「姫島、これで今学期に入ってから……遅刻は何度目だ?」
体育教師の室井は溜息を吐きながら、眼の前の女子生徒を見た。姫島 亜里沙……室井の担任するクラスの生徒で、遅刻の常習犯である。脱色した髪と、派手なギャルメイク、素行不良であることがひと目で分かる風貌。姫島は気怠げな様子で、生徒指導室の椅子に座っていた。
「えっとぉ……4回? んー、5回だっけ? てか、そんなもんじゃね?」
「お前、本当にこれ以上はマズいからな。親御さんにも連絡して、今週中に三者面談をする。とりあえず今日は、反省文を書いていけ」
「えー、めんどいんすけどぉ〜。ムロセンさぁ……あたしの代わりに書いてくんない?」
「はあ? お前な、いいかげんにしろよ」
姫島は軽い調子で、ムロセンという室井のあだ名を口にした。彼の名前である、室井健児の略称である。その態度が、さらに室井の怒りを増大させた。
────ここまでは、ごく普通の生徒指導の光景であった。ただし、姫島がスマホに着けている人形が、家族でバリ島に海外旅行に行った際のお土産であったこと。そしてその人形には「持ち主に降りかかる災いを、他人に押し付ける」というまじないが掛かっていたこと。さらに「反省文を教師が代わりに書いて欲しい」という姫島の言葉をトリガーにして、そのまじないが起動してしまったことが────室井と姫島を襲う異変の始まりだった。
「ンッ……」
「あぁ……」
肩を怒らせて怒鳴っていた室井。気怠げに椅子に座っていた姫島。二人の瞳が、急にとろんと潤んだ。室井の身体から、もやもやとした、蜃気楼のような空気の歪み──オーラが立ち上ると、姫島の方へと向かい始めた。同じように姫島の身体からもオーラが立ち上ると、室井のオーラと絡み合うように混じり合いながら、室井の方へと向かっていった。そして室井のオーラは姫島の身体に、姫島のオーラは室井の身体に入ってしまった。
「あぁん……」
室井の表情が、妙に女っぽいものに変わった。二人の間で入れ替わったのは、精神や魂ではなく「存在のあり方」のようなものだった。熱血体育教師であった室井のあり方が「不真面目な女子生徒」のそれへと、徐々に変質し始める。室井はあくびをすると、面倒臭そうに頭を掻いた。
「ふあ〜ぁ、あー……やっぱり反省文は書かなくていいぞ。学年主任には俺が適当に話しておくから、お前はもう帰っていい」
「はあ? なにそれ!」
対する姫島は、不機嫌そうに眉を吊り上げた。あり方が「熱血体育教師」に変化しようとしている姫島にとって、生徒指導の手を抜く室井は、許しがたい存在に思えた。
「てゆーか、ムロセン、あたしのことちゃんと指導する気あるわけ? 教師がそんなんだから生徒に舐められるんじゃないの!?」
「あー、いいからいいから。そういうの。ほら、帰った帰った」
室井は姫島を生徒指導室から追い出すと、やれやれと肩をすくめた。
「ったく。そんな真面目なら、最初から遅刻するなよ……ん?」
室井の視線が、自分の着ているポロシャツで止まった。学生時代に柔道で鍛えた、厚い胸板。ポロシャツを着ると、当然のように生地に乳首が浮いてしまう。男ならば別段恥ずかしいことではない。なのに今日はそれが、とても卑猥なものに思えた。
「ンッ……」
鼻息を荒げながら、白いポロシャツを胸までたくし上げる室井。三十路過ぎの体育教師の、逞しい胸板があらわになった。見慣れたはずの自身の肉体に、室井は思わずごくりとツバを飲み込んだ。
「ま、そこそこイイ身体してるよな、俺……」
男の肉体を値踏みする女のように、じっとりと粘っこい視線で、自分の逞しい肉体を視姦する室井。股間は痛いほどに勃起し、ジャージの股間を盛り上げていた。その勃起の感覚に、室井は戸惑ったような声を漏らした。
「うおっ! なんだよ……すげーあそこが固くなってる! なんだこれッ!」
慌てたように、股間を両手で抑える室井。しかしすぐに、単なる勃起に過ぎないということに気がついて、浅黒い顔が恥ずかしそうに上気した。
「……というか、勃起してるんだから当然か。ほんと何言ってんだ、俺……」
まるで女が、男の体になって戸惑っているかのようだった。室井自身も、今までのオナニーや女性経験を覚えてはいるのだが、しかしそれが自分の記憶だという実感が感じられなくなっていた。それどころか、今までの人生を思い出そうとすると、まるで他人の人生を盗み見ているかのような背徳感と興奮が彼の身体を襲った。室井は熱い吐息を吐きながら、ぎこちない手付きで股間をジャージの上から弄る。左手は自然と乳首を弄っていた。今まで乳首を使って自慰したことがないにもかかわらず、乳首は鋭敏な性感帯として、彼の身をくねらせるほどの快感を伝えてきた。室井は精悍な顔に、涎を垂らしながら喘いだ。
「ああん……いい……マッチョな身体……あたし……」
無意識に一人称が「あたし」になったことに、室井は気づいていなかった。室井は生徒指導室の椅子に腰掛けると、乳首とチンポを弄りながら、あっという間に絶頂に達した。まるで女のように喘ぎ、足を内股にしてビクビクと身体を揺らして射精した。
(未完)
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教師と生徒の立場交換は好きなモチーフなので他にも書いているんですけれど、まだこれは公開していなかった……はず。毎日少しずつ立場交換が進んでいく設定なんですけれど、この後の交換のペースでちょっと迷っていて未完になっています。
くろねこ@9605
2021-03-30 04:49:26 +0000 UTC黒竜Leo
2021-03-29 14:47:20 +0000 UTC