小説:ミケ空(https://www.fanbox.cc/@kaminagisora)
挿絵:うらき
とある日。日も傾き、一日がそろそろ終わりを告げようとしていたときのことだった。
「テメー、水瀬 慧(みなせ けい)だろ?」
俺、水瀬慧は不意に後ろから声をかけられ、ビクッと体を震わせる。日が少し落ちかけている路地裏。いつも通る道とはいえ、少し用心が足りなかったかと俺は用心しながら後ろを振り返る。
「…そうだけど?」
そう答える俺の前には。…少し短め金髪の毛を逆立て、日焼けしたかのような少し浅黒い肌にワンポイントのような鼻の絆創膏。タンクトップにジーンズ、ジャラジャラとつけたアクセサリー…いかにも派手好きでチャラそうな男がいた。
「…何か用?俺、さっさと帰りたいんだけど」
関わりたくない。こんなチャライ奴は付き合うだけ無駄だ。俺はぶっきらぼうに答えると距離を開けようと、少しずつ後ずさるも。男は一歩、一歩と大股で俺に近寄ってくる。
「…テメー最近、ゲームで調子に乗ってんじゃねえかよ」
俺は何も言わず、じっとチャラい男を睨みつけた。
(ち…また地下の話か…)
そいつの言うゲーム、というのはボクシングの賭け試合のことだろう。と言ってもただの賭け試合ではない。勝者が敗者を慰みものにする、という、いわゆる「非合法の地下格闘技場」で行われる史上最低のボクシングの試合のことだ。…俺はとある理由から否応なしにこの世界に首を突っ込み、いやいや闘っている毎日。この男はそんな俺の様子が気に入らない、という事なのだろう。
「ゲームで相手をブッ倒しても?その相手をハメず?俺は神聖なリングでボクシングをしたいんだ、なんてイキってたヤツがよォ、この前とうとう相手をハメっちまったらしいじゃねえか」
そう、この男の言う通り。俺は賭け試合に出て何度か勝利を収めている。こう見えても昔からやっていることもあって、経験はあるんだ。…でも、俺がしたいのはボクシングだ。賭け試合でも、ましてや試合後に敗者を犯すだなんてことでもない。だが先日、とある試合で対戦相手の男を助けるため、俺は試合に勝った後に…やむを得ずにそいつを犯した。
「…何が言いたい」
「…テメーみてえなダブスタ野郎、反吐が出んだよ」
「………」
「所詮、あそこで行われてんのは試合じゃなくて、ただのボクシングごっこだろ?…客共はぶっ倒されたヤツがハメられるところを一番見てえんだよ。なのに…テメーみてえに良い子ちゃんぶって、相手をハメたりハメなかったりウロチョロしてるヤツは目障りなんだよ…!」
「…俺は、ボクシングがしたいだけだ。この世界にだって好きで入ったわけじゃ…」
「うっせえなァ!テメーの事情なんか知るかよ!どんな理由があろうと、テメーはこの世界に入って闘ってんだよ!」
俺は何も言い返せない。確かに、この男の言うことは一理ある。それは、ここ最近ずっと思い知らされてきた。
「…だからよ。今度のゲーム、俺がテメーを最ッ高に処刑してやるよ」
そういうと、男は俺に一枚の紙を投げつける。…俺は用心しながらそれを拾い目を通す。
「テメーみてえなヤツは…俺がボコボコにブッ潰した後でチンポで調教してやるよ。二度とリングに上がれなくなるくらい惨めになァ…!」
狂気じみた笑顔を見せる。俺は一瞬体が震えそうになるが、ギュッと歯を喰いしばると。…震えを無理やりに押さえつけた。
「ゲームの日、覚悟しておけよ」
そういうと、男は去っていった。俺は、改めて八剱に投げられた紙を見る。
『拳と脚!最期に立ち上がっているのはどちらだ?! 水瀬慧 V.S. 八剱擢真』
「…拳と脚……それに、八剱 擢真(やつるぎ とうま)、か…」
俺は男の、八剱擢真の背中を見ながら、グッと拳を握るのだった…
『っしゃーッ!!テメーらッ!!ちゃんと見てたかよ!?』
『わあああああああっ!』
『いいぞ八剱ー!今日もお前にかけて正解だったぜ!』
『犯せ犯せー!』
『わああああああああああああっ!』
『強すぎる!「八剱 擢真」!どんな相手もとことん破壊し犯しまくるリングの処刑人!今日も完全勝利で相手を犯します!』
映像の中で、八剱は金の派手なグローブを外し、トランクスを下げると相手をバンバンと犯しだす。…俺はじっとその映像を眺める。帰宅してからすぐ、俺は貯め撮りしていた今までの試合のDVDを漁り、片っ端から八剱の試合をチェックした。
…八剱はここ数ヶ月で急に台頭を現してきたキックボクサーだ。歳は俺より1つ上なのだが、その特徴は何よりも派手なことである。リング上でのパフォーマンス、ファンサービス、そして試合。事後の処刑という名のセックス。全てが派手で見栄えが良く、観客たちにも大人気の選手だった。もちろん、それなりの実力もある。試合内容を見るに、八剱はパワー型のキックボクサーのようで、とにかくオフェンス重視だ。フットワークにあまり頼らず真正面からの殴り合いを得意としている印象を受ける。その派手さに裏付けられるのが八剱のパワーなのだろう。…そして、次の試合は経験の差を考慮してか、観客を楽しませるためか、俺がボクシング、八剱がキックボクシングで戦うという特殊なルールの異種格闘技戦となっている。
「…油断はできない、な」
俺はそう呟くと、改めてリングで派手に相手を犯す八剱の姿をじっと見つめる。
『テメーみてえなヤツは…俺がボコボコにブッ潰した後でチンポで調教してやるよ。二度とリングに上がれなくなるくらい惨めになァ…!』
あの時の八剱の言葉が頭の中に反芻する。…対戦相手を犯している八剱の顔は、獣のように獰猛だ。そう、まるで…すべてを見下しているかのような顔…
…どこかざわつく気分を抑えながら、俺はDVDを切り、早速練習へと向かった…
「レディーース!エーーンド!ジェントルメーーーン!」
リング中央で、俺達は顔を突き合わせる。八剱は俺を睨み、ニヤッと笑う。八剱の背は俺よりも少し高い。そして、何より目を引くのが体に纏い付く筋肉だ。6つに綺麗に割れた腹筋に太い腕と脚。俺も全身の筋肉を鍛え上げている自信はあるが、それ以上だ。身長の差も考えると、かなり体重差もあるんじゃなかろうか。俺を睨みつけるその鋭い目つきも、まさに闘争心の塊に見えた。
「よくビビらずに来れたじゃねえか」
派手な金色のグローブに黒色と金色が半々になったトランクス。そして、ムエタイやキックボクサーが良くつけている腕の紐…パープラチアット。これまでご丁寧に黒と金色で押さえている。俺も割に派手な格好をする方だとは思っていたが、そんな俺が霞むぐらいの派手さである。
「…試合から逃げるわけにはいかないからな」
「ハッ!まだ良い子ちゃんぶってんのかよ。これはゲームだってまだわかんねーのかァ?」
俺は何も言わず、ただじっと八剱を睨み付ける。
「そう、その眼だよ。そういう生意気な眼をした奴をブッ潰して、俺のチンポでガンガンにイかせてトコロテンさせてやるのが最高なんだよ」
八剱はそう言い、舌舐めずりをする。
(…こいつ!)
「あんまり調子に乗るなよ、八剱。お前とは踏んできた場数が違うんだからな」
「テメーこそ、いつまでも調子のってんじゃねえぞ。テメーは今日、ここでブッ倒されて俺にブチ犯されるんだよ」
…俺はグローブタッチし、話を切り上げる。その後、八剱が腕を振り上げると同時に観客たちから今までにないほどの声援が上がる。
(…格好だけの見せかけには負けられない…)
俺は拳を叩き合わせ気合を入れ直すと、ファイティングポーズを取った。
カーン!
聞き慣れたゴングの音と共に、俺達はリングの中央で向かい合う。普段なら初手にジャブでけん制をかけることが多いが、相手はキックボクシング。いくら経験で勝るとはいえ、リーチの差があることを考えると、迂闊に前に出るわけにはいかないだろう。
「オラ、来いよ水瀬!俺がこえーのか!?」
見え透いた挑発だ。俺は何も言わず、ジャブを繰り出しながらじっと距離を測る。キックは全身を支えている脚を使うのだから威力が馬鹿にならない。だが、拳ほどの小回りはない。ならばこそ。俺が狙うのはそこだ。
(相手の動きを誘発して、そこにカウンターか反撃を入れる。そして距離を取る)
いわゆる、ヒットアンドアウェイである。じっくりと、着実にダメージを与えればいい。一撃必殺を狙う必要もない。
「チッ、腑抜けが。テメーが来ねえなら…俺から仕留めてやるよ!」
来た。
俺は冷静に八剱のミドルキックを後ろへ下がってかわすと、前へとステップし、ワンツーを八釼の顔面へと叩き込んだ!
パンパンッ!
(よし…!
手応えがあった。直撃である。そして、
タンッ!
俺はステップを踏むと、すぐさま八剱との距離を取る。想定通りのヒットアンドアウェイ。手応えもあり、試合は俺の想定通りに進んでいくはずであった…のだが。
「…んだよ、この程度かよ」
「っ!?」
まるで事もなかったかのように再び構えなおす八釼に、俺は驚きを隠せない。
(馬鹿な、直撃させたはず…!)
俺もボクシングではそれなりのパワーファイターとして名が通っている。だが、
「…効かねえなァ?」
そんな俺のパンチの直撃を受けてもものともせず。ギッと睨む八剱の視線に、嫌な予感がよぎった。
(…いや、何度もパンチを入れれば済むだけの話だ!落ち着け、冷静になれ…!)
だが、それでもまだ勝機はある。俺は自分にそう言い聞かせると、再び足を動かし始め、
「シッ!」
バンバンッ!
八釼に拳を振るうのだった…。
「この…ッ!」
バシッ!
「そこだ…ッ!」
ガスッ!
それから4ラウンド。俺は八剱の顔に、腹に、何度も拳を入れる。…が、一向に八剱は倒れない。それどころか、怯みもしない。
「オイオイ、この程度でよくボクサーやってられるなァ?オラッ!」
ガスッ!
「くっ…」
反面、八剱は執拗にローキックで俺の足を狙う。
(まずい…)
未だ余裕たっぷりな八剱に俺は焦りを覚える。…俺はこの時点で3つのミスを犯していた。
1つ目はスタミナ。ヒットアンドアウェイ、というのは相手の動き以上に自分が動き回らなければいけない。どんと構えた八剱に比べて、俺が消費する体力が段違いだ。
2つ目は打撃力。蹴りを避け、近付き打撃を入れ、再び距離を開ける。素早い移動を重視する分、拳に体重を乗せることが難しく、決定打を与えられない。
そして、3つ目が八剱のローキックだ。ボクシングをメインとしている俺にとって、顔や腹の痛みはともかく。足の痛み、というのは慣れないものだった。最初は耐えられていた痛みも、どんどん蓄積されていき、俺は機動力をみるみる奪われていった。
「ほら、次の攻撃もちゃんと避けろよ?まだ倒れられちゃつまんねーからなァ?」
かたや、八剱はそんな俺を見越してか、からかうようにミドルキックを放つ。シュッと、空気を軽く切るような音がすると同時に俺はバックステップを踏む。が。
カスッ
そのミドルキックが脇腹をかすった。
「っ!」
…それは、ローキックのダメージで俺の機動力がそがれたことを証明するのに十分な事であった。額から汗を流す俺のその姿を見て、八剱はニヤッと笑う。
「そろそろ、バテてきたんじゃねえの?」
そう言いながら放つ八剱のローキックが、再び俺の足を痛めつけた。
バシッ!
「ぐっ!…はあっ…はあっ…はあっ…!」
「まあ、あれだけ動いてれば無理もねぇよなァ?」
「くそっ!うるさい!」
俺はムキになって八剱のがら空きになっている鳩尾にボディーブローを入れる。が。
ボスッ
…力がうまく入らない。乱れる呼吸と足の痛みが俺のパンチの勢いを殺していた。
「なんだよ?そんなのがボクサーのパンチか?ボディーってのは…こうブン殴るもんだろッ!」
そういうと、八剱は鋭い拳で俺の鳩尾にボディーブローを放った!
ドゴォッ!
「ぐあっ…!」
その衝撃に俺はうめき声をあげる。が。
「ほらほらッ!テメーはただのサンドバックか!?さっきみてーに動き回ってみろよッ!」
ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!
八剱はさらにと俺にボディーブローの連打を打ち続ける。俺は必死に腹筋を固め、それを堪えた…が。
「動けねぇんなら、これで楽にしてやるよ…ッ!」
八剱は少しだけ険しい顔をしたかと思うと今まで以上に大きく体を動かし、鋭いボディーブローを放った!
(…!)
俺はとっさに体を動かし、避けようとする。が。
「…ぐっ」
太ももにピリッと、痛みが走る。そして、その一瞬動きが止まった俺の腹に八剱の鋭い拳が俺の腹筋を貫いた!
ドゴオオオッ!
「ぐあ…がはっ…」
腹筋に衝撃が走ると同時に目が霞む。俺は、全身の力が抜けるのを感じると、そのまま前へと倒れ込む。
ドタッ
「オラッ!テメーらッ!!水瀬をブッ潰してやったぞッ!!」
八剱は大きく両腕を上げ、勝利をアピールする。レフェリーのカウントが響き始め、同時に観客もワッと湧き上がる。
「…待て」
俺は、全身に力をグッと込め、ゆっくりと立ち上がろうとする。
(こんな…見せかけだけのやつに…!負けるか…負けたくない…!)
俺はまるでレフェリーのカウントを制止するかのように立ち上がると、まだ戦う意思があることをファイティングポーズで示した。
「…やっぱ、そうこなくっちゃなァ?」
八剱はそんな俺を見ると楽しそうにそう呟く。だが。
(……息が苦しい。腹も…痛い…)
全身のありとあらゆる部位が、既に悲鳴を上げているのだった…。
バシィッ!
「うぐあっ…」
八剱の左フックが俺の頬を叩く。
ドスッ!
「があっ…」
それとほぼ同時に、ミドルキックが脇腹を叩く。
「オラ、来いよ水瀬!それとも、このままサンドバッグで終わるかあ!?」
重い一撃一撃を浴びる度に、俺は苦悶の声を上げる。立ち上がってから1分、無理やり立ち上がったは良いものの、俺は八剱のサンドバッグ状態だった。鼻や口、左の額からは血が流れ、右目を腫れ、体中は赤く腫れあがっているのがわかる。だが、当然のごとく八剱は攻撃の手を休めない。
「オラオラァッ!」
ドゴッ!ガスッ!
「ぐあっ!がはっ!」
八剱の拳と脚が俺の体にめり込む度に、俺は短く悲鳴を上げた。
(…このまま、負ける…のか…?)
八釼のパンチは今までに受けたどんなパンチよりも重く。キックは味わったことのないほどの痛みを俺の体に刻み込んでくる。何度も嬲られるように殴られた俺は、もはや、俺は打たれても痛みも感じず。…ただただ、八釼の猛攻に体が震えるのがわかった。
(…仕方ない…よな……八剱、強いし…な…俺なんかじゃ……)
金色のグローブが顔を叩き、腹を突き上げ。その脚が俺の体をえぐるように叩きつけられる度に。…少しずつ、心が折れていくのがわかる。それほどまでに、八釼の猛攻は苛烈で。俺は実力の差を思い知らされる度に闘志の火が小さくなっていた。
(もう、無理だよ…俺なんかじゃ…)
そして、俺が八釼の拳と脚についに屈し、ゆっくりと、その意識を手放そうとしたその時だった。
「慧さんッ!負けんなーッ!!」
(…えっ?)
どこかからか。俺を応援する声が聞こえた。そして、その瞬間だった。
「これで…ブッ潰れろッ!」
八剱が俺に向かってハイキックを放つ。ヒュオッ!と空気を切る音共に、鋭い蹴りが俺の頭にめがけて飛んでくる!仕留めた、と思ったのだろう。八剱がにぃっと口角を上げたのが見えたその瞬間だった。
ガシィッ!
俺はガードをしっかりと上げると、八剱のハイキックを寸でのところでガードした。
「なっ…」
八剱が初めて狼狽した声を上げる。
(…そうだ、よな。まだ、俺は立っている!…コイツの、ふざけた態度にだけでも、一矢報いてやる…!)
動揺して体勢を崩している八剱に、俺は一気に距離を詰め、右フックを放った!
バシイィッ!
派手な音と共に、八剱の頬に俺の青いグローブがめり込む。八剱が初めて俺のパンチでふらついた瞬間だった。だが。
「テメー…舐めてんじゃねぇぞッ!」
怒りをあらわにした八剱は、体を戻す反動を活かしたまま俺の鳩尾にボディーブローを叩き込んだ!
ドゴォッ!
「ぐ…あ…!」
腹筋が悲鳴を上げる。俺は反射的に八剱にクリンチを仕掛け、抱き着いた。だが。
「…キックボクサー相手にクリンチなんざ、気でも狂ったかァ!?」
八剱は激昂すると、俺の首に手を回し、首相撲の姿勢を取った!
(しまっ…!)
俺が声を出すよりも早く!
ドボォッ!
八剱の膝蹴りが俺の鳩尾にめり込む!
「あ…が…っ」
拳のボディーブローを遥かに上回る膝蹴りの衝撃だった。なんとか今までの猛攻を耐え続けきた俺の腹筋はついに壊され、俺は全身から力が抜けていくのを感じた。しかし、俺は床に倒れることもできなかった。
「…俺の顔ブン殴っといて、もう寝っ転がれるなんて思ってんじゃねえぞ…!」
ドゴォッ!ドゴォッ!ドゴォッ!
八剱は俺を掴んで離さず、そのまま俺の腹に膝蹴りを入れ続けた!
「うぐっ!あっ!があっ!」
俺は腹を突き上げられる度に、ただ短く悲鳴を上げ続ける。そして。
「これでッ!死んどけッ!!」
ドゴオオオオオッ!
フィニッシュとばかりに、力の入った膝蹴りが俺の鳩尾に叩き込まれた。
「があああああっ!」
俺はマウスピースを吐き出し、そのまま前へと倒れ込む。俺は、もう立ち上がるどころか、身動き一つも取ることが出来なかった。
…八剱は、そんな俺を蹴り飛ばし、仰向けにさせる。そして、金色のグローブで俺の顎をクイッと持ち上げる。
「…いい様だなァ?」
「…ぅ……ぁ……」
「あの時言ったとおり、今から俺のチンポでたっぷりと調教してやるよ。客の目の前で。二度とリングに立てなくなるくらい、惨めになァ…!」
そう言って笑うその顔は、どこか狂気に染まった表情をしていた。
…八剱は俺の腹を思い切り踏みつけると、両腕を上げ、勝利のアピールをする。
…観客たちが騒ぎ立つ。顔も腹も、全身をボコボコにされた俺は八剱に踏みつけられたまま、ゆっくりと目を閉じる。その閉じ行く視界の先には、俺の吐き出したマウスピースが映っていた…
「おら、起きろ」
「ぐっ…」
意識がまどろんでいく中、俺は髪の毛をぐっと引っ張られ体を起こされーーー体のあちこちが悲鳴を上げた。
「ざまねーなァ?あんだけイキっておいて?新人にここまでボコにされてよォ?それとも、てめえの『ここ』は処刑されてぇってかァ?」
八剱は愉悦の笑みを浮かべながら、俺の股間を足先で弄ぶ。…俺は痛みで顔をしかめながらも。
「……やれよ」
目線を外し、ぶっきらぼうに一言つぶやく。…これから俺がどういう目に合うのか、それくらいはわかっていた。だから、やるならさっさとしろ。…俺は負けたんだ。俺はそう、犯される覚悟を決めた…のだが。
バキィッ!
「ガァッ!」
八剱はそんな俺の頬を殴りとばした。
「…テメー、まーだわかってねえのか?そんな態度で俺や観客が満足すると思ってんのか?」
「………っ…」
俺は再度目線を外すと、そのままうつむいて黙り込む。…八剱はそんな俺を一瞥すると、再び腕を上げ、観客に対して大きくアピールをする。観客たちは大きな声でそれを盛り上げると、八剱は俺の顎をくいっと持ち上げた。そして、観客達の声援に応えるかのように、にいっとした笑みを俺に向けるとーーー
チュウッ…!
「…んっ!」
八剱はリングの上で、俺の唇を奪い。…八釼の処刑が始まった。
クチュ…チュパッ…
卑猥な音が響かせながら、八剱は俺の口の中をザラザラとした舌で荒らす。
「んっ…くっ…」
普段からこうして男も女も食い漁ってるのだろうか。八剱は舌を伸ばし、俺の唇、口の中を犯したと思うと、息もできなくなるほどに俺の口に吸いつき。
(…ぁっ…や…ばい……気持ちいい…)
とても激しく、それでいて繊細なキスに俺は体を震わせ、声が漏れ出そうになるのを必死に抑えていた。だが。
くちゅっ…レロレロ…チュウッ…ちゅぱっ…!
「んっ…!あ、ふっ…あはっ!?」
そのキスの快感に耐えることができず。…数分後には、全身を骨抜きにされた俺が出来上がっていた。
「…ぷはっ…」
「…んだよ、キスごときでその情けねえツラは?」
「……う……あ……」
「…1人だけよがってんじゃねーよ」
そういうと、八剱は俺の頬をバシッと軽くはたき、自分のトランクスを降ろす。
「あ……」
…そこには、俺のものなど比べ物にならないほどの、規格外のデカさのチンポが屹立していた。
「オラ。どうすればいいか、場数が多さがご自慢のテメーならわかってんだろ?」
ふざけるな。
誰が。
…普段ならそう言って反逆をするのだが。
「…ぁぅ…」
八釼の拳と、キスにすっかりと気概を抜かれた俺は、おずおずと口を開くと、その大きなチンポをゆっくりと、自ら口の中へといれ。
チュプ…クチュ…
俺は何も言わずに、ひたすら八剱にご奉仕をした。その様子を見て、八剱はにっと顔に笑みを浮かべると、俺の股間を踏みつけた。
「んぐっ…!」
「オラ、休むんじゃねーよ」
八剱は俺の勃起したペニスを、足でぐりぐりと刺激を与える。
「うあっ…!あっ…!」
八剱の器用な足使いに、俺はたまらず声を漏らし始める。股間をぐりぐりと踏まれ、ペニスで喉奥を突かれるごとに、全身に痛みが走る。だが、その痛みさえ快楽となって全身を走り抜け、八剱はそんな俺を見ながらさらに荒々しく俺の股間と喉を犯したおす。…俺はその刺激に耐えることはできなかった。
「あ、あっ…!くそっ…い、く…うあ…あ、あぁぁっ!」
ドピュッ!ビュクッ!
俺は全身を震わせると、自分のトランクスとリングを真っ白い液体で汚した。
「ふんっ…!」
八剱は、俺の口から自分のチンポを引き抜くと、リングにまき散らした俺のザーメンを指に取り、俺の口へと突っ込んだ。
「んぐっ…!」
「テメーが大好きな神聖なリングなんだろ?汚えザーメンで穢してんじゃねえよ」
「う…あ……!」
トランクスやリングを、ボクシングを汚した背徳感と射精の快感。そして、八剱の指についた自分のザーメンを突っ込まれる、という屈辱。…俺はいたたまれなくなり、ボロボロと涙を流す。
…八剱はそんな俺を見て、笑っていた。
その後。八剱はお構いなしと俺を突き倒すと、先ほどまで口に突っ込んでいたペニスを俺のケツに押し当てる。
そして。
「うああああっ!」
慣らすこともせずに、そのまま正常位の体勢で俺を貫いた。
「あっ!うあっ!あぁっ!」
パンッ!パンッ!
肉と肉が激しくぶつかり合う音と共に、俺は中をかき回される。
八剱は何も言わず、俺を突く感覚を、俺を犯す感覚を楽しんでいるようだった。
パンッ!パンッ!グチュッ!チュブッ!
…八剱のペニスが俺の奥を突くたびに俺は声が漏れる。そして、突かれたところからあふれ出る快感に身を包まれる。
一方的にボコボコにされ、ボクシングを汚されて。イかされて。
悔しい。
悔しいはずなのに。
俺は自分の股間が再び勃起していた。
「オラ、もっと締めろよッ!」
八剱はそんな俺の気持ちを知ってか、煽りながら俺のペニスをパチンとはたく。
「うああっ!?」
突然の刺激に俺は体中をびくっと震わせる。それを気に入ったのか、八剱は俺を犯しながら俺のペニスをいたぶり続ける。
「ち……くしょ……」
俺は目から流れる涙を止めることができなかった。
(悔しいはずなのに…こんなことされて…嫌なのに……体が……チンコが…気持ちいい…)
…八剱は、そんな俺にキスをする。
チュッ…クチュッ…
「ん!…あ…ん……」
突然のキスに一瞬だけ驚くも、それ以上に突かれている快感と口の中を犯されている快感がすぐに俺の頭を埋め尽くす。
(……気持ちいい……気持ち……い……い……)
もう頭は回らない。
パンッ!パンッ!クチュッ…チュパッ…!
卑猥な音と全身痺れるような刺激に目が虚ろになっていくのがわかる。…今や俺は、八剱のセックスに完全に堕ちていた。
その瞬間だった。
八剱が、急に俺を突くのをやめた。
「…う……?」
「んだよ、水瀬。もっとオレのが欲しいのかよ?」
「……!」
俺は体をびくっと震わせる。…ここでYESと答えること。それが八剱に完全に負けたことを宣言することと同義であることだからだ。
「…答えろって。もうやめちまっても良いのかァ?」
「……う……あ………!」
俺は何も言えず、もどかしさに体をよじる。
「…チッ…はっきり言えよ。こいつが…欲しくねえのかよッ!!」
八剱はそういうと、まるで一閃を突くかのように腰をピストンした!
ズドッ!
「ああああああああぁぁぁっ!」
あまりに急な衝撃に、俺は大きく喘ぎ声を上げる。八剱はそのまま、俺を連続でピストンした!
パンッ!パンッ!パンッ!
「うああっ!ああっ!あああああっ!?」
連続で突かれる衝撃に、俺は一気に理性が吹っ飛ぶ。
「あ、ああああ、ああああっ!イ、イ……くっ…!!イくっ………!あああっ!」
ドピュッ!ビュルルルっ!
俺は派手にザーメンをぶっ放した。…それがとどめだった。
「オラ、答えろよ水瀬。俺のチンポが欲しくねえのか?」
「……ほ…し……い…」
「あぁ?聞こえねぇよ」
「欲し……い…欲しい…」
「へぇ!聞いたかテメーらッ!!水瀬慧はテメーのことをボコボコにしたヤツのチンポが欲しくてたまんねぇんだとよッ!!そんならどうお願いすれば良いか、教えてやるよ」
八剱はニヤリ、と笑い、俺の顎をくいっと掴んで顔を目の前に近づける。
「水瀬慧は八剱さんにボクシングにもチンポにも、完全に負けました。…言ってみろ」
「……俺は……八剱さんに…ボクシング…にも…チン…コにも…完全に…負け…ました…!」
「もっと俺のことを、八剱さんのチンポで犯してください」
「……もっ……と……俺の…ことを…八剱さんの…チ…チン…ポで…犯して……犯してください…!」
その言葉に、観客たちは最高潮に盛り上がり、八剱は狂気に満ちたあの笑みを浮かべた。それは、相手を完全に服従させたという「勝利の笑み」だった。
「あっはっは!いい様だなぁ、水瀬!お前、最っ高だぜ!…もっともっと従順にさせてやるからな!」
八剱はそういうと、再び俺にピストンを始める。
「オラ!てめえの欲しがってたチンポだ!どうだ!」
「あっ…!あっ…!んああああっ!」
俺は、八剱になすがままに犯されながら、ひたすら喘ぎ声を上げるだけだった…
その後。どれだけの時間がたっただろうか。
俺は、はあはあと艶っぽい息をする。…じんじんと体に残る感覚が、傷跡のように体を熱くしていた。
八剱はそんな俺から、未だガチガチに勃起しているペニスを引き抜くと俺の前に差し出す。俺の中を散々に突き、かき回し、ザーメンまみれにさせたペニスだ。
「オラ」
八剱の言葉は一言だけだった。…俺は、何も言わずにそれを咥え、丁寧に舐め上げる。その度に八釼のチンポはビクビクと震え、大きくなり。…それと同時に、俺もまた、自分のチンポを大きくさせていた。
八剱はそんな俺の姿をにぃっと笑うと、観客たちに誰が勝者か見せつけるように両手を上げる。それは、拳と脚のぶつかり合いでも、その後のセックスとしても。完全に俺を叩きのめし、屈服させたことのアピールだった。
…やがて、俺のフェラチオにも満足しきったのか、八剱は乱暴に俺を蹴り倒した。俺はもう悲鳴も上げられずにマットに叩きつけられる。
「もしテメーとまたゲームすることになったら、今日みてえに俺のサンドバッグとオナホに使ってやるよ。ま、テメーがまたリングに上がってこれれば、の話だがなァ」
八剱そう言うと声高々に笑い、リングを、そして会場を後にする。観客たちは盛大な声援と拍手でそれを見送った。
リングに残されたのは、全身を互いのザーメンまみれで汚しながら、なおも自分のペニスを勃起させ続け、艶やかな吐息を漏らす俺だけだった…
『完』
jin
2022-10-22 09:23:15 +0000 UTC