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俺が神官少女で神官少女が触手で(6)

*  浅い眠りから覚める。  雑嚢を枕に仰向けになっていた俺の胸の上で、触手は身じろぎもしていない。  寝ているのだろうと思うが……一瞬不安になる。触手の生態なんて、俺もトゥクファ自身も知るわけない。  だが直後、トゥクファから声を掛けてきた。 (おはようございます) 「おはよう。トゥクファは、眠れたか?」  今は俺たち以外に誰もいないしと、声を出すことにした。 (それなりに。あなたより少し早く目覚めていて、試してみたのですが……)  そう言うと、触手は一度俺から離れ、意外なほどのスピードで動き回った。戻ってくると俺に触れて語りかける。 (いくらかこの身体に馴染んだ気はします。戦闘のお役には立てませんが、移動くらいは足を引っぱらずに済むかと) 「そうか」  彼女は、まだここから生還することをあきらめていない。俺は絶望に囚われそうになっていた自分を恥じた。  高速移動する触手はかなり気持ち悪い動きに見えたが……まあ、それは言わぬが花だろう。 (ところで、お腹は空いてませんか?) 「まあな」  迷宮は、長時間の探索をするような場所ではない。深い深い出口もわからぬ未知の洞窟などを探る場合はいざ知らず、この迷宮はおおよその広さがわかっている。もっとも、ここは俺たちの知らない第十三層だったわけだが。  とにかく、普通俺たちは数時間で帰還する前提で迷宮に入る。行動は都市の都合に合わせて、朝もしくは午前に入って午後の遅くとも夕方には出るくらい。今回の俺たち二人は、かなりのイレギュラーだ。  実際にどれほどの時間が経ったかは定かでないが、そろそろ捜索隊が結成されているだろうか。でも、ここまで辿り着くことはできるのか。スロープから十三層まで来ることはできても、その後で俺たちは転移装置の罠にかかっている。スロープ出口から普通に進んだのでは来られない場所に来ていたら、捜索隊に助けてもらえる可能性はない。  詮ないことを考えながらも、念のために持って来てはいた保存食を取り出した。塩気のきつい干し肉だ。 「とにかく食べるか。腹が減っては戦はできぬってな」  トゥクファに差し出しつつ、俺も一片をかじった。  だが、トゥクファは触手をいったんは伸ばしたものの動きを止めてしまう。 「どうした? 口がどこにあるかわからないのか?」  我ながらかなり頭のおかしいことを訊いている。 (それもありますが……匂いを嗅いでもまったく食欲が湧かないんです) 「どういうことだ?」 (匂い自体は人間の時と変わらず認識できています。けれど、それがおいしそうとか食べたいという感覚に結びつかなくて……あなたが、鼻先に硬貨や木片を突きつけられて匂いがしてもおいしそうとは思わないでしょう? それと似たようなものかと)  説明は何となく理解したが。 「それは、つらいな」 (自分の身体が人間じゃないと、こんなところでも痛感します) 「腹は減ってるんだよな?」 (人間だった時の感覚とは少し違いますが、恐らく) 「なら、とりあえず食えそうなものを探すしかないか」  干し肉を食い終えた俺は、雑嚢から取り出した薬草だの硬貨だのの持ち物を手当たり次第に並べてみる。トゥクファは匂いを嗅いでいるようだが、どれもお気に召さないようだ。  そんなことをしていると。  俺は、尿意を覚えた。 (ちょ、ちょっと、離れるぞ。用を足す)  声に出すのは何となくためらわれて、俺は意思を伝えた。 (は、はい……)  あちらも気まずさを感じているようだが、止めるなんて無体な真似はしなかった。  迷宮内で用を足すのは、食事以上に考慮されていない。しかし頻度としては食事以上に高い。空腹はかなり深刻でもまだ耐えられるが、深刻な尿意を耐えるなんて無理な相談だ。  だいたい、魔法陣の中で迷宮内の壁際に寄って済ませる。壁際にはわずかながら溝が掘られているし、往来でやる時に壁や柱に向かってするのと同じ感覚だ。今回も壁際に向かう。  だが、今の俺は女だった。  ――どうすりゃいいんだ。  そもそも、下半身の服装がよくわからない。うまくやれば手短に済ませられるのかもしれないが、そんな知識は俺にない。  焦るうちに、尿意はどんどん高まっていく。  このままだと漏らして服を汚してしまうかもしれない。それはトゥクファにあまりに悪いし、俺自身そんな状態では死んでも死にきれないし、もし運良く帰還できても恥ずかしすぎる。  見ないでくれよと願いながら、下半身の服を下着まですべて脱ぎ捨てた。今のトゥクファだと後ろを向くということもできないし、見えてしまうのかもしれないが。  服をなるべく遠くへ置いて、壁に向かってしゃがむ。  股間の緊張を解いて身を任せると、男の時とはかなり違う感触と共に体内から熱い液体が迸り出た。  今の自分が男じゃなくなったことを思い知らされた。  ――いや、これくらいでへこんでちゃいかんだろう。トゥクファはもっとひどい目に遭っているんだから。  頼りなさを改めて覚えつつも自分を叱咤したその時。 「ひっ?!?」  足元で、何かがぐねぐねと蠢いていた。  おぞましさに悲鳴を上げかけて、しかしすぐにトゥクファだと気づく。 「いや、でもどうしてだよ?」  つい声に出していた。  だって触手生物は、俺が出したばかりの小便にまみれていたのだ。嫌がる気配はなく、明らかに自分から求めている様子だった。 (トゥクファ! 何やってんだ!?) (じ、自分でもわかりません!)  一度出したら止められない。俺は小便を垂れ流しながら、触手の濡れてない部分に触れて訊ねるが、要領を得ない答えが返ってくる。 (ですけれど、これがすごくおいしそうな匂いを出しているんです!)  触手の先端、あるいは枝状に伸びた途中から、穴が開いていた。それらは一心不乱に俺の小便を取り込もうとしている。  触手の一部は溝にまで伸びて、流れ去ろうとする液体を啜り上げていた。 (こんなの、絶対におかしいのに……! わたし、自分で自分のおしっこを飲んでるなんて……!!)  言いながらも、触手の一部は先端を俺の中にまで入り込ませてきた。 「うわっ!」  動揺しまくっていた俺は、態勢を崩してひっくり返る。  触手は俺の股間に殺到した。


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