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【Prev】 【8】 彗翔「だあああぁ…痛ってぇぇぇ…!」 フラフラになりながら試合会場を後にした彗翔は、入場ゲートの近くで倒れるように座り込んでゼェゼェと肩で息をする。 彗翔(ヤベェ…マジ限界だ…さすがに少し休まねぇと…宮鷹探しに行くのは無理だ…) 幸いリングはマットの張替えやケージの撤去、ロープの張り替...
彗翔「放せッ!放せよッ!!」
円「騒がしいなぁ。病室では静かにしなさいって教わらなかった?」
目の前で八剱の蛮行を見せつけられた彗翔はすぐに飛びかかろうとした。しかし円に取り押さえられ、医務室で治療とは名ばかりの拘束を受けていたのだ。
円「随分元気だねぇ。稲叢くんとセックスできないぐらいボロボロなんじゃなかったの?」
彗翔「何考えてんだよお前らはッ!?あんなフザけた真似許すのかよッ!?」
円「あぁ、まさか椅子でぶん殴るとはねぇ。でもオーダーは『一発で相手をノックアウトしろ』だったから、凶器はダメともリングに上がってからとも書いてなかったからアリなんじゃない?なにより客にウケたし」
彗翔「オーダーって…お前らそんなゲームみてぇなことしてたのか…ッ!?」
円から飛び出す信じられない言葉の数々。彗翔は湧き上がる怒りで身体を震わせる。
円「ゲームなんて失礼な。八剱くんは良いビジネスをしてくれたよ?出血が派手だから大怪我に見えるけど、きちんと手加減してくれていたし」
彗翔「あんな不意打ちのどこがビジネスだよ…ッ!?」
円「不意打ちだってただのパフォーマンスじゃないよ。下手に避けたり防いだりされたら想定外の怪我をさせるかもしれないだろ?さすが八剱くんはよく考えてくれてるねぇ。匠の技だよ」
彗翔「お前それ本気で言ってんのかよッ!?頭イカれてんだろッ!!?」
不真面目な態度に激昂する彗翔。円はそれを怪訝そうに見ながらタバコに火をつける。
円「はぁ~。天ヶ瀬くんが何に怒っているのかわからないよ。宮鷹くんは君をボコボコにして、レイプまでされた相手だろ?そんな奴が目の前で1発KO!スカっとしなかった?」
彗翔「おめえらと一緒にすんなッ!涼冴のこと脅して!こんな所で戦わせて!しかもイスでブン殴るとかイカれてんだろッ!?」
円「脅す?心外だなぁ。俺らと宮鷹くんは自由意志の下、相互が十分に納得した上で契約しているんだよ?」
彗翔「んな訳ねぇだろッ!アイツのこと何も知らねぇクセに知ったようなこと言うんじゃねぇッ!!」
円は駄々をこねる子供に呆れる親が大きくため息を付くようにタバコの煙をふーっと吹き出す。
円「じゃあ天ヶ瀬くんは、宮鷹くんが母親に捨てられたこと、知ってるの?」
彗翔「……は……?…捨て……?」
円「捨てられたんだよ。彼が『父親にそっくりだから』という理由でね。それが彼の最大のトラウマなんだ」
突然飛び込んできた情報の重さに、彗翔の脳は処理が追いつかない。
円「最愛の母親に捨てられてしまった可愛そうな可愛そうな宮鷹くん。でもそんな彼を俺たちディザイアが救った。客はショーを楽しんで、俺らは金をもらって、宮鷹くんは生きる手段を得た。みんなが幸せになったんだよ。素晴らしいビジネスだよね」
彗翔「んだよそれ…なんなんだよそれ…」
円「ちょっと喋り過ぎちゃったかな?ま、俺と天ヶ瀬くんの仲だし、勝利のお祝いだと思ってよ」
円は椅子から立ち上がり出口へと向かう。
円「ああ。そういえば最初の質問にきちんと答えていなかったっけ?フザけた真似を許すか、だよね?」
円は一層口角を上げて言う。
円「許されるに決まってるじゃん。だって、ここは元々フザけた場所なんだから」
バタン!
扉が閉められ、部屋に1人。
彗翔は小声で、しかし強い信念を持って呟く。
彗翔「…んなことオレが許さねぇ…ッ!…涼冴…絶対ェこっから出してやる…ッ!」
バスッ!!
涼冴のハイキックを八剱はギリギリでガードする。
アゴをピンポイントで狙った強烈な蹴り。直撃していればたとえ八剱であろうと一発でKOされかねない。
八剱(速ェ。しかも急所をピンポイントに狙ってきやがる。これがさっきまでくたばってたヤツの動きか?さすがはサラブレッド様ってか)
八剱の反撃の蹴りも素早いステップで避け、涼冴は再び八剱の射程圏外まで距離を取る。
八剱(ハッ、ファイトスタイルまで親譲りってか)
涼冴は機動力を活かしたヒットアンドアウェイを得意とするボクサーだ。相手を待ち構えて迎撃するスタイルの八剱にとっては、非常に戦いづらい相手であった。
しかし、27kgもの体重差は歴然と存在していた。涼冴が圧倒的な手数とスピードで攻めるものの、八剱はその体格と卓越したガード技術でほとんどダメージを受けていなかったのである。試合は膠着状態となっていた。
八剱(ダレてきたなァ。さっさと終わらせてェけど、問題は…)
バシッ!!
八剱は涼冴のコンビネーションの最後に放たれたミドルキックをガードする。これも防がなければレバーを直撃していた。
八剱(どうやってコイツを捕まえるかだなァ。下手な攻め方するとこっちがKOされちまいかねねェ。そんなら決まってるよなァ…!)
八剱は素早いジャブを連続して放つ。涼冴には当然当たらない。だが、涼冴の攻撃を一時的に止める。その牽制だけで十分だった。
八剱「なァ、さっき見てた夢、随分楽しそうだったなァ?どんな夢だったんだァ?大好きなママの夢なんだろ?」
涼冴「…………」
涼冴は何も答えずにジャブを避け続ける。だが八剱は見逃さなかった。「大好きなママ」という言葉を聞いた瞬間、涼冴の表情がほんの僅かに歪んだことを。
八剱「なァ、シカトしねぇ教えてくれよォ。大好きなママはどんなこと言ってたんだァ?」
涼冴「…ッ!」
頭の中で蘇るトラウマが涼冴の足を一瞬止める。その間僅かコンマ数秒。だが、八剱には十分すぎる時間だった。
ガシッ!
八剱は首相撲の姿勢で涼冴を捕らえることに成功した。
八剱「やっと捕まえたぜェ」
涼冴「くっ…!」
そして八剱は左腕を上げーー
八剱「つーことで死んどけ」
ーー椅子を打ちつけた場所と同じ、涼冴の脳天に肘を突き落とした。
ドゴッ!!
リングに痛々しい音が響き渡る。しかし、涼冴は倒れない。
八剱「ほぉ〜ん。さすがサラブレッド、よくガード間に合わせたじゃねェか」
涼冴は拳を上げて傷口への肘の直撃をすんでのところでガードしたのだ。そんな涼冴を八剱は首相撲を解いて解放する。最早目的は果たされたのだから。
八剱「だけどよォ、もう終わりだなァ。また汚ェ血が出始めちまったぜェ?」
涼冴の頭から再び大量の血がダラダラと流れ始めたのだ。ガードで肘の直撃自体は防げたものの、その衝撃を無くすことはできなかった。
大量の血がすぐに涼冴の視界の右半分を奪い去る。これこそが八剱の狙いだったのである。
しかも失ったのは視界だけではない。先程のガードで涼冴の右拳も大ダメージを負ってしまった。
最早涼冴の右上半身は無防備といって差し支えのない状態と化したのだ。
八剱「下準備は終わり、っと。んじゃ、始めるとすっかァ!血祭りをよォッ!」
ドスッ!!!!!
涼冴「ゥぶッ!?」
八剱のミドルキックが右脇にめり込む。
拮抗状態が崩れ去った今、繰り広げられるのは一方的な殺戮ショーだった。
【Next】

【Prev】 【12】 八剱「オイオイ、試合開始前の威勢はどこに消えたんだァ、サラブレッドさんよォ?俺をぶっ潰すんじゃなかったのかよ?」 涼冴「ゲホッ!ゴホッ!」 キャンバスで四つん這いになった涼冴は、激しく咳き込みながら口から唾液を、血を、胃液を吐き出す。 あまりにも一方的な戦いだった。 八剱は死角...
【おまけ】
やっぱおまけぐらいは茶番やっててほしい。
うらき
2022-02-16 10:08:14 +0000 UTCセイヤ/D-ceK
2022-02-11 16:05:32 +0000 UTC