──わるいこは、ないないしちゃうの。 「クソッ!」 磐城は役に立たなくなった通信機を切ると、物陰で悪態をついた。 磐城が率いていた16人編成の小隊のうち、残ったのは自分も含めて三名。たったひとりの子どもに──否。子どものようではあるが、決して子どもではない「それ」を相手に、最新装備で武装した特殊部隊はものの見事に敗走させられた。もはや撤退するほかなく、そして出口は眼の前だった。だが敵の手もまた、磐城たちに伸びていた。 「あーっ! ねえねえ、こっちにいたよー!!」 大声で叫び、磐城たちを指差す男がいた。先ほどまで、磐城の部下だった男だ。彼は最新鋭の特殊装備を身に纏いながら、しかし子どものようなはしゃいだ態度で、敵に磐城たちの居場所を知らせていた。 「この……馬鹿野郎が!」 磐城はスタングレネードのピンを外すと、敵勢力に取り込まれた元部下へ投げつけたが──しかしそれは、ポン!という間抜けな音とともに、空中でイチジクのような果実に変化した。磐城の精悍な顔が、暗視ゴーグルの中で引き攣った。連中が望めば、あらゆる武力は無害化される。それは銃火器だけではなく、特殊な訓練を積んだ大人でさえ、子どものように変えられてしまう。 「たいちょうさん、みーつけた!」 敵に与した部下の後ろから、連中の親玉が姿を現した。同時に、磐城は射撃を開始していた。 「怯むな! 撃ちながら後退しろ!!」 磐城と部下たちも必死に射撃を続けたが、しかし銃弾は途中でポップコーンに変化して床に散らばった。ソイツはポップコーンを浴びながら、磐城たちに近寄ってきた。 「クソッ! もういい! 出口まで突っ走るぞ!!」 磐城は舌打ちすると銃を捨てて、部下たちと共に出口へと駆け抜けようとした。しかし、ソイツは、磐城たちに優しく忠告した。 「そっちにはね、おばけがいるんだよ」 磐城の身体が、急にぎこちなく止まった。磐城は特殊装備の中で、急に心拍数が上がるのを感じ、震える声でソイツに答えていた。 「お……おばけなんて、いないもん」 磐城の眼には、涙が浮かんでいた。軍隊で鍛えられた屈強な肉体はそのままに、同じくらい鍛えられていたはずの精神は、別なものに変質しようとしていた。 (未完) ────────── 精神幼児化ですね。あとちょっとで完成なんですけれど、どういった形で終わりにしようか迷っていて、未完となっています。
くろねこ@9605
2019-02-03 03:22:07 +0000 UTCくろねこ@9605
2019-02-03 03:21:22 +0000 UTC黒竜Leo
2019-01-31 18:46:39 +0000 UTC