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おれのことが大好きなジト目ケツデカ辛辣虎後輩と一緒に大雪で会社に閉じ込められてしまった件について(全体公開版)


 おれの人生の中で、きっと最悪のクリスマスだろう。


「雪だなぁ」

「呑気に言ってる場合じゃないんすけど、分かってます?先輩」


 後輩のツンケンした声を聞きながら、玄関に積もった大雪を見上げた。

 100年に一度の大雪。それが会社にいる時に。それもクリスマスの日に到来するなんて最悪という他なかった。

 他の社員たちは昼の内にさっさと帰ったのだけど、おれはどうしても仕上げなければいけない仕事があったし、可愛い後輩もおれに付き合ってくれたので二人して会社に取り残されてしまったのである。

 

「これは帰れませんね。ミニミニサイズの先輩が外に出たら埋もれて死にます」

「いや小さくないから。お前がでかいの」


 おれを見下ろす虎の名は虎落笛 凍(もがりぶえ こごえ)

 可愛い後輩は2mを超える高身長。しかもやたらと鍛えているせいでどこもかしこも太くって、ガッチリしててスポーツジムのCMとかに出るのが実に似合う体型をしている。そんなプロアスリートにも見劣りしない立派な身体に加えて、太い首の上には精悍な虎の顔が乗っかっている。赤茶の毛皮と黒い縞のこいつは実に良くもてる。おれの傍にいる時だけでもしょっちゅう声をかけられている。

 

 ちなみにおれも虎落笛をよろしくない目で見ている。だってケツがいつもぶりんぶりんしてるし、脚もおれの胴体より太いし。良くない目で見るなというのが無理だ。決して表には出さないけど。セクハラになるし。

 

「実に遺憾ですが、先輩と二人で閉じ込められてしまったみたいっすね。実に遺憾っすけど」

「イカンイカンうるさいよ!おれだってクリスマスに会社に閉じ込められて最悪な気分なの!」


 そんな虎落笛はおれに対して実に口と態度が悪い!

 おれ以外にはいつも愛想よくスマイルするくせにチクチクする言葉を吐くし、四六時中おれを冷めたジト目で見つめてくる。

 なんというか、真冬の大通りで裸踊りをしているバカを見つめるような軽蔑がこもった視線なのだ。

 

「先輩は別にいいでしょ。クリスマスだろうと家でコンビニ飯を食べるだけなんすから。おれは先輩と違って大事なパーティがあったんすよ」

「あ~お前モテるもんね。悪いな、おれに付き合ったせいでこんなことになって」

「別に。先輩に一人で仕事させたくないからおれが勝手にやったことっす。先輩が責任感じなくていいっすよ」


 だが、実に可愛いところもある。おれの仕事をいつも手伝ってくれるし、何かにつけて一緒にいようとするし。面倒見が良いやつだ。先輩なのはおれの方なんだけど。

 だから、閉じ込められてもそこまで最悪な気分ではない。虎落笛と一緒ならなんとかなるだろうし、一晩中一緒にいても気疲れすることもない。

 

「ま、虎落笛が一緒で本当良かった。お前がいてくれるなら安心だし、一晩中一緒にいても全然楽しそうだし」

「は~~~~~~……キモいこと言うのやめてくださいね」


 おれが素直に感謝を伝えると、虎落笛は顔を抑えて長い長いため息を吐いてしまった。こいつはおれが感謝や好意を伝えると毎回同じ反応を返す。可愛いやつなのだがこういう反応は可愛くない。

 まあ、これも甘え方の一つなのだろう。おれならツンケンしても許して貰えるのでこうした態度を取っているのだ。やはり可愛い。

 

「とりま上に戻ろうか。ここいても寒いし。大人しく仕事してよう」


 と、上に戻ろうとしたその時だった。蛍光灯がパチパチと瞬いたかと思うと、完全に沈黙する。そして空調もうめき声のような駆動音を鳴らすと完全に沈黙した。

 あれ、これはまずくないか。

 

「もしかして、停電?」

「もしかしなくても停電っすね。これは下手こいたら死にます」

「ややややばいじゃん!虎落笛、あったかくしないと!」

「落ち着いてください。今やばいのは先輩っすよ。おれは毛皮ありますけど、ツルツルで貧弱な先輩は簡単に凍え死ぬっす」


 無表情でおれの死を予想すると、虎落笛は脱いだコートをよこした。おれの着ている温かいだけの芋臭いデザインのものではなくて、洒落たデザインだ。

 着ろ、という意味なのは分かるのだけど後輩に寒い思いをさせてまで温まりたくないぞおれは。

 

「は~~~~~……。そんなんだから先輩はキモくて童貞なんすよ。おれが風邪ひくような貧弱に見えます?ウザいこと言ってないで素直にコート着てください。キモい」

「童貞は関係ないだろ!分かったよ着るよ!ありがとう!」


 後輩からの好意を受け取ってコートを着ると体格差がありすぎるせいでおれの全身がすっぽり包まれてしまう。虎落笛の身体の大きさが実感できてちょっとワクワクするのだけど、こんなこと言ったらまたキモがられてしまうので黙っておこう。

 

「うわ、めっちゃ良い匂いする!」

「は?」


 と思ってたのだけどもっとキモい言葉が飛び出てしまった。いやだって、戯れに臭いを嗅いでみたらめっちゃ良い匂いするんだもん。虎落笛の体臭はしょっちゅう嗅いでるがこんな濃厚なものは初めてだった。こんなん匂いだけで好きになるやつ出るだろ。

 

「キモい、キモい、キモい。キモすぎる……。本当ありえないっす。頭がおかしくなるっす」

「ご、ごめん。ちょっと、香水とかじゃなくて虎落笛の体臭的なのが本当に良い匂いだったんで!じゃなくて、すいません!」

「キッッッモ。これセクハラかつスメハラっすよ。先輩に惚れてる相手以外にしたら社会的に抹殺されるレベルっす」


 虎落笛は本気でキレているのか、両手で顔を抑えて天を仰いでいる。これは社会的に抹殺されても肉体的に抹殺されてもおかしくない。

 でも全面的におれが悪いので大人しく判決を受け入れようとしたのだが、虎落笛はしばらく顔を抑えた後に唐突におれに向き直った。

 

「何ボーッとしてんすか?防災用品やら休める場所やら探しましょう。見つめられてるとキモいんすけど」

「お前情緒不安定じゃない?おれのせいだけどさ」


 ということで上に戻ると幸いにもすぐに備蓄の食料や防災カバンが見つかった。毛布やカイロも入っていたので、とりあえず今晩ぐらいはしのげそうだ。カップ麺にお湯を注ぎながらスマホを見ると、今日はどこも大雪で大変らしい。

 

「せっかくのクリスマスなのになあ。みんな予定が潰れて大変だ」

「おれもパーティの準備があったのに台無しです。先輩はその点、クリスマスは毎年予定が無くて良いですね」

「いやおれも予定ぐらいあるから!てか毎年友達とクリパしてるからねおれ」

「は?」


 何でそこでキレるんだよ。予定が無かったらどうせキモいとか言うくせに。こいつのキレどころはたまに分からない。

 

「先輩は去年、おれとラーメン食べたあとは一人寂しく家で自慰してたのでは?」

「人の過去を勝手に決めるんじゃないよ!大学のころの友達と独身パーティしてたんだよ。ほら」


 証拠に去年撮った写真を見せてやる。スーパーで買ったオードブルとコンビニ飯ばかりだし、冴えない独身男ばっかだったけど楽しくはあった。調子に乗ってサンタのコスプレまでしてしまった。

 

「なんすかこの写真は」

「いやだから去年の」

「何故おれはここにいないんすか?」

「だって友達との」

「何故おれをさしおいて先輩とクリスマスにパーティをしてるんすか?てか、何すかこのサンタのコスプレは。キモいキモいキモすぎる。おれも個人的にキモがりたいので今すぐおれにも送ってくれます?」


 何でキモがられるために写真を渡さなくちゃいけねえんだよ。今日の虎落笛はちょっとおかしい気がする。やはりクリスマスの予定が潰れてショックなのだろうか。

 おれの心配をよそに、虎落笛は食い入るようにおれの写真を凝視している。そんなにキモイかな。そういえば、おれがスーツ以外で会社に来たり忘年会で衣装を着たりするとキモいと連呼しながら撮影するんだよなこいつ。恐怖刺激と同じでキモいと思ったものが好きなんだろうか。

 

「まさかと思いますが」


 虎落笛はいつも以上に冷え切ったジト目でおれを見つめる。顔が整っているので、半眼で睨まれると迫力がある。

 

「今年はおれを差し置いてクリスマスパーティなんてしないっすよね」

「え、するけど。クリパっていうか合コンだけど……」

「は?」

「いや友達がセッテイングしてくれたから。消防隊のガタイが良くてかっこいい男を」

「あ゛?どんな男っすか」


 なんなのこいつ。おれは仕方なしに会う予定の男たちの写真を見せる。さすがに鍛えられていて、尻がでかく太ももだってぶっとい。まあ虎落笛のが良い男だけれどもおれには不釣り合いなぐらいの良い男が揃っている。

 

「これにいくつもりだったんですか?おれに黙って」

「いや言う必要無いだろ!あー今日はやんないよ。こんな天気だし、リスケして来年にもでやろうかなって連絡きたよ」

「……」


 虎落笛は黙り込んで光の無い瞳でおれを凝視する。こんな時こそキモいとおれを罵倒するべきなんじゃないのか。

 虎落笛が何も言わないので、おれも沈黙に付き合った。せっかく作ったカップ麺が冷めて麺が伸び切ってしまうまで沈黙は続いたが、虎落笛は唐突に立ち上がって言った。

 

「先輩、もう寝ましょう」

「え、まだ19時にもなってないけど」

「どうせやる事ないから良いでしょう。応接室のソファで寝るんで付いてきてください」


 虎落笛は有無を言わさずおれの手を掴むと応接室へと引っ張っていった。なんだよ、怒ってるの?何故?

 疑問はあったが虎落笛の背中は問いかけることのできない迫力に満ちていて、言葉にすることはできなかった。

 

「さあ、寝ましょう。ジャケットは脱ぎましょうね。皺になるので。毛布を被ってれば保温に問題は無いでしょう」

「それはまあ、そうだろうけど」


 応接室のソファは大型の獣人でも使えるような大型のものだ。二つもあるので寝る分には問題は無い、はずだ。問題は別にある。おれたちは毛布を一枚しか持っていない。


「ああ……そういえばそうっすね。全然そんなつもりはなかったんすけど、二人で一枚の毛布に包まる必要がありそうっすね」

「いや、お前のコートが毛布代わりになるんでいいよ。臭くなるかもだけど、クリーニングに出して返すからいいよね」

「良くないっす」

「えっ」

 

 虎落笛はおれからコートを引っぺがして投げ捨てると、ソファの上へと寝ころんだ。


「ほら、こっち来てください。寒いんすから」

「いやそれはまずいだろう。一緒に寝るなんて」

「キモい発言しないでください。こんな状況だから仕方ないでしょう。一人で寝たら凍え死ぬっす」


 それでも。先輩と後輩の関係でしかないのに、くっつきあって寝るなんてまずいだろう。ましてやおれは虎落笛の尻や脚を良からぬ目で見ているのに。こんな不純な思いで虎落笛にくっつくなんて絶対に駄目だ。


「先輩、おれって体温高いんすよ。触ってみません?」


 駄目なはずなんだけど。

 自分の胸元へとおれを誘う虎は抗いがたいほどに魅力的だった。いつも硬く締めている胸元は緩め、胸の毛がはみだしている。

 冬でも薄手のスラックスがぴっちりと脚に張り付いていて、筋肉の凹凸が良く分かった。

 革靴で隠されていた足先は今や黒ソックスだけでしか守られておらず、毛皮の色が透けて見えていた。

 

「一緒に寝てくれたら、おれも安心できるんすけど。駄目っすか?」


 ほんの少しだけ弱さを含ませた声。それが意図的に混ぜ込んだものであることも、おれを誘うための芝居であることも分かりきっている。

 

 それでも、我慢できるわけがないのだ。後輩を安心させるため――そんな言い訳を与えられたら。

 

「じゃあ、お邪魔しちゃいます」

「キモ。何かしこまってるんすか」


 虎落笛のジト目で見つめられながら、その逞しい胸元へと潜り込んだ。


***


 ソファの中がやけに狭苦しい箱の中みたいに感じた。

 虎落笛の身体は電気毛布よりも温かくてのぼせあがりそうだ。おれの体温が上がっているのか、それとも虎落笛の身体が火照っているのか。或いは両方か。

 シャツ越しでもこんなに温かいのならば直接触れ合ったらどんな心地になるのだろう。つい邪な考えが頭をよぎった。

 いや、駄目だろう。

 虎落笛はただの後輩だし、絶対恋人とかいるだろうし。こんな事考えてたらキモがられるぞ。また。

 

 と思ってるのだけど、ちんぽは硬くなっていて。

 仕方ないだろ。虎落笛の胸板は分厚くって、ソファの背もたれに押し込まれるみたいになってくっついてると押し倒される気分になるんだ。んでもって、虎落笛の大胸筋にちょうど顔が押し当てられてしまうわけで。

 虎落笛の胸元からは香水らしい複雑な香りと隠し切れない汗の臭いがしていた。いかに気を遣っていたとしても一日中動き回っていたら毛皮には汗とけだものの臭いが染み込む。それは仕方のない事だ。

 

 だから俺が勃起してしまう事も致し方ない。そうならないだろうか。この張り出した大胸筋に圧迫されていると雪が降り積もるみたいに虎落笛の声や顔が頭の中に積み重なって、埋め尽くしていく。

 

 おれを呆れた顔で見下ろしている整った顔。他の奴には愛想がいいくせに、おれにはにこりともせずにジト目でため息ばっかりだった。でも、おれの仕事はいつもフォローしてくれるし昼飯もいっつも一緒に食いたがる。こいつは食べるところも絵になるんだよな。

 

 スーツが似合う逆三角形の身体。大胸筋が飛び出して首も肩も逞しくって、虎獣人は逞しいものだけどこいつは規格外だった。ど突き出るべきところと引き締めるべきところが明瞭な完璧なスタイルをしている。

 

 そんな完璧な肉体の中で尻肉だけは調整ミスをしたみたいにでかいのだ。冬でも薄手のスラックスを履いているせいでこいつの尻はぶりんぶりんと弾んでいて、思わず鷲掴みにしたくなる豊満さだった。無意識なんだろうけど、おれの前でちょくちょく前かがみになったり尻を突き出したりするんでエロさに目が潰れそうになったものだ。

 

 いかん、鎮まれ鎮まれと命じているんだけどこいつの顔とか尻を思い出しているともっと昂ってしまった。虎落笛に気づかれる前になんとかしなければ。

 おれは目を閉じて一心不乱に念じていたし、視界は分厚い胸板で塞がれていたわけだ。だから完全に不意打ちだった。虎の手がおれの股間を撫でて来たのだ。

 

「はへッ!?虎落笛さんッ!?なんで、どこ触って」

「うわ、キモい声出さないでくださいよ」


 いつもの落ち着いた虎落笛の声。おれをなじる時の軽蔑を若干含んだ声色。虎落笛がジト目でおれを見下ろしているのが見なくてもわかった。

 最悪だ、ばれてしまった。これは生理現象なんですなどと言い訳しても虎落笛には見抜かれるだろう。羞恥心と恐怖でおれの頭が沸騰しそうになる。いつも以上に手ひどくおれを罵倒するに決まっている。

 

「はあ……おれが優しさで一緒に寝てあげてるのに勃起してるなんて、どうしようもない先輩っすね」

「う、ううぅ……。申し訳ない。これは、これはおれの意志とは無関係でして」

「無関係なわけないっすよね?先輩はおれの臭い嗅いでコーフンして勃起してんすよね?」


 想像以上に厳しく問い詰められて言いよどんだ。ここでそうですと答えたらいくらなんでもキモすぎるからだ。虎落笛が一緒に寝てくれなくなるのは仕方ないんだけど、おれの可愛い後輩を最悪な気分にさせてしまう。いや、もう最悪かもしんないけど!

 

「答えてくださいよ。おれで興奮して勃起してんですよね?」

「ひッ!そ、そうですぅ……。虎落笛の臭いとか体温とか胸板で興奮してちんぽ勃てましたッ!すんません!ついでに言うと虎落笛の顔もデカケツもいっつもいやらしい気持ちで見てましたッ!」


 更にドスの効いた声で問い詰められて白状してしまった。これは終った。セクハラで訴えられたら全て認めよう。その前に虎落笛にシメられるかもしれない。どれだけ寛大な心を持っていても許してくれないだろう。

 

「……キモ」


 けれども虎落笛はおれを殴りも締め上げもせずに、ちんぽを撫でまわしていた。ドスの効いていた声は急に落ち着いて、いつもの虎落笛――以上に柔らかいように聞こえる。なんで?

 おれはわけもわからないまま虎落笛の手に勃起をなでなでされていたのだけれど、スラックスの中に侵入した時はさすがに声をあげた。こいつはスラックスと一緒に下着という境界線までも超えて、ちんぽに直接触れて来たのだ。

 

「ちょちょちょちょちょ!何してんの!?」

「何って、先輩が勃起してるんでおれがなだめてあげようとしてんですけど?こんなんじゃ寝れないっしょ」


 虎落笛は至極当然みたいな声でちんぽを弄り続けた。鋭く生えた爪はたやすくおれの肌を割いて内臓を露出させることができるのだろうが、爪がちんぽに触れる事は無い。ただ、肉球のぷにぷにや毛がチクチクするくすぐったさはどうにも耐えがたかった。

 自分で弄るのは全然違う気持ち良さだった。荒っぽく扱くわけでもないのに、ちんぽはますます硬くなって先走りを垂らしている。

 さすがにまずいんじゃないか。後輩とこんな事するなんて。嫌悪感はまるでない。あるわけがない。虎落笛にちんぽを撫でまわしてもらって喜ばないヤツなんているわけない。

 でも、虎落笛はおれの大事な後輩なんだぞ。こんな性処理みたいな真似をさせられるわけないだろ。

 

「まずいって、虎落笛!お前にちんぽ弄らせるなんて、そんなの」

「先輩って本当にコミュ障っすね。こんなの普通ですよ。ちんぽ弄るとか舐めるとか先輩後輩なら当たり前でしょ」

「そ、そうなのッ!?」

「そうっすよ。だから手コキ程度でキモ反応しないでくださいね?童貞臭いっすよ、それ」


 童貞なんだから仕方ないだろ!と叫びたかったがもっとキモがられそうなので我慢した。虎落笛はおれの沈黙を許可と受け取ったのか、撫でまわしていた手をより淫猥に動かし始める。

 手のひらを擦りつけていただけの動きから、指のリングで竿を捕まえて扱き、親指の腹を使い鈴口をグリグリと虐める。我慢汁をますます分泌すると、それを亀頭へと塗りたくりますます滑りを良くした指で愛撫する。

 

「はあ゛っ!虎落笛、お前上手すぎ、おおおっ!」

「普通に手コキしてるだけっすけど。言っておきますけど、先輩のちんぽが弱いだけっすよ。サイズはなかなかっすけど」


 そんなはずがない。こいつの手つきはチンポの扱いを熟知しているものだ。もうおれの我慢汁で虎落笛の手はベトベトになっているっていうのに、射精には至らない。

 虎落笛の指先はおれの感じる部分を的確に探り当てて、亀頭やカリ首を責め立てる。けれどおれが射精をできそうにない絶妙な力加減であり、おれは焦れったさともどかしさで腰をくねらせずにはいられなかった。

 

「~~~っ!」


 おれは淡い快感ばかりを注がれるのに耐え兼ねて虎落笛の胸板にすがりついた。まるで初心な女子みたいで恥ずかしいのだが、シャツを握りしめて顔を谷間に埋めてしまった。

 深く洗い呼吸を繰り返すと、胸の谷間に閉じ込められていた体臭が肺や脳みそにまで入り込んでおれをおかしくさせる。雄のフェロモンってのはこんな臭いを言うのだろう。

 

「いいですよ、おれにしがみついててください。怖いこと、なんも無いですから」


 また罵られると思ったのだけど虎落笛の声は優しかった。おれの頭に鼻先をくっつけたまま、低く男らしい声色で囁いてくれた。

 それがたまらなく嬉しくて、おれは母親に甘える乳飲み子みたいになってすがりつく。もしも乳首を差し出されたら夢中になって吸ってたに違いない。

 おれは喘ぎっぱなしで、垂らした涎で虎落笛のシャツを濡らしていた。きっと気づいているだろうに、おれを責めずちんぽを愛してくれる。

 我ながら多すぎると思う我慢汁によって虎落笛のグローブみたいな手は毛皮までも濡らしている。そんな手でちんぽを弄られると、筆の毛先によってくすぐられているみたいで手コキとは違う快感が生じた。射精には至れないのに気持ちが良くて、おれのふくらはぎが痙攣してしまう。


「虎落笛、それやばいッ!ちんぽ、おおおっ!ぞくぞくくるッ」

「これしんどいっすよね。このままず~っとちんぽじわじわ虐めてると潮吹いちゃうかもっす」

「なッ!?や、やだ!潮なんて吹きたくないぃ……」

「ふーん。じゃあ普通にイキたいっすか?おれはどっちでもいいっすけど」

「あ、ああ!イキたい!普通にイカせてくれ!」


 おれは深く考えずに答えていた。それは100点満点の答え。間違いなく正解ではあった。あくまで、虎落笛の用意したテスト用紙の上での正答なのだが。

 虎落笛は拷問のようなご褒美のようなちんぽ弄りを止めて下着から手を引き抜くと、汚れていない方の手をおれの顎下にやった。

 そのまま顎を持ち上げられると虎落笛と視線がぶつかる。おれが美少女なのかもしれないけど、こんな中年にやっても楽しくないだろ。

 

「キモい顔ですね。手コキだけで涎を垂らす先輩とかまじ軽蔑します」

「し、仕方ないだろ!お前がちんぽ弄るから悪いんだよ!」

「しかも後輩に他責っすか。まあ、おれも先輩のちんぽがよわよわの童貞ちんぽであることを忘れてたんで、お互い水に流しましょう」


 間違いなく虎落笛の責任の方が多いと思うのだけど、おれは黙って腰をもじつかせた。この異常なシチュエーションとか、虎落笛の文句よりも射精への欲求の方が勝っていたからだ。

 おれが期待を込めて見上げると、虎落笛はいつもの冷めたジト目でおれを見つめ返す。しかもため息まで吐かれてしまった。

 

「はあぁ……。先輩、もしかしてすぐに射精させてもらえると思ってます?」

「え、違うの」

「先輩、おれは都合の良いオナホじゃないんすけど?射精させて欲しいならおれが射精させてあげたくなるような気分にさせなきゃ駄目っしょ?」

「ええぇ……どうすりゃいいの。お、おれも手コキすればいいの?」

「童貞先輩の手コキとかこっちからお断りっすから。まず、気分を盛り上げるって言ったらキスからっすよ?ほら、キモいキスしてください」


 キスなんてしていいのだろうか。躊躇いがあるのだけれど、虎落笛の顔はいたって真面目だ。いつもみる、虎落笛の冷めた目つき。こいつはおれとキスなんてして嫌ではないのだろうか。嫌だったら要求しないよな。なんてぐるぐる頭の中で考えていると、虎落笛が顎を掴んで顔を寄せてきた。

 

「ほら。キスなんかで緊張しないでください。好きに顔くっつけて舌突っ込めばいいんすよ。下手でも怒りませんから」

「わ、分かった。頑張る」

「頑張らなくていいすよ、そういうとこキモいっすよね先輩」


 虎落笛にいつものように罵られていると心がすっと落ち着いた。こいつが良いと言ってるし、ここを逃せばこんな顔が良い虎とキスできる機会は一生来ないに違いない。ていうか、虎落笛の顔を見るたびにキスしてえ~って思ってたし!

 

 薄闇の中でも輝いて見える肉食の瞳が、おれをじっと見つめている。眉が男らしく吊り上がっていて、マズルの形も良くてどこを見ても整っている。

 薄っすら開いた口の中に見える舌はピンク色で果実のようにも見えた。おれに食べて欲しいと思っている。なんて思い込みをしておれは唇を重ねた。

 

「ん、んっ」


 虎落笛は呻いたが拒むことはせず、俺の背中へと手を回してしっかりと抱き寄せて唇をさらに重ねる。

 獣人とのキスは難しそうだけど意外にも唇を重ねやすかった。口内はなまぐさいことはなく、虎落笛の外見に合致するような爽やかな香りがした。もしかしてだけど、前もってブレスケアなんかしてるんだろうか。おれはしてない。

 罪悪感を覚えつつも虎落笛の背中へと手を這わせた。やりすぎだ、って怒られるかもしれないがやらずにられなかった。

 更に唇を重ねてから、おずおずと舌肉を差し入れる。虎落笛の唇はすっかり緩んでいて、何の抵抗もない。唇を舐め回すとひんやりとしていて、そのくせ口内に差し込むと熱くぬるぬるて、触れた舌先はざらざらしている。


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