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【SS+挿絵6枚】Face out Facing out. 3 part3


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【Part3】

彗翔「いくぜ慎哉ッ!」

刃連「…ッ!」


 ブゥンッ!

 彗翔の拳が刃連の目の前を通り過ぎた音だ。


 スパーリング再開と同時に大きく踏み込み、顔面に向けて右フックを放った彗翔。刃連は上半身を後ろに逸らすことでなんとか回避したのであった。


彗翔「次ッ!」


 彗翔は腕を止めずジャブを連発し、刃連はそれをバックステップや上半身の逸らしでかわしていく。


刃連(…パンチが重いし速い…!予備動作が大きくて動きも直線的だから避けれるけど…普段の練習じゃこんなに速くなかったぞ…!反撃を入れる隙が無い…!)



蒼惟「あーあ。彗翔のヤツ、完全にガチになってんじゃないすか。あんなパンチまともに当たったら一発KOすよ?」

日向「ったくあいつは…後で説教してやる…」


 蒼惟はたまらず「いや、彗翔が手加減できないの日向先輩もわかってたでしょ」と言いかける。が、鉄拳制裁が目に見えているので別の話題に変えておく。


蒼惟「でも、刃連はホントに未経験なんすか?あの彗翔のパンチ相手にバックステップとスウェー完璧にできてますよ…?」

日向「目の良さと反射神経が尋常じゃないな。そしてそれに対応できる体幹が既に出来上がっている」

蒼惟「それって天才ってヤツじゃないすか…」

日向「だがいつまでも後ろに下がれる程リングは広くない…刃連!後ろはダメだ!横に動け!」

刃連「!」


 ピトッ

 後ろに下がり続けた刃連の背中についにロープが触れる。


刃連(やっぱりここでロープに当たるか…!これ以上はバックステップと逸らしは使えない…!)

彗翔「追い詰めたぜ!これでキメてやんよッ!」


 再び刃連の顔面に右フックが近づく…!


刃連(後ろにはもう下がれない…今から横に逃げても横方向のフックはかわせない…なら…!)


 ブゥンッッ!!

 再び彗翔の拳が空を切る。


彗翔「なっ…!?」


 刃連は膝を曲げ、大きく上体を前に屈めることで彗翔の右フックを下方向に避けたのだ。


刃連(後ろに下がっていれば逃げ場も無くなるし、反撃も届かなくなる…なら、サイドに回りながら、着実に反撃を入れていく…!)


 刃連は曲げた膝をバネのように利用し、回り込むようにリング中央へと移動する。


蒼惟「!今のダッキングッ!?」

日向「ああ…。それも最短ルートでリング中央に戻るために、パンチが来る方に向かって体倒した。並の認識力と判断力でできることじゃない」

蒼惟「もう目が良いとかって次元超えてんじゃないすか…!?」


彗翔「よく避けたな!すげーよ慎哉ッ!」

刃連「…どうも」

彗翔「でも反撃しなきゃ、オレは止められない、ぜッ!」


 再び彗翔のパンチのラッシュが始まる。


刃連「そんなことぐらい、わかってますよ…ッ!」


 左右にステップを踏んでパンチを避けながら、カウンターのローキックを彗翔の前足に入れていく。


 バァンッ!


彗翔「ッ!!」


 元サッカー部のエースが放つローキックは猛烈な威力だった。だが、彗翔は動じず、ワンツーのラッシュを放ち続けていく。


彗翔「んな蹴りでオレが止まるかよッ!」

刃連「あーはいそうですか…!」


 刃連は同じようにパンチをかわし、流れるように反撃の蹴りを彗翔の足に入れていくが、彗翔の猛攻は止まらない。


刃連(攻撃はワンパターン…全部避けれるし、カウンターも入れられる…でも、どんどんペースが早くなってきてる…!ったく!この人、体力どうなってんだよ…!)


彗翔「どうしたよ慎哉!?もうキツくなってきたか!?」

刃連「うっさいな…動きもでかけりゃ声もでかいんですよ…ッ!」

彗翔「あぁッ!?」

刃連(ただのローキックじゃ通用しない…こうなったらもう1回…ッ!)


 決意した刃連はあえて前に踏み込み、彗翔と目線を合わせ口を開く。


刃連「むしろヤバいの天ヶ瀬先輩じゃないですか?まだ俺一発も当てられてないですよ…!」

彗翔「んだとォ…ッ!?」


 煽られた彗翔は隙の大きいフックを繰り出す。


刃連(ちょろい…今ッ!)


 それを斜め後ろにスウェーしてかわした刃連は、その勢いを利用し体を1回転させーー


刃連「…これでッ!」


 ベシィィィッ!!! 

 ーー刃連の後ろ回し蹴りが再び彗翔の頭部に直撃した!だが。


 ガシィッ!


刃連「な…ッ!?」

彗翔「…やっと捕まえたぜ、慎哉…ッ!」



 刃連の足は彗翔に掴まれて止められたのだ。そして彗翔は刃連の足を掴んだまま引き寄せ、刃連のボディを露わにする…!


刃連「しまっ…ッ!!」

彗翔「これで、終わりだァッ!!!」

ドゴォッッッ!!!


刃連「…が……は…ッ!」



 彗翔の渾身の右ストレートが刃連の腹に突き刺さった!刃連はそのまま崩れるように倒れ込んだ。


彗翔「…あ…やっべ…やりすぎた…」

日向「刃連ッ!」


 ビーーッ!!!


 蒼惟がブザーを鳴らすより早く日向は刃連の元に駆けつける。


刃連「はぁ…はぁ…日向…先…ぱ…ぅっ…!」

日向「喋らなくていい。ほら、バケツだ」

刃連「ぅ…おぇぇ…ッ!」

日向「吐ききったらこれで口すすげ。その後は上体上げて深呼吸だ」


 日向は刃連の手元にペットボトルの水を置き、背中をさすりながら体の汗をタオルでテキパキと拭いていく。


彗翔「あの…慎哉…マジ悪りぃ…やり過ぎた…」

日向「だから『くれぐれも程々にしろ』って言っただろ!」


 ゴンッ、と日向に頭を叩かれる彗翔。


彗翔「つ~ッ!すんまッせん!!」

日向「今日はもう終わりだ!さっさと傷の手当してそのまま掃除しろ!」

彗翔「う、うすッ!」


 日向の一喝でリングを降りる彗翔。

 蒼惟と「怒られてやんの」「うっせぇ!」と言い合いながら後片付けを始める。


刃連「…日向先輩、俺も…」

日向「いや、刃連はしばらくそのまま休んでろ」

刃連「…すみません」

日向「いやこっちこそ悪かった。痛い思いさせちまったな」


 再び日向はしゃがんで刃連と向かい合う。


刃連「いえ、それは別に。格闘技やるならこれぐらいは覚悟してましたから」

日向「…そうか。…刃連、お前すごかったぞ。あの蹴りもディフェンスも。経験者だってなかなかできるもんじゃない完成度だった」

刃連「…あれぐらい普通だと思いますけど…」

日向「でも今のスパーリングはお前の言う普通じゃ、なかっただろ?」

刃連「…えっ?」


 刃連はその言葉に驚いて顔を上げる。


日向「『こんなもんか』って予想を超える経験、久しぶりだったんじゃないか?」

刃連(この人…なんで知って…!?)

日向「MMAは今日の打撃だけじゃなく投げ技も極め技もある。状況によって戦い方が無限にある。そこに天ヶ瀬みたいな常識の通じないような奴らが出てくるんだ。MMAなら刃連の予想を超えられる」

刃連「予想を…超える…」

日向「あぁ。予想を超えたことが起きるからこそ、MMAは面白いんだよ」

刃連「…はぁ…?」



刃連(予想を超えたことが起きるから…面白い…?)


 部活を終えた帰り道で、刃連は日向の言葉を思い返していた。


刃連(確かに今日のスパーは予想外のことだらけだった。それに対して感情の高揚があったのは事実だ。でもそんなのはアドレナリンが引き起こした化学反応だ。一時の感情なんて曖昧なもののために、予想外なんてリスクを負うのは割に合わなすぎる)


 刃連の脳裏に中学の思い出したくもない記憶が蘇ってくる。


刃連(…あの時だってそうだ。あの中学の試合、あのシュートの瞬間、あの人の動きが予想できていればあんな事故は……)

彗翔「…なぁ慎哉…なぁってば…」

刃連「…!」


 彗翔の気まずそうな声に刃連は現実に引き戻された。

 普段は刃連1人の帰り道。だが、彗翔のバイトがある日は2人になるのだ。


刃連「…なんですか?」

彗翔「顔色悪いけど…平気か?やっぱ怒ってる…?」

刃連「…別に怒ってないです」

彗翔「それ怒ってる人のセリフじゃん!?」

刃連「だから怒ってないって言ってるじゃないですか!」


 しつこい彗翔にイラつく刃連はつい声を張り上げる。


彗翔「じゃ、じゃあさ!MMA嫌いになってない!?部活やめない!?」

刃連「は?別にMMAは好きでも嫌いでも無いですよ。部活だってこれぐらいで辞めませんよ」

彗翔「それマジッ!?はぁ~良かった~!蒼惟のヤツが『これで刃連が辞めたらお前のせいだな』とかゲヘゲヘ笑いながら言いやがるからさ~…」


 安心しきった彗翔はふぅ~と息を吐き、再び刃連に視線を向ける。


彗翔「…じゃあさ、なんで慎哉はそんなに他人と関わんの嫌なの?」

刃連「…は?…なんなんですか突然」

彗翔「だってずっと気になってたし。それでMMA部入ったんだろ?昔何かあったとか?」

刃連「…別に。他人と関わったって足引っ張られるだけだから、ですよ」

彗翔「ふーん…?」


 彗翔はいまいちピンときていない様子だった。


刃連「だから先輩も俺とは必要以上に関わらないで下さい。先輩だってその方が良いでしょ」

彗翔「へ?なんで?」

刃連「だって今日のスパー、技術的には先輩より俺の方が上だったじゃないですか。自分よりうまい後輩なんて、関わってたら鬱陶しいですよね?それも格闘技未経験の新人なんだから…」

彗翔「んなわけねーだろ」

刃連「…え…?」


 彗翔の表情は、刃連が初めて見る真剣なものだった。


彗翔「そりゃーめっちゃ悔しかったぜ?慎哉の言う通り、蹴りもディフェンスもオレより断然うまかった。

 でもさ、それでオレが慎哉をウザがったら、それってもうオレが負けたって認めるってことじゃんか」

刃連「…負けを…認める…」

彗翔「オレ、MMA始めて負けたくねぇ奴らがたくさんできたんだ。たとえ一つ一つの技術で勝てなくても試合で負けたくねぇ。たとえ試合で勝てなくても心までは負けたくねぇ。

  そういう負けたくねぇ奴らがいるから、オレは強くなりてぇって思うし、ならなきゃダセェって思うんだよ!それにな…」


 そして、彗翔はくしゃっと笑いながら言った。


彗翔「その負けたくねぇ奴らの中にはな、もうお前も入ってんだよ」


 その時、刃連の中でほんの一瞬、彗翔と別の男の姿ーー刃連のサッカー部時代の先輩の姿が重なって見えた。


刃連「…廻栖野(めぐすの)…さん…?」


彗翔「…へ?めぐ…誰?」

刃連「…あっ、いや何でもないです。忘れてください」


 一瞬の錯覚にハァーっと大きくため息をつく刃連。


刃連(あ〜最悪…。やっぱ疲れてるのか俺…?廻栖野さんとこんなアホな先輩がダブって見えるなんて…)


 そうしているうちに2人は十字路にたどり着いた。ここで刃連と彗翔の進行方向が変わるのだ。


彗翔「それじゃあな刃連!今日はキツいの入れちまってホント悪かった!ごめん!」

刃連「いえ、気にしないでください。先輩が新人相手に加減もできないアホだなんて最初っからわかってましたから」

彗翔「…えっ…?今サラッとめっちゃ酷いこと言われた気がするんだけど…」

刃連「あ、それぐらいは気づけるんですね」


 刃連は彗翔に背を向けててくてくと歩き出す。


彗翔「はぁ!?お前次スパーやる時は覚えとけよッ!今日よりキツいパンチ入れてやっからなッ!」


 その言葉に刃連は足を止め振り返って言う。


刃連「まともにパンチ入れられたの1回だけのクセに何言ってんですか?次のスパーは一発ももらわずに俺が勝ちますよ、アホヶ瀬先輩」


【終わり】




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Comments

ありがとうございます!格闘技!やりましょう!!

うらき

楽しんでもらえてよかったです!次回は色々ぶちまける予定ですのでお楽しみにです!

うらき

こちらこそありがとうございます!楽しんでいただけてよかったです! 次の連載も準備中です! 刃連と廻栖野の関係もいつか深掘りできればなぁ考えています!

うらき

よかった!格闘技やりたい!

タカ

この3週間毎週とても楽しみにしてました! 読んでいてゾクゾクしましたしとても楽しかったです!次作はハードな展開との事ですが楽しみにしています!

やぬす

三週間お疲れ様です! そしてありがとうございます!めっちゃおもしろい❤️ 次の漫画楽しみです!刃連ちゃんと廻栖野さんの関係も気になる🥺

三弦


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