NokiMo
くろねこ@9605
くろねこ@9605

fanbox


35歳体育教師・武石豊隆は生徒によって人格を汚染される【未完成】

「ふーっ、あちいあちい」


 午後イチのサッカーの授業を終えた俺は、着替えるために体育教官室に戻ってきた。他の教師は誰もいないようだ。まだ初夏だというのに、汗っかきの俺は、授業のたびに汗だくになってしまう。俺も今年で35歳になり、そろそろ加齢臭が気になる年頃だ。グレーのTシャツは汗でぐっしょりと湿り、黒くなっている。鼻を近づけると、ムッと濃い男臭さが鼻につき、自分の体臭ながら俺は顔をしかめた。

  

「お? あれはなんだ?」


 着替えを取るべくロッカーに向かっていた足を止めた。自分の机の上に、折り畳まれたメモ用紙があることに気がついた。他の教師からの伝言だろうか。俺は何気なくそれを手に取り、開いた。そこにはこう書いてあった。

 

【武石先生は"俺"でした】


──豁ヲ遏ウ蜈育函縺ッ"菫コ"縺ァ縺励◆縲ゅ↑縺ョ縺ァ豁ヲ遏ウ蜈育函縺ョ萓。蛟、隕ウ縺ッ"菫コ"縺ォ縺ェ繧翫∪縺吶?ゅ□繧薙□繧楢?蛻??閧我ス薙↓闊亥・ョ縺吶k繧医≧縺ォ縺ェ繧翫∪縺吶?ゅ◎縺ョ縺薙→縺ォ驕募柱諢溘r隕壹∴繧九%縺ィ縺ッ蜃コ譚・縺セ縺帙s縲


 言葉ではない言葉。意味を理解できない、理解してはいけない文字列。その文章を読み終えた途端、俺の頭の中に、ぐちゃぐちゃとした文字列が洪水のように溢れかえった。俺の中に何かが入ってくる。書き換わる。上書きされる。俺俺俺俺俺俺俺俺──俺は俺。そういえば俺って──誰だっけ?

 

 俺は立っていられなくなり、いつの間にか床にへたりこんでいた。情報の洪水はいつの間にか引き潮のように引いて、すっかり治まっていた。とはいえ、俺はまだ肩で息をしている。傍らには、先ほどのメモ用紙が落ちていた。


【武石先生は"俺"でした】


 もう一度読んでみたが、先ほどのような異常な感覚は襲ってこなかった。一体なんだったのだろうか。俺は苦笑しながら立ち上がり、ロッカーからシャツを取り出して着替え始めた。汗でずっしりと湿ったシャツを脱ぐと、妙にセクシーな匂いが鼻先に感じられた。それは俺のTシャツから漂う汗臭さであったが、先ほどまでと印象が一変していた。顔を押し当てて、深く匂いを吸い込む。いつまでも嗅いでいたいと思うような、心地よい男の色気が俺の鼻孔を刺激する。その匂いにうっとりとしてしまい、暫くの間夢中で、自分の汗臭いシャツを嗅ぎ続けた。

 

「あぁ……」


 ジャージの中で、俺のチンポが固くなり始めるのを感じていた。嗅ぎ慣れているはずの自分の体臭が、妙に蠱惑的に思えてしまう。それに……俺は鼻息を荒げながら、シャツを脱いだ自分の上半身を見た。学生時代にアメフトで鍛えた、分厚い胸板。それが大きく上下している。盛り上がって谷間さえある、男臭い大胸筋。いまやそれが、猛烈にエロい。なぜ俺は、こんなに助平な身体で、今まで平然と暮らしていたのだろう。俺は涎をずびっとすすりながら、自分の胸板をゴツい指先で愛撫した。爪先を乳首に軽く立てると、俺の肩がビクッと震えた。

 

「ンッ……いい……」


 自分の肉体が、他人の肉体のように思える。このまま自慰に耽りたい。ずっとこの逞しい肉体を愛撫していたい。そんな衝動が、下半身からせり上がってくる。俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。俺はホモでもないし、ナルシストでもない。職場で自分に欲情してオナニーをするような、変態男ではない。そう言い聞かせながら、俺は込み上げてくる射精衝動を無視し、淡々と着替えを終えた。ひんやりした新しいシャツの下で、俺の肌がいつまでも火照っていた。

 

 ※

 

「もう朝か……」


 翌日。携帯のアラームを止めた俺は、ムッと鼻に刺さるイカ臭さと共に目覚めた。昨日は授業中もずっとムラムラしてしまい、家に帰ってからは、気が済むまでオナニーを繰り返していた。全裸のまま布団に入っているし、精液を拭い取ったティッシュの塊が、布団の側に何個も転がっていた。

 

「しかし、何だったんだろうな?」


 俺は苦笑しながら布団から出ると、朝勃ちしたチンポを揺らしながら洗面所に向かった。今となって思えば、昨日の自分はどうかしていたとしか思えない。まずは冷たい水で顔を洗おうと考えたが、ふと何かが気になって、洗面所の鏡を見た。

 

──俺がいる。それは間違いない。日に焼けた三十代半ばの男。角ばった顎と伸びた無精髭。厳つく、女っ気のない体育教師の顔。伸びた無精髭をジョリッと撫でて、溜息を吐いた。


「あぁ……武ちゃん、無精髭も似合うじゃないか。こう、男の色気があるよな」


 武ちゃんというのは、生徒から付けられた俺のあだ名だ。……何で俺は、自分で自分のことを武ちゃんと呼んだんだ?そんな疑問が俺の頭に浮かんだが、考えても答えは浮かばなかった。俺は鏡の前で表情を変え、しばらくの間、自分の男臭い顔に見惚れていた。

 

 鏡には35歳の独身体育教師、武石豊隆が映っている。それは間違いなく俺だ。しかし同時に、他人でもあった。俺は右腕でグッと力瘤を作った。それも俺の腕ではない。誰か他人の腕だ。俺は鼻息を荒げ、チュッと音を立てて自分の力瘤にキスをした。寝汗が鼻先に感じられ、その男臭さにさらに興奮してしまう。分厚い胸板の奥から、キュンと切なげな感情が湧き上がってくる。俺は右手で力瘤を作り、それにキスしながら、左手で朝勃ちしたチンポを扱き始めた。

 

「フーッ……! んチュッ! ああ、たまらん……ノンケ体育教師のぶっとい腕……やっぱ武ちゃんエロすぎだろ……」


 鏡の中の男が、デレッと締まりのない笑みを漏らした。昨日の俺はどうかしていた。憧れの武ちゃん……武石先生の肉体が、俺のモノになったのだ。そりゃもう、シコるのが当然だ。武ちゃんが担任になってから、ずっと武ちゃんを俺のモノにしたかったのだ。

 

……何か、何かがおかしい気がした。自分が考えていることが、自分の考えではない。俺は体育教師だが、同時に生徒でもある。俺の肉体も、記憶も、性格も……俺のモノだが、同時に俺のモノではない。俺ではない、別な【俺】のモノだ。


「いや、おかしくはないな」


 そうだ。昨日のメモだ。武ちゃんの人生の全てを、あのメモで【俺】のモノにしてやったのだ。いまや武ちゃんは【俺】の価値観で行動するようになっている。別に【俺】が身体を乗っ取ったわけじゃない。元の武ちゃんの人格はそのままだ。ただ【俺】に染まっただけだ。憧れの体育教師の人生全てが、【俺】に染まってしまったのだ。

 

「ああ、いいぞ……武ちゃんはもう【俺】のモノだ! ウッ! イクっ!!」


 興奮が最高潮に達し、俺は洗面所で派手に絶頂に達した。洗面所の床に精液が飛び散ったが、構うことはない。俺は肩で息をしながら、精液でべとついた手を、丹念に舐め取り始めた。

 

「武ちゃん……愛しているぞ。もうずっと離さないからな……」


 【俺】は愛する俺自身の精液の味を堪能し、アパートの洗面所でしばらく呆けていた。

 

 ※

 

「うーっす。武ちゃん、【俺】になった気分はどっすか?」


「なんだ、澤畑か。お前が【俺】だったんだな」


 野球部の澤畑浩二。坊主頭が似合う、芋顔の高校球児。実際に言われるまでわからなかったが、澤畑が俺を【俺】にした張本人だった。俺はニンマリと笑った。

 

「まったく、お前は教師をこんな変態にしちまいやがって。見ろよ。俺のこの分厚い胸板を。ノンケ独身体育教師の俺が、男好きの【俺】になっちまったんだ。憧れの体育教師の身体も性格も記憶も【俺】のモノになったんだ。もうチンポが勃ちっぱなしで、昨日から大変だったんだぞ」


 俺はポロシャツをたくし上げ、分厚い大胸筋を晒した。澤畑は鼻息を荒げると、無遠慮にペタペタと俺の胸板を触ってきた。無論、それを俺が止めることはない。俺は体育教師の武石豊隆であると同時に、高校球児の澤畑浩二だ。どちらも俺で、【俺】なのだ。自分で自分の身体を触っているのと同じことだ。澤畑が俺のジャージの股間を揉み始めると、俺は上擦った声を漏らした。


「あぁ……もっと触ってくれ」


 繰り返すが、俺は別に澤畑に身体を乗っ取られたわけではない。性格も記憶も武石豊隆のままなのだが、俺の価値観が、ごっそりと澤畑浩二のもので上書きされていた。あるいは「澤畑浩二が武石豊隆の脳みそを使って考え、行動したらどうなるか」の結果が俺と言ってもいい。そのため、行動もホモ臭くなっているし、自分が武ちゃん……武石豊隆であることに興奮しちまう。

 

「いいぞ……しかし汗臭いな。【俺】も、俺も」 

 

「そっすね。」 

 

「で、あのメモまだあるんですけど……次は誰を俺にしましょっか」


「うーむ、学年主任の猪口先生はどうだ? あの加齢臭ムンムンの脂ぎったオヤジが、童貞ホモ球児の【俺】になっちまうところを想像すると、かなりチンポにクる」


「やーっぱ武ちゃんもそう思う? 俺もそう思ってた」


「当たり前だろ? お前も【俺】だし、【俺】もお前なんだから」

 

 昨日まで赤の他人だった生徒が、今は【俺】であるというのは不思議な気分だった。俺は澤畑の坊主頭を愛おしげに撫でて、その汗臭い顔に唇を近づけた。


(未完)



──────────


 人格の上書きですね。本文中にもありますが「生徒が体育教師の脳みそを利用して行動している」状態なので、完全に同じ人格をコピーしたのとはちょっと違っています。もうちょいボリュームを出したいのと、徐々に自分が自分でなくなっていく様子をじっくり書きたいので、未完となっています。

 


35歳体育教師・武石豊隆は生徒によって人格を汚染される【未完成】

Comments

ありがとうございます!徐々にこの生徒の人格に感染する人間が増えていって、その様子に疑念を抱いた人間も感染して……といった風に感染が拡大していくと、楽しそうです。

くろねこ@9605

これもまたいいストーリになりそうです! 色んな人を感染し、自分の国を作るっぽい!

黒竜Leo


Related Creators