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【SS+挿絵2+おまけ】Face out Facing out. 5 part3-1

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【SS+挿絵3+おまけ】Face out Facing out. 5 part2-3

【Prev】 【6】 黎司「ほな、いこか」 ダダダッ!ドンッ!! 刃連「んう゛ッ!!」  黎司は助走をつけたタックルで、呆然と立ち尽くしていた刃連をマットへと叩きつける。そして馬乗りになり、刃連の手脚を封じた。 黎司「思うてたよりだいぶショックそーやなァ。まさかこんな傷痕になっとるなんて想像できんかった?」...

【8】

 観客たちの上げる熱狂の声が場を満たす中で、ケージのマットに残った血と汗を、スタッフ数人が慣れた手付きで拭き取っていく。

 ディザイア側が1戦目の雪辱を果たしたことで、観客達のもたらす熱量のボルテージはまた1つ上がったようだった。しかし結果として、彼らが叫ぶ言葉の中身は僅かたりとも変わらない。怒号、野次、歓声というには上から投げ付けるような一方的な言葉ばかりが、相も変わらず飛び交っている。

 刃連の言った「カネのかかった客」という表現に間違いはないのだろうが、程度は低いと言わざるを得なかった。


亮「2人も病室送りになっちまって、こっち側は随分寂しくなりましたねぇ」


 そんな中でも、涼しい顔をした亮がこう零す。


彗翔「オイ、どっちもやられたみたいに言うなよ。蒼惟は付き添ってるだけだろーが」


 亮のいつもの軽口。だが、担架に乗せられた刃連の姿を見たばかりの彗翔からしてみれば笑えない冗談だった。


日向「うるさいぞ、お前ら。次の試合はもっと危険な奴が相手かもしれない。気合入れ直せ」


彗翔「うす!」


 気合の入った返事で彗翔は気を引き締め直す。対して亮は何か不平を言いたげではあったが、再び響いたアナウンサーの声に遮られるのであった。


『皆様大変お待たせしましたァッ!マットの清掃が完了しましたので、これより第3試合を始めます!ディザイア、MMA部、どちらも1勝ずつの引き分け!先にリードを取るのはどちらだァッ!?』


 熱気を煽り立てるような言葉に、観衆は各々が馬鹿正直な反応を返す。団体戦も3試合目。いよいよ中盤戦に突入しようとしていた。


『続いて入場するのはァ、皆様御存知ディザイア上位ランカーッ!無敗の王者、宮鷹 雄冴の息子ォッ!!宮鷹ゥッ!涼冴ォォォッ!!』


 男の豪快な声に導かれるようにしてライトが照らし出した入場ゲートには、ノースリーブの黒いガウンを纏った青年が立っていた。フードの下からは無造作に跳ねた銀髪の毛先と、鋭さのある、しかし無感動な目が覗いている。


「おおおおおおおおッ!!!」


 観客たちが涼冴の姿を確認した瞬間、会場中を歓声が埋め尽くした。



涼冴「…………」


 だが、そんな観客には目もくれず、涼冴はケージリングへ淡々と歩いていく。


 対するMMA部の面々は、驚きの表情を見せるほかなかった。無理もない。今まさに彗翔達がこの場から救い出さんとしている、宮鷹涼冴その人が次の対戦相手として姿を現したのだから。


彗翔「りょ、涼冴ッ!?なんでアイツが出てくんだよ…ッ!?」


亮「あれェ?おかしくないスか先輩。俺たち天ヶ瀬と宮鷹涼冴を助けるために来たんスよねェ?そのお姫サマが敵で出てきたじゃないスか」


日向「…徠ならやると思ってた。助け出したい本人を脅し、敵として出場させる。俺たちを精神的に揺さぶるために、な」


 日向の声色はあくまでも冷静だったが、その表情は苦々しく歪んでいた。


亮「へぇ?フツー脅迫されてたらビビるもんじゃないスか?アイツの面、落ち着ききってるように見えるんスけど」


彗翔「つーことは…もしかして涼冴のヤツ、俺たちが勝ったらこっから抜けれるってこと聞かされてないんじゃ…!?」


 だが、日向の脳裏には既に違う予想が浮かんでいた。


日向「…天ヶ瀬、宮鷹涼冴は本当にここから抜けたがっているのか?」


彗翔「そ、そりゃそうスよ!だってこんなクソみてぇな所っスよ!?」


日向「本人の口からそう聞いたのか?」


彗翔「そりゃもちろ…ってアレ…?確かに…涼冴からは…ちゃんと聞けてなくて…」


 思い返してみれば彗翔と涼冴の会話はほとんど一方的なもので、いくら彗翔が感情的に言葉をぶつけてみたところで涼冴本人はどこ吹く風だった。


亮「ほぉ~ん、そいつは聞かされてた話と随分違うんじゃないスかァ?先輩?」


 難しい顔をして考え込む彗翔を他所に、日向は決断を下したようだった。


日向「…亮、頼めるか?」


彗翔「えっ…!?」


亮「もちろんスよ先輩。宮鷹のガキなんてクッソ面白そうなオモチャじゃないスか」


 意気軒高とした様子で立ち上がろうとする亮の両肩を、彗翔が慌て掴んで押し止める。


彗翔「ちょ、ちょっと待ってってッ!何戦う感じになってんだよッ!?オレたち涼冴を救いに来たんだろ!?涼冴にそう伝えて降参してもらえばいいだけだろ!」


亮「ハッ、頭に花でも咲いてんのかよ」


 亮の馬鹿にした物言いに彗翔は声を荒げた。


彗翔「さっきからなんだよテメェッ!?いい加減に…ッ」


日向「いい加減にするのはお前だ天ヶ瀬!」


 それを戒めたのは日向だった。


日向「天ヶ瀬、徠が宮鷹を出したのは、宮鷹が裏切らないと確信してるからだ。説得は無理だ」


彗翔「だ…だけど…!なんか徠にすげー脅迫とかされて、嫌々やってんのかもすんじゃないスか!」


日向「宮鷹の顔を見てみろ。脅迫されてる奴はあんな面はできない」


彗翔「…ッ!」


 彗翔は振り返り涼冴を見る。対戦相手が上がってくるのをケージにもたれかかりながら待つ涼冴の態度は、落ち着き払ったものだ。その表情は普段と変わらず何事にも興味を示していない。脅しを受けた者ならば隠し得ず滲むような焦燥感や不快感などは、微塵も見受けられなかった。

 それを見て、自分の予想の甘さにようやく気付いた彗翔は決断する。


彗翔「…なら…オレが行く…!」


亮「はぁ〜?お前助け出したい相手のことぶん殴れるのかよ?そうでなくてもアイツと戦ってズタボロに負けてんだろ?」


彗翔「ムダかも知んねーけど、オレたちが戦う必要がねぇことは言ってやりてぇんだ」


日向「…それが通じなければ?」


彗翔「その時は殴るでも蹴るでも何でもやって目ェ覚ましてやんよ!」


日向「そうか。なら誓え。何があっても宮鷹涼冴を連れ帰れ。絶対に諦めるな」


彗翔「…えっ…」


日向「誓えるか?」


 日向のシンプルな問いが、彗翔の胸に染み入る。できるか否かではなく、『誓える』か。受け取った言葉を反芻しながら、彗翔は考える。

 涼冴が何故ディザイアに留まっているのか、彗翔は確かに知らない。話し合おうとしたところで仔細を語ってくれるどころか、素直に応じてくれる可能性も低い。それでも、もし涼冴を見捨てて独りディザイアから抜けるようなことがあれば、後悔を一生引きずることになるだろう。

 それは何よりも「ダサい」ことだからだ。

 だから、答えはとっくに決まっている。


彗翔「…うすッ!!オレは涼冴を、絶対ェ連れ帰りますッ!!」


 日向は満足そうに頷いて、そして、やにわに彗翔の耳を引っ張った。


彗翔「い、いだだだだッ!!きゅ、急に何スかッ!?」


日向「周りがうるさいから近付かないと聞こえないだろ。耳貸せ」


 少しばかり赤くなった肌をさすりつつ、彗翔は日向の指南に耳を傾けた。



 ーーその数分後、彗翔はケージのリングの中へと足を踏み入れていた。

 闘いを眩く照らし出す照明の光、密集した人々の生み出す声、先に繰り広げられた2つの試合で飛散し清掃でも消しきれなかった血や汗……マットに染み付いた種々の熱が伝わってくる。

 否応なしに掻き立てられる闘争心と、気を抜けば顔を覗かせる緊張感。それらに慣れるにはまだ遠い。

 それに加えて、彗翔の思考を占めるものがもう一つあった。

 その相手と今、正面きって対峙する。


彗翔「涼冴…!」


涼冴「いつまでも誰も上がってこねぇと思ったら、テメェかよアホ面」


 その背後でケージの扉が閉まると、観客のボルテージが一気に上がる。だがリング上の2人にはもう周りなど関係なかった。


彗翔「涼冴!オレたちが戦う必要なんてねぇんだ!オレたちはお前をこっから助けに来たんだ!」


涼冴「…何言ってんだお前」


 予想通りというべきか、涼冴のワンテンポ遅れた反応は芳しいものではなかった。


彗翔「やっぱ話聞かされてねぇのかよ…!オレたち、徠と取引したんだ!オレたちMMA部が勝てばオレもお前もディザイアから今日で抜けれんだよ!」


 そう手を差し出した彗翔に対する涼冴の表情は、冷めたものだった。「目の前の相手が何を言っているのか、心底理解できない」とばかりに、怪訝そうにこちらを見ている。


涼冴「なんで俺がここを抜けなきゃならない?」


彗翔「なんでってお前…こんなクソみてぇなとこ、さっさと抜けてぇだろ!?」


涼冴「別に」


彗翔「お前みたいなつえーヤツがこんな地下で戦ってんのが良いのかよ!?お前ならプロだってやっていけんだろ!?」


涼冴「どうでもいい」


彗翔「どうでもいいって何だよ…!何でなんだよ!?父親の借金を返すためか!?お前を虐待してたクソ親だろ!!それとも!…やっぱり母親の話はマジなのかよ…!?」


 それは彗翔が徠から伝えられた、あまりにも衝撃的な話だった。涼冴の抱える最大のトラウマが、実の母親に捨てられたことだというのだ。


涼冴「…は?」


 その瞬間、涼冴の声と表情が一気に張り詰める。


涼冴「あーマジで面倒くせぇ。てめぇに何が分かんだよ」


 涼冴はガウンを脱ぎ捨て、ファイティングポーズを取る。


涼冴「俺の邪魔すんならブッ潰すぞ」


彗翔「…ッ…!」


 彗翔の喉から言葉が続かない。

 それまで何にも興味を示さなかった涼冴が母親の話題を出した途端に突然怒りを露わにした。徠の話したトラウマというのは紛れもない事実なのだろう。ならばこれ以上どの言葉を連ねれば良いというのか。

 彗翔はただの学生に過ぎず、トラウマの仔細も知らない。専門家でもとてつもない時間をかけて退治していくような心の傷を、ものの数分で癒す奇跡も魔法も持ち合わせているはずもない。


彗翔「…あーッ!んだよッ!結局こうなんのかよッ!!」


 彗翔もシャツを乱暴に脱ぎ捨てケージの外に放り投げる。

 説得は失敗に終わった。でも引き下がるはずがない。日向と誓ったのだ。何があっても涼冴を連れ帰る。即ち、ここから先は力技だ。

 彗翔は一度自らの頬を両手で強く張って、意識を切り替える。


彗翔「そんならブン殴って目ェ覚まさせてやるよッ!それになッ!」


 彗翔もファイティングポーズを取って、猛々しく吼える。


彗翔「やられた借り返さねぇでこっから出ていけねぇんだよッ!!」



カーーーンッ!!!


 3度目の鐘が、高らかに試合開始を告げた。



SS作成協力:はばねろ様(https://www.pixiv.net/users/20449949)


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【Prev】 【10】 ダンッ!  ゴングの音と同時に、彗翔は地を蹴って全速力で駆け出す。 彗翔(前、涼冴と戦った時はボクシングルール。コイツの得意な蹴りは封印されてた。でも今日は何でもあり…!多分っつーか絶対立ち技じゃあオレに勝ち目はねェ…!でもな、こっちだって前はできなかったことができんだよ…ッ!)  そ...


【おまけ】


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