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いつでも戻れると思うと(4)

 羽留奈が『男』としてどう感じて何をしたがってるか、手に取るようにわかる。いつもの羽留奈はもう少し読めないところがあるのに、『男』ってやっぱり根はわかりやすいのかな。  と思っていたら。 「ひゃうっ?!」  羽留奈が俺のあそこに指を滑り込ませてきた。  何も外に飛び出ていない、割れ目があるだけの、俺の股間。『女』の股間。  そこへ羽留奈の指が自然に入り込んできて、弄り始める。今まで想像したことのない刺激。 「ちょ、や、」  キスをやめて身を引き離そうとする。けれど羽留奈の腕一本に俺は力強く抱きしめられて、離れられない。 「お返しだよ、聖仁」  耳元で、羽留奈がいたずらっぽく囁いた。  身体の中に、他人を受け入れる。それが『男』とは違う、『女』の身体。  入れる側としてはよく知っているし、頭では今の立場を理解しているつもりだった。  でも、羽留奈に指を一本入れられただけでこんなに動揺してしまっている。  自分の中に他人が踏み入って来る。そのことに対する居心地の悪さ。本能に近い拒絶感。  ……なのに。 「聖仁、可愛いね」  羽留奈のその一言で、俺は不思議と身構えを解くことができた。  この『男の人』なら大丈夫。『羽留奈』の身体がそんな風に、不慣れな俺の心を導いてくれたような気がした。  羽留奈に身を委ねて、俺は『羽留奈の身体』を教えられ、満喫する。身体がすでに知っていることを、未体験な心が後を追うように学んでいく。  自分が女になっているんだと痛感する。  そうなると、心も身体に引きずられるのだろうか。 「聖仁ってば甘えん坊だね」  俺はいつしか、羽留奈にしなだれかかり、身をすり寄せていた。  せつないような気持ちがこみ上げてくる。羽留奈ともっと強くくっつきたい。羽留奈と一つになりたい。  ……『女』として、『男』に抱かれたい。  これは、入れ替わるようになってから次第に芽生えてきた気持ちなのか、それとも元々俺の中に存在していた感情なのか。  でも、どちらにせよ、その思いは『羽留奈』の身体にいる今の俺には、すごくしっくりくるものだった。 「おっきいね……」  目の前で屹立するモノを改めて眺めると、ちょっとだけ怖気づく。俺が『聖仁』の時、ここまで大きくしたことはあったろうか? それとも、入れ替わってるから大きく見えているだけ? ビクンビクンと脈打って、入れたい出したいという気持ちが声にせずともはっきり伝わって来る。  でも、俺のアソコも、熱くてトロトロになっていて、受け入れる準備はできている。 「い、いい?」  鼻息荒く、聞いてくる羽留奈。 「うん……」  肯くや否や、流れるようにスムーズな動作で羽留奈は俺に突き入れてきた。羽留奈は男としては童貞だけど、経験は重ねているから当然か。 「ひぅっ……!」  一方の俺は、いかにも未経験な女子のように怯えた声を上げてしまう。  そのまま始まるピストン運動。俺の内側で、熱く硬いものが動き回る。  それは羽留奈が俺の魂に「聖仁は羽留奈の女だ」と刻みつける行為のようにも思われた。いや、実際は、雄の性欲に駆られてがむしゃらに動いているだけなんだろうけど。  羽留奈も初めて俺に抱かれた時、こんな風に思っていたんだろうか?  そして仕上げとばかりに、俺の中に放出される熱を帯びた粘液。ゴムを着けてなかったなと今さら反省する。  立場を入れ替えた俺たちの初体験は、入れ替わらなかった時のそれと同様に、ごく短時間で終わった。 * 「あたしたち、入れ替わってセックスまでしちゃった……」  もう一度お風呂に入り直して湯船の中で寄り添い合っていると、羽留奈が今さらなことを口にした。 「うん」 「落ち着いてるね、聖仁」  俺の態度が羽留奈は気に食わない模様。 「今日はこんなに色々やっちゃって、長い時間入れ替わったままで……あたしたち、元に戻れなくなっちゃったかもしれないよ?」 「かもしれないけど……」  これまで、敢えて口にはしなかったことを言う。 「もしそうなっても構わないって思ってたから、羽留奈も入れ替わりをやめなかったんじゃないの?」 「……まあ、そうだけど」  羽留奈も認めた。 「別に『羽留奈』が嫌なわけじゃないけれど、『聖仁』でいるのって、何か、居心地がいい感じがして」 「俺も同じ。入れ替わってる時も違和感が全然なくて、しっくりくるんだ」  俺だって『聖仁』の生活にも身体にも不満なんてない。でも、初めて入れ替わったあの時以来ずっと、『羽留奈』の身体も悪くないと感じてしまっている。 「それに……」 「それに?」  問い返すと、羽留奈は俺を抱きしめる。 「あたしの身体の聖仁がすごく可愛いってのも、入れ替わりがやめられなかった理由。聖仁、あたしより可愛い『羽留奈』になれると思う」 「うー……」  男として感じる屈辱。  でも、今の俺は女であって。  可愛いと言われることを、素直にうれしいと感じる気持ちもある。 「俺も……」 「え?」 「俺の身体の羽留奈は、好き。……男の羽留奈になら、抱かれても嫌じゃない」  恥ずかしくなって、羽留奈の胸に顔を埋めて表情を隠した。 「そういうところが可愛いんだよね」  羽留奈が俺の頭を撫でる。 「でも聖仁、このまま戻れなかったとして、本当に『羽留奈』になれるの?」  改めてお風呂に入っていると、羽留奈が言った。 「なれるのも何も、その時はなるしかないだろ」 「だって聖仁、口調が全然女の子らしくないし」 「う」 「練習しないとね。別にあたしの猿真似して『羽留奈』の演技する必要はないから、聖仁らしく女の子っぽく振る舞ってみてよ」 「そ、そんなの、羽留奈もやらなきゃダメだろ」 「うん。そうするよ」  俺が言い返すと、羽留奈が口調を変える。  ……少しすかした感じはあるけど、思ったほど悪くはない。 「ほら、聖仁……ううん、羽留奈も」 「うう……」  恐る恐る、話し始める。 「わ、わたし……」 「うん、可愛い」 「うわっ!」  いきなり羽留奈が俺を抱きしめると頭を撫でる。 「『前の羽留奈』よりは少しおとなしい感じだね。可愛いよ」  羽留奈は「可愛い」と繰り返しながら、俺の頭を何度も撫でる。  頭を撫でられることも、「可愛い」と言われることも、『聖仁』としては久しくされてこなかった。『聖仁』のままだったら、恥ずかしくて拒んでいただろう。  でも今、『羽留奈』になっている俺は、そんな風にされることを不思議と素直に受け入れていた。  ……そればかりか、心地好いとすら思っていた。


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