惑星テラの大地には、常に天災の恐怖に見舞われている。
予測不能かつ、不規則に、大規模な災害を齎す為に、人々は定住を諦めざるを得なかった。
天災から逃げる為に「都市を動かす」という発想を可能にしたのが、天災が齎した源石によるエネルギー革命であるから、皮肉な話である。
莫大なエネルギーを擁する源石を動力源としたエンジンを積む移動都市が、この大地を駆け巡っている。
常に動き回る移動都市の間を繋ぐものとして代表的なものを挙げるならば、トランスポーターの存在は欠かせない。
移動都市間の物流や郵便、時には政府間の連絡等にも用いられる重要な存在だからこそ、この職業は成立している。
しかし、移動都市間を繋ぐものを情報だけに絞るならば、都市間ネットワークと携帯式撮影設備の出現は大きな意義を持っている。
今まではマスメディアが主に行っていた動画撮影及び投稿が格段にやりやすくなった結果、人々は承認欲求の充足の為にこぞってそれに励むようになった。
技術の進歩は、特定の天才によって齎される事は、往々にしてある事だ。
とある会社が、各移動都市に設置された支社間で双方間のコミュニケーションをリアルタイムで取る為に、テレビジョン通話を試作したという。
その技術の構築に関わった、偉大で、最もカワイイ天才エンジニアである『LeaderOne』は、その技術を更に発展させ人と人を結び付ける画期的なシステムを構築した。
個人の動画「配信」ツールである。
それまでは都市間ネットワーク上で形成された動画投稿サイトに動画を投稿し、視聴者がその動画を閲覧するという、単方向のものが主流だった。
しかし、『LeaderOne』が提唱する理念、「分断された人々による繋がりの重要性を再確認する為」に形成された動画配信ツールは、ネットワーク界隈に大きな衝撃を与えた。
誰かが声を発し、動いている姿を、リアルタイムで見る事が出来て、それに対してコメントが残せる。
単なる「会話をする」という行為に、承認欲求を満たそうとするネットランナー達は途端に夢中となった。
かくして、撮影環境と、都市間ネットワークにアクセスする知識、そして知らない人と話す為のほんの少しの勇気があれば、すぐにでも始められる。
下地を作り上げた『LeaderOne』は、商才にも優れていた。
人々の欲求は際限がないものだと知っているからこそ、いけない事に関しては住み分けを行う事で対応した。
アダルトコンテンツの住み分けである。
無秩序を制御しようとすれば、そこには歪んだ正義しか残らない事を重々知っているかのように、粛々とネットワーク構築を進めていく。
そこでは、気に入った人への送金……傍から見たら、道端でパフォーマンスをしている人に対する投げ銭のような……そういう行為も可能になり、ディープなネットランナー達の注目を大いに集めていった。
そこに目敏く手を付けようと思ったのが、カシャだった。
彼女は動画投稿の先駆けであり、アウトドア動画投稿者として一定の地位を築いていた人物だった。