「『入れ替えマジック用』って書いてある。でも、箱がひとつしかないな」
「ほんとだ」
僕と笹口くんは、生徒会の用事で使っていない部屋の掃除をしていた。汚れてもいいように、二人とも体操着姿だ。そういえば先生が、この部屋は昔、奇術同好会が使っていたって言ってたっけ。箱は木製で、外観は赤と黒。だいぶ前のモノのはずだけど、不思議と汚れていなかった。
「ちょっと入ってみる」
笹口くんは箱の蓋を開けて中に身を滑り込ませた。テニス部の笹口くんは細身で、これくらいの大きさなら余裕のようだ。箱の中から、笹口くんのくぐもった声が聞こえた。
──田所さぁ、何かマジックっぽいこと言ってくれよ。そしたら、中から出るからさ。
「マジックっぽいこと?」
──たとえば俺の代わりに、別な誰かが出てくるとか。
「えーっと、じゃあ……お集まりのみなさん! 今、テニス部の笹口くんが箱に入りました。さあ、どうぞ御覧ください。今度は笹口くんではなく……ラグビー部の柏葉くんが、この箱から出てきます!」
──うおっ!? ちょっ、なんっ……!!
箱の中から、やけに野太い声が聞こえた。途端に、ミシミシッと木が軋む音がして、箱が壊れて笹口くんが出て──ん? でも……体格が大きすぎる?
「ど、どうなってんだよ、これ……」
「笹口」と書いてある体操着を着た、ラグビー部の柏葉くんが出てきた。全身からムッと濃い汗臭さを漂わせ、肩で息をしている。サイズの合わない体操着は、ラグビーで鍛えた筋肉でパツンパツンになり、短パンからは丸太のような太腿が覗いていた。
「おっ、俺……さっきまで箱に入ってたから笹口で……でも、ラグビー部で練習もしてたから柏葉で……あれ?」
グラウンドの方が騒がしい。窓の外を見ると、ラグビー部が練習を中断して集まっていた。その中心には、ラグビー部のユニフォームを着た笹口くんが見えた。
(終)
再婚相手の連れ子の第一印象は、奇妙なモノだった。
「逸見秀一郎です。ボクの機嫌を取る必要はありません。ビジネスライクな関係でいきましょう。お父さん」
再婚相手の真樹子によると、秀一郎は元々発明好きだったらしい。小学校四年生の誕生日プレゼントに銀行口座を欲しがったので与えたところ、クラウドファンディングや自作したAIによる株取引でみるみる資金を集め、さらに発明の規模が拡大した。一緒に暮らし始めると、その才能をすぐに理解した。
「先月は家庭用のパワードスーツを自作しました。介護用です。既製品よりも安価に作れるため、既にいくつかの企業から声が掛かっています」
「そ、そうなんだ……」
「ところでお父さんは、車を買い替えたいと思っていますね? ボクのお願いを聞いてくれれば、資金を提供します。どうです?」
「どうって……そもそも俺にできることなら、聞いてやるぞ。資金とかは必要ない。俺たちは親子なんだからな」
「そうですか……安心しました」
いつも無表情な秀一郎がかすかに笑みを浮かべた。
「では、手を出してください」
「こうか?」
秀一郎が俺の手に、小さな湿布のようなモノを貼った。その途端、体の力が抜けて、俺は秀一郎の部屋の床で身をくねらせた。
「ひゃぁっ!?」
「媚薬パッチです。今度行う作業に、成人男性の精液が必要なので、提供して頂きたいんです」
「や、やめ……! ひいんっ!」
秀一郎は俺のズボンと下着を脱がせた。そして華奢な手で、俺の陰茎を握ろうとした。手が小さくて握りきれていない。冷静な秀一郎が、熱い息を吐いた。
「なるほど……勃起すると、こんなに固くなるんですね」
「しゅ、しゅういちろっ……おっ!」
ゆっくりと少年の手が上下する。まだ精通もしていないだろう少年の手で、俺が情けなく絶頂に達したのは、それからほどなくのことだった。
(終)
「うおーっ! 結構高い感じの店じゃないっすか?!」
「すっげ!」
「いいかお前ら。あまりはしゃぐなよ」
N大学アメフト部は先日の全国大会優勝の祝勝会として、OBの厚意で店を貸し切りにして貰った。その店は一見すると看板が出ておらず、外側は飲食店に見えなかったのだが、中に入ると白と青を基調とした、洗練された洋食店の佇まいであった。席ごとにネームプレートが置いてあり、誰がどこに座るのか指定されていた。
「何すか、これ」
アメフト部レギュラーの岩重が、自分の席に置いてあった小皿を指差した。皿の上には赤い色をした球体がひとつある。他の席にも小皿があるが、上にある球の色が違っていた。
──アミューズのボンボン……飴で御座います。事前にお伝え頂いた皆様の好みに合わせて、お一人ずつ、味を変えてあります。
「なる……ほど? ありがとうございます」
店員から説明を受けた岩重は一礼すると、飴を口に含んだ。他の部員や監督も、それぞれ飴を口に運んでいた。
(うおっ!? なんだこれ!)
たかが飴と侮っていた岩重は、飴玉が醸し出す複雑な味わいに衝撃を感じた。夢中で舌の上で転がす。舌が性感帯になったかのように心地よい。
向かいに座っている河治主将も、厳つい顔をうっとりとさせて飴をしゃぶっていた。岩重は河治主将に話しかけた。
「主将、これマジで美味いっすね」
「あぁ……」
主将は厚い唇を尖らせて、チュッと飴をしゃぶりながら答えた。
「この河治って主将……なかなかいい面構えだろう? 今日から俺の体だ……」
主将はそう言って、唇の端から垂れた涎をずびっと啜った。岩重も頷いた。飴に込められた人格は、既に岩重の人格を根本から染め上げていた。
「うす……この岩重って野郎も、マジでいいっす……チンポもでけえし……」
岩重はそう言って、固くなった股間を弄り始めた。
(終)
「おう、鴨志田。柔道着はこれ使ってくれや」
「あ、はい。わかりました」
教育実習生の鴨志田哲明は、体育教師の潮村から柔道着を受け取った。年季が入っている教師用の柔道着だ。
(うわっ……ちょっとオッサン臭いな)
武道場の体育教官室で、柔道着に着替えていく鴨志田。大学で水泳をやっている鴨志田は、筋肉質ではあるがやせ型だ。この柔道着はサイズが大きいと感じたのだが──
(意外とサイズが合う……?)
柔道着に袖を通した鴨志田の肉体に、変化が現れ始めた。肩幅が柔道着に合わせて広くなり、腕に剛毛が生えて太くなっていく。胸板にも筋肉と脂肪が乗り、胸毛が密生していく。爽やかなソフトモヒカンだった鴨志田の髪型が、白髪交じりの角刈りに変わっていく。そして小顔だった顔の輪郭も角ばっていき、顔から爽やかさが消え失せ、厳ついオヤジ顔に変わっていった。上半身からは、脂っこい加齢臭がムワリと立ち昇った。
「ん? 潮村先生。なにかありますか?」
「いや……なんでもねえよ。着替え終わったら話す」
潮村の視線に気づいた鴨志田は、濁声になった声で尋ねた。鴨志田は自分の変化を認識できていない。
(んっ……)
鴨志田は柔道着の下穿きに両足を通した。両足も太く毛むくじゃらに、そして短足になっていく。チンポも太く短く、そして淫水焼けしていく。
(なんか、ムラムラするな……おうっ!? な、何だぁっ!)
鴨志田が帯を締めると、精神も変質した。スケベな中年オヤジの人格が脳を染め上げる。潮村がニヤケながら鴨志田の肩を抱いた。
「へへへ……いい面構えになったじゃねえか。俺も若い頃にコイツを着ちまってよぉ、元からこんなオヤジってことになっちまったんだ」
「おう……た、たまらん……さっきまで若造だった俺が、こんなオヤジに……」
鴨志田は脂ぎった顔を近づけ、潮村と唇を重ね合わせた。
(終)
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というわけで、様々なお題で800字小説を書いていくシリーズ。今回の更新は「部活」+「入れ替わり」、「ショタ(少年)攻め」+「父親」、「人格の飴」+「祝勝会」、「柔道着」+「肉体精神変化」の4本でした。
800字小説のお題のリクエストは「2つの単語」までOKです。例えば「射精」「面接」とリクエストすると、面接中に就活生(もしくは面接官)が射精する小説になりますし、「体育教師」「常識改変」とリクエストすると、体育教師が常識改変されて、奇妙な事態になる話が出来上がります。
簡易的なリクエストとして、どうぞ気軽にコメントしてみてください。リクエストしたいお題は、今まで通り800字小説のコメント欄にどうぞ。
くろねこ@9605
2021-05-01 17:57:14 +0000 UTCくろねこ@9605
2021-05-01 17:55:27 +0000 UTCくろねこ@9605
2021-05-01 17:54:42 +0000 UTCくろねこ@9605
2021-05-01 17:31:34 +0000 UTCフカヒロ
2021-05-01 01:33:49 +0000 UTC黒竜Leo
2021-04-30 16:30:11 +0000 UTCフジトモ
2021-04-30 14:01:59 +0000 UTC思兼
2021-04-30 13:04:46 +0000 UTC