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くろねこ@9605
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800字小説チャレンジ「淫紋」「人格複写」「立場交換」「自分姦」

お題「淫紋」


「ン゛ッ、んくっ……あ゛ぁっ……!」


 岩倉健児は情けない濁声を漏らしながら、毛深い両足を布団の上でバタつかせた。ナイフを受け入れるバターのように、滑らかに。しかしナイフそれ自身のように鋭く、快感が体の芯を貫く。毛深い両足の痙攣が終わると、岩倉は今朝も夢精したことを知った。粘ついた染みがグレーのボクサーブリーフに広がり、煮こごりのような精液の塊が、下腹にこびり付いていた。


「……くそっ」


 岩倉は下着一枚の姿で悪態をつくと、のしのしと洗面所へ向かった。岩倉健児。42歳。職業は建設作業員。先週から体の調子がおかしい。尋常ならざるほど向上した精力。女が相手では微動だにしなくなったチンポ。ビール腹だった腹が引き締まり、彫刻のように筋骨逞しくなっていく肉体。全ての原因は──


「なんなんだよ、これ」


 岩倉の下腹部。臍の下に──淫紋があった。ハート型を模し、卑猥な蛍光ピンク色をしているタトゥー。先週、風俗で服を脱いだときに、下腹部にあるのに気づいた。体の異変はそれから始まった。


 岩倉は鏡を見た。ゴリラ顔の筋肉質な中年男が、こちらを睨んでいる──その姿に、チンポがムクムクと勃ちあがっていく。


「俺……んくっ……うあぁ……」


 ぐっと男臭くなった体臭。鼻孔をくすぐる男性フェロモンに、思わず頬が緩む。逞しい雄への発情。嗜好の変質に対する恐怖が、興奮で塗り潰されていく。精液で汚れた下着を脱ぐ。顔に押し当て、青臭い匂いを鼻孔いっぱいに吸い込む。多幸感で脳細胞がぷちぷちと弾けた。下着を頭に被ると、精液でヌメる生地と無精髭が擦れ合い、ジョリッと音を立てた。舌をちろりと出すと、塩辛い味が広がった。ぐっと上腕二頭筋に力を入れる。雄々しく変態的な姿に、興奮が最高潮に達する──


「んお゛ッ!」


 吠える岩倉。淫紋の画数が増えていく。淫魔を降ろす器として、岩倉の肉体は完成しつつあった。


(終)


お題「人格複写」


「これで終わりだ」


 キャプテン・ギャラクシーは、サソリ型怪人のダーク・スコルピを廃ビルの壁際に追い詰めていた。ダーク・スコルピは満身創痍で、先ほどもキャプテンの手刀で尾が両断され、床に転がっていた。その尾が、ヒーローの背後で、もぞりと蠢いた。


「うおっ!? な、なんだっ!」


 怪人にトドメを刺そうとしたその刹那。切断された尾に無数の足が生えて自走すると、キャプテンの足に絡みついた。そのまま太い針が、ヒーローの逞しい太腿に突き刺さる。キャプテンが苦悶の声を上げながら、床に崩れ落ちた。


「ングッ……うおぉ……!」


「へへへ……終わりなのはお前だよ、キャプテン・ギャラクシー」


 床に倒れたキャプテンは白目を剥いて痙攣していたが、やがて弓なりに仰け反り、射精した。一度、二度、三度。しばらくすると、連続絶頂に息を切らしながら、キャプテンが起き上がった。しかし眼つきが熱っぽく、どこか緊張感に欠ける表情だった。


「んくぅ……俺に、何をした?」


「へへへ……アンタを『俺たち』にしたってことさ」


「ん? あぁ……そういうことか。そういえば、スコルピ。尻尾は大丈夫なのか?」


「ああ、また生えてくるからな。心配掛けてすまんな、キャプテン」


「水臭いことを言うな。俺たちの仲じゃないか。それに、俺の責任でもあるからな」


 キャプテンは怪人に対して親しげに笑いかけると、その紫色の外骨格と肩を組んで、愛おしそうに頭をもたせ掛けた。まるで恋人への睦言のように、熱っぽく囁く。


「ハァン……しかし、ヒーローを『俺たち』に出来ると思わなかったな。お手柄じゃないか、スコルピ」


「ああ。キャプテン、次にやることはわかっているな?」


「もちろんだ。ヒーロー本部内に『俺たち』を殖やしていく。あぁ……たまらん。ヒーローだった俺が『俺たち』になって、地球侵略の尖兵になっちまうなんて……」


(終)


お題「立場交換」


「ちわー! SMW急便でーす。こちらに判子かサインお願いしまーす」


「えっと……じゃあサインで。あっ……!」


 宅配便の応対に出た、専業主婦の金嶋真里子。急に、真里子の視界がぐにゃりと歪んだ。先ほど届いた、奇妙な迷惑メールが脳裏によぎった。確か「このメールを読んでから最初に話した異性と、立場が入れ替わる」だとか……。


「あれっ……ああ、スイマセン! 俺、勝手に上がっちゃって」


「あらっ、私ったら……どうしたのかしら」


 専業主婦の金嶋真里子と、配達員の芝崎雄次の立場が入れ替わった。服装も入れ替わったのだが──しかし二人の立ち位置はそのままであるため、なぜか「住人」が玄関の土間側に立ち、「配達員」が玄関の廊下側にいる──という状況だった。二人は互いの立ち位置を変え、荷物の受け渡しを終えた。雄次になってしまった真里子は、マンションを後にした。


(やけに胸が張ってるな……)


 性格も記憶も、生理現象さえも、体育大生のアルバイト配達員の雄次になってしまった真里子。彼女はトラックの運転席で、制服をめくりあげた。男の汗の染み込んだ制服で蒸れた、人妻の乳房がさらけ出された。真里子はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「俺の胸、エロっ……女みたいだ」


 真里子は鼻息を荒げ、左手で胸を揉みながら、右手は黒いハーフパンツの中に入れていった。湿ったまんこの中に、ほっそりとした指を挿れていく。クリトリスがビンビンに勃起し、真里子は初めて味わう男の性欲に、苦悶の声を漏らしながら、自慰に耽った。


「うおっ……イク、イクッ!」


 どぷどぷっ、と真里子の膣内に、体育大生の濃厚な精液が溢れ出した。


(終)


お題「自分姦」


 ヒーロー本部の居住棟。白を基調とした清潔感のある部屋で、真紅のヒーロースウツ姿のままの俺は、男と共にベッドに腰掛けていた。任務後なので、俺は汗臭い。


 一方、男の方は俺の私服のポロシャツとズボンを穿き、俺好みのミント系のコロンを付けていた。そいつはツーブロックの髪型も──顔さえも、俺と同じだ。男が、俺の脇腹にそっと手を当てた。


「痛むのか?」


「ただの打撲だ。今日はやめておくか?」


 男は黙って俺の肩を抱き寄せ、唇を重ね合わせた。心臓が高鳴る。俺と男の境界が、自他が曖昧になる。理解。共感。同調。今週は任務でずっと帰宅していないはずなのに、娘に絵本を読み、妻と会話した記憶が蘇る──


 半年前の転送ゲート事故によって、俺の体は二人に分裂してしまった。分裂した俺たちは、肉体同士の接触で、互いの肉体や記憶を同期することができた。それを利用して、俺たちはヒーロー活動と在宅勤務を交代で行っていた。


 眼前の俺の匂いが、ミントの香りから汗臭さに変わっていた。相手がかすかに呻きながら体を離し、脇腹を押さえた。


「うおっ……派手にやられたな」


「だから言っただろう」


「いや、俺たちは……痛みも歓びも、分かち合うべきだ。そうだろう?」


 眼の前の俺が微笑んだ。俺も頷いた。そのまま慣れた手付きで服を脱がせ合う。5年前に受けた右胸の傷跡も同じで、そこだけ胸毛が生えていなかった。


 家族への愛情も、ヒーローとしての信念も──全てを俺と同じくする男に、俺はすっかり惚れ込んでいた。


 俺たちは全く同じ陰茎を、全く同じ唇で咥え、69の態勢でしゃぶり合った。しばらくすると、俺たちは同時に体を仰け反らせて、絶頂に達した。精液を含んだままの唇で、もう一度、長いキスをした。


「来週は、お前が自宅勤務だな」


 眼の前の俺が結婚指輪を外すと、俺の左手の薬指に嵌めて、指輪に口づけをした。


(終)



──────────


 というわけで今回は「淫紋」「人格複写」「立場交換」「自分姦」の4本でした。リクエストを受けて自分姦を初めて書いてみたのですが、こんな感じでいいのかな……? 初めて書くジャンルで手探りだったのですが、なかなか奥深そうで面白かったです。こういう世界もあるのね……!


 800字小説チャレンジのお題は、引き続き募集していますので、コメント欄にお気軽にどうぞ(お題は単語1つで頂けると嬉しいです)。

800字小説チャレンジ「淫紋」「人格複写」「立場交換」「自分姦」

Comments

Thank you! I'll continue to write about 立場交換 in the future.

くろねこ@9605

立場交換 very interesting! Hope to read more like this!

Will

支援ありがとうございます! 皮モノは読むことはあるのですが、まだ自分では書いたことがないですね。800字小説でチャレンジしてみようと思います。

くろねこ@9605

こんばんは。自分姦というシチュがどう書かれるか興味を惹かれ、支援させて頂きました。自分が2人居るの、便利ですね。 くろねこさんの作品は洗脳や立場交換がメインですが、『皮モノ』のような姿が変わる系の作品はどう話を膨らませるのか気になります。

フカヒロ

ありがとうございます! お題についても了解しました。「特性逆転」も面白そうですね。どんな小説が出来上がるのか、僕も楽しみです。挑戦してみますね。

くろねこ@9605

くろねこさんの書かれる緻密な表現と刺激的な内容とをあわせもった小説の大ファンです。今回アップいただいたものども読み応えがあるものばかりでした。特に、立場交換、の展開に魅了されました。 それに類似しますが、人の「特性逆転」をキーワードにしたものもぜひ読んでみたいです。性別、能力、職業、家族、環境といった各人の特徴を決めるパラメータが逆転してしまうような状況を取り扱ったくろねこさんの小説をぜひ読んでみたいです。

yk

自分姦、とても奥深い世界ですね。 書いていて新鮮で、とても気に入りました。 いずれ長編で掘り下げてみたいと思います。 こちらこそ、素敵なお題をありがとうございました!

くろねこ@9605

「自分姦」のお題を取り上げていただきましてありがとうございました!同じ身体で同時に快感を味わうの、ステキです!自分を癒せるのは自分だけ、みたいなヒーローの孤独も感じました。 ぜひぜひ掘り下げていただけると私がもっと喜びますw これからも応援してます!

みっくん

ありがとうございます! 自分姦は長編で書くとすごく面白くなりそうなんですよね。周囲の人間関係も奇妙な感じになりそう。 「関係性の交換」というお題も了解しました。個人同士の立場交換とは違って「関係性」だけが変わる……というのは、なかなか面白そうです。チャレンジしてみますね。

くろねこ@9605

久しぶりに拝読させて頂きましたが以前と同様楽しめました。自分姦は設定が非常に斬新で、これだけでまたまだ掘り下げられそうですね。 大変恐縮ですが、お題を提供させていただきます。赤の他人や恋人といった「関係性の交換」でどのような倒錯が描かれるか読んでみたいです。

Ton爆To


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