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魔法学院の生徒会長――エピローグ(前編)

* * * * *  目を覚ますと、そこは桃源郷。  昨夜もさんざん愛した女性の身体がすぐ傍にある。抱くほどに女としての魅力が増していくと思う。  一糸まとわぬその身体のあちこちに、わたしはそっと口づけをしていった。すぐには起こしてしまわぬように気をつけて。  同じ年齢の人間なのに、なぜ男と女はこんなに違うのだろう。全身はボディソープやシャンプーだけではない甘い匂いに包まれていて、肌はきめ細かで、その皮膚の下の肉はむしゃぶりつきたくなるくらい柔らかい。わたしの股間では、単なる朝勃ちを超えて、ペニスが大きく硬くなっていく。 「ん……」  彼女がさすがに目を覚ました。 「おはよう」 「んみゅ……おはよ」  寝起きの彼女は、少し気が抜けている。それを見られるのはこの世でわたしだけ。  キスをすると、彼女から舌を入れてきた。  互いに互いの身体を味わい、肌を重ね、愛撫を繰り返し、その果てに交わり合う。  昔の習慣でゴムを使おうとして、大学生になった今はもう使わないことに決めたのを思い出す。  彼女の中に、直接入っていく。この二年間でわたし専用に仕上がったアソコは、わたしのペニスをすんなりと受け入れつつも、今でもしっかり締めつけてきて、ペニスに快い圧迫感を与えてくれる。  わたしも剛直したペニスで彼女の内部をたっぷり蹂躙してあげた。嬌声がベッドの上で弾む。  達し、放つ。わたしの精液が彼女の子宮に向かって突き進むのが感じ取れた。  虚脱感に包まれながら、わたしは魔法を使う。 「今日もなの?」  快感の余韻に浸っている彼女にしてみれば、当然の不満。 「今日もだよ」  言いながら、発動。  視界が切り替わる。わたしが『フタバ』の身体になる。  同時に、快楽の余波が脳を満たす。男は射精で頂点に達し急速に萎えるけど、女はなだらかに続くと、わたしは身をもって学んだ。  この心地よさに身を委ねてしまいたいけれど、そうもいかない。わたしは新たな魔法を組み上げる。 「はあ……」  逆に、『キヨヒコ』になった相手は不満顔。今の自分の身体を持て余すようにして、今朝はベッドに横たわった。  そしてわたしに訊いてくる。 「今日は何分?」 「目指すは六分……」  会話しながらも、やっぱり難しそうだと悟る。  五分三十秒ほどで、限界に至り。  わたしは『キヨヒコ』に、相手は『フタバ』に、「戻った」。 *  二年半ほど前。あの決戦を終え、魔具を破壊し、わたしたちは入れ替えの魔法で元に戻った。戻ったつもりだった。  けれどほんの十秒ほどで、わたしはまた『キヨヒコ』になっていた。 「え?」 「これは……も、もう一回!」  魔法を何度も繰り返し、短時間で「元に戻り」、調べていくうちにある程度わかってきた。  入れ替えの魔法は、使えばそれで終わるわけではない。魂と身体には結びつきがあり、魔法を使っても元に戻ろうとする。  つまり今のわたしは、「キヨヒコと入れ替わっているフタバ」ではなく、「元はフタバだったキヨヒコ」と呼ぶ方が正確な存在のようだった。 「でも一昨年の入れ替わりはこんなことにならなかったのに」 「魔具がアフターフォローをしてたということかしら。入れ替えの魔法とはまた別に、魂固定の魔法みたいなものを使っていた。たぶん常時発動するタイプ。それが続くうちに、わたしたちは今の身体に馴染んでしまっていた」 「フタバさんにまでそんな魔法をかけておくことはできなかったのでは?」 「……物理的に距離を引き離せば、魂と身体の結びつきも働かなくなるのではないかと。近ければ自ら動いて引き合う磁石でも、ある程度離れてしまえば動かなくなるように。そして、戻れる見込みもないのに魂は今いる身体を離れてはしまわない」  言いながら、自分の身体を見下ろす。『キヨヒコ』の身体。少年の身体。  今のわたしの魂はこれを自身の身体と認識しているという推論は、フタバの自意識を持つ身としては納得しがたいものがあったが、肌感覚としてはすんなり受け入れてしまえるところがあった。  それに、この推論を認めれば対策もできる。 「つまり距離を引き離せばいいのよね。転移魔法を使えば簡単だわ」  だが、わたしたちは同じ学院に通う身だ。敷地内でどれほど離れてみても、それくらいでは元に戻ろうとする魂を抑えられなかった。かと言って魂が馴染むまで休学をするというのも無理がある。  ならば。 「魂固定の魔法を使うしかないようね。魔力量を考えれば、『フタバ』になったわたしがやるしかないでしょう」  そして一ヶ月ほどで魔法を試作し、使い始めてみたのだが…… * 「本当にこうなると予想してなかったの?」  じっとりとした目で、元に戻った彼女が改めて訊いてきた。 「魔力制御をもっと高めれば、『フタバ』の魔力もあるしどうにかなるかと」  だが、魂固定の魔法は異様に難しかった。かけ続けたまま日常生活を送るのは、二十四時間竹馬に乗ってマジックハンドを使って暮らすようなもので、あれから二年半経った今でも持続時間はいまだに六分に達していない。  それに国内トップの魔法使いである『フタバ』は、魂固定の魔法だけを四六時中使い続けていられた魔具とは違う。この先持続時間が長くなっても、今度は他の魔法を使わざるを得なくなった時に並行処理ができるのか。  半ば意地のようなもので毎日試みてはいるけれど、毎日こうして「元に戻る」たびに思ってしまうのだ。ああ、魂固定の魔法を使わないで問題のないこの状態は何て楽なのだろうと。  それに、彼女からは釘を刺されている。妊娠したらもうやめようと。入れ替えの魔法に万一胎児が巻き込まれたら色々な意味で最悪になりかねないし。  だから、つまり。  能力的にも心理的にも、あるいはもっと別の意味でも。  わたしたちは現状を受け入れることになりそうで。  わたしは今後は基本的に『キヨヒコ』で、『フタバ』とたまに入れ替わることはできても、『フタバ』に「戻る」ことも改めて「なる」こともできないということになりそうだった。

Comments

ありがとうございます! 入れ替わった二人がこういう関係に至ると、最終的には戻る戻らないは最優先ではなくなるんじゃないかと考えているところがありまして。 最後まで楽しんでいただけますよう、がんばります。

遅くなってしまいましたが、ありがとうございます。 どうにかここまでこぎつけました。最後までお楽しみいただけますよう、がんばります。

お疲れ様です! 掲示板の頃から続きを気にしていて、最近続編の存在を知りました! 「妊娠したらもうやめよう」という言葉が出るあたり、もう二人には身体が入れ替わっててもいなくても大きい問題では無いんですねぇ。。 後半楽しみにしてます!

OTO

まだ後編がありますが、ひとまずエピローグ到達お疲れ様 気に入ってた作品だったので大変嬉しい さすがにフタバに降りかかった災難がひどすぎるのでどんな形であれフタバが報われる形の結末になってほしかった、ので個人的にはだいぶアリな結末です 何はともあれ、後編楽しみにしてます

yyymdyukari

喪失感が強く、フタバ程は強くない自分が、【フタバが取り戻す事】に自身を重ね、余計なコメントでした。茶様の作品に励まされてきた事、感謝します

hiji

hijiさんの言葉がなければ、再始動も完結もはるか遠い状態のままでした。本当にありがとうございます。 なのにご期待に沿えなかったのかもしれず、だとしたら申し訳ございません。 ただ、とりあえず二つ。 まず、書いていないことは確定していません。ゆえに現時点で当人たちがどう思っていようと、未来においても「なれない」と決まってしまったわけではありません(改めてpixivで発表する際に、文章は多少変えるかもしれません)。 そして、フタバだった「わたし」にとって、一番大事なのは女性の身体や『フタバ』の人生に戻ることだったのか。ワカバに約束したように立派な魔法使いになることや、『フタバ』に告げたように自分なりの生き方を貫くことや、その一環である真に殴るべき相手をぶん殴ることは、成し遂げているのではないかと……作者としてはそんな風に考えております。

個人的ですが、この半年でいろんなものを失いました。取り返そうとあがいても、うまくいきません。過去は変えれませんが、未来は良くできるかもしれません。フタバが『戻る』ことに期待してましたが、予想とちょっと外れました。『なる』かのしれない事は期待して、後編をお待ちします

hiji


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