皆さんこんにちは。誰でもない誰か、くろねこです。 今回の小説講座では、視点の違いを実感して貰うために、同じ題材で視点を変えて文章を書いてみます。具体的には「MCされる側」「MCする側」の視点と「一人称視点」「三人称視点」の視点をそれぞれ組み合わせて、以下の通り合計4つの文章を書いてみます。 ①「MCされる側」「一人称視点」 ②「MCされる側」「三人称視点」 ③「MCする側」「一人称視点」 ④「MCする側」「三人称視点」 使用する題材は、以前の小説講座で決めた「教室に入ろうとした体育教師が、入り口でジャージと下着を脱いで、違和感を感じないまま教壇に立つ」というものです。今月は①と②を扱います。それでは、①の組み合わせから見ていきましょう。 ①「MCされる側」「一人称視点」 桜が咲いたばかりだというのに、なんだか今日は蒸し暑い。 職員室から教室に向かう途中、俺はそんなことを考えていた。腕時計を見ると、朝礼の時間までもう時間がない。 「やっべ」 生徒に見られていないのを確認してから、小走りで教室へ向かった。さすがに、普段廊下を走るなと注意している教師が走ってしまうのは、体裁が悪い。階段を飛ばし飛ばし昇り、担任するクラスのある3階まで駆け上った。 「ふーっ。それにしても暑いな」 教室のドアを開ける前に息を整える。ドアを開ける前に、自分が何かを忘れているような気がした。 「おっと、いかんいかん」 俺は苦笑いをすると、ジャージを下着ごとずり降ろした。ぶるんと揺れながら、チンポが外気に晒される。陰毛が皮に挟まっていたのを指で外に出すと、俺は脱いだジャージと下着を丸めて、小脇に抱えながら扉を開けた。ちょうどそのときに予鈴が鳴った。 「おーし、朝礼始めるぞー」 どうにか間に合ったな。俺は安堵しながら、教壇に立った。蒸れたチンポが風に晒されて、ひんやりして心地よい。お喋りしていた生徒たちの声が次第に静かになっていく。 「あ、先生。それ預かります」 「おう。いつもすまんな」 当番の生徒が俺のジャージと下着を預かってくれたので、俺は出席を取り始めた。 ※※※ ここまでが①「MCされる側」「一人称視点」です。洗脳されている側の視点のため、教師が感じている感覚……暑さや、チンポが外気に晒された心地よさなどを盛り込んでみました。 次は、②「MCされる側」「三人称視点」を見てみましょう。 ②「MCされる側」「三人称視点」 教師である武本大悟は、担任するクラスへと向かっていた。窓の外では桜が満開で、春の陽気に満ちている。そのせいか、彼の額には軽く汗が浮かんでいた。体育教師でもある武本の腕は太く、浅黒く日焼けしている。その逞しい腕に着けた腕時計を見ると、彼の顔色が変わった。 「やっべ」 生徒に見られていないか周囲を軽く見渡すと、彼は小走りで駆け出した。階段の段数を飛ばしながら駆け上り、担任するクラスのある3階までたどり着いた。 「ふーっ。それにしても暑いな」 武本は扉を開ける前に呼吸を整えた。しかしそこで、自分が何かを忘れているのではないか?という気がした。 「おっと、いかんいかん」 武本は何の躊躇もなくジャージと下着をずり下ろすと、下半身を露出させた。陰毛が皮に挟まっていたのを指で直している。体育教師として鍛えた健全な肉体ではあるが、とても学校で晒して良い姿ではない。廊下を走るのとは違い、こちらは犯罪である。しかし彼は陰毛を直し終えると、満足げな顔でジャージと下着を抱え、教室への扉を開けた。 「おーし、朝礼始めるぞー」 武本の声に、雑談していた生徒たちは自分の席に戻り始めた。しかし誰も、担任教師が下半身を露出している姿に、何も反応しない。異常は武本だけでなく、教室全体に及んでいた。 「あ、先生。それ預かります」 「おう。いつもすまんな」 一番前の席に座っていた、田所という生徒が武本のジャージと下着を預かった。田所の机に入っているスマホの画面はまだ点灯しており、次の文字が浮かんでいた。 対象:武本大悟 範囲:3-1教室 認識補正:あり 内容:教師は下半身を露出し、 ありのままの姿を生徒に晒すのが 教育的な姿だと認識する。 そのため教室に入る際はジャージと下着を脱ぎ、 アプリユーザーに預ける。 「すごい。このアプリ、本物だったんだ……」 田所の呟きは、武本の耳に届くことはなかった。 ※※※ こちらが、②「MCされる側」「三人称視点」です。こちらは最初の方で、先生の名前や容姿を描写しています(一人称視点だと、特に鏡を見ているわけでもない、日常的な場面で自分の容姿を登場人物が自分で解説するのは、ちょっと不自然な流れになってしまうので、控えていました)。 また、①では本人は異常を認識出来ませんでしたが、②は三人称視点であるため、「この状態は異常ですよ」ということを本文中で強調しています。さらには先生が知ることが出来ない、黒幕側の情報も本文中で描くことが出来ます。教壇の上に立っている先生からは、生徒が机に入れているスマホの画面は見えませんし、先生には聞こえない小声の独り言も、一人称視点だと書くことが出来ません。 同じ話なのに、一人称と三人称で内容がだいぶ違うことがわかるかと思います。一人称視点は没入感を高めますが、三人称視点は様々な情報を書きやすいです。書く側によって、どちらを優先するかで、同じ題材でもまったく違う仕上がりになってきます。 次回はMCをする側の視点で、この話を書くとどうなるのか見ていこうと思います。 それでは、また。