【Part1】
キーンコーンカーンコーンーー
「あー!やっと終わったー!」
「ねぇ、この後体験入部どうする?」
「バスケ部見学行かない?」
「次の土曜クラス全員で親睦カラオケやろーぜ!」
入学式が終わり、高校生活で初めての放課後が始まる。教室の誰もが新しい環境に浮き足立っていた。
だがそんな中、早々に帰り支度を始める男子生徒がいた。黒の短髪、そして前髪にオレンジ色のメッシュを入れた少年、刃連 慎哉(ゆきい しんや)だ。
刃連(…どいつもこいつもガキばっか。他人と一緒じゃないと何もできないのか?)
手早く荷物をまとめる刃連に1人の男子生徒が近づく。
生徒「なあなあ!お前あの刃連だよな!?北中サッカー部エースの刃連慎哉!」
刃連「…何か用?」
生徒「オレのこと覚えてる?何回か練習試合で当たったことあっただろ?」
刃連「いや、全然」
生徒「えーマジかよー!?」
嘘だ。類稀なる観察眼と記憶力を持つ刃連はこの男子生徒の名前を当然覚えている。それどころか出身中学も、3回あった練習試合それぞれでのポジションや動き、言動、クセまで、あらゆることを思い返せる。
だが早々に話を切り上げたい刃連はそれを口にも態度にも一切表さない。
生徒「…なぁ、刃連ももちろん高校もサッカーやるんだろ?今から一緒に入部届け出しに…」
刃連「興味ないよ、他人に足を引っ張られる競技なんて。それに、入る部活はもう決めてるから」
唖然とする男子生徒を残して、刃連は教室を後にするのであったーー
ーー部室棟の一番端、総合格闘技部、通称MMA部。その部室で机でうな垂れる部員の天ヶ瀬 彗翔(あまがせ けいと)と、向かいでスマホをいじる副部長の藤代 蒼惟(ふじしろ あおい)がいた。
彗翔「あ〜…マネージャー希望のかわいい女子来ねぇかな〜…」
蒼惟「無理だろ。そもそも新入生が1人も来ねーんだぞ」
入学式の放課後。どの部活も説明会や体験入部が開かれ賑わっていた。だが、MMA部はそんなムードもどこ吹く風。「MMA部は学校一の不良、樹神(こだま)がいる部活。MMA部と関わったら高校生活即終了」という噂が新入生全員に広まりきっているのだ。
蒼惟「ま、そろそろ基礎練始めようぜ。日向先輩もぼちぼち戻ってくるし」
彗翔「無理~。マネージャー女子来るまで一生動かね~」
蒼惟「じゃあお前そのまま餓死だな」
その時、コンコンッ、とノックの音が部屋に響いた。
蒼惟「ん?」
彗翔「マネージャー女子キタッ!?」
彗翔の期待もむなしく、ドアを開き入ってきたのは刃連だった。
刃連「ここ、MMA部の部室であってます?」
蒼惟「あぁ、そうだけど…もしかして新入生!?」
彗翔「んだよ男じゃん…」
蒼惟「黙れバカ」
彗翔「痛ッ!」
蒼惟は再び机にうな垂れた彗翔をはたく。そんな様子を気にもせず刃連は口を開く。
刃連「…質問いいですか?」
蒼惟「もちろん!部活のことでも学校のことでも何でも聞いてよ!」
刃連「MMA部に在籍していると学校中の生徒から無視されるようになるって本当ですか?」
いきなりの重い質問に、数秒間場が凍りつく。
彗翔「…その噂もう新入生に広まってんの…?今日が入学式だよな…?」
蒼惟「まあ…学校一悪名高いもんなウチの部…」
刃連「で、どうなんですか?」
狼狽える2人に容赦のない追及が入る。
蒼惟「いや~誤解なんだよなぁ…確かに樹神はヤバいけど幽霊部員だし…」
彗翔「大丈夫ダゼ!おれ、くらすニトモダチ、タクサン!」
蒼惟「…まともに嘘つけねぇなら黙っててくんね…?」
彗翔のフォローの下手さに蒼惟は小さくため息をつくと、苦笑いしながら言う。
蒼惟「確かに学校中の奴らが俺たちMMA部と関わらないようにしてるのは事実だよ。でもそんな悪い部活じゃないぜ?部員同士仲も良いし!今だって悪い噂を払拭できるように部長の日向先輩が…」
刃連「いえ、その噂払拭させなくて良いです。むしろ、払拭させないでください」
「「…へ?」」
蒼惟の言葉が突然遮ぎられたこと、そしてその内容に、2人は目を丸くして固まる。
刃連「1年の刃連 慎哉です。MMA部、入部します。他人に足引っ張られるの鬱陶しいので」
【つづく】
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