入る。15レベルも差があると、かなり不利だろう。ただし、こちらにはミチクサがいる。チート級のスキルを持った、電子の吟遊詩人が──


「少し格上だけど、勝てるよ。戦おう。アランが主体になって切り込んで。メルヴィルは氷結呪文の準備をよろしく」


「おう! 俺の卵は任せた!」


「承知した」


 アランが籠を背中から外し、メルヴィルに預ける。ロングソードの柄に手を掛け、駆け出すアラン。僕はミチクサに命じた。


「ミチクサ、アランに届くまで音量を上げて【剣の舞】を再生して」


「了解しました」


 軽快なリズムが、火竜の舞う森林に響き渡る。アラム・ハチャトゥリアンが作曲したこの曲は、クルド人が剣を持って舞う戦いの踊りをイメージしている。一般的なロックやポップスでのステータス上昇量が20%程度であるのに対し、この曲は剣を装備している人にしか効果がない代わりに【剣ダメージ50%UP】【剣装備者の敏捷性50%UP】と剣に特化した破格のバフ量になっている。アランが突撃するときによく使う曲だ。僕は【ゲーミフィケーション】でそれぞれのバフの効果時間とにらめっこしつつ考えた。


(一番最初に再生した【行進曲】の効果があと少しで切れるから、10秒後にもう一度再生。あとは30秒ごとに【森のささやき】と【剣の舞】をループ。あとはメルヴィル用に……)


 僕がミチクサに命じている間に、アランと火竜は戦い始めていた。軽めの革鎧とはいえ、アランの体躯からは想像できないようなキレのあるステップで、火竜の爪や牙の攻撃を躱している。周囲の大木を駆け上がり、上段から斬りつけたかと思えば、体勢を低くして疾走し、竜の足を斬り払う。アランのロングソードは、大抵の刃を弾くはずの火竜の鱗に傷をつけて引き剥がし、擦過傷をいくつも付けていた。火竜は格下のはずの人間が機敏な動きをしているので、攻めあぐねているようだった。熱と魔力が充溢した火竜の血が大地に溢れ、煙を上げる。数度打ち合ったアランのロングソードが火竜の牙を叩き折ったところで、火竜が悲鳴を上げた。やけくそ気味に吐いた炎のブレスを、アランのロングソードの剣圧が払い除け、軌道が逸れる。


 【森のささやき】は竜殺しの英雄ジークフリートの活躍を描いた曲。曲を機械的に、正確に再生するミチクサは、竜殺しの逸話の破綻を許さない。それは竜に打ち克つための曲なのだから。その曲が再生され続ける限り、竜が勝つ結末は訪れない。【森のささやき】には森林での移動力上昇や小鳥の声を聴く以外にも【竜特攻&特防80%UP】という恐るべき効果がある。ミチクサのバフは、相手や状況が限定されるほど増大する。盛りに盛られたバフが、10レベルもの差、そして人と竜という種族の基礎ステータス差をも覆す。さすがに20レベル以上差があれば、移動に特化した曲を限界まで重ねがけして撤退するつもりだったけれど、この程度なら問題にならない。


「メルヴィル、準備はいい?」


「……こちらも詠唱はほぼ完了した。いつでもいけるぞ」


 並行して、メルヴィルに持たせていたミチクサの子機からは、チャイコフスキー作曲の【雪片のワルツ】と【こんぺい糖の精の踊り】を再生し、たっぷりと魔術師用のバフをメルヴィルに掛けていた。オーク族は体内魔力はそれなりの量があるのだが、エルフ族のように周囲の魔力を操ることは極端に苦手なため、消費魔力の軽減や魔力自動回復のバフを掛けている。僕がミチクサに命じて再生を停止させると、事前に打ち合わせていたとおりに、アランが火竜との射線上から離れた。メルヴィルが最後の呪文を詠唱する。


「──故に、北よりの使者は、冷たい右手で果実を握りつぶす。【大氷槍】」


「グオオォォ……! グゴォッ!?」


 パキパキと音を立てて霜柱がメルヴィルから火竜へと疾走していき、地面から出現した巨大な氷の槍が、火竜の下腹部を貫いた。氷の槍が火竜の血液の熱で溶け、盛大に水蒸気を発する。悲鳴を上げる竜の体にアランが駆け寄り、続けざまに首筋に上段斬りを放つ。三度目でゴギンと鈍い音がして、火竜の首の骨が砕けると、火竜の瞳から光が消え、ぐったりと地に倒れ伏した。



「ふーっ……疲れたぁ」


 竜を倒した僕たちはノトカ村に帰還した。さすがに竜の死体をそのまま運ぶことは出来ないし、運ぶ準備をするために往復しているうちに他の魔物に食べられてしまう。なので価値の高い頭部や、折れた牙、心臓、血液などを回収して(ミチクサを使ってネットショッピングも出来るので、それで買った台車に乗せて)帰ることにしたのだ。村の広場には僕たちが持ち帰った竜の死体の一部が置いてあり、見物人が集まっている。村長さんが見張りを付けてくれたので、その間にメルヴィルは冒険者ギルドとこの地の領主への報告など、諸々の雑事を片付けてくれていた。そして、僕とアランは宿屋の部屋に籠もっていた。それは、アランの「体質」の問題を解決するためであった。


「やっぱ、竜の血を浴びたのが……まずかったな……んっ……!」


「そうだね。まだ満月じゃないのに、こんなに活性化してる」


 僕は、鎧と肌着を脱いだアランの下腹部を撫でた。ただそれだけの刺激に、屈強なアランが肩を震わせる。アランの下腹部には、毒々しいピンク色に光る淫紋が刻まれていた。


 アランは以前、淫魔に飼われていたことがあった。東の王国で起きた淫魔の大量発生に、アランが率いていた傭兵団が巻き込まれたのだ。アランも奮戦したが敗北し、傭兵団の男たちは淫魔に精を捧げる存在として飼われていた。その後も淫魔たちは街道や村を襲撃し、王国の騎士団も手を焼いていた状況に、僕とミチクサが手を貸した。ミチクサが般若心経や賛美歌など、徹底的に淫魔の能力を封じる曲を流して、それを騎士たちがボコボコにすることで、淫魔たちを打ち破った。囚えられていた男たちが精を吸いつくされ、干からびた死体として転がる中、アランは数少ない生き残りとして助け出されたのだ。それからアランは、自分を護衛として雇うことを僕に対して提案した。アランが要求した報酬は、ひとつだけだった。


「あんたの性処理を、俺にやらせて欲しい」


 アランは強面な顔に、苦悶の表情を浮かべながら、大真面目に言った。


「駄目なんだ。淫魔がいなくなっても、頭の中でついやらしいことを考えちまって……誰かに仕えたいって思っちまう。体が疼いて……街で体を売った方がいいんじゃねえか? ってつい考えちまう。それよりは、恩義のあるあんたの護衛をしつつ、あんたに身を捧げたい……どうだ?」


 僕はそれを了承した。ミチクサにも一応攻撃手段はあるけれど、近接攻撃できるアランが同行してくれれば、旅の安全度はより盤石なものとなる。アランの淫紋は、刻んだ淫魔を倒したので、常時発情するような強烈な効果は失われていた。それでも周囲の魔力の高まりに応じて活性化し、アランを悩ませた。とりわけ魔力が満ちる満月の晩は、アランは完全に発情し、男女や年齢の区別なく、誰とでもセックスしようと周囲を誘惑し始めるので、そうなる前に止めてくれと頼まれていた。さらに淫紋の効果により、アランは自慰をしても快感を得ることが出来ない体になっていた。アランが快感を得て射精するには、必ず誰かとセックスする必要があるのだ。


 そして今も、竜の血の魔力によって、アランの淫紋は昂ぶっていた。鎧で蒸れたアランの体は汗臭く、胸毛や腕毛がぺたりと肌に張り付いている。日本人離れした、スパイスのような体臭が、むわりと宿屋の部屋に広がった。僕はアランに提案した。


「先に蒸し風呂に行く?」


「いや……すぐにでも体を鎮めて欲しい。それに、他の男の裸なんて見たら……きっと俺は……」


 アランは濃い眉根を歪め、節くれだった指を待ちかねたようにしゃぶり始めた。鼻息が荒くなり、肩を震わせている。指をしゃぶるのは、アランが限界まで高まった性欲を抑えるときの癖だった。そういえばさっきも、宿屋の主人の禿げた頭を、うっとりと見つめていたっけ。僕もアランの前に立った。


「アラン。僕の服を脱がせて」


 アランは頷くと、力強い手で繊細に僕のマントと服を脱がせ始めた。ミチクサも部屋の片隅に置いてもらった。僕もアランの肌着を脱がせてやる。傷跡の多い、屈強な戦士の肉体。割れた腹筋と、そこに刻まれたハート型の淫紋が不釣り合いだ。性感帯になってしまった淫紋をなぞると、アランがヒクヒクと肩を震わせ、唇の端から涎を垂らした。


「んっ、あっ……そこはッ!」


「どうしたの? 気持ちよくなりたいから、僕を誘ったんでしょ?」


「そ、そう……だがっ、あっ!」


 僕はビンビンに勃ちあがっているアランのチンポに指を滑らせ、逆手で扱き始めた。アランのチンポは太く、とても僕の指では竿を一回り分できない。アランは僕が扱くリズムに合わせて、あっあっと声を漏らしていた。僕はアランに言った。


「これは命令だ、アラン。射精しろ」


「んい゛ッ!!!」


 淫魔たちの性奴隷として淫紋を刻まれたアランは、相手の許可がないと、セックスをしても絶頂できない。僕は苦しそうなアランの様子を見て、すぐ射精させてやることにした。アランからは、なるべく冷たい口調で、淡々と命じて欲しいと頼まれていた。確かにアランのステータスを【ゲーミフィケーション】で見ると【奉仕願望】や【マゾヒズム】と言った単語がステータス欄にあった。そもそもアランの職業欄も【戦士/性奴隷】になっているし。


「ん゛ァァあぁッ〜〜〜〜!!」


 アランはオルガスムスに達した。オナ禁した直後のような、黄ばんだ濃厚な精子が、どぷどぷどぷっと亀頭から噴きあがる。アランは精悍な眼から涙を流しながら、強烈な快感に耐えていた。淫紋はアランに「快感に慣れること」を禁じていた。快感に慣れてしまい、単調な動きしか出来ない性奴隷は、退屈な存在になってしまう。淫魔たちは、アランがどれだけセックスを重ねても、快感の耐性がゼロになるようにしていた。そのため毎回アランは、精通のときのような衝撃を体に感じてしまうのだ。


「あっあっ、いっ……あっ……あぁぁ……!」


 精通直後の少年のように、呆然と立ち尽くすアラン。僕はアランの太い腕をぺちぺちと叩いて、ベッドに促した。アランもそれに従う。ベッドの上で僕がアランにキスすると、ぼんやりしていたアランは、反射的にねっとりと濃厚なディープキスをしてきた。何ヶ月も淫魔に飼われ、あらゆる性的な技術を徹底的に仕込まれてしまったアラン。アランは屈強な外見に似合わず、テクニカルな舌技を覚えさせられていた。軟体動物同士の交尾のように、ねちねちっとした舌同士が絡み合う。むしろ僕の方がキスだけでイカされそうになる。アランは静かに唇を離すと、潤んだ眼で僕を見つめ、黙って僕の体を舐め始めた。くすぐったくて、気持ちよくて、僕は身をよじった。僕が気持ちよくなっていくのに応じて、アランも再び興奮し始めているのを感じた。アランの舌は僕の腹筋の上を這い回ると、僕の股間へと向かった。僕のチンポが、温かくヌメる舌に絡め取られるのを感じる。僕は喘ぎながら言った。


「アラン……僕がイクと同時に、お前も射精しろ。いいな?」


 アランは僕のチンポをしゃぶりながら、上目遣いに頷いた。僕は、自分よりも屈強な体躯をしたアランが、僕の言いなりになってチンポをしゃぶっているのが楽しくて、アランのゴワゴワした短髪を撫でてやった。アランも、自分よりも年下の、ひ弱な体格の僕に命令されることに興奮しているようで、顔が興奮で赤らんでいた。アランの舌が僕の雁首を、亀頭を舐め回し、そのたびに僕は足をもどかしげに動かし、アランの頭を押さえつける。


「あっ、やっ……い、イクっ! んあっ!」


 ビクビクと僕のチンポが痙攣し、射精すると同時に、アランは夢中で僕のチンポをフェラチオしながら、二度目のオルガスムスに達したようだ。はあはあと僕が荒い息をしていると、アランの方から濃厚な精液の匂いが漂ってきたので、それとわかった。快感で胡乱になったアランの瞳が揺れている。僕が出した精液をごくりと飲み干したあと、決して慣れることのない射精の余韻に、身を震わせているようだった。ベッドの上に粘ついた染みを作ったアランのチンポは、射精直後だというのに再びピクピクと動き、勃ちあがりつつあった。淫紋によって精力絶倫になってしまったアランの相手を最後までするのは、僕には到底無理だ。だから──


「ミチクサ、起きろ」


『はい。ご用はなんでしょうか?』


 僕はミチクサに、いつも通りの命令を下した。



「ん……?」


 吊り革に掴まっていた佐嶋克行は、いつの間にか眠っていたことに気づいて頭を上げた。電車内のモニターで次の駅名を確認する。降りる駅はまだ先だ。通勤ラッシュの車内は今朝も満員で、克行は痴漢と誤解されないよう、両手で吊り革を握って、両足の間に通勤鞄を挟んでいた。


(待て。何か……おかしくないか?)


 克行は違和感を覚えた。電車を乗り間違えたか? と再びモニターを確認したが、やはりいつも通りの路線だった。


(いつも通り? そもそも俺が、電車に乗っていること自体が──)


 根本的なことを見落としている気がした。だが、記憶を遡ってみても、やはり昨日もおとといも、電車通勤をした記憶がある。悩んでいる克行の下半身に、後ろから何者かの手が触れる感触があった。身じろぎをした克行だが、他人の手は今度は明らかな意思を持って、克行の尻をスラックスの上から撫で回し始めた。


(ち、痴漢……されてるのか? 俺が!?)


 学生時代にラグビーで鍛えた、頑健な体躯。まさかその逞しい肉体が、痴漢の劣情のはけ口にされるとは想像もしていなかった克行は、顔を真っ赤にして硬直していた。大声を出すべきなのか? 痴漢の手を掴むべきなのか? それともこのまま耐えるのか? さまざまな思考が脳を圧迫し、混乱する中、最近は残業続きで妻と行為に及んでいなかった克行の肉体は、明らかに性的興奮を覚えつつあった。鼻息が荒くなり、股間が熱く、固くそそり勃っていく──痴漢の手によって。そのことに克行は衝撃を受けていた。


(な、なんで俺、こんな勃って……あっ、駄目だ、こんなっ……!)


 声を押し殺して肩を震わせ、ぎゅっと吊り革を掴む克行。その無抵抗な様子を肯定と解釈した痴漢の手つきは大胆なものに変わり、今度は太腿を愛撫していく。克行は明らかに男の手で自身の肉体を愛撫されながらも、欲情していく己の肉体には抗えず、もぞもぞと身じろぎするだけだった。そして痴漢の手は、すっかり勃起を遂げた克行の股間へと向かった。スラックスの生地の上から、痴漢の指先は亀頭の輪郭をなぞるように上下し、軽く爪を立てながら、克行のチンポの形を探るように愛撫していた。克行は喘ぎそうになるのを必死に抑えながら、満員電車の中で発情してしまった己の肉体を持て余していた。


(あっ、くぅっ……! ちくしょう……! うおっ! おい、それは駄目だっ!)


 痴漢の手が、克行のスラックスのチャックを降ろしていた。克行はそれを止めようとしたが、しかしちょうど電車がカーブに差し掛かり、吊り革に体重を預ける形になった。痴漢は後ろから克行に抱きつく形を取りながら、カーブで乗客たちが大きく動いた隙にチャックを降ろしきり、スラックス内部に指を侵入させていた。克行の首筋に、痴漢の荒い鼻息が掛かる。痴漢自身の勃起した男根の膨らみが、克行の尻に押し当てられた。


(はひっ!?)


 電車がカーブを抜けると、すっかり体積の大きくなった克行のチンポが、痴漢の指によって強引に外へと引きずり出されていた。満員電車の中でチンポをさらけ出す、という生まれて初めての体験に、克行は混乱しつつもさらにチンポが固さを増すのを感じていた。痴漢はそんな克行の様子をあざ笑うかのように、親指の腹で亀頭をくりくりと愛撫し、さらなる快感の高みへと誘い込もうとしていた。先走りが痴漢の親指と亀頭を吸い付けるように滑らせる。痴漢自身も勃起したチンポを、何度も克行の尻に擦りつけてくる。克行は喘ぎ声を漏らしそうになるのを、懸命に噛み殺した。


(〜〜〜〜〜ッ! し、しかしこれは……! これがバレたら、俺が痴漢だって……思われちまうんじゃないか!?)


 誰がどう見ても、満員電車の中で陰茎を露出している克行は痴漢そのものだ。克行はリズミカルにチンポを扱き始めた痴漢の手に身を委ねたまま、ときおり鼻声で軽い喘ぎを漏らしていた。痴漢の手は克行のチンポを愛撫しながら、しかし克行が身をよじって抵抗する素振りを見せると、これがどうなってもいいのか? と言わんばかりに、克行の金玉を軽く握り、克行に恐怖を植え付けていた。


(とっ、とりあえず……あと一駅……あと一駅耐えれば……)


 あと一駅で、克行の降りる駅だ。電車のドアが開いたら、強引にでも降りてしまおう。そう思っていた克行だったが、しかし痴漢の愛撫のストロークは次第に速さを増しており、克行の金玉は玉袋の中でせり上がり、射精のときが近いのを示していた。克行はヒクヒクと肩を震わせながら、電車がゆっくりとホームに滑り込むのを待っていた。


(い、今だっ! は、はひぃっ!)


 電車のドアが開くと、克行は両足の下に挟んでいた通勤鞄を手に取り、痴漢の手を強引に引き剥がしてドアへと突き進んだ。フーッフーッと鼻息が荒い。ホームを歩く太腿の筋肉がヒクヒクと痙攣する。露出したままのチンポはひとまず、鞄で隠すことにした。熱を帯びた陰茎が、冷たい革鞄にぺたりと押し当てられる。その気持ちよさに克行は眼を細め、もぞりと鞄を動かしてしまった。克行の金玉が激しくせり上がり、精液が輪精管を駆け上る。背筋を快感が貫いたと感じたときは、既に手遅れだった。


(あっあっあっ……あぁぁああっ!)


 電車から降り、ホームの階段へと進む人の群れ。克行はその人混みの中で、勃起したチンポをチャックから露出させ、それを鞄で押し隠した状態で──オルガスムスに達してしまった。本来ならば芽生えるはずのなかった性癖が、脳内に芽吹いてしまうのを、克行は自覚していた。見知らぬ痴漢にチンポを愛撫され、駅のホームでチンポを露出して絶頂した変態男──それはまぎれもなく、佐嶋克行だった。栗の花を匂わせるムワリとした濃厚な雄の匂いに、近くを歩いていたサラリーマンが顔をしかめたが、しかし出どころがわからないため、騒ぎにはならなかった。克行はデレッと情けなく顔を緩ませたまま、改札を通り抜けた。涎が角張った顎を伝って垂れていたが、彼はそれを拭おうともしていなかった。その足元に、粘ついた白濁液を垂らしたまま彼は──



「うおっ!?」


 体育教師の岩崎岳雄は、うたた寝から急に覚醒した。寝ぼけた頭で周りを見まわす。体育教官室に差し込む西日は橙色に色づいており、他の教師たちは出払っているようだった。


(さっきまで、電車に乗っていたような──いや、俺は車通勤だし……)


 岳雄は椅子から立ち上がると、体育教官室の壁に掛かっている鏡を見た。上半身に白いポロシャツを着て赤いジャージを穿いた中年の体育教師の姿が映っている。だが、自分の姿に何か違和感を覚えていた。


(俺、こんな顔だったか……?)


 彫りの深い顔立ちと鷲鼻、鳶色の髪の毛と髭。日本人であるはずの自分が、こんな異国風の顔立ちだっただろうか。それに体育教師とはいえ、ここまで屈強な肉体だっただろうか……岳雄は白いポロシャツを胸までたくし上げた。まるでスパイスのクミンのような濃厚な体臭が体育教官室に立ち上る。肉体のあちこちにある傷跡。密生している鳶色の胸毛。そして腹筋に刻まれた、毒々しく下品な色の淫紋──


(淫紋? あっ!)


──そこでようやく、自分は体育教師の岩崎岳雄ではなく、異世界の戦士アランだったことを思い出した。それどころか、さっきまで全く別人として満員電車で痴漢され、駅のホームで絶頂したことも思い出していた。


「い、いやこれ、どうなってるんだ!? さっきの満員電車も俺じゃなかったし、あれは……」


「気づいちゃったんだね、アラン」


 気がつくと、岳雄の背後には学生服を着た生徒が立っていた。岳雄の担任するクラスの男子生徒、吉岡和也だった。


──少なくとも、そういう設定になっていた。


「吉岡……か? い、いや……違う……よな?」


「そうだよ。でも、今のアランには、岩崎岳雄としての記憶が上書きされているから、僕のことまで思い出すのは、難しいんじゃないかな?」


 確かにそのとおりだった。自分はアランという名前で、こことは違う世界で戦士だった──という断片的な記憶はあるのだが、しかし岩崎岳雄としての人生の記憶はそれよりも色濃い。教師として、家庭を持つ父親としての記憶が、アランの口調や性格さえも変えてしまっていた。先ほどの満員電車で、自分自身を佐嶋克行だと思いこんでいたときのように。アランは──岩崎岳雄という中年教師の記憶と人格で上書きされた異世界の戦士は、目の前の生徒に問いかけた。


「吉岡、その……俺に何が起きているのか、知っているんだよな? 俺は生まれ変わったのか?」


「うーん、これはそういうのじゃなくて、単にアランの性欲を発散させるためにやっているんだけど……ミチクサ、話を進めて」


『承知しました』



 宿屋のベッドの上では、アランが喘ぎ声を漏らしながら身悶えていた。ミチクサに小説を読み上げてもらう「オーディオブック」機能もまた、異世界転移したことで強化され「まるで自分が登場人物の一人になったかのように」物語の中に入り込んでしまうものになっていた。それを利用して、官能小説をミチクサに朗読させ、アランにはその登場人物の一人になって貰うことで、性欲を発散させていた。普通ならこの機能を使っても、自分が何者なのかまでは忘れないのだけれど、淫紋が刻まれたことで精神系の異能に極端に弱くなってしまったアランは、物語の登場人物として上書きされた記憶に抗いきれず、毎回、自分がその登場人物なのだと思いこんでしまっていた。


「あっあっあっあっ……んくぅっ!」


 アランが鼻声で喘ぐのが早くなっていく。やがて弓なりに体を仰け反らせて、オルガスムスに達した。腹筋に押し付けられた太ましいチンポが、ビュルビュルと勢いよく精液を噴き出す。アランの肉体はやがて力を失い、ドスンとベッドに着地した。アランは締まりなく緩んだ唇から、涎を垂らしていた。その顔は幸福そうだ。男子生徒に弱みを握られて、セックスさせられてしまう教師役が、お気に召したらしい。僕はアランの様子を確認して、ミチクサに指示を出した。


「ミチクサ。配役を変更。アランを痴漢役にして、もう一度『最終痴漢列車〜狙われたラグマッチョリーマン』を最初から再生して。その次はアランを生徒役にして、『秘密の生徒指導〜下剋上された体育教師の破廉恥保健体育〜』を再生してね」


『承知しました』


 僕はヒクヒクしているアランのチンポから、こってりとした精液を指に取り、アランの唇の中に突っ込んだ。その雄臭い匂いにアランは精悍な顔をしかめたが、しかし淫紋によって淫らになってしまったアランは舌を絡ませて、自分の精液をちゅぱちゅぱと舐め取り始めた。小鼻の穴が膨らみ、発情した男の顔になっていく。痴漢の人格と役割と与えられたアランは、鼻の下を伸ばしながら、もぞもぞと指を動かし、小刻みに腰を振っていく。異世界の変態男の人格で上書きされ、破廉恥な行為に及ぶことは、淫紋によって常人を超えた性欲になったアランにとって、何よりも刺激的らしい。今までにも何度も配役や本を替えて、アランは様々な変態行為に及んでいた。


「失礼する。諸々の手続きが終わって……おっと」


 ノックの後に宿屋の部屋に入ってきたオークの魔術師、メルヴィルがアランの痴態から眼を逸らした。性欲旺盛な種族であるオークであるにも関わらず、メルヴィルは禁欲的だ。ただ僕としては、単なるムッツリスケベなんじゃないかと疑っていた。今もチラチラとアランの痴態を見ながら、ソワソワと体を動かしている。


「メルヴィルもやる? 好きな役になれるよ」


「はえ?! い、いや……私は遠慮しておきます。魔導を志す身として、むやみやたらに精を放つのは、魔術にも差し障りがありますゆえ……」


「そう? 残念だな……」


 僕とメルヴィルの視線の先では、痴漢になりきったアランが腰をリズミカルに振っている姿があった。まあ、メルヴィルが興味を持つような小説をいずれ仕入れておこう。堅物なオーク魔術師が、アランのように破廉恥に腰を打ち振るう様子を想像して、僕は笑みを浮かべた。メルヴィルはやや怯えたような、しかし羨ましそうな目つきで、ベッドの上で異世界の変態男としてチンポを振り回し、絶頂するアランを見つめていた。


(終)



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 というわけで、今回は異世界モノでした。以前からこういうの書いてみたかったんですが、なかなか書けなくて、今回ようやく書き上げることが出来ました。屈強な戦士なのに淫紋刻まれてドスケベになってるのっていいよね? という思いから、アランには元淫魔の性奴隷という設定になってもらいました。魔術師のメルヴィルについては、お前本当に魔術師なの? ってくらいムキムキな魔術師が好みなので、オークの魔術師という設定に。メルヴィルについては、また別な話でじっくり触れることが出来たらなと思います。

チート級スマートスピーカーと巡る異世界冒険譚〜屈強な戦士がスケベ小説朗読で絶頂編〜

Comments

ありがとうございます! 僕もこういう感じの話が好きなので、書き上げることが出来てよかったです。

くろねこ@9605

転生系の物語が好きです! それに現代と繋がる部分、とっても誘惑する!

黒竜Leo


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