「ちょっとそこのお兄さん、いいですか?」
「何すか?」
現場仕事を終えてコンビニに寄った荒瀧将基が振り返ると、スーツ姿の30代の男がスマホを差し出してきた。
「この映像なんですが……」
「んっ……?」
男が差し出してきたスマホには、虹色の渦巻きが回転していた。それを真正面から見てしまった将基。金髪に染めた髪と、細く整えた眉。強面な風貌の将基の眼が、うつろになっていく。指先の力が抜け、買い物袋をドサリとアスファルトに取り落した。男はスマホを見せながら、中腰になって器用に買い物袋を拾い上げた。しばらく渦巻きを見せ続けると、男はスマホを胸ポケットにしまった。
「君の車は?」
「こっちっす……」
どこか夢心地のまま、見知らぬ男を自分の車に案内する将基。男は助手席に、将基は運転席に乗り込んだ。車をコンビニの駐車場に停めたまま、男が将基にアレコレ質問してきた。
「名前と年齢は?」
「……荒瀧将基っす。歳は23歳」
「職業は?」
「土建屋っす」
「最後にセックスしたのはいつ?」
「えっと、先週……風俗でヤりました」
次第のその質問の内容が、異様なものになってきた。
「君の心と体は、誰のモノかな?」
「えーと、俺……じゃなくて、あんたのモノっす……」
「これから君は、女ではなく男に対して、性的に興奮するようになるんだ。いいね?」
「……うす」
「具体的な男の好みとしては、僕が君の理想の男性だ。あとは──」
※
「かわいいよ。将基くん」
「あっあっ……先輩……」
荒瀧将基は自宅アパートで四つん這いになり、男に犯されていた。憧れていた先輩に、コンビニで再会し──そのまま自宅に連れてきたのだ。
将基の肛門の中に(さっき出会ったばかりの)憧れの先輩が吐精した。それと共に将基の陰茎が激しく扱かれ、将基も身悶えながら射精した。
(終)
(なんかさっきから、違和感があるんだよな。俺って、こんな体だったっけ?)
蒸し暑い夏の深夜。山奥にあるラブホテル跡の廃墟。N大アメフト部一年生である猪田貴浩は、怪訝そうに自分の胸板に触れた。その逞しい厚みに、思わず鼻息が荒くなる。先輩に連れられてやって来た肝試しが終わり、廃墟の外に停めてある、先輩のワンボックスカーの後部座席に乗り込む。運転席には四年生の高木哲史が、助手席には三年生の弘田嘉男が、貴浩の隣の後部座席には同じ一年生の飯村雄英が座った。四年生の高木が、太い声を発した。
「どうだ? 肝試しの感想は」
「すげえ……よかったっす……あぁ……久しぶりの、生きている体……」
助手席の弘田が、顎髭に涎を垂らしながら言った。後部座席に座っている飯村はもイモ臭い顔の鼻の下をデレッと伸ばしながら、自身のハーフパンツの中に右手を突っ込んでいた。
「んっ……なんか、生まれ変わったみたいな気分で……あっ、す、すいません。なんか俺、すげーシコりたくなって……あっあっ」
(弘田先輩も飯村も、一体どうしたんだ? あっ……なんだこれ……)
後部座席の窓ガラスに映り込んだ、自分の男臭い顔が目に入った猪田は、急に多幸感が込み上げてきて、射精してしまっていた。新しい体。しかも、こんなに逞しい肉体が、自分のモノになるなんて──
「ハハハ。喜んでもらえて何よりだ。俺も先週、他の連中とここに来たんだが、妙に生まれ変わったような気分になったもんでな。他の奴らにも、その気持ちを味わって欲しかったんだ……ああん……アメフト野郎の厳つい肉体……たまらん……」
高木も鼻の穴を膨らませて、ぐひっと下品な笑みを浮かべた。誰かが射精し、車内にムワッと栗の花の匂いが広がった。男の低いため息が響く。自分ではない誰かの欲望に突き動かされたアメフト部員たちは、座席を倒すと、互いの肢体に手を伸ばした。
(終)
(な、なんだ? 痴漢されているのか……!? 俺が?)
満員電車に乗っていた石黒克司が感じたのは、ゴツゴツした男の手が自分の尻を撫で回す感触だった。愕然としながら、背後の様子を伺う。M字ハゲの脂ぎった中年男が、ねっとりした視線を克司に注いでいた。克司は愕然としながら、視線を前に戻した。ラグビー経験者で厳つい克司の肉体に、背後の中年男は欲情しているのだ。
(ど、どうする。大声を出して……いや、周りに知られるのも……)
まさか自分が痴漢されるとは思っていなかった克司は、硬直していた。吊り革を握る爪が白くなっている。すると背後の男が、ちょんちょんと肩を叩き、小さなカードを差し出してきた。
(何だ……? あっ)
思わずそれを受け取った。名刺サイズのカードには「入れ替わりチケット」「受け取った時点で、あなたはこのチケットの主との入れ替わりに同意したものとみなされます」「速やかに新しい肉体と人生を受け入れることを誓約します」と書いてあった。
軽い浮遊感と共に、ぐりんと視界が裏返る。次の瞬間、石黒克司は自身を痴漢してきた中年オヤジと入れ替わっていた。目の前には逞しいサラリーマンの背中があった。克司だ。現在の克司の左手はさっきまでの自分の尻を撫で、右手は眼の前の自分にチケットを差し出したまま硬直していた。眼の前にいる克司の肉体が、受け取ったチケットをニヤッと笑って胸ポケットにしまった。その様子を見た克司が、鼻息を荒くした。
(おっ、おほおっ! お、俺がいる! 俺がさっきのオヤジと、入れ替わったのか! うへへ……俺の尻、固くて揉み甲斐があるな……たまらんぞこれは……)
眼の前の克司の肉体が、尻を克司に向けて押し付けてきた。克司は鼻毛の密生した小鼻をムフリと広げ、浅ましく腰を振った。満員電車の振動に紛れて、中年男の陰茎が絶頂に達したのは、それから程なくのことだった。
(終)
「ここは……安全のようだな」
僕は薮崎先生と共に、化学実験室の隣にある準備室に隠れることにした。学校に突然現れた変質者──そいつに対応した学年主任の河本先生が真っ先に「変えられた」。後は他の先生や、一階の教室の生徒たちも「変えられた」ことで、学校は大混乱に陥っていた。
──おちんぽ、シコシコーッ!
間の抜けた叫び声が、グラウンドから、廊下から響いてくる。勃起した下半身を露出した男たちが、次の獲物を探している。その勃起チンポを股間に押し当てられると、一瞬で彼らと同じ変態になってしまうのだ。
「……夜まで待とう。駐車場に先生の車があるから……」
──おい! この部屋も調べるぞ!
化学準備室のドアを誰かがこじ開けようとしている。薮崎先生が声を押し殺して言った。
「田所。お前はそこのロッカーに隠れていろ……安心しろ。先生がああなっても……お前のことだけは、守りきってみせる」
「先生……」
薮崎先生は顎髭を蓄えた顔で、ニカっと笑った。僕がロッカーに入ってすぐ、ドアが蹴破られる激しい音が響いた。僕はロッカーの通気孔から、外の様子を伺った。
「おほおっ! おちんぽ、シコシコーッ!」
現れたのは、勃起チンポを晒した河本先生だった。角刈りの厳つい顔は、発情してデレッと崩れている。
「河本先生……!」
「んっ……薮崎クぅン、ダメじゃないか……変態に、ならないとおぉぉ!」
河本先生が、薮崎先生に襲いかかる。柔道部顧問の巧みな足さばきで薮崎先生を床に押し倒すと、股間をぐりっと押し付けた。
「あひっ♥」
薮崎先生が、間の抜けた声を漏らした。
「おっおっ、おちんぽ! おちんぽ、シコシコーッ!」
薮崎先生が、下半身のジャージを脱ぎ捨てた。完全に反り返ったチンポを、薮崎先生が激しく扱きながら──僕が入ったロッカーを見て、眼をギラギラと輝かせた。
(終)
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というわけで、様々なお題で800字小説を書いていくシリーズ。今回の更新は「催眠」「憑依」「入れ替わり」「変態化」の4本でした。全体的に今までよく書いているジャンルになりましたが、この中でもひときわお気に入りが、変態化ですね。これは書いていて、長編にできるポテンシャルがあるなと感じました。
さて、今年から始めた800字小説ですが、来年以降も続けていこうと思っています。そしてさらに、募集するお題の内容をグレードアップします。
今までは「1つの単語」に絞っていましたが、だいぶ僕も書き慣れてきたので「2つの単語」までOKとします。例えば「催眠」「高校球児」とリクエストすると、高校球児の催眠モノになりますし、「映画館」「若パパ」とリクエストすると、映画館で若パパが何かされてしまう話になります。
簡易的なリクエストとして、どうぞ気軽にコメントしてみてください。リクエストしたいお題は、今まで通り800字小説のコメント欄にどうぞ。
くろねこ@9605
2021-01-05 07:48:25 +0000 UTC甘党
2021-01-05 05:34:27 +0000 UTCくろねこ@9605
2021-01-05 02:01:32 +0000 UTCブウ
2021-01-04 15:54:43 +0000 UTCくろねこ@9605
2021-01-02 10:04:38 +0000 UTCまたり
2021-01-01 13:17:44 +0000 UTC