皆さんこんにちは。天気の子があまりにも良すぎて、空模様を見るたびに感情がかき乱されます。くろねこです。 前回の小説講座で「教室に入ろうとした体育教師が、入り口でジャージと下着を脱いで、違和感を感じないまま教壇に立つ小説」を「体育教師を中心とした三人称小説」で書くことが決まりました。 今回の小説講座では、小説の書き出しについて扱います。まずは小説の書き出しでやりがちな注意点二つに触れた上で、僕が以前の小説講座で書いた冒頭について解説します。 ※ 小説の冒頭でやりがちなこと① 謎ポエム いきなり出だしから、誰が喋っているのかわからない登場人物の語りから始まり、これからその小説で起こる出来事を、曖昧な形で詩のように語る……という書き出しの小説、皆さんも一度は読んだことがあるのでは? それです。それが「謎ポエム」です。 おそらく書いている人は「伏線を張っているつもり」なのでしょう。ただし、最初から結末を知っている作者と違い、読者はその作品のことを全く知りません。読者からすれば「この登場人物はいきなり何を言い出したんだ。そもそも誰なんだ」となり、いきなり冒頭から置いてけぼりにされます。下手したら本文を読む前に「この作者は読者への説明が下手なので、このようなポエムを書いている」と判断されて、そのままページを閉じられてしまいます。 「謎めいていた方が読者の興味を引けるはず。どうしても謎ポエムやりたい」と思った場合は「謎ポエムがないと小説のストーリーにどう影響するのか」「単に自分に酔った文章を書きたいだけではないのか?」という疑問に自問自答した上でやるとよいでしょう。大半の謎ポエムは、それらの問いを乗り越えられずに、そっとテキストファイルのなかで削除されることになると思いますが……。 上記の理由から、僕は小説の冒頭では「誰が」「何をしているのか」をはっきりと説明した方が良いと考えています。 ※ 小説の冒頭でやりがちなこと② 主人公の起床シーンから始まる これは厳密には、全く駄目なわけではないです。 ただ、特に一人称小説の場合、作者が何も考えずに書き始めてしまうと「登場人物の一日を最初から書こう」としてしまい、主人公の起床シーンから始めてしまうことが多いです。 例えば主人公が学生で、実際にMCが起こる舞台は学校の放課後だとしましょう。しかし小説は何事も起こらない起床シーンから始まり、家族に挨拶をし、朝ごはんを食べ、バスや電車で通学し、朝のホームルームがあり、午前中の授業を受けて、友達と昼食を食べて、さらに午後の授業を受けて……という描写、本当に要りますか? という話です。 言い換えると「自分の書きたい場面と『時間』と『場所』が、近い場面から書き始めた方が書きやすい」ということです。放課後の学校が舞台になるMC小説なら、ざっくりと家や午前午後の授業をカットして、「時間」は放課後、「場所」は学校から書き始めた方が、より書き出しの難易度が下がると僕は考えています。 逆に「時間」と「場所」が「書きたい場面」から離れた位置から書き始めたほど、自分の書きたい場面に話を持っていくための労力が多くなります。極端なことを言えば、日本の高校が舞台になる小説なのに、書き出しがサハラ砂漠から始まると、書きたい場面までたどり着くための難易度が極端に上がります(サハラ砂漠に由来する寄生生物がいる……などの、書きたい設定があるならば話は別ですよ)。 話を戻しましょう。最初に言ったとおり、主人公の起床シーンから書き始めることが、全く駄目なわけではないです。例えば自分の書きたいことが、主人公の起床直後にある場合です。 「目覚めたら他人の身体になっていた」「目覚めたら常識改変されており、家族やテレビのニュースキャスターの様子がおかしくなっていた」など、自分の書きたい場面が起床直後にある場合は、むしろ堂々と主人公の起床シーンから始めるべきです。何もためらう必要はありません。 ※ 次は僕自身が書いた冒頭について解説します。第4回の小説講座 ②「MCされる側」「三人称視点」で、今回の書き出しに決定した「体育教師を中心とした三人称小説」を書いています。そこから引用します。 https://www.pixiv.net/fanbox/creator/316319/post/334084 >教師である武本大悟は、担任するクラスへと向かっていた。窓の外では桜が満開で、春の陽気に満ちている。そのせいか、彼の額には軽く汗が浮かんでいた。体育教師でもある武本の腕は太く、浅黒く日焼けしている。その逞しい腕に着けた腕時計を見ると、彼の顔色が変わった。 >「やっべ」 >生徒に見られていないか周囲を軽く見渡すと、彼は小走りで駆け出した。階段の段数を飛ばしながら駆け上り、担任するクラスのある3階までたどり着いた。 (以下略) 僕は最初に、この小説の登場人物と場所、状況を明確に書きました(この冒頭を謎ポエムにしてしまうと、それらが全く説明できません)。体育教師の武本大悟という登場人物がいて、場所は学校、教室への移動中ということがわかります。この体育教師が男性的な魅力のある人物であることを描写することで、読者に対して「この体育教師が今回の小説のターゲットであり、このあとMCされますよ」ということを示していきます。 なぜ学校から始めたのかは「自分の書きたい場面と『時間』と『場所』が近い場面から書き始めた方が書きやすい」という先程触れた教訓を元にしています。「教室に入ろうとした体育教師が、入り口でジャージと下着を脱いで、違和感を感じないまま教壇に立つ」というのが僕の書きたい場面であるため、今回は特に彼の起床シーンを書く必要性がありません。そのため、書きたい場面により近い学校の廊下から書き始めています。続きも見ていきましょう。 >「おっと、いかんいかん」 > 武本は何の躊躇もなくジャージと下着をずり下ろすと、下半身を露出させた。陰毛が皮に挟まっていたのを指で直している。体育教師として鍛えた健全な肉体ではあるが、とても学校で晒して良い姿ではない。廊下を走るのとは違い、こちらは犯罪である。しかし彼は陰毛を直し終えると、満足げな顔でジャージと下着を抱え、教室への扉を開けた。 >「おーし、朝礼始めるぞー」 > 武本の声に、雑談していた生徒たちは自分の席に戻り始めた。しかし誰も、担任教師が下半身を露出している姿に、何も反応しない。異常は武本だけでなく、教室全体に及んでいた。 僕がMC小説で重要視していることのひとつに「何が異常なのかを、はっきりと読者に提示すること」があります。文章中で登場人物が不自然な行動をしていたとき、読者はそれが「MCによる異常」なのか「単に作者の描写力に問題があるだけ」なのか、読み進めないと理解出来ないようでは、読者にとってストレスになると僕は考えているためです。そのため、僕の小説では基本的に「ここでこの人物がしていることは、異常な行動ですよ」というのを、地の文で描写しています(一人称小説の場合は、違和感を感じさせたりしています)。 今回の書き出しでも、登場人物の行動が異常であることを、読者に示しています。「体育教師として鍛えた健全な肉体ではあるが、とても学校で晒して良い姿ではない」や「しかし誰も、担任教師が下半身を露出している姿に、何も反応しない。異常は武本だけでなく、教室全体に及んでいた」という部分です。MCによる異常が体育教師だけでなく、生徒たちの認識にまで影響していることを示すことで、「なぜ誰も警察を呼ばないのか」といった、読者が抱くであろう疑問に先に答えています。 > 対象:武本大悟 > 範囲:3-1教室 > 認識補正:あり > 内容:教師は下半身を露出し、 > ありのままの姿を生徒に晒すのが > 教育的な姿だと認識する。 > そのため教室に入る際はジャージと下着を脱ぎ、 > アプリユーザーに預ける。 >「すごい。このアプリ、本物だったんだ……」 > 田所の呟きは、武本の耳に届くことはなかった。 書き出しの最後の部分で、この小説がアプリを使った常識改変モノであることと、生徒の一人が犯人であることを示しました。作者が設定した情報を、どこまで読者に情報を開示するかは、作品ごとの書きたいことで変わってくると思います。以前Tumblrで僕が書いた短編には、具体的な洗脳者や洗脳方法を描いていない「いつも通りに」という短編もありました。 https://kuro96neko05.tumblr.com/post/92833716447/%E3%81%84%E3%81%A4%E3%82%82%E9%80%9A%E3%82%8A%E3%81%AB 僕自身の最近の好みは「MCする側の悪意や欲望が剥き出しになっている」「MCされる側はそれに抵抗できずに、精神を変えられてしまう」というシチュエーションです。MCする側が積極的にMCされる側の前に現れて、堂々とMCをしていく構図ですね。そのため、今回の小説でも早い段階から、犯人である生徒には登場して貰いました。 今回の小説講座はここまでです。それではまた、次回の講座で。
くろねこ@9605
2019-08-02 15:37:15 +0000 UTC黒竜Leo
2019-07-31 14:46:01 +0000 UTC