【ステータス完全版】銀麗の魔剣と新米冒険者IF〜前編〜
Added 2022-09-18 10:50:10 +0000 UTCダンジョンB45F 「なんか順調に進みすぎてて怖いわねー……お宝いっぱいだし、敵も出てこなくなったし」 「そ、そう……ですね……」 30分ほど後、アイシャ達は更なるダンジョンの深みへ足を踏み入れていた。 宝を手にして気を良くしたアイシャの足取りは軽く、ギア・ゴーレムも最初に出てきたもの以降は現れなくなっており、やや拍子抜けしつつも先に進んでいく。 時間の経過と共に口数が少なくなっていくリリカという心配な要素はあれど、あえてそれを口に出すことはせず。 それを口にしたなら、逆に気を遣わせてしまうことが火を見るよりも明らかだから。 だがそれも、2人が先に進むにつれて……時間が経つにつれて事情が変わってくる。 それはダンジョン攻略佳境も佳境。地下48階地点で起きた。 「ひぅ……っ!?」 ぶるりと大きく身体を震わせて、その場に立ち止まってしまうリリカ。 何事かとアイシャが振り向くと、そこには服の裾をぎゅっと握りしめ、前屈みで俯く様子が見えた。明らかにただ事では無い様子に思わず駆け寄る。 「り、リリカちゃんどうしたの!?すごい汗だよ!」 「い、ぇ……!なんで、も、ありませ……!」 「なんでもないわけないよ!何かあったなら言って?助けられるかもしんないから!」 「な、なんでもないんです……!ほ、ほんとに、なんでも……っ、ぁ……!」 なんでもないという言葉と裏腹に辛そうな表情を浮かべるリリカ。 なぜこうまで頑なに口を閉ざすのか。その答えを問うより早く、その全身で答え合わせがされる。 先ほどより大きく身体を震わせ、びくんと大きく背筋を逸らすと……次の瞬間、小さな呻きと共に両手を股間にあてがった。 それはどんな言葉よりも雄弁に、彼女の窮地を物語る。 「ぁ…………あっ!!ち、ちが、ちがうんです!これは、その、えと、ちょっと……その……!」 「あ……!だ、だいじょうぶだよリリカちゃん!?まあほら、人間だから!!」 「ふぁぅぅぅぅぅ…………!!」 波が引くと同時、すぐに手を離すがすでに遅く。その姿を見たアイシャを誤魔化そうと必死に言い訳しようとするが何も思い浮かばない。 そしてアイシャもようやくリリカの現状に気づき、なにか気の利いたことを言おうとするが何も思い浮かばず。 互いに気まずい空気を抱えたまま、しかしどうにかしなければならない現状を打開すべく知恵を絞る。 「しかしどうしよっか……ここから街へ帰るには遠すぎるし、先に進むってのも……帰れる保証が……」 「き、帰還魔法陣とかはないんでしょうか……」 「普通のダンジョンなら深いとこにはちょくちょくあるもんだけど、ここにはこんだけ深く潜ってもなかったからねー……」 「まあ一個も上への移動手段が無いってことはないと思うのよ、不便すぎるし。だけどどこまで行ったらそれに会えるかってのは……」 アイシャが言うのは至極真っ当な理屈。旅慣れしているが故の経験則。 先に進めば帰るための方法を見つけられる可能性はある。 通常の遺跡もここも、人が住んでいた場所である限り移動手段が無いはずはない。それは冒険者の常識であるが、しかしそれがどこにあるかがわからない。 下手をすればここからまた何十階も降りなければならないかもしれないのだ。 だからといってここから引き返すことを選べば、来た道を48階も登らなければならない。果たしてリリカの我慢はその間持つだろうか。 2人は今、旅の岐路に立っていた。 (成果はもう十分、帰るのは別にいいとしても……どっちの方が早く帰れる?どうするのがいいか……) (いや、冷静に考えてみよう。経験上、ガーディアンが一体だけなんてことはそれがどんなに強くってもまずありえない。もう一回ギア・ゴーレムが出てきたとしたら……今の私たちで勝てる?) そしてアイシャはまず、一度頭を冷やすことにした。 もしこのまま先に進んだとして無事に帰れる保証はない。そして最も大きなリスクは、ギア・ゴーレムの更なる出現だ。 ガーディアンというのはおおむね、一体だけということはない。 風化によって動けなくなっているようなことはあれど、初めから一体だけしか作られていないというような例は少ないのだ。 これをギア・ゴーレムに当てはめるなら、あの強さでも数あるうちのひとつに過ぎないという可能性は大いに考えられる。 もしもう一度アレが現れたとしたら、装備を損傷しているうえリリカのコンディションに不安がある今の状態で果たして勝てるだろうか。 万全の状態でさえあれほど苦戦した相手に。 (私個人の気持ちとしてはこういう時は前に進む!と言いたいところだけど……今はリリカちゃんが最優先、かな) 「ごめんね、リリカちゃん!」 「ふぇっ……!?」 考えた末、アイシャは結論を導き出した。 それはかかるリスクを回避し、時間はかかるが確実に帰る方法を選択すること。 彼女の冒険者哲学には反するが、それもやむないことだと言えた。 より早く帰るためリリカを背中に背負い、来た道を駆け戻る。 2人の新たな戦いがここに幕を開けた。 リリカステータス HP 52/52 MP 5/105 状態 もじもじ 尿意 750/500 2つ名 無敵の堅盾 ひとことコメント が、がまん……しなきゃ……! そうび うで きのつえ うで ブレスレット(やすもの) からだ しょしんしゃのローブ あし しょしんしゃブーツ あたま くろいフード したぎ おきにいりのしろぱん(染み小) スキル たたく かくれる 魔法 ヒール ディフェンス 必殺 ディバインリフレクター もちもの HPポーション×6 MPポーション×8 ATK強化薬×2 DEF強化薬×2 おいしい水×1 ローブの裾を掴んだり脚をさすったり、忙しがない新人冒険者。 そのお腹を苛むものは時間と共に膨れ上がり、幼い身体に切ない衝動をもたらす。 冒険慣れしていないことから彼女の「容量」は常人のそれと大差ない。そこにたくさんのポーションを飲んでしまった彼女の残り時間はそれほど多くないだろう。 現在地は地下48階。ここにたどり着くまでかかった時間は約4時間。 果たして地上に出るまで持つのだろうか。 必死に耐える11歳 ____________ ダンジョン B47F ビー!! ビー!! フロアを上がった2人を出迎えたのは、地下42階でも聞いたことのある音だった。 侵入者警戒警報の音と共にフロア中を赤く点滅する光が照らし出す。 そして2人を射抜かんと、無数の光線が飛び交う。 「ちっ……!さっきはなんともなかったってのに、なんだっていきなり……!」 現時点の2人は知る由もない。この無数のレーザー光が、一人の意思によって操られるものだということを。 ギア・ゴーレムが一体目以降襲ってきていないことも、レーザーが先ほどまで止んでいたことも、その一人の意思によるものだということを。 そして2人の行く手を塞ぐように、光線がまるで格子のように組み合わさっていく。 通路を埋め尽くすいくつもの光線の筋。これではとても通ることはできない。 ただひとつの方法を除いては。 「あーーーーーっっもう!!これじゃ通れないじゃない!!!」 「…………っんく……んく……」 「って……リリカちゃん!?なんでポーションなんて……だめだよ!もっと辛くなっちゃうよ!?」 「だ、だいじょうぶ……です。まだ……なんとか……!それよりも……」 そう。この状況を打開し得る方法はひとつしかない。それをリリカは実践しようとしていた。 額に玉の汗を浮かべ、ぐりぐりと出口をアイシャの背中に押し付けながら、彼女は健気にも更に二本のポーションを飲み干した。 そしてこの状況を打開する……特級魔法を発動した。 「ディバイン……っリフレクター……!」 鮮やかな光の壁が2人を包み込む。わずか二秒の無敵時間だが、この間ならレーザーによる封鎖も抜けられる。 リリカの意図を察したアイシャは即座に駆け抜け、フロアの階段を駆け上がる。 「リリカちゃん、ごめんね……!」 「い、いえ、私の方こそ……」 上に繋がる階段にてお互い謝りあう2人。 そんな様子を、モニター越しに苦々しく見つめる存在がいた。 『…………逃げられテシまいまシタ。でキればおはなシシたかったのデスが……』 『まあいいでショウ。またチャンスはあルはずデスかラ……』 2人は知る由もない。先ほどまで大人しかったレーザーが急に動き出したのは、この一人の女性が2人と話したいがためのものだったことを。 地上に帰したくないがため、足止めをしようとしたためだということを。 もしかするとこの女性が2人の助けとなってくれたかもしれないが、2人はその道を選択しなかった。 ともあれ2人はレーザー地帯を脱出し、これから魔物が蔓延る中をかいくぐって地上を目指すこととなる。 リリカステータス HP 52/52 MP 5/105 状態 もじもじ 尿意 800/500 2つ名 無敵の堅盾 ひとことコメント がまん……がまん……! そうび うで きのつえ うで ブレスレット(やすもの) からだ しょしんしゃのローブ あし しょしんしゃブーツ あたま くろいフード したぎ おきにいりのしろぱん(染み中) スキル たたく かくれる 魔法 ヒール ディフェンス 必殺 ディバインリフレクター もちもの HPポーション×6 MPポーション×6 ATK強化薬×2 DEF強化薬×2 おいしい水×1 行く道を塞ぐレーザーを抜けるため、さらにポーションを飲んでしまった新人冒険者。 そのお腹には3リットルを優に超える水分が収まっており、動くたびにたぷたぷと波打つ感触がする。 それが時間と共に分解され、膀胱へと降りてくるのだ。時間の余裕はない。 涙ぐましいまでの献身が光る11歳。 _____________ ダンジョン B35F 「うぅおおおおおおおおおおおお!!!!!!」 薄暗いダンジョンの中、アイシャの咆哮が轟く。 リリカをおぶったことで両手が塞がっていて戦闘どころではないため、彼女は全力で逃げ回っていたのだ。 上階までの最短距離をひたすら突き進み、地上を目指す。 しかしその行く手に立ちふさがる存在が現れた。 スタンディングトータスがあらわれた! 「げっ……!最悪のヤツが……」 不動亀と異名をとるB級魔物、スタンディングトータス。 ずしりと重く大きな身体。高さは人の身長ほど、幅も3メートル近い巨大な亀。 それが上階へとつながる階段の前にどっかりと居座っているのだ。 B級に分類されているため本来ならアイシャの敵ではないのだが、しかしこの魔物にはひとつの大きな特徴があった。 「リリカちゃん、ちょっと降りててね」 リリカを下ろし、傷んだ剣を構えるアイシャ。 その頬を一筋の汗が伝う中、彼女は一世一代の賭けに出る。 アイシャは超必殺属性網羅カラミティソードを放った! スタンディングトータスはからにこもった! ガキィィィン!!ばきんっ……! だがその賭けに勝つことは叶わなかった。その剣は巨大な殻の前に弾かれ、傷んだ剣はその衝撃に耐えられず折れてしまう。 スタンディングトータスの特徴。それは「不動亀」の名に相応しい圧倒的な防御力にある。 攻撃力は無に等しく、素早い動きもできないことから危険性は低く見積もられているが、その防御力は驚異の一言。いかな武器を以てしても傷一つつかないほどの頑強さを誇る。 その強度のほどを示すエピソードとして、この魔物を捕食するためワイバーンが空から岩場にこの魔物を落とした際も傷がつくことはなく、逆に岩が抉れていたという逸話もあるほどだ。 この魔物への対策としては強力な雷撃魔法を使うか、そもそも相手をしないかに尽きる。 しかし今、そのどちらも選ぶことができない。アイシャの使う初期魔法程度では致命打とならず、階段を塞がれていては相手をする以外にないから。 「武器がまともならまだなんとかなるってのに……!」 とはいえ武器さえまともならまだやりようはあった。というのもこの魔物は非常に臆病なため、一定以上の攻撃を加えると驚いて殻の中から身体を出してしまう習性がある。 並の攻撃では不可能だろうが、全冒険者の中でも随一の破壊力を誇るアイシャのカラミティソードならそれが可能なはずだった。 しかし傷んだ剣ではその破壊力を発揮することはできず、逆に剣が折れてしまった。正攻法での攻略はもう不可能である。 (急いでるってのに……!くそぉ……!) 一刻を争う中で最悪の時間稼ぎ。強力な魔法の使い手がいない以上、採りうる手段は一つしかない。 すなわちアイシャの使う初期魔法で少しずつその生命力を削り取る。それしかないのだ。 急ぐ中、不毛の戦いが幕を開けた。 リリカステータス HP 52/52 MP 5/105 状態 まえおさえ 尿意 1020/500 2つ名 無敵の堅盾 ひとことコメント まだだめ……!でちゃ……だめ……! そうび うで まえおさえ うで ブレスレット(やすもの) からだ しょしんしゃのローブ あし しょしんしゃブーツ あたま くろいフード したぎ おきにいりのしろぱん(染み中) スキル 前押さえ 魔法 別のことを考える 必殺 なし もちもの HPポーション×6 MPポーション×6 ATK強化薬×2 DEF強化薬×2 おいしい水×1 最悪のタイミングで最悪の敵と出会ってしまった新人冒険者。 堅さだけならギア・ゴーレムにも匹敵しうる魔物と戦うアイシャを横で見守ることしかできない歯がゆさと尿意に身もだえる11歳 _________________ 1時間後…… アイシャはサンダーボルトを放った! スタンディングトータスに160のダメージ! スタンディングトータスをたおした! アイシャが交戦を開始してから一時間。無抵抗の敵にひたすら魔法を撃ち込み続け、長い時間をかけてようやく仕留めることができた。 しかしここに至ってもなお、2人が先に進むことはできない。 通路を塞いだまま息絶えた敵の巨体。これをどかさないことには通れないのだから。 「ほんっと……!ほんっっっっと邪魔くさい……!!!!」 怒り心頭で数百キロはある巨体を押して動かすアイシャ。 ずりずりと少しずつずらし、なんとか彼女たち二人が通れる程度の幅を確保することができた。 貴重な時間を削られたと憤慨するアイシャだが、しかし彼女が失ったものは時間だけではない。 大事な武器を失ってしまったこと。これが後にどのような結果を生むことになるのか、彼女はまだ知らない。 ダンジョン B27F キラービーがあらわれた! トレントがあらわれた! 「どけオラァァァアアアア!!!!」 アイシャはにげだした! スタンディングトータスとの戦闘から30分。2人はそこからさらに10階ほど登った階に来ていた。 このフロアの魔物はCクラス相当の強さであり、単純な戦闘力ではアイシャの敵ではない。 しかし今は急ぐうえ、武器もない。ひたすら逃げ回って上階を目指すのが最善と言えた。 だがそんな2人を最悪の罠が待ち構えていた。 カチッ…… 「………………へ?」 上を目指すことに夢中で罠の存在を忘れていたアイシャは、魔物が仕掛けた罠に引っかかってしまう。 床に仕掛けられたスイッチを思い切り踏み込んでしまい、二人の乗る床がぱかりと開いた。 「うそでしょおおおおおおぉおっぉおおおお!!?!?!?」 重力に引かれ、落ちていく2人。 下を見ると数メートルほど下に床が見え、なんとか態勢を整えて着地を試みる。 「………………イ゛っっっっ、、っっってえええぇぇぇ…………!!!!」 背中にいるリリカの分と合わせ、二人分の体重を受け止めたアイシャの脚にはじぃんと痺れるような痛みが走る。 だが痛がってばかりもいられない。穴の底に落ちた2人を出迎えたのは、無数の魔物の群れたちだった。 「あぁーー……モンスターハウスかぁ……」 モンスターハウス。それはダンジョン内において魔物たちが形成したコロニーのことである。 ダンジョンをねぐらとする魔物は多いが、その中でも特に住み心地がいいところを総称してこう呼ぶのだ。 そこには多種多様な魔物が住み着いていて、その密度は異常の一言。どこを見ても敵がいる。 その性質上、ダンジョンに攻め込んできた冒険者を迎え撃つのにも適している。 落とし穴を使って部屋の真ん中に招き入れ、前後左右全方向から攻撃を加える。それは非常に効率的な「狩り」の手段。 魔物の中でも知能が高い個体が、まれにここを罠として用いる場合があるのだ。 そして今、武器を失くしたアイシャのもとに魔物が殺到する。 アイシャステータス HP 640/770 MP 75/500 状態 ふつう 2つ名 銀麗の魔剣 ドラゴンスレイヤー 百人斬り 史上最年少のAランク 黙ってれば美人 残念すぎる美人 ゴールドスプラッシュ 頭以外文句なしのAランク ひとことコメント チクショーーーー!!!!来るなら来なさいよコノヤロォオオオオ!!!!! そうび うで なし うで なし からだ やすもののよろい (はそん) あし ぼろいくつ(ナイススメル) あたま ぎんいろのかみ スキル 殴る ぶん殴る 蹴る 頭突き 魔法 フレイム ブリザード サンダーボルト かまいたち カイザーフェニックス エターナルフォースブリザード サンダーブレイク デッド・ロン・フーン 必殺 たこなぐり 不動亀との戦いでとうとう剣が折れてしまったA級冒険者。 当然ながら剣技はすべて使えなくなり、徒手での戦闘を余儀なくされる。 強さの根源とも言える剣技と魔法剣を封じられた今の彼女の戦闘力はせいぜいC級程度。 矢尽き刀折れても戦う18歳。