あれ?こんなところに店なんてあったっけ?
最近新しく入ったのかな?ちょっと窓から覗いて見よう
…ん?これはなんの店なんだろう…?
色々と飾ってあるのは人形かな?よく言う現代アートってやつ?もしかしてそれの展示場とかそういう感じなのかな
今日は学校から帰ってもすること無いしちょうどいい暇つぶしになるかも
細かい事はわからないけど看板とかも置いて無いし、とりあえず中の人に聞いてみればいいよね
知らない店に入るのってちょっとドキドキ…とりあえず見るよりも聞いてみるのが先だよね
話しかけていいのかな、あの……
「ん?あら、珍しいわね」
「へ?珍しい?」
「なかなか普通の人はここに来ないのよ」
「そうなんですか…私って変わり者なんですかね?」
「そんなこと無いわ、少しでも興味があるなら大事な仲間よ」
(私よりこの人の方がちょっと変わってるような…)
「あ、そうだココってどんなお店なんですか?」
「お店ってわけじゃないわよ」
「え?入ってきちゃマズい場所でした?」
「ここは私の作品置き場よ、見学は自由だから気にしないでちょうだい、それに見てくれる人が居たほうが嬉しいでしょうしね…」
「作品って事はここに飾ってある人形は一人で作ったんですか?」
「人形…そうね、だからじっくり見てあげてね」
店の人にゆっくり見てっていいと言われたので人形を見学する事に、まずは目の前にあった透明なテーブルを持っている人形から…
作り物とはいえ人の形をした裸の物をマジマジと見るのはちょっと恥ずかしい、でもコレを作った本人と私以外に見てる人は居ないし気にすることはないか…
ほーー…見れば見るほどまるで本物の人間を見つめているような不思議な感覚になる、それほどリアルに作り込まれた作品だ
これほどの腕があるのにテレビとかネットで話題になってないのはなんでなんだろう…今日だって私しかここに居ないし、もっと賑わっててもよさそうなのになぁ
これって何で作られてるんだろう?そうだ
「あの、作品に触ることは可能ですか?」
「全然構わないわよ、いっぱい触ってあげてね」
「え?はい、ありがとうございます」
(何か不思議な言い回しする人だなぁ…)
まぁいいや、許可も貰えたしちょっと触ってみよう
キュッキュキューッ
見た目通り表面はツルツルしてる、でもガラスとは違う何か硬い物だ
コンコンッ
ってそりゃ人形だから硬いのは当たり前か、それにしても肌とか髪の色とかはどういう素材で表現してるんだろう?
「ふふ、すごい真剣に見てるわね」
「あ、すいません…なんか見るほどに惹かれるものがあって、材料は何を使ってるんだろうとか色々考えちゃってました」
「特殊な物を除いて基本はアクリルよ、薄くてもしっかり硬く固まってくれてそれでいて透明で綺麗に仕上がるのよ」
「なるほど、造形も見事なので見てるだけでも楽しいです」
「そう?そう言ってもらえると私達も嬉しいわ」
ん?達?一人で作ってるわけじゃないんだ、ここに居るってことは制作チームの代表とかなのかな?
「私のことは気にせず他のもゆっくり見ていってちょうだいね、あなたほど興味を持つ子はなかなかいないわ」
「はい、他のも見るのが楽しみです」
ちょっと不思議な人だけど優しい感じで初対面とは思えない人だ、さて次のは…
すごい…似たようなので花をアクリルに閉じ込めた物があるけど人のサイズで表現するとこんなにも迫力があるんだ、それに中の人形をちょっと驚いてるような感じにしてるのがまるでその時の瞬間を保存してるように見える
上下のライトがアクリルの塊を照らしてて幻想的な雰囲気を出してるのもいいなぁ
ツヤツヤな脚が女の私が見てもドキドキしちゃうくらい綺麗に出来てて…ちょっと見惚れちゃう、もしもここから取り出せるならあの脚を撫でてみたいな…
ピンクの可愛い服を着た女の子のアクリル人形かぁ…こうして見ると本物に見えてきちゃうな~
やっぱ服の中とかも作ってあるのかな?テーブルの人形が本物みたいに作り込んであったし見えない所までしっかり作ってそうだなぁ
次のは今までとは違う感じだ…
作品から必死な感じが伝わってくるみたい…
逃げようとしてる?助けを求めてる?それとも諦めない気持ちを表現してるのかな?
全部一色に塗り上げられてるのがまさに創作物って感じで他にない良さがあるなぁ
触っていいみたいだしこれもちょっと触ってみよう…
ツツーーっ
これはアクリルじゃないんだ、金属かな?すごい冷たい感じ
普通の人形もだけど金属でここまで作り上げるなんて凄いなぁ
下に板みたいに残ってるし金属の塊から削り出してるのかな?
テレビで丸太から鳥を削り出したり氷の塊から像を作ってるのを見たことあるし、きっとこれもそんな感じで作ってるんだよね
ほんと時間を忘れて見ちゃう…早く次を見たいのと長く見ていたい感情が同時にあって困っちゃうな~
次のはこれもまた凄いなー、これは人形を凍らせてるのかな?
ここだけちょっと寒いのはあのライトの影響?よくわからないけどあの光で保冷してる感じなのかな…
ここに居てもこれだけ冷たく感じるならあの真下に置かれてる人形は相当冷えてるよね、そっか流石にこれは触ると危ないしそのためにガラスケースで囲ってるんだね
凍った人形なんて見たことないし現代アートってこういう物なんだね、人形でしか表現できないアートって考えると今までとは全く違った事ができそうだし凄い事だよね
ミシッ…ミシ、ギシギシッ
ん?何か音が…人形に付いてる氷が鳴ってるのかな?
ミシ…ミシミシ…
さっきまで聞こえてなかったけどずっと鳴ってたのかな?まぁ時計の針みたいなものかな…
うわぁ…これ凄い、まさにファンタジーって感じの作品だ
私もゲームとかしてて触手に捕らわれて…とか想像しちゃう事あるけど、こうして目の前にすると凄い状況になっちゃうんだなって改めて感じちゃう
これ口からも出てるけどそういうことなの?制作陣の中にエッチな人もいるんだなぁ…
これも金属の塊から削り出してるんだろうけど凄い技術だよね、何本もの触手に体と触れてる部分なんかも自然な感じに仕上がってるし本当に金属の触手がここに存在してるみたい
アートというよりも技術力の挑戦みたいな作品なのかな?
これは急にシンプルな作品だ…でもどこか悲壮感のある雰囲気もある
何かを持ったり服を着たりしてないのもあるけど女の人特有の丸みのある柔らかな体のラインが光沢で更に強調されてて単純に綺麗な作品になってる
…そういえばなんでアクリルで表面を仕上げてるんだろう?人形の造形だけでもすごくリアルなのにわざわざ一手間増やしてアクリルを塗ってるって事だよね
光沢が好きなのかな?あの人の服もテカテカしてたし…
でも無機質なのに生生しいこの感じは私もちょっと好きかも…現実のようで非現実的な存在って感じで
「どう?楽しめてるかしら?」
わ、びっくりした
「はい、どれもステキな作品なので楽しめてます」
「それなら良かったわ、次のコレは手間のかかった作品なのよ」
「これは…」
人形の口からチョロチョロと水が流れてる、背中側にはタンクも置いてあるしまさか
「にんげ…人形ウォーターサーバーよ」
「これは飾るだけじゃなくて使う事もできる作品なんですね」
「そうよ、出てくる水はちょっと温いけどね」
正面から見ると本当に口から水が湧き出てる、人形の中を通して水を注ごうなんて発想が凄い…
これとさっきの冷凍人形を組み合わせたら冷たい水が出せそうだなぁ
「色々とここの作品に興味がわいてるみたいね」
「はい、見れば見るほど人形が本物のように見えてくるぐらいリアルに作られてて…金属の作品は特に凄い技術だなって思いました」
「そこまでじっくり見てもらえて私も嬉しいわ、次が今のところ一番新しい物よ」
「中央のですね」
「これで見るのも最後になるから楽しんでちょうだいね」
「はいっ」
これがあの人の最新作…これはタイトルを付けるとしたら「思い出」とかそんな感じなのかな?
制服とスク水、体操着に上履き……学校生活がこのアクリル1つにギュッと詰まってるんだ、こうして1つになってるのを見ると私も卒業する時に今まで使ってきた道具なんかを同じように加工してもらいたいな…なんてね
ん?これって…
あ、立体的に配置されてるんだ…薄いアクリル板から色々と飛び出してるのも見た目が面白いな~
ただアクリルに入れるだけじゃなくて色々な表現方法があるんだね、ここの事もっと知りたくなってきたかも
でもそろそろ帰らないとかな…また明日ここに寄ればいいや
「あの、今日はありがとうございました、すごく楽しい時間でした」
「楽しんでもらえたのなら嬉しいわ」
「凄い作品ばかりでいつか私も皆さんの仲間になりたいって思っちゃいました」
「あら…やっぱり珍しい子ね、それならまた明日ここに来るといいわ、皆も喜んで受け入れてくれるわよ」
「え、本当ですか!?でも一回見に来ただけの私が皆さんと一緒になんていいんでしょうか…」
「大丈夫よ、あなたもここに来る人達に楽しんでもらえるようになるわ」
「そしたらまた明日来ますね!」
まさか私もあの人と一緒に活動できるなんて思いもしなかった、明日の放課後が明日が楽しみだ!
ー翌日ー
「あら…いらっしゃい、じゃあ早速作りましょうか……」
(嫌だ!私は…私はイスじゃない!!)
「ここってイスが無かったからあなたが仲間になりたいって言ってくれて嬉しかったわ」
(仲間ってそういう意味じゃないのに!ここの作品を一緒にみんなと作りたいって…)
「ほら、ここに居る皆も新しい子が増えてきっと喜んでるわよ、みんな寂しいから受け入れてくれるはずよ」
(え?ここにあるのは人形なんじゃ…もしかしてここに置いてあるのって全部が私と同じように作られて…?)
「ここの人形がとてもリアルに作られてるって言ってたけど皆生きてるわよ、あなたのようにアクリルで固められてもずっと意識もあるわ」
(うそ…それじゃあテーブルの子もライトで照らされてた子も…凍ってたのも触手に絡められてるのも、水を出してた子も体操服の子も全部が…生きてる人間……?)
「ここは普通の人には見えない店なの…あなたは選ばれたのね、ここで私の作品になった以上はずっとここで飾られて生きていくのよ」
「さぁ新しい子が来るのを楽しみにしててね」
(待って!)
(暗い…動けないよ……私、ずっとこのままなの?)
「これであなたもここに来る人達を楽しませる存在になれたわね」