トイレの窓の外からは雨音が、店内からはピアノの音色が聞こえる。岩村豊和は嘔吐を終え、洗面器から顔を上げた。先程飲んだクラフトビールとオリーブのマリネが混じった、胃液の苦味がまだ口腔内に残っている。
「くそっ」
それもこれも、全てあの女──桐谷真帆のせいだと、豊和は苦々しげにトイレの洗面器につばを吐いた。豊和と不倫関係にあった桐谷は、豊和が妻と別れるつもりがないことを悟ると、不倫の証拠を豊和の自宅に送りつけてきたのだ。そのせいで妻と娘からは白い目で見られ、豊和の家庭は完全に崩壊してしまった。
不倫がバレたのが先週。それ以降、豊和はまっすぐ家に帰る気になれず、逃げるように飲み歩いていた。
バーの男子トイレから出て席に戻ると、カウンターの隣の席に男が座っていた。水曜日の夜のバーは客もまばらで、店内は空いているのだが。男は豊和が戻って来たことに気づくと、振り返ってグラスを軽く傾けた。ハイボールの入ったグラスの中で、氷がカランと揺れた。
「まだ、顔色が悪いようですね。大丈夫ですか?」
「誰だ、アンタは。悪いが……放っておいてくれないか?」
豊和はげんなりとして、自分のグラスを持って席を移動しようとした。隣席の男が、さらに言葉を続けた。
「いえ……なにかお悩みのご様子だったので。なのでどうか【私のことは警戒なさらず】【悩みを全て話してください】」
「あ──」
男の言葉は、豊和の脳へと直接染み渡るようだった。見知らぬ男への警戒感が急速に薄れていく。それは不自然なほどの心境の変化だったが、酩酊した豊和は違和感を抱くことができなかった。豊和は自分の席に座り直すと、不倫がバレた顛末を男に全て喋ってしまっていた。
「なるほど、なるほど……それはおつらいですね」
「ったく。どいつもこいつも、俺の気持ちなんざ、全くわかっちゃいないんだ」
豊和は妻とセックスレスになって久しい。セックスしていた頃でさえも、妻はある種の義務感によって、淡々と豊和の相手をしているような気配があった。そんな妻に嫌気がさして、他に女を作って何が悪いんだ。俺の相手をろくにしない癖に──と、豊和は男に力説した。すると、隣席の男が微笑んだ雰囲気があった。
「それでは……『あなたの気持ちを、周りの人が理解してくれれば、悩みは解決する』と、そのように考えてもよろしいでしょうか?」
「あ、あぁ。まあ、そうなんだが……」
豊和はふと気づいた。さっきから話しているこの男の顔が、よく見えない。店内は薄暗いとはいえ、人の顔の判別ぐらいはつくはずなのだが、先程からこの男の顔をよく見ようとしても、目の焦点が男の背後の観葉植物に行ってしまったり、男が持っているグラスに向いてしまったりする。この男は、いったい──豊和が酔いの回った頭で違和感に気づきかけたところで、男が口を開いた。
「では私の方で、そのように取り計らっておきますね。ああ……次の料理が来たようです。美味しそうですね」
男の前に、BBQソースのたっぷり掛かったスペアリブの皿が置かれた。男は嬉々としてナイフとフォークでスペアリブを切り分け、口に運んでいく。豊和には、男の口元に付いた汚れが、血のように見えて仕方がなかった。
※
「う、うーん……うおっ!」
翌朝。豊和は、布団を跳ね除けて起き上がった。普段の起床時間よりも一時間も早い。何か……悪い夢を見ていた気がするが、夢の内容は思い出せなかった。寝間着はぐっしょりと汗ばんでおり、酒を飲んだ翌日特有の、酒精の混じった汗の匂いがした。
「昨日は、あれから……どうしたんだったか」
昨日、見知らぬ男と酒を飲んで、何か喋った気がするが……どうやって帰宅したのか記憶がなかった。二日酔いというほどではないが、まだ体の芯に酔いが残っている気がする。シャワーを浴びる前に水でも飲むかと、豊和はダイニングキッチンに向かった。
(しかし……裕佳子と顔を合わせたくないな……)
ダイニングキッチンでは、妻の裕佳子が朝食の準備をしている音が聞こえた。不倫がバレて、妻からさんざんなじられた後、最低限の事務的な会話しかしていない。豊和はダイニングの扉を開ける前にため息を吐くと、意を決してドアノブを掴んだ。
「……おはよう」
「おう! おはよう!」
「は?」
豊和は眼を疑った。ダイニングキッチンにいたのは、豊和と同じ顔と背格好の男だった。豊和とそっくりな男は、妻のエプロンを着ていたが、服は豊和のポロシャツとチノパンを穿いていた。ポロシャツから日に焼けた筋肉質な腕を晒して、フライパンを振るっている。男の右腕には、豊和が学生時代にアメフトで作ってしまった傷跡と、全く同じ傷跡があった。豊和は口をパクパクと開けたり閉じたりして、自分と同じ顔の男を見つめていた。男は見られていることに気づくと、照れくさそうに頭を掻いた。
「なんだよ。じろじろと俺のこと見て。照れるだろ」
「いや、その……だ、誰なんだ?」
「おいおい。自分の妻に向かって、誰なんだとはご挨拶だな……最近、俺が冷たくしたから怒ってるのか?」
「ゆ、裕佳子……なのか?」
豊和は後ずさった。あり得ないはずの答えを、直感してしまった。なぜ妻が、自分と同じ姿になっているのか。しかし裕佳子を名乗る男は、立ち尽くしている豊和を気にもせず、娘と豊和の弁当箱におかずを詰めていった。豊和は恐る恐る、男に質問をした。
「裕佳子? その……あー、格好は……どうしたんだ?」
「これか? 今朝起きたら、普段の服が体に合わなくなっていてな。とりあえず、お前のクローゼットから借りたところだ。似合ってるだろ?」
裕佳子は豊和のポロシャツの襟元を指で摘んで、ニッと笑った。笑ったときの目尻の皺まで自分と同じで、豊和は顔を引きつらせながら、質問を続けた。
「服じゃなくてその……顔とか、体とか……いつもの裕佳子と違う……よな?」
「そうか? 普段どおりだろ?」
夫と同じ風貌になっている、という異常事態を自覚していない妻に、豊和はとうとう我慢できなくなり、直接問いただした。
「いやいや! 裕佳子、鏡は見たのか? 顔も声も体も……俺とそっくりになってるだろ!」
「んー? そうか?」
裕佳子は自分の頬を手で触った。伸びた無精髭がジョリッと擦れた。続いてポロシャツの下にある厚い胸板を触り、チノパンの股間の膨らみにも触れたが、しかし彼女は首を傾げて言った。
「うーん……多少太ったかな? って気はするが、そっくりは言いすぎじゃないか? でもまあ、一緒に暮らすうちに夫婦は似てくるって言うし……そうおかしなことでもないんじゃないか?」
「は……ははは……」
豊和は立っていられなくなり、力なく床に座り込んだ。裕佳子を名乗る男は心配そうに濃い眉を顰めると、菜箸を置いて近寄ってきた。
「おいおい。豊和、本当に大丈夫か? 立てるか?」
力強い腕が豊和の腕を掴んだ。肩を貸してもらってダイニングの椅子に座る。裕佳子の太い首筋からは、豊和が普段使っている整髪料と、ムッと濃い中年男の体臭が漂ってきていた。裕佳子は節くれだった指で、豊和の肩に愛おしげに触れた。豊和は自分と同じ顔の男に体を触れられる、という気色悪さに肩をビクッと震わせたが、裕佳子は違う意味に受け取ったようだった。裕佳子は男臭い顔に苦笑いを浮かべ、低い声音で言った。
「そう怖がんなって。そりゃあまあ……色々あったし、俺とは喋りづらいだろうが……俺は、そうでもないぞ? 今朝眼が醒めたら、急にお前の気持ちがわかるようになっていてな」
「俺の……気持ち?」
その言葉が、妙に豊和の頭の片隅に引っ掛かった。しかし豊和がその理由を思い出すよりも先に、裕佳子は言葉を続けていた。
「ああ。男心というか……男の感覚っつうのかな。それが急に、身に染みてわかるようになったんだ。そりゃあ妻がいても、男ならヤりたい時はヤりたいよな。俺とはセックスレスだったし。今朝起きたら、自然とお前の不倫を許せるようになってたんだ……自分でも驚いたよ」
裕佳子は豊和の隣の席に腰掛けた。豊和と同じく、彫りの深い眼差しに、妙にねっとりとした色気が浮かんでいる。裕佳子は椅子を近づけて、うっとりとして呟いた。
「今は……お前のことを、離れていても近くで感じるんだ。さっき、キッチンで弁当を作っていたときもそうだ。お前と……豊和と俺が、体も心も溶け合って、ひとつになっちまったような……そんな感覚が起きたときからずっと……続いているんだ。おかげで、体が疼いてたまらん。今朝からクリが勃ちっぱなしなんだよ。こんなの初めてだ」
裕佳子が豊和の肩を抱き寄せてきた。豊和は緊張で全身の筋肉が強張るのを感じていた。自分と同じ顔と声、さらに喋り口調まで自分と同じになった妻が、自分を口説いてきている──裕佳子は鼻息を荒げ、好色な中年男の顔で豊和を見つめていた。
「なあ……今朝は時間もあるし、いいだろ? 急にサイズが合わなくなったから、俺いま、ノーブラなんだよ……ほら、触ってみるか?」
「ま、待って……待ってくれ。色々と、頭が追いつかない……」
「おっと……さすがに豊和からしたら、昨日まで怒ってた俺が、いきなりこんなこと言い出して戸惑うよな。スマンスマン。でも俺がもう怒っていないのは、本当だからな。信じてくれ」
欲情していた裕佳子だが、戸惑っている豊和の様子にぐっと性欲を飲み込むと、身を引いた。そして立ち上がると、豊和の肩を叩いた。
「そうだ。今度の週末にでも、例の子……真帆ちゃんだったか? あの子を家に呼んで食事しないか? ああ、そういうアレじゃなくてだな……単に同じ男に惚れた女同士、一緒に酒を呑んでみたいんだよ」
裕佳子はおどけたように片眉を上げた。それも豊和がよくやる仕草だった。豊和は理解が追いつかないまま、乾ききった声で「か、考えておく」と返事をした。裕佳子が楽しげに笑った。
「おっ! 本当にセッティングしてくれよ。真帆ちゃんが家に送ってきたハメ撮り写真、今朝になってよく見たら、俺の好みにドンピシャなんだよなあ……今まで俺、女に興味はないつもりだったんだが……うへへ。なんつうか……そそるよな? 豊和が不倫しちまうのも、わかる気がするぜ。なんだったら……三人でヤッても、俺は一向に構わないからな」
豊和と同じになった、体育会系の中年男の厳しい顔が、デレッとスケベそうに緩んだ。
※
豊和が妻の変貌を理解しようと必死になって頭を働かせていると、今度はダイニングのドアが開いて、低い男の声が響いた。
「おはよう〜。ママー、あたしのパジャマ、なんかサイズが合わなくなってたんだけど。もっと大きいの買ってきてくんない?」
寝起きで無精ひげが伸びた豊和と同じ顔をした男が、もう一人いた。そいつは上半身に、高校生の娘の沙紀のキャミソールを着ている。体格のいい豊和の体が着ると、キャミソールはまるでタンクトップのようになってしまっていた。しかし肩幅が大きいためにパジャマは羽織れず、さらに下半身に至ってはパンティも穿けなかったのか、毛深い両足の間に、朝勃ちしたチンポを無造作に晒していた。その様子を見た裕佳子が、昨日までの母親の口調で注意した。
「ちょっと、沙紀。お父さんの前で、そういう格好はどうかと思うわよ?」
「え〜? 別にいいじゃん、家族なんだし。おはよ、パパ」
「お、おはよう……」
卒倒せず、かろうじて挨拶だけを返した豊和の対応は、上出来と言っていいだろう。もはや混乱を極めた豊和は、これが現実ではなく夢なのではないかと本気で疑っていた──というより、願っていた。しかし妻と娘が豊和の姿になってしまっているのは、紛れもない現実であった。沙紀もまた、自身の姿に何の疑問も抱いていないようだった。沙紀は裕佳子が豊和の私服を着ているのを見つけると、無精髭の伸びた頬を膨らませた。
「え〜? ママったらパパの服借りてるの? ずるい! 私も着たいのに!」
「もう、沙紀ったら。昨日までパパと洗濯物別にしてって言ってたのに、どういう心境の変化なの?」
「ちょっ、パパの前でそういうの、言わないでよ! でもまあ……なんか朝起きたら、パパの気持ち、すっごくわかるようになってたんだよね。だから洗濯物とか、もうどうでもいいっていうか」
沙紀は、朝勃ちしたチンポを申し訳程度に片手で隠しながら。もじもじと内股同士を擦り合わせた。分厚い胸板が大きく上下し、鼻の穴が開いたり窄んだりしていた。沙紀は豊和と同じ声帯で、沙紀の口調で言葉を口にした。
「そりゃまあ……あたしもパパが不倫してたのはショックだったけど……今はあたしも、不倫しちゃうパパの気持ち、すっごくよくわかるんだよね。やっぱ、男の本能的な? 押さえきれないものってあるわけじゃん」
沙紀の言葉に裕佳子も頷き、口を開いた。
「そうそう。ママもいま、パパと同じ話をしていたのよ。ママもパパの気持ちがよく分かるようになったから、不倫のことは許してあげようかなって。むしろ分かりすぎて──俺がパパなんじゃないか、って気分になっちまうぐらいだ。さっきもつい、パパの口調で喋っちまっていてな。だがこれが妙に、落ち着くんだ」
「あ〜! それ、なんかわかるかも! あたしも──俺も、自分が女子高生だってことが信じられなくてな。頭の中が急にオジサンになっちまったみたいだ。そうだ。なあ……パパ。ひとつ、お願いがあるんだが」
裕佳子も沙紀も、喋っているうちに途中から豊和の口調になってしまった。しかもそちらの方が、口にしていて馴染むような素振りさえある。沙紀は先程の裕佳子と同じようにねっとりとした、欲情を滲ませた男の声音で話していた。
「その……パパも男なんだから、AVの一本や二本持ってるだろ? 娘の俺が言うのも何だが……学校に行く前に、抜けるヤツを貸してくれないか? 急に女の体に興味が出てきてな。正直、朝のうちに抜いておかないと、体育の着替えを想像しただけで、どうにかなっちまいそうなんだ。うへへ……頼むよ」
沙紀は、豊和の表情筋に男の性欲剥き出しのスケベな笑みを浮かべて、ムフリと小鼻を広げた。朝勃ちを隠していた右手は、ゆっくりと男根を扱き始めていた。
※
豊和はマーマレードジャムを塗ったトーストとシリアルを食べて家を出たが、まるで味がしなかった。あれから裕佳子と沙紀と話した内容は覚えていない。豊和は満員電車に揺られながら、叫び出しそうな衝動を懸命に抑えていた。
(あ、アレは何なんだ……? なんで裕佳子も沙紀も、俺になってるんだ……?!)
豊和の姿になり、さらに思考も豊和らしくなってしまったのに、それに気づいていない妻と娘。制服のサイズが合わなくなったため、学校指定のジャージを着た沙紀と共に家を出たが、隣の家の奥さんも、豊和とそっくりになった沙紀の姿に何の疑問も抱いていないようで、普段どおりに挨拶を交わした。
豊和は満員電車の中に視線を動かした。当然だが、男も女も皆、それぞれ違う容姿をしている。双子でもない限り、それが自然なはずだ。
(これは──俺がおかしくなっている……のか?)
不倫がバレたことによる極度の精神性ストレス。それが異常な幻覚・幻聴を引き起こしたのだとしたら──それで妻や娘の姿が、自分に見えているのではないか。その仮説は、豊和をむしろ安心させた。妻と娘が自分になってしまったという事態よりも、よほど現実的で、有り得そうな話だ。
(よし。今日は午後に年休を取って、精神科に行こう)
豊和はそう決意して、会社のあるターミナル駅で満員電車を降りた。
※
「高木くん。今日、朝礼に桐谷くんがいなかったようだが?」
「桐谷さんは今日は休みです。本人から病欠すると連絡がありました」
「……そうか」
出社した豊和は、営業部の朝礼に不倫相手の桐谷真帆がいないことに気づくと、他の部下に尋ねた。まさか彼女も自分の姿になっているのでは? と疑い、空いた時間にこっそりと電話して確かめたのだが──豊和の想像通り、真帆の番号に出たのは、豊和と同じ声の男だった。真帆もまた、自身が豊和になってしまったことに気づいていないらしく、今朝急に服のサイズが合わなくなったため、急遽仕事を休んだことと、妻との関係を精算しない豊和への怒りが綺麗に消えたことを、電話で語っていた。
「いやあ。岩村部長には悪いことしたなと、つくづく反省したよ。奥さん、怒っていただろ?」
「……今は、怒っていないらしい」
豊和は強いめまいを覚えながら、辛うじて答えた。このままスマホを窓ガラスに投げつけて、会社の中で大声で泣きじゃくりたい気分だったが──しかしアメフトで鍛え抜いた豊和の精神は、そんな惰弱な結末を許さなかった。あくまでも表面上は淡々と真帆と受け答えをしていく豊和。真帆はそうかそうかと嬉しそうに、豊和と同じ声で答えた。
「岩村部長には悪いんだが……近いうちに、俺と奥さんを会わせてくれないか? 俺の口から直接、奥さんに謝りたいんだ」
「妻も……会いたいと言っていた。その……あー……ちょっと仕事が立て込んでいてな。詳しくはまた後で連絡する」
「ああ。よろしく頼むよ」
岩村は電話を切った。そのまま自分の席に戻り、何を意味しているのか全く理解できないパソコンの文字列を眼で追い続けた。仕事が手につかないまま昼になり、豊和も体調不良による年休の申請をすると、逃げるように会社を後にした。
※
──今朝眼が醒めたら、急にお前の気持ちがわかるようになっていてな。
自分の姿に変貌してしまった裕佳子の何気ない言葉。空いている真昼の電車に揺られながら、妙に引っかかるその言葉を思い出していたときに、不意に豊和の脳裏に閃きが走った。
(……そうか。なんで今まで忘れていたんだ。昨日のバーのあいつ! 妙なことを言っていたじゃないか!)
それをとっかかりに、隣の席の男との会話が、次々に脳裏に蘇った。「あなたの気持ちを周りの人が理解すればいい」「そのように取り計らう」だとか……まるで今の奇妙な事態を予見するような言葉だ。
豊和はスマホで調べた精神科に向かっていたのだが、急遽予定を変更した。電車を乗り換え、昨日のバーの最寄り駅へと向かった。昼食をまだ取っていない上に、今朝から精神的に疲れていたので、空っぽになった胃がチクチクと痛んだ。足早に駅の改札を抜け、繁華街を抜けて雑居ビルにある昨日のバーのドアの前までやって来たが、ドアには「CLOSED」「営業時間 17:00~25:00」の札が掛かっていた。
(そういや、昼間はやってないよな……どうする? 開店まで、近くで時間を潰すか? そもそも開店したとして、あの男が今日も来る保証はないが……)
豊和は腕時計を見た。現在時刻は午後1時過ぎ。まだまだ時間はあるが──しかし自分と同じ顔をした妻が待つ家に帰るというのも、ぞっとしない話だった。そこで突然、豊和のスマホの着信音が鳴った。登録していない番号だったが、豊和にはこのタイミングで誰が電話をしてきたのか、直感があった。ゴクリと生唾を飲み込むと、豊和は親指で通話アイコンをタップした。
「……もしもし、岩村ですが」
「ああ。岩村さん。昨日は楽しかったですね。それで、どうでした? 奥さんも、娘さんも、不倫相手も──みんな、あなたの気持ちを理解してくれたでしょう?」
どこか楽しげに、しかしこちらの短慮をうっすらと嗤うような声音で、電話の相手は話していた。豊和は、スマホを握る指に力を入れながら、感情を抑えて口を開いた。
「やっぱり、アンタの仕業だったんだな」
「ええ。昨日のうちにお伝えしたじゃありませんか。もしかして、お気づきでなかったですか?」
「……とりあえず、その話はもういい。今すぐ、妻も娘も桐谷も、全員元に戻してもらおう」
「おやおや〜? よろしいんですか? それだとまた、振り出しに戻ってしまいますよ? あなたは不倫を糾弾され、奥さんと離婚の危機に直面しますし、娘さんからも軽蔑されます。不倫相手の桐谷さんも、離婚に時間を掛けていると、会社でどんなことを口走るかわからないのでは?」
「それは……」
豊和は言い淀んだ。確かに昨日までの豊和は、不倫がバレて社会的に制裁を受ける寸前であり、かなり危機的な状況と言えた。電話の男が取った手段は異常だが、現在の状況はかなり豊和にとって有利ではある。不倫を公認する妻と娘。さらに不倫相手も、妻に対して譲歩する姿勢を見せている──言葉にしてみると、不倫の末路としては破格の好条件だ。ただし、妻と娘と不倫相手の三人が、自分と同じ姿になってしまっていることさえ除けば、だが。豊和は顔を流れる脂汗をワイシャツで拭いながら、口を開いた。
「しかし、あれは……いくらなんでも気持ち悪すぎるだろう。あいつら、俺と同じ顔で、中身も俺っぽくなってるじゃないか。あんなのと顔を合わせ続けたら、俺はいずれ発狂しちまう」
「なるほど……確かに岩村さんの仰る通りです。私の配慮不足でした」
電話の男は、浮かれた調子の声を落とし、しおらしく答えた。豊和は安堵した。この男がどんな手段を使ったのかは皆目見当が付かないが、これでようやく、あの異常な事態から解放されるのだと──そんなふうに、油断した。
「それでは──『気持ち悪さ』を消しておきますね」
電話口の男が、再び嗤うような声音で答えた。不意に豊和をめまいが襲った。
「あぁ………………」
めまいが引いたときには、自然と豊和の頬に笑みが浮かんでいた。その足はくるりと踵を返し、愛する妻が待つ自宅へと向かっていた。
※
あれから、一ヶ月が過ぎた。例の男と交わした電話以降、確かに豊和の心からは、妻たちの変貌に対する気持ち悪さが、綺麗に消えていた。それどころか、むしろ……妻たちが自分の肉体と性格になってしまったことに、性的な興奮さえ覚えるようになっていた。
「本当に……パパって、こういうの好きだよなぁ。まあ俺も、溜まってたから……んっ、助かるけどさ。うおっ……!」
娘の沙紀が、半ば呆れたように呟いた。沙紀は自分の部屋の勉強机のパソコンで、豊和が貸したAVを観ている。豊和は沙紀が座っている椅子の下に潜り込み、沙紀が特注で頼んだ制服のスカートの中に頭を突っ込んでいる。既に沙紀のパンティーは、豊和の両手によって刷り下げられている。豊和は沙紀の猛々しいチンポを、一心不乱にしゃぶり続けていた。
(さ、沙紀……んちゅっ……むぐっ……俺に似て、チンポも太くて……ああ、いい……!)
豊和のチンポも、痛いほどに勃起していた。頭では、自分がどれほど異常な性癖になってしまったのか、豊和はしっかりと理解していた。肉体も性格も、父親に変えられてしまった娘。あれほど気持ち悪いと思っていたその姿が、今は愛おしくてたまらない。身も心も自分になってしまい、男の性欲に酔いしれる娘の姿に──自分が舌を動かすたびに沙紀が漏らす男の鼻息や、毛むくじゃらになった沙紀の太ももが頭を挟み込む圧迫感に、たまらなく興奮してしまう。
(俺を汗臭くてウザいと言っていた沙紀が……俺と洗濯物を一緒にするなと怒っていた沙紀が……俺のチンポを股から生やして、俺にチンポをしゃぶられて……喜んでいる)
「ハッア〜ン! くうっ……パパ! もうちょっと……ペースを落としてくれ。いま、いいとこなんだッ! うおっ!」
欲情した男のバリトンボイスが、豊和の頭上から降ってくると、スカートの中に潜り込んだ豊和の頭が、ゴツい両手で押さえつけられた。パソコンからは、卑猥な男女の喘ぎ声が漏れている。豊和は口腔を使ったストロークをやめて、舌でゆっくりと雁首をなぞり始めた。今度は、陶酔したような男の声が頭上から聞こえてきた。
「あっあぁ……んっ。いいぞ……パパ。それにしても……この女優、ママにちょっと似てるよな。俺もパパと、女の好みが一緒だから……ンッ! 結構、興奮しちまう……ああ、ママ……」
頭上から聞こえてくる男の声が、切なげになってきた。沙紀は記憶は女子高生のまま、性格や人生観を豊和に上書きされてしまっている。そのため沙紀は、母親である裕佳子に欲情していた。沙紀が、裕佳子が脱ぎ終えたパンティを脱衣所からこっそりと拝借する姿を、豊和は何度か目撃していた。
「あっあっ……ああっ! ママ……ママ……! くぅっ! も、もう我慢できん!」
豊和の口腔内で、勃起した沙紀の陰茎が暴れた。興奮した沙紀は、無意識に腰を前後に揺らしていた。豊和の口腔を母親の膣に見立て、ぐいっと押しては引き抜くようなピストン運動をしているのだった。先月までは女子高生だった、しかし今は欲情した中年男になった声が部屋に響いた。
「フーッ! んっ! ま、ママの中に! 出すぞッ! ママ! ママっ! 俺の子を! 孕んでくれっ! うおッ! オウッ! ママぁッ!」
頭上から聞こえる野太い雄叫びと共に、豊和の口腔内に、ビュルルルと勢いよく精液が吐き出された。豊和はここぞとばかりに舌を激しく動かし、精液を吐き出し続ける尿道口に舌をねじり込もうとした。頭上から聞こえる中年男の喘ぎ声に嗚咽が混じり、ゴツい両手が豊和の頭をチンポから引き剥がそうとしたが、豊和はチンポをむしゃぶり続けた。
「〜〜〜〜〜ッ!」
ビクッ! と沙紀の体が大きく痙攣すると、チンポから精液とは違うものがブシュッ! と噴き出した。元々、沙紀は性的なものに疎く、自慰さえもしたことがない女の子だった。それがいきなり中年男の性欲と肉体を与えられた挙げ句、それを男の肉体で、よりにもよって父親の肉体で、性的な行為に及んでしまったのである。一ヶ月経っても沙紀はまだ快感に慣れておらず、今日もあまりの快感に耐えかね、沙紀は潮を噴いて失神してしまった。彫りの深い、厳つい中年男の顔にだらしのない笑みを浮かべ、唇から涎を垂らしてヒクヒクと肩を痙攣させている。豊和は、沙紀のチンポを丹念に舌で味わい尽くし、精液を残らず啜ると、ようやく机の下から出てきた。そして、自分と同じ肉体になり、男のオルガスムスを存分に味わった娘の幸福そうな顔を見ると、鼻息を荒くした。
「沙紀……あぁ……なんてスケベな顔で寝てるんだ。美人が台無しじゃないか……」
豊和はそう言って、意識を失っている沙紀の唇に、キスをした。豊和の舌と共に、先程飲み込んだ精液が混じった唾液が、沙紀の口腔内に送り込まれる。沙紀は濃い眉根を寄せ、かすかにうめき声を上げた。スカートの中では、イッたばかりだというのに、太ましい男根が再び固くなり始めていた。
※
「あら、あなた。沙紀は?」
「ああ、晩御飯は後で食べるそうだ」
「そう。じゃあ私たちで先に始めましょうか」
「あ、裕佳子さん。実は私、ちょっといいワイン、今日持ってきてるんですよ。みんなで開けちゃいません?」
「あら、いいわね。それじゃ、グラス持ってくるわね」
豊和と同じバリトンボイスで、女言葉で喋る妻の裕佳子と、不倫相手の真帆。妻と不倫相手が自分と同じ外見になったことの気持ち悪さを消された豊和は、和やかに話す二人を愛おしげに眺めていた──本来ならこの二人が和やかに食卓を囲むなど、あり得ないはずだ。しかし、裕佳子と真帆がの肉体と人格が、強制的に豊和のものに上書きされたことで、二人は豊和の視点で互いを意識するようになっていた。つまり、身も心も豊和で上書きされた裕佳子からすれば、真帆は「不倫関係にある部下」であり、同様に真帆からすれば裕佳子は「愛しい妻」である。実際、グラスを取ってきた裕佳子は、真帆の脂ぎった額にチュッとキスをした。真帆は精悍な顔を照れくさそうに緩め、小鼻の穴を広げた。
「んっ。ちょっと、裕佳子さん……こんなところで……沙紀ちゃんが来たら、どうするんですか」
「いいじゃない。女同士なんだし……ホント、不倫したって聞いたときは、私も怒り心頭だったけど……真帆ちゃんみたいな可愛い子なら大歓迎だわ。すっごく私の好みだし……なんだか他人って気がしないのよね」
「あっ、だめ……ああん」
男同士になってしまった妻と不倫相手が、野太い声を漏らしながら、舌を互いの唇にねじり込み合う。男の性欲に染まっていることも自覚できないまま、股間でチンポをいきり勃たせ、化粧をした豊和の顔を情欲で歪ませて、唾液を交換し合う。二人とも豊和の肉体になっているが、やや外見に違いもあった。元から40代である裕佳子の方が化粧が厚めで、20代である真帆の方は薄めだった。自分と同じ顔をした男たちが化粧して、さらに大柄な女性モノの服を着てレズプレイを繰り広げる様子に、豊和は鼻息が荒くなっていった。それが異常なことだとは自覚していながらも、興奮が収まらない。
(ハァン……な、なんて光景なんだ。裕佳子も真帆も、二人とも俺になった挙げ句、発情してキスし合ってる……こんなの、絶対おかしいのに。くそっ……! いっ、いい……ずっと見ていたい……たまらん……)
妻と不倫相手だけでなく、自分までも変態化していることを重々に承知しながらも、豊和は強烈な多幸感を脳に刷り込まれ、ギンギンにチンポを勃たせていた。豊和は愛し合う裕佳子と真帆をチラチラと何度も見てため息を吐きながら、グラスにワインを注いでいった。さっさと食事を終わらせて、三人でしっぽりとヤりたい気分だった。
「二人が仲良しで俺も嬉しいんだが……まずは乾杯しないか? せっかくの料理が冷めちまう」
「そうね。それじゃ……乾杯」
「乾杯」
「乾杯」
同じ顔と声の男が三人、ワイングラスを掲げた。爽やかな香りとほろ苦さの残る、辛口の白ワイン。そもそも酒を飲まない裕佳子や、甘いカクテルを好む真帆の好みとは全く違う。豊和が好きな類の酒だったが、味覚も豊和のものに上書きされている裕佳子と真帆は、一口飲んで感嘆の声を漏らした。
「美味しい……なかなか、俺好みのワインだな」
「だろ? 裕佳子にもこれを飲ませたくてさ」
裕佳子と真帆の口調が、豊和の口調に変わっていく。今や二人はその時の気分で、本来の自分の口調と豊和の口調を使い分けていた。岩村裕佳子と桐谷真帆の人格は、言わばソフトウェアであり、岩村豊和というハードウェアで再生されている。二人は裕佳子と真帆の記憶を継続しているが、ハードウェア側の設定はあくまでも岩西豊和であり、豊和の口調に切り替えることは造作もなかった。
裕佳子の手料理を食べ進めつつ、ワインを飲み干していく三人。酔いが回ってくると、裕佳子は浅黒く日焼けした顔をうっとりとさせ、真帆のゴツい手を取って、チュッと手の甲にキスをした。今の裕佳子がしている、はにかんだような、ちょっと照れくさいような顔で相手を見つめるのは、豊和がたまにやる表情だった。豊和のようなゴツい男がそれをやることで、女がギャップを感じることを、豊和は理解していた。裕佳子は赤らんだ顔で、甘い言葉を口にした。
「ホント、真帆ちゃんって可愛いよな……豊和が浮気するのもわかるよ。俺が男だったら、真帆ちゃんみたいな子を奥さんにしたいもん」
「よせよせ。照れくさいだろ。それに……裕佳子こそ、俺の理想の奥さんだ。料理も上手いし、夫の浮気を受け止める度量もあるだろ?」
真帆の方も満更でもないようで、うっとりとした顔つきで裕佳子の手を取り、同じように口づけした。酒も体に周り、中年男の濃い体臭とアルコール臭、そして欲情した男のフェロモンが立ち込め、リビングはムワッと濃厚な空気が漂っていた。裕佳子と真帆が、豊和を見た。裕佳子が椅子から立ち上がりながら言った。
「なあ、豊和。そろそろ……いいだろ?」
「俺も……もうムラムラしてたまらん」
真帆ももう我慢出来ないようで、明らかに発情した男の顔になっていた。とても中身が20代のOLとは思えない。好色な40代の中年男の生理現象と人格に、完全に支配されていた。
「そうだな……そろそろ寝室に行くか」
豊和も興奮しながら席を立った。アルコールが入っているせいもあり、股間は痛いほどに勃起している。三人で軽く体を触り合いながら寝室に行き、そのままもつれ込むようにベッドになだれ込んだ。鼻息荒く互いの服に手を掛ける。勃起した陰茎が引っ掛かったパンティを脱がせていく。男同士で接吻し、乳首を舐め、勃起した陰茎を愛撫する。汗と脂の混じった中年男の体臭を、鼻孔いっぱいに吸い込みながら、低いバリトンボイスで愛を囁く。低い声で笑い合い、再び肉厚な男の舌で唇を塞ぐ。明かりを消したベッドルームでは、誰が誰なのか曖昧であった。
「ハッ、ハッ、ハァッ……んっ、ぐっ……!」
豊和の肛門に、反り返った男根がリズミカルに出入りしている。それが裕佳子のものなのか、あるいは真帆のものなのか──何度も互いに体位を変え合い、さらにアルコールで酔った頭では判然としなかった。ここ一ヶ月で開発されてしまった肛門の性感帯が、男根に屈しようとしている。妻と不倫相手の肉体と人格を、自分のもので上書きした──そんな征服感から一転し、豊和自身が征服されようとしている。他ならぬ、豊和自身と全く同じペニスによって。それがたまらなく──嬉しい。豊和自身の脳も、肉体も、犯されることを悦んでいた。
「んっ、あっ、くうっ……!」
豊和は四つん這いになって尻を突き出し、節くれだった両手でギュッとシーツを握っていた。さらに豊和の顔面に、もう一本のチンポが突き出された。快楽で濁った意識のまま、それを口に含む。酒臭さと男臭さで鼻孔がガツンと殴られたかのような衝撃が走ったが、構うことなく舌を這わせてしゃぶり始めた。
(おっ、おほぉっ! ゆ、裕佳子も真帆も、みんな、俺になって……なんで、こんな)
──こんなはずじゃなかったのに。快楽で濁った頭の片隅に、そんな気の迷いがチラついた。ちょっと不倫しただけなのに。妻と不倫相手が男に──それも自分になった挙げ句、俺を犯してくるなんて。娘も自分になってしまい、その性処理も自分が手伝っている。聞くところによると、娘の沙紀は「女子会」と称して女友達の家に泊まりに行き、女友達を性的に喰っているのだという。先日、自慢気にそう話していた。可愛かった娘までもが、自分のような好色な中年男になってしまっている。そんな事実に、豊和は──
(ンイ゛ッ! た、たまらんっ! おっ、俺、こんなに、しあわせ──!)
豊和の脳内で、大量の快楽物質が分泌される。豊和の脳は、現状を嘆くことも、嫌悪することも許されていなかった。嫌悪感が一定以上を越えようとすると、それは一気に反転し、圧倒的な多幸感へと転じた。暴力的なまでの幸福が、岩村豊和の価値観を押しつぶす。妻と娘と不倫相手を、性欲旺盛な中年男に──岩村豊和にしてくださって、ありがとうございます。そんな感謝の念さえ、胸の奥から湧き上がって来てしまう。その思いは、セックスに及ぶたびに強まっていた。自分と全く同じ太さのチンポを口腔と肛門に突っ込まれながら、豊和は感激の涙を流していた、強制的に。
(おひっ! んあっあっあっ! ありがとうございます!! ありがとうございます!! 裕佳子も! 沙紀も! 真帆も! 全員、俺みたいな変態男にっ! んあっ! してくださって、本当に!──ありがとう、ございますッ!!!)
肛門を出入りする男根の、リズミカルなピストン運動が早くなっていく。「そろそろ出すぞ、豊和ッ!」聞き慣れた男の声でそう言われた。豊和を犯している男の興奮が最高潮に達し、いっそう激しく腰が打ち付けられる。その宣言通り、男が野太い雄叫びを上げると、豊和の肛門内に、熱く、滾る子種が注ぎ込まれた。豊和の背筋にも鋭い快感が突き抜け、何度も体験するようになったドライオーガズムが、アメフトで鍛え上げた豊和の屈強な肉体を貫いた。
(んひっ♡ イイっ♡♡ 俺のチンポ、たまらんぅ……♡ 俺が俺にッ! 孕まされちまうぅ♡)
一方で、豊和がしゃぶっていた男根も、その持ち主の鼻息が荒くなってきていた。「ああぁん、イッ、イイ……豊和、出すぞ。んああぁ……」低い、恍惚とした男の声と共に、口の中で陰茎がぐっと固くなった。途端に青臭く塩辛い粘液が、豊和の口腔内にどばっとぶち撒けられた。
(おほぉっ♡ おっ、俺の精液……すげえ濃い……♡ 飲むだけで……うへへ。こっちも、孕んじまいそうだ♡)
豊和は、男のオルガスムスを全身で味わいながら、ヒクヒクと肩を震わせてベッドに崩れ落ちた。肛門も、唇も、だらしなく精液を垂れ流し続けている──息も絶え絶えに、快楽で濁った声を発した。
「お゛っ♡ お゛ほぉ゛っ♡ 裕佳子ぉ、真帆ぉ……愛してるぞぉっ♡」
(最ッ高だ……もっと、俺を犯してくれぇ……♡)
自身の性欲によって、家族と不倫相手ごと、変態になってしまった豊和。それを不幸だと考えることも出来ないまま、豊和を含めた男たちは、どこまでも淫らな関係へと堕ちていった。
(終)
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というわけで、今回のテーマは「自分コピー」ですね。自分姦とはまたちょっと違うんですけれど。「エロい猿の手」みたいな話が書きたかったので、不倫の清算方法として、最悪に倒錯的な結末を用意してみました。こういうのも割と好きですね……。
みっくん
2021-01-01 08:50:17 +0000 UTCくろねこ@9605
2021-01-01 05:41:57 +0000 UTCくろねこ@9605
2021-01-01 05:38:17 +0000 UTC黒竜Leo
2020-12-31 16:29:48 +0000 UTCみっくん
2020-12-31 15:22:56 +0000 UTC