柴田和博がその電車に乗り込んでしまったのは、ある朝の通勤ラッシュだった。
今年で42歳になる柴田は、学生時代にラグビーで鍛えた肉体をジムで維持しており、同年代の男と比べて逞しい。精悍な眼つきに口髭を蓄えた風貌と相まって、ストライプ柄のスーツ姿が様になっている。郊外にマイホームがあり、妻と小学生の娘の三人家族だ。仕事も家庭も順調であり、それはこれからも同じであるかに思えた……その電車に乗るまでは。
(今日は午後から会議だったな。出社したら資料にもう一度目を通しておくか)
柴田が胸ポケットから手帳を出し、今日の予定を確認している内に、駅のホームに電車が到着した。いつも通りの時間にやって来た、いつも通りの電車。ただひとつ違っていたのは、車両のドアの外側に、小さく「融合専用車両」というステッカーが貼ってあったことだろう。柴田も他の乗客もそれに気が付かないまま押し合うようにして乗り込んだが、車両のドアが閉まって動き始めた途端、ステッカーはその効力を発揮した。
「ん……?」
スマホで経済ニュースをチェックしていた柴田だったが、妙に画面がちらつく気がして顔を上げた。何かを忘れている気がして落ち着かない。周囲を見回すと、他の乗客たちもキョロキョロしていた。柴田は腑に落ちないものを感じながら、再びスマホに視線を戻した。しかし眼が滑り、全く文章が眼に入ってこなかった。
(いかんいかん。疲れてるのか? そうだな。こんなときは、息抜きも兼ねて【融合のことでも考えるか】ん? 融合?)
柴田は、ふと浮かんだ突飛な考えに首を傾げた。融合。自分と他人の身体が溶け合い、ひとつになってしまう──今まで考えたこともなかった妄想が、ひどく蠱惑的なものに思えて仕方がない。融合のことをもっと考えていたい。妄想したい。誰と融合するのがエロいだろうか。相手は男がいいだろうか。それとも女がいいだろうか。
妻子持ちの40代サラリーマンにしては縁遠いはずの変態的な考えが、こびりついて頭から離れない。柴田は思わず生唾を飲み込み、ごくりと喉を鳴らした。
(な、何を考えているんだ俺は。しかし……)
柴田は鼻息が荒くなるのを自覚しながら、周囲の乗客を値踏みするように見つめた。すると斜め前の吊り革を掴んでいる、女子高生に眼が釘付けになった。髪を金髪に染め、派手なガングロメイクをしている。妻子持ちの中年男である自分とは、あまりにも外見も中身も違いすぎる存在。こんな女と融合した自分の姿を想像すると……
(た、たまらん……我慢できん……)
柴田のゴツい手が、そろりそろりと女子高生のスカートの下に伸びていく。痴漢などしたことのない、真面目な父親である柴田を突き動かすほどの、激しい性欲が下半身から湧き上がってきていた。女子高生の柔らかな太腿に触れた途端、ビクン!と彼女の肩が跳ねた。そして、不快そうに柴田の方を向いたが、自身の身体をまさぐっているのが暑苦しい筋肉オヤジであるということを知ると、途端に彼女の瞳が恍惚そうに潤み始めた。むしろ、柴田の節くれだった手を自分から握って、さらに奥へ──パンティの中へと導いていく。彼女は、湿った息を吐きながら囁いた。
「てゆーか、オジサン……やばすぎっしょ。なんなの? 超汗臭いし、マッチョすぎてキモい。だからぁ……アタシ、オジサンと融合したいっつーか……ヤバっ、何言ってんだろ。でも、アタシ…………あっ」
柴田の指先が、彼女のしっとりとした陰毛を掻き分け、濡れ濡れとした割れ目へと辿り着いた。その中に指先を挿れると、女子高生は上擦った声を漏らした。その反応に柴田の下半身がさらに固くなる。奥へ奥へと柴田の太い指先が入っていく。柴田は女子高生を後ろから抱きしめ、うなじの匂いを鼻息荒く嗅ぎ取りながら、勃起した股間を彼女の尻に擦りつけていた。
どうみても痴漢そのものである柴田の姿。しかし、他の乗客たちがそれを見咎めることはなかった。彼らもまた、眼を情欲でギラつかせ、思い思いの相手と絡み合っていた。車内は欲情した男と女の荒い息遣いで溢れ、性の匂いが充満していた。
「あぁ……すごい……どんどん入っていくぞ……ほんとに、融合しているみたいだ」
柴田が歓喜に満ちた声を漏らした。指だけ挿れるつもりが、既に右腕が中程まで女子高生の膣内に飲み込まれていた。しかも、指先の感覚がない。いや、ないと言うと語弊がある。柴田の指は愛液の中に溶け合い、女子高生の肉体と融合し始めていた。柴田が右手の指を動かすと、代わりに女子高生の右腕の指がピクピクと動いた。それが楽しくてしかたなくて、柴田は笑顔になってしまう。彼女もまた、気持ちよさそうにガングロメイクをした眼を細めている。
明らかに異常な光景であったが、しかし柴田も女子高生も、周りの誰もそれを異常だと認識出来る者はいなかった。女子高生に抱きついている柴田の身体もまた、服ごと彼女と溶け合い始めた。他の乗客たちも、同じように互いに溶け合っていく。互いの境界が曖昧になる。電車が規則的に揺れるたびに、乗り合わせた乗客同士で融合が進行していく。二人が一人へと近づいていく。別人同士であったはずの中年男と女子高生が、同一人物に変わっていく。そして────
※
「はぁん……今朝の電車、マジでヤバすぎっしょ……」
電車がターミナル駅に止まった。柴田和博は熱い吐息と共に呟いて、人混みでごった返す駅のホームへと降り立った。渋いバリトンボイスであった彼の声が、やや高めの声に変わっていた。それだけでなく、外見も大きく変化していた。
柴田は女子高生の制服を着て、ガングロメイクをしていた。髪型は元の短髪のままだが、色は金髪に染まっている。男性ホルモンが充溢した、猛禽類のように男らしい顔つきが、女性的なものに変わっていた。目尻が垂れ、鼻は小鼻になり、唇も柔らかくなっている。女顔でありながら、眉毛と口髭はそのままであり、そこにガングロメイクをしている。腕や足は太く毛深い男のそれだが、胴体にはくびれがあり、女性特有の豊かな乳房があった。
「めっちゃ気持ちよかったぁ……」
柴田はスカートの下、パンティの中でヌルつくチンポの位置を直しながら呟いた。
(未完)
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融合モノです。他の乗客の描写と、融合した柴田の日常風景も書き足したいという理由で未完になっています。
くろねこ@9605
2021-06-02 03:49:54 +0000 UTC黒竜Leo
2021-06-01 23:14:08 +0000 UTC