
【Prev】 【3】 町外れにある廃棄された空き倉庫。一般人は誰も近づかないこの場所に日向と彗翔は来ていた。 彗翔「なんなんスかここ?すげーボロいスけど…」 日向「昔、徠とその取り巻きが使っていた溜まり場だ。そしてあいつらからMMA部を解放した場所でもある」 彗翔「ここがスか…てか、MMA部を解放したって、一体...
空き倉庫での徠との取引から1週間後。ディザイアとの団体戦はもう週末にまで迫っていた。
蒼惟「もう今週か~…さすがに緊張してくるな…」
彗翔「え?むしろテンション上がんね?もうやるしかねぇ!って感じしない?」
蒼惟「やっぱお前頭イカれてる?そもそもこの状況、誰のせいよ?」
来るべき決戦に備えて、MMA部のメンバーは普段以上の練習を重ねていた。だが幽霊部員の亮はともかく、刃連も姿を見せていなかった。
彗翔「てかさ、慎哉最近来なくね?」
蒼惟「な。あの倉庫の後から様子おかしいんだよ」
そう、部活の練習にいつも参加していた刃連が1週間前から休みがちになったのだ。
彗翔「確かに慎哉の方から団体戦参加したいなんて言ってくるとは思ってなかったもんな」
蒼惟「それよ。あの日刃連だけ倉庫入ってこなかったろ?絶対外で何かあったんだろうけど、あいつ聞いても何も言わないからさ…」
彗翔「え?聞いただけ?オレ関節で拷問されたあげくスマホ見られたけど?」
蒼惟「バカ。アイツは繊細なんだよ。ま、刃連には別に頼んでることもあるし」
彗翔「頼んでること?」
彗翔が尋ねようとしたその時、リングから声が掛かった。
日向「藤代、天ヶ瀬」
2人「「はい?…げっ…!!」
2人が振り返ってリングを見ると、今から始まる地獄を察し、絶望する。
リングには上裸になった日向がボクシンググローブをつけ、立っていた。
日向「お前らも上脱いでリング上がれ。腹筋、やるぞ」
2人「「う…うす…」」
そう、これは腹筋強化トレーニングの合図。だが、ただのトレーニングではない。
受け側は3回ダウンするまで腹に拳を受け続け、ボディの打たれ強さを高めるための地獄の腹打ちトレーニングなのだ。
蒼惟「マジかよ…今日ラーメン大盛にしちまったよ…」
彗翔「オレも今日特盛に全チャン…」
蒼惟「…何だよ全チャンって…?」
彗翔「半分のチャーハンだから半チャンだろ?半チャン2つ食ったら全チャンじゃん」
蒼惟「…聞いたことね―よ」
日向「さっさとしろ」
2人「「う~す…」
彗翔と蒼惟はしぶしぶシャツを脱いでリングに上がる。
日向「よし、どっちからだ?」
2人「「はいッ!!こいつが先に殴られたいっつってましたッッ!!!!」
日向の問いかけに2人はお互いを指差し、同時に叫んだ。
もはや見慣れた光景に日向は何もリアクションを取らずに淡々と続ける。
日向「そうか。なら藤代からやるぞ」
蒼惟「え゛ッ!?」
彗翔「ざまぁw」
日向「天ヶ瀬をやるなら身体を温めてからの方が良いからな」
彗翔「え゛ッ!?!?」
蒼惟「ざまぁみろ」
蒼惟は吐き捨てるように言うと、リングのコーナーを背にして手を頭の後ろに組む。
日向「準備はいいか?」
蒼惟「う、うす!」
日向は蒼惟の腹筋にパンパンと拳を叩き込んでいく。
緩急のあるパンチが10回も超えてくると蒼惟の口から苦しい声が漏れ出てくる。
蒼惟「ッ…ぅッ…!!」
日向「声出すな。効いてるのバレるぞ」
蒼惟「ッ…う…す…ッ!」
そして10発目ーー
ドスッッ!!!!
蒼惟「ぐッ!!…ぅ…ぁ…ッ!」
一際体重の乗った右ストレートが腹のど真ん中に叩き込まれる。
蒼惟はたまらず腹を抱えてその場に座り込む。
蒼惟「ぅあ~…マジきっつ…」
日向「さっさと立て。それとも、もうギブか?」
蒼惟「まさか…こんなんでへばるほどヤワじゃないですよ…!」
蒼惟は立ち上がり再び手を頭の後ろに構える。そして赤く染まり始めた腹に日向は再び拳を叩き込んでいくのであったーー。
ーーそして、21発目の強打で蒼惟はその場に崩れ落ちるように3度目のダウンを喫する。
蒼惟「ぁあああ…ッ!も、もう…無理っすわ…」
日向「10、16、21でダウンか。まだまだ鍛えが足りないな」
蒼惟「はぁ…はぁ…いいんすよ…俺、グラップリング派なんすから…十分でしょ…」
満身創痍の蒼惟を見て、彗翔はまたニヤニヤと笑っていた。
彗翔「だらしねぇな~。そんなんで週末戦えんのかよ?」
蒼惟「っせぇな…オメーは耐えられるってのかよ…」
彗翔「あったりめぇだろ?オレは地下格闘の世界でプロレスラーに腹タックルされまくっても勝った男だぜ?これぐらい30発はノーダウンだぜッ!!」
蒼惟(うわコイツ隠す必要が無くなった途端にめっちゃ自慢してくるじゃん…クソうぜぇ…)
彗翔は軽い口調でコーナーに背を向け、両腕をロープの外に出す、その瞬間だったーー。
ドゴォッ!!!!!
彗翔「が…ッ!?!?」
ーー部室に鈍い音が響き渡る。
それは、彗翔の腹筋に日向の膝が突き刺さった音だった。
日向はコーナーの対角線から猛スピードで走り込んで跳び膝蹴りを放ったのだ。
彗翔「ぐぅォ…ァ…」
ドサッ!
そのあまりの衝撃に彗翔はそのままリングに倒れ込む。
日向「一発でなに倒れてんだ。さっさと立て」
彗翔「い…いや…一発って、膝じゃないスか…ゲホ…ッ」
日向「一発は一発だ。それともお前は一発でギブアップか?」
その言葉に彗翔は力強い表情を取り戻し、不敵に笑いながら立ち上がる。
彗翔「何言ってんスか。週末決戦なんスよ?こんな蹴り何発でも受けてやるスよッ!」
そして再び両手でロープを掴むと腹筋に力を入れ、次の打撃に備える。
その姿に日向は少しだけ口角を上げる。
日向「そうか。なら何発でも叩き込んでやる」
腹打ちトレーニングは始まったばかり。次々と彗翔の腹に日向のマジ蹴りが打ち込まれていくのだった。
グローブをつけての腹打ちトレーニング(殴るとは言っていない)
うらき
2022-07-24 09:23:55 +0000 UTC