「ねぇ…早く戻ろうよー」
「大丈夫だって、森に入るなって言われてるのもただの古い言い伝えでしょ」
森の中で二人の少女が川の近くで話をしていた
一人は楽しげに、もう一人は心配そうな感じだ
「それは森じゃなくて川に入るなって話だよ」
「あーそうだったね、でもただの川だし言い伝えだって意味が分からなくない?」
「確かに"水に触れたもの時を失う"ってよくわからないけど…でも危ないからそう伝わってるんじゃないのかな……」
二人は旅行者の様で近くの村で森の川には入ってはいけないと言われていたようだ
だが青髪の少女は迷信など信じないタイプなのか川に入る気で森に来ていた、それに連れられてきたのがもう一人の子だった
「ほーら、もうそんな事気にしてたら楽しめないじゃん」
「え?あっだから入っちゃダメだって…」
迷信を心配している間に青髪の子はサンダルを脱いで川へと入って行った
ばしゃんっ
「あぁ…」
「ふー、冷たくて気持ちいい」
「ね、ねぇ大丈夫なの?」
入るなと言われていた川に仰向けで浮かぶように水浴びをする青髪の少女
この状況を村の人に見られたら何を言われるか…そんな心配が巡る
「大丈夫もなにもただの川だからね、むしろリフレッシュできて体に良いんじゃない?」
「もう…」
ざぶんっ
「んー…ぶくっ」
「あ!そんな潜ったりして…」
ざぱんっ
「ぷはっ…ふーー、森の中で水浴び気持ちいい~」
「本当に何かあったらどうするの…」
「どうもこうもただの川だってば、木も草も生えてるし水に問題があれば枯れてるでしょ」
「それは確かにそうだけど…」
「別に痛くもないし痒くなったりしてないし変に赤くなったりしてないでしょ?」
「確かになにも…あれ?」
「なに?なにか変なところでもある?」
「それ体乾いてきてるの?妙に肌がテカテカしてない?」
「え?あれ?なにこれ…もう乾いてるのに濡れてるみたいにテカってる…?」
水浴びをある程度堪能した青髪の子が岸に腰掛けて話していた時だった、陽の強さと暑さもあり肌の水はすぐに乾いていった、が…その肌は水に浸かる前とは明らかに状態が違っていた
「大丈夫?体に違和感とかないの?」
「ん…なんか肌が突っ張ってきてるような、これどうなってるの?」
水に浸かっていた影響なのか青髪の子はまるでプラスチックの様に全身に光沢を帯び始めていた
「とりあえず川から出たほうが…」
「なんだか体が動かしにくい…自分の体じゃないみたい」
ミシ…ミシミシ…
「なにこの音…私から鳴ってる?」
光沢が増すほどに彼女の体から何かが軋むような異音が鳴り響く
「どうする?村に戻る?」
「村の水で体洗ったら治るかな…?」
「わかんないけど川の水が原因なら治るかも?」
ミシ…
「い、急がないと!」
「あっ、走ったら危ないよ!」
体から無機質な異音が鳴り響き、動きもぎこちなくなっていく
そんな経験のない不安から彼女は慌てて村へ向けて駆け出した
「でも急がないと体が…っ!?」
が、彼女の歩みはすぐに止まってしまった
「え!?な、なにこれ足が…!!」
ミシミシ…パキキ……
「ど、どうしたの?」
「足が…動かないの!それに体が硬くなって……」
パキッパキパキ…
駆け出した彼女の足は地面に着いたまま上がることはなく、感覚はあるのに動かすことができなくなってしまった
その極端な変化は足だけに留まらず彼女の全身に現れ始めた
「体が硬くってどういうこと?」
「わかんないけど…どんどん硬くなってく感覚なの!」
ピシ…パキキッ
足を止めた彼女の体は急速に硬化していき、鳴り響く無機質な音は激しくなっていく
「その音ってもしかして体が…」
「やだ、体が…固まってく!」
異音と共に体の自由は消えていき、肌の光沢だけが増えていく
「え!?ホントに体が硬くなってる!」
「私の体が……いやっ!」
彼女は固まっていく自分の体を信じることができず、動かしにくい手で胸を叩くも"コンコン"と、柔らかいはずの胸から硬く無機質な音が返ってきた
「あ…あぁ……やっ、か…こえ…が…っ!」
パキパキ…パキキッ!
「え?ねぇ…ちょ、ちょっと…?」
「ぅ、ぁ………」
ピキピキ……パキンッ!
「……」
苦しげな声を最後に彼女の体は完全に硬質化してしまった、彼女の肌は人の色を残しながらも表面は異様な光沢に包まれていて、人とも作り物とも見える異質な物へとなっていた
「━━!!いやぁあああ!そ、そんな…固まっちゃってる!?」
異質な光沢に包まれて石のように硬く固まってしまった友人の姿に尻もちをついて悲鳴を上げる、だがそれにも反応することのない目の前に立ち尽くす人形が更に不気味に思える
「そんな…川に入ったから?ここに来たから?そうだ、村の人に助けを…あ、でもそうしたらここに来たことがバレて…」
森に近づくな川に入るなとキツく言われていたのにその約束を破ってしまった手前、このまま村に戻ればどうなるのか…そんな不安がよぎる
「でもこのままだと…え?やめっ…きゃあ!!」
固まった彼女の目の前で一緒にいた子が村の人達に連れ去られていく、ツヤツヤの彼女の体にはその光景が映し出されていた
(そんな、私のせいで…)
動かない体ではそれを見ていることしかできなかった
そして二人はまた出会うことになる…
が、それは村の集会所に飾るオブジェとしてだった
青髪の子は固まった姿のまま足を台座状に固められて置かれ、青空の下に置かれた彼女の肌は森で見た時以上に滑らかな光沢に包まれている
連れ添いの子は森で連れ去られたあとに"森の水"を全身に浴びせかけられ、固まっていく体に恐怖しながら人形と化していた