あと10分で、朝のホームルームが始まる。須山健吾は腕時計を見ると、観念して職員室を出た。担任している一年三組の教室が近づくに連れて、須山の足取りは重くなっていった。一年三組の教室に異常な現象が起こり始めてから、既に2週間になる。先週も散々な目にあった。今週は、一体何が待ち受けているのか──
(いや、今週こそ俺は、正気を保ってみせる)
須山は教室の引き戸に手を掛けたまま、ごくりと生唾を呑み込んだ。須山は大きく息を吸うと、元気よく声を出して引き戸を開けた。
「おーし、ホームルーム始めるぞー。席につけー」
そのまま一歩踏み込む。廊下と教室の境界を体が超えた途端、ガツンと後頭部に殴られたかのような衝撃が走り──今週も呆気なく、須山健吾の意識は"変質"した。抵抗しようとしていた意識ごと、全く別なモノに塗り替えられた。
(んあ? 俺は何を……心配していたんだっけ? そうだ。『今週の目標』を、確認しないと……)
さっきまで自分は何を心配していたのだろう。むしろ気分が良かった。体が浮足立つ。股間がムクムクと勃ちあがろうとしていた。視線は普段どおり、黒板の片隅に貼られたプリントに目が行った。プリントには「今週の目標 オナ猿」と書いてあった。
(今週は……別に変な目標じゃないな。むしろなかなか……ンッ……立派な目標じゃないか……実に、学生らしくて……)
須山の小鼻がムフリと広がる。頬を緩ませながら、ゴツい右手を紺色のジャージに滑り込ませる。朝の冷えた空気に冷たくなっていた手で、チンポが縮みかけたが、構うことなくゆっくりと扱いてやる。次第にチンポは、手の冷たさに負けないほどの熱を帯び、固く反り返っていった。公然と自慰に耽る悦びに、三十路男の肉体は発情し、荒い鼻息が漏れた。他の生徒たちも低い声を漏らして、陶然とした様子で席に座っている。須山は目標をきっちりと守る真面目な生徒たちの姿に、興奮と悦びを覚えていた。
「フーッ……んぁっ! いいぞ。先生が来る前からオナっているとは、みんな……なかなかのオナ猿っぷりじゃないか。それじゃ、出席取っていくぞー」
今週も、異常な目標に支配された一年三組の日常が始まった。
※
須山健吾が知る限り「今週の目標」が一年三組の黒板に貼られ始めたのは、2週間前からだった。他の教室には貼られていない。このプリントが貼られている一年三組の教室に足を踏み入れると、どんな目標であっても、熱心に守ろうとしてしまう。そして教室を出ても、その効果は続く。金曜の放課後のチャイムが鳴ると、ようやく正気に戻るのだ。
今週も「オナ猿」という目標を刷り込まれてしまった須山は、職員会議中も熱心に自慰に耽っていた。
「さて、朝の声掛け運動についてですが──」
「あっあっあっ、はうん♥ んあぁ……」
淡々と進行する職員会議。そのさなかに甘い喘ぎ声も漏らし、須山は机に突っ伏した。鋭い快感が背筋に走り、どくどくと精液が下着の中に放たれていく。ジャージの股間部分は精液染みが絶えず、常に雄臭い匂いをぷうんと漂わせている。そんな破廉恥な姿にも関わらず、須山健吾は「率先して生徒の手本になる、熱血体育教師」として他の教師からも扱われていた。
「いやあ、須山先生は本当に熱心ですなあ。先程の職員会議中も、チンポを扱く手が止まることはなかった。実に素晴らしい」
「いえ……んっ……!」
職員会議が終わった後、学年主任の刈谷哲史という教師からも褒められた。職員室から一年生の教室に戻る途中、何か秘訣はあるのかと尋ねられたので「今週の目標」のことを口にした。刈谷は感心した様子だったので、須山は実物を見せることにした。
「こちらです」
「むうっ……!」
一年三組の教室に一歩足を踏み入れた途端、刈谷も"変質"した。角刈りの厳つい中年教師の顔が、ぽかんと間の抜けたものに変わり──次の瞬間には鼻毛の密生した小鼻を広げ、好色そうに目を細めていた。刈谷も臙脂色のジャージに毛深い手を突っ込み、忙しなく動かし始めていた。
「こ、これは確かになかなか……おおう! た、たまらん……須山先生。この『目標』の紙……コピーを貰ってもよろしいですかな?」
「ええ、もちろん」
今週の目標を素晴らしいものだと刷り込まれている須山にとって、断る理由はなかった。
※
異常は、翌日から一年生の他のクラスにも波及した。オナ猿になってしまった一年生の生徒たち、担任教師たちが、校舎のそこらじゅうで自慰に耽る姿が目立った。
そして金曜日の放課後。ホームルーム終了を告げるチャイムと同時に、改変された全員の認識が、一斉に元に戻った。
(あ……ああっ……こ、今週も俺は……!)
須山は耳の奥に残るチャイムの余韻と、粘ついた下着の感覚を感じながら、顔を真っ赤にした。一年三組の他の生徒たちの様子は様々だった。恥ずかしそうに机に突伏する者や、まだ快楽の余韻に浸っているように、口の端から涎を垂らしている者もいる。一番前の席にいる、野球部員の野村浩輔が、イモ臭い顔をうっとりとさせながら、口を開いた。
「須山先生……今週も、すっげえ気持ちよかったっすね……」
悔しいが、そのとおりだった。まるで、性交の後のような気怠さが体の芯に残っていた。自由意志を犯され、陵辱されたというのに、そのことに対する快感が残っていた。明らかに異常事態ではあるのだが、しかし積極的にこの事態を解決しようという意思は、まるで射精直後の男根のように萎えたものになっている。それは異常な目標を繰り返すごとに強まっていき、須山もまた、この事態に対して何かしようという意思が、先週よりも弱まっているのを自覚していた。
そこに、教室の外からドタドタとけたたましい足音が響いてきた。ガラリと乱暴に引き戸が開いた。そこにいたのは、学年主任の刈谷だった。刈谷は角刈り頭から湯気が出そうなほど、顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
「す、須山先生! なんてことをしてくれたんですか、あなたは!」
「刈谷先生……その、すみません。あの時は私も、この目標が異常だとは思ってなくて……」
「とにかく! これは問題ですからな。いったいどうしてこんなことが起きたのか、きっちり説明して頂きます!」
刈谷はそう言い放つと、ズカズカと一年三組内に踏み込んできた。そして「今週の目標」のオリジナルを黒板から乱暴に剥がした。その様子を見て、須山は注意した。
「刈谷先生。その目標の用紙を乱暴に扱わない方がいいです。最初の週に私も破いたら、ひどい目に合いました。落ち着いてその紙を──」
「ええい! うるさいっ! こんなもの……こうだっ!」
興奮した刈谷が、ビリビリと「今週の目標」の用紙を引きちぎった。すると刈谷の肩がビクッと震えた。怒り心頭だったはずの顔に、情欲が混じり始める。ガニ股になった両足がヒクヒクと痙攣し、右手が再び股間に伸びていった。刈谷は固太った体を悶えさせ、再びチンポを扱きながら、悲鳴のような声を漏らした。
「は、ハヒっ! こ、これは何だッ! どうしたんだッ!」
「おそらく、ペナルティのようなもの……なんだと思います。私も最初の週の金曜に『同性愛』という目標を破ったあと、元に戻らなくなったんです」
須山は刈谷の加齢臭を鼻孔で嗅ぎ取りながら、その固太った尻に手を回した。
(未完)
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このまま終わりでもいいんですけれど、ちょっと物足りない感じもするので、未完になっています。肉体改造とか、そっちの要素があってもいいかな?
黒竜Leo
2021-02-03 16:11:59 +0000 UTCくろねこ@9605
2021-02-03 15:21:38 +0000 UTC黒竜Leo
2021-02-03 15:01:26 +0000 UTC