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くろねこ@9605
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童貞ウイルス【未完成】

「童貞ですね。薬を出しておきましょう」  ここ数日、鼻水と熱が出るので近くにあったクリニックに行くと、医者からそう言われた。カチンと来た俺は、妻も娘もいる父親が、なぜ童貞なのかと言い返した。医者はそうじゃないんですよと宥めるように言うと、診察室に貼ってあるポスターを指差した。   ──童貞は治療できる病気です。 ──パートナーとの愛情が、童貞を治療します。  「なんですかこれは」  俺は唖然として呟いた。こちらもありますよと、医者が資料を手渡してきた。   ──童貞は男性にしか感染しない感染症です。 ──発症した人間の社会的立場にも影響を及ぼします。 ──童貞の初期症状は、女性への接し方がわからなくなること、女性経験が思い出せなくなることです。 ──症状が進行すると、容姿や性格が、女性から見て魅力的ではないものに変わってしまいます。以前の自分の容姿を思い出せなくなる方もいますが、記憶の変化には個人差があります。 ──末期症状になると、発症した人は『最初から童貞だった』ことになってしまいます。 ──お子さんがいる男性は、最初からお子さんがいなかったことになってしまいますので、より深刻です。 ──早期の治療薬と、女性とのコミュニケーションが、童貞の治療に有効です。 「とりあえず、すぐに奥さまと会話して、自分が既婚者であることをしっかりと確認して下さい。非童貞としてのアイデンティティを確立しておかないと、症状の進行が早くなります。薬を飲んで熱が下がったら、すぐに奥さまとセックスをなさって下さい」  医者がパソコンのカルテ画面に何かを打ち込みながら答えた。釈然としなかったが、会計を済ませて薬局に向かう道すがらにスマホで調べてみると、世間では「童貞」が大問題になっているようだった。    童貞を発症して、ブサイクな容姿になった二枚目俳優がいた。男前で、ドラマにも引っ張りだこだったのだが、童貞を発症したせいで、丸顔で小太りなブサメンに変わってしまった。芸歴まで変わってしまい、俳優ではなくお笑い芸人として芸能界デビューしたと、あらゆる記録が書き換わってしまったそうだ。その男が俳優だった証拠は完全に消え去っているが、みんなの記憶にはうっすらと以前の容姿の記憶が残っているのが、事態をややこしくしていた。    別な格闘家は、童貞を発症したものの、治療に成功したらしい。だが後遺症は残っており、いくら女性とセックスしても、そのことをすぐに忘れてしまうそうだ。その格闘家の容姿は、肌も浅黒くて厳ついマッチョなのだが、女性の扱いが今も苦手で、女性と話すと恥ずかしくて、たまらないのだとインタビューで語っていた。   「ううむ。これはけっこうヤバいぞ」  だが、俺はいま単身赴任中で地方にいる。妻に電話してみたが、今は繋がらなかった。また後で掛けてみるかと思い直し、薬局で処方箋を出して薬を買い、会社が借り上げたアパートに戻った。部屋に上がるとどっと疲れが出て、俺は汗だくの身体のままベットに倒れ込んだ。    ※    やけに身体が熱い。窓の外が暗くなっている。いつの間にか夜になってしまったらしい。時計を見ると深夜だった。俺はのそりと起き上がると、水を一杯飲み、シャワーを浴びようと風呂場へ向かった。洗面所で服を脱いでいると、ふと違和感を覚えて鏡を見た。   「うわっ!」  鏡の中に映っていたのは、俺の顔ではなかった。学生時代はラグビー部で、我ながら精悍な顔つきだと自負していた面構えが、ひどくブサイクなものに変わっていた。眉は手入れなどしていない太い眉で、眼つきがどことなく卑猥そうな垂れ目になっている。鼻は、ちくわのように鼻の穴が正面からも見える、アホっぽい鼻になっていた。髭の剃り跡も青々しく、顎はケツアゴであった。だが、どことなく俺の面影は残っている。俺の顔をベースにして、パーツごとにブサイクに修正されたような感じだった。俺は自分でも信じられないと、青々しい頬を触っていたが、次第に妙な気分になってきた。   「でもよく見たら、俺の顔だよな……」 ──俺はガキの頃からこういうブサイクな面構えだったはずだ。せめてガタイだけはよくなって女の子にモテたいと、そう思ってラグビー部に入ったんじゃなかったっけ?    いや待て、これは童貞の症状のはずだ。俺は病院で貰った説明書きを読み返した。やっぱりそうだ。俺はさっきまでの自分の顔を──快活そうなスポーツマンの顔を思い出した。思い出すことは出来るのだが、それが自分の顔だったという自覚がまるでない。ブサイクな顔で生きてきた人生の方が、本当の俺の人生なんじゃないかという気がしてくる。   「飯食って、薬飲まないと」  そう思って冷蔵庫を開けたが、食えそうなものが何もない。童貞と診断されたことがショックで、帰りに買い物をしてくるのを忘れていた。近くのコンビニへ行こうかと、汗だくのシャツと下着を変えようとしたところで、さらに異変が起こった。   「んあっ!」     ブルルッと背筋に悪寒が走った。俺が身震いすると、身体がミシミシと音を立てて変わり始めた。ラグビーで鍛えた厚い大胸筋が、脂肪へと変わる。休日はジムに通って引き締めていた腹筋が、だらしのないビール腹へ変わる。足が太く、短くなっていく。日焼けしていた浅黒い俺の肌が、白く脂ぎったデブの肌へと変わる。全身からデブ特有の酸っぱい体臭がむわりと漂ってきた。俺が着ていたTシャツとトランクスも、白いランニングシャツとブリーフという、ダサいものへと変わっていた。汗染みでどちらも黄ばんでいる。   「あひっ……フヒッ……な、なんだこりゃ」  鏡を見ると、好色そうなブサイク面をした、ビール腹の三十路男がこちらを見ていた。見るからに運動不足な体型。そのくせ毛深く、腕毛や胸毛はぼうぼうに生えている。尻にも贅肉がついてかなりデカい。髪の毛も薄くなり、頭頂部が禿げていた。ただでさえブサイクだった面構えは、贅肉でパンパンに肥えている。   「そうだ、電話だ」  スマホを見ると、何時間か前に妻からの折り返しの着信があった。まずは妻と話して、症状を抑えなければ。そう思って掛けようとしたが、指先がピタリと止まってしまった。 「女の人と話すの、恥ずかしい……」  俺は豚顔を歪めて、太い身体で悶々とした。俺は三十路を過ぎるまでろくに女性と会話したこともない、童貞男になりかかっている。妻がいることは頭ではわかっているが、まるで見ず知らずの他人の奥さんに電話を掛けるようで、何を話したらいいのかわからない気恥ずかしさがある。 「でも、このままだと、童貞になっちまうぞ……あっ」  時計を見た俺の頬が緩んだ。そうだ、あの番組がとっくに始まってるじゃないか。俺はスマホをベットに投げ捨てると、ドスドスとTVの前に陣取り、チャンネルを合わせた。時刻は深夜二時。深夜アニメ番組にチャンネルを合わせる。画面にピンク色の衣装を纏った女の子の姿が映る。 「魔法少女・プリンキピアピーチ! ここに参上!」 「あぁ〜!やっぱり三期は至高だなぁ」  俺の固太った唇から、ジュルリと涎が垂れた。黄ばんだ白ブリーフを摺りおろし、包皮の厚くなったチンポを扱き始める。ゴツゴツした俺のチンポは、徐々に長さが短くなり、皮が余り始めていた。「いつも観ていることになった」深夜アニメが俺の興奮を高めていく。眼の端で、アパートの本棚に漫画本が溢れ、フィギュアが次々に現れていくのが見えた。「単身赴任に持って行きたくなった」お気に入りのフィギュアたちだ。脳裏で理性が警告を発している。このままでは俺は、キモオタの独身童貞男になってしまう。妻も娘もいるのに、最初からいなかったことになってしまう。 「ううっ。ピーチたんは名残りおしいが……仕方ない」  俺はヒクつくチンポから右手を離し、妻に電話を掛けようと、我慢汁でべとつく手をスマホに伸ばした。でも電話してる間に、変身バンクが終わっちまう。ちらりと横目でTVを観た俺は、プリンキピアピーチのレースのスカートに鼻の下を伸ばし、スマホを取り落とした。肥満体を仰け反らせて喘ぐ。右手はスマホではなく、再びチンポを掴み、ぐちゅぐちゅと激しく扱いていた。電話は……抜いた後に掛ければいいか! 「んあぁぁあっ!! イクっ!! ピーチたんと一緒にイクっ!!!!」  ビュルル、と黄ばんだ精液がチンポから噴き出した。ゴツゴツとした太かった俺のチンポが、完全に短小包茎へと変わる。左手の薬指に嵌めていた結婚指輪が消えると、新しい価値観が俺の脳みそにしっかりと根付くのを感じた。   ※     単身赴任から戻った俺を待っていたのは、一戸建てのマイホームではなく、小汚いアパートの部屋だった。俺は最初から独身であり、結婚した経験もない。それどころか、女性と交際した経験もない、童貞の独身男になっていた。免許証を見ても、俺のブサイクな面が映っている。実家に戻って学生時代のアルバムを確認してみたが、やはりそこにもブサイクな中学生や高校生が映っているだけだった。学生時代の俺はラグビー部ではなく、帰宅部だったことになっていた。だが、全てが最初からそうなったわけではなかった。   「うわぁー。先輩、単身赴任中に童貞になったってマジっすか」  出社した俺を、後輩がからかうように話しかけてきた。記録上は俺は「最初からブサイクな男だった」ことになっているが、他人は以前の俺のことを覚えていた。社内には、妻子持ちの精悍なスポーツマンだった俺が、一転してブサイクな童貞男になった姿を一目見ようと、好奇の眼が溢れていた。   「おいおい。随分な言い方だな。童貞もそう悪いもんじゃないぞぅ? 童貞にならなかったら、俺の嫁、ピーチたんとも出会えなかったんだからな。フヒヒっ」  俺はPCモニタの壁紙にした魔法少女プリンキピアピーチを後輩に見せ、にんまりと笑顔を浮かべた。あっやべ、歯を磨いてねえから、さっき食べたネギが歯に挟まってた。俺は指を口に突っ込むと、ネギを取ってもう一度食べた。それを見ていた後輩が引きつった顔で口を開いた。 「うわぁ……本当にキモいっすね。童貞どころか、社会人としてどうかと思いますよ。一応聞きますけど、今度の社内フットサル大会は先輩出るんすか?」 「出るわけ無いだろ? 確かに俺は先月まで体育会系だったけどな、今の俺は根っからのインドア系デブオタになったんだぞぉ? わざわざ運動するより、ピーチたんとの脳内デートの方がよっぽど有意義じゃないか」  呆れたのか後輩が自分の席に戻ると、俺ははすっかり癖になった貧乏ゆすりを始めた。腰をもぞもぞと動かしながら、ブリーフの生地に短小包茎を擦りつける。ポケットに手を突っ込み、固くなった包茎を弄る。早漏になった俺の包茎チンポは、ピーチたんとの脳内デートに興奮してすぐさま精を吐き出した。 「ぁんっ」  我ながら、気持ちの悪い声が漏れた。その声が聞こえたのか、近くにいた女性社員が生ゴミを見るような眼でおれを一瞥すると、そそくさと離れていった。 「どうだね高幡くん、童貞になった気分は」 「部長」  性欲だけは人一倍あるキモブサ童貞になったしまった俺が、こうして職場でオナニー出来るのも、部長の後ろ盾があってこそだ。部長は半年前ほどに童貞を発症していた。年齢が高くなるほど、童貞の症状は重篤化しやすいらしく、部長は俺以上に童貞を拗らせていた。角刈りで鬼瓦のように厳つい風貌で、若い頃は柔道で鍛えた固太った体格。部長の外見は、童貞を発症する前と何ら変わりないように見える。白いワイシャツに、女性用のピンクのブラジャーが透けていなければ。部長は俺の胸の贅肉に手を伸ばすと、うっとりとした顔で揉み始めた。 「ハァン……ずるいぞ、高幡くん。こんな、女のような胸になりおって」  そうして、厳つい顔をデレデレとさせて、髭の剃り跡の濃い俺の頬に頬ずりした。節くれだった指先を俺の股間に伸ばし、精液で湿った生地を撫で、臭いを嗅いで嬉しそうにした。 「私も高幡くんのように、体型も変わりたかったぞ。こんなゴツい身体では、女装があまり似合わなくてな」  部長は女装趣味のあるホモオヤジになってしまっていた。確かにそんな男と付き合おうとする女はいないし、そもそも部長も女に興味がなくなっている。そのため、五十を過ぎても童貞ということになったのだった。 「ええ、俺もびっくりしましたよ。でも新しい自分になれたので、童貞になってよかったと思います」  俺は童貞になった日のことを思い出していた。もう家のローンも、子どもの進学のことも考えなくていい。給料は全てオタク趣味につぎ込める。そのことに気づいた俺は、単身赴任先のアパートで思わずガッツポーズをしていた。父親や夫という責任から解放されたあまりの嬉しさに、「実用」のプリンキピアピーチちゃんのフィギュアに、包茎チンポを擦りつけてもう一度射精したくらいだ。ほんの数分前まで妻と子どもを大事にしていた父親だったのに、我ながら気持ち悪いくらいの童貞オタクになってしまったのが、自分でも信じられなかった。部長も自分が童貞を発症した日のことを思い出したのか、眼を細めて溜息を吐いた。   「ああ、全くその通りだ。子どもの頃から男らしくあれ、質実剛健であれと育てられてきた世代のこの私が、女装と男が大好きになってしまったあの瞬間。童貞で入院していた私を、息子夫婦が見舞いに来てくれたはずなのに、いきなり息子の姿が消えたんだぞ。次の瞬間、私は普段通り、病院のベットの中で女装オナニーをしていたことになってしまった。 (未完) ──────────  「童貞」という現実改変を伴う病気がある世界の話です。部長の童貞発症をもうちょっと違う方向性にしようかなーと思いつつ、上手い案が出ないので一旦保留にしています。

Comments

ありがとうございます。部長の童貞感をどういう風にしようかなー、というのが悩みどころなんですよね。色々考えてみます。

くろねこ@9605

こういう状態変化、とても好きです。部長さんは『女装の完成度を上げるため、肌の手入れに気を使っていたことになっていた』とかで、今でも若々しい肌を保っていたり、若い頃に永久脱毛をしたことになってて顎周りもすべすべだったりなどの表現が考えられますが、微妙にインパクトが弱いですね…… この後、高幡さんと部長が急接近したりするのかなと考えると、わくわくします!

羊谷 日辻(ひつじたにひつじ)

そうなんですよね。色々バリエーションを出したくて、もうちょっと設定を練りたいのです。インフルエンザみたいに型があって、ウイルスごとに発症する症状が違うとかでもいいかも知れません。例えば、主人公が感染したのは"キモオタ型"とか。

くろねこ@9605

色んな年齢の”童貞”で興味深いですね!

黒竜Leo


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