Skebのご依頼です。
捕らえられた戦隊ヒーローの少年が、虎の怪人に改造されるお話。
ご依頼ありがとうございました。
かわいそう!!
--------------------------------------
不機嫌そうな少年がパーカーのポケットに手を突っ込み、休日の雑踏を風を切るように歩く。ぶつくさと何かを言いながら眉間にしわを寄せている姿から滲み出る感情に、行き交う人の中には道を開けたり、振り返ったりしていた。
コタロウは悩んでいた。
少年は、世界征服を目論む悪の組織「ダークアビス」の魔の手から世界の平和を守る正義のヒーロー戦隊「ジャスティー」のメンバーのひとりである。「タイガー・イエロー」として街の平和を守り、悪の怪人と戦う彼には、チーム最年少の小学生ながらもそれなりの自負があった。
しかし、いつもピンチのときには仲間から助けられてばかりだった。それに、学校の授業中で出動できないことも度々ある。そのことがある種の仲間たちに対する劣等感となって、コタロウの中でくすぶり始めていたのだった。元々負けん気の強い少年だったが、思春期に差し掛かった頃合いで、更にそれに磨きがかかってきたようだ。
リーダーであるレッドの兄貴からはいつも心配され、守られる。まるで母さんから子守されているようだ。物静かなブルーからは足手まといのように思われているし、グリーンのおっちゃんからはいつもお菓子を渡されるし(それはそれで嬉しいのだが)、ピンクの姉ちゃんはコタロウは完全に「おこちゃま」扱いだった。
この前も、街にダークアビスの怪人が現れたときには、レッドからは戦闘を離脱して一般人の避難を言いつけられた。
今日だって、本部の作戦会議からひとりだけ放り出され「お前は基地で留守番だ。学校の宿題をしていろ」とレッドから言いつけられている。
「俺だって戦えるのに……。」
気分転換のつもりで街を散歩していたのについ思い出してしまい、悔しさで唇を噛みしめる。
もっと活躍して、いつか仲間たちを驚かせたいと思った。
そんなときだった。
コタロウは薄暗い裏路地の方から異様な気配を感じた。この辺りはオフィス街で、休日にはひと気があまりないはずだ。
勘を頼りにとっさに駆け出すと、ビルの裏口から怯えた表情で怪しげなトラックに乗せられる人々の姿が目に留まった。
間違いない。ダークアビスの連中が人間をさらっているのだ。奴らは一般人をさらっては、見返りを要求したり、戦闘員に改造や洗脳をしたりする。
怯える人々の周辺で彼らを監視しているのは、変装したダークアビスの戦闘員たちだろう。
ヒーローのコタロウには直感でわかる。
コタロウは物陰に隠れて、しばらくその様子を窺う。
「そうだ、レッドの兄貴たちに知らせなきゃ……!」
ハッとして腕のブレスレットを口元にあてようとした。
しかし、ジャスティブレスの緊急連絡ボタンを押そうとしたその手が止まる。
この事件をひとりで解決すれば、レッドたちは俺を認めてくれるんじゃないか――。
「俺だって、ひとりでやれるんだ!」
コタロウはジャスティブレスを構えて叫んだ。
「チェンジ! タイガーイエロー!!」
「タイガー・イエロー」に変身したコタロウが、ダークアビスの車両の前に立つ。
「そこまでだ、ダークアビス! トラックに乗せた人たちを今すぐ解放しろっ!」
イエローはすぐ下級戦闘員に取り囲まれたが、なんとかギリギリで互角の勝負をしていた。一匹二匹と順調に片付けていく。
「こんなの大したことじゃねぇや。後で知らせて兄貴たちをびっくりさせてやるんだ。」
しかし、その敵たちの背後に強烈で邪悪なオーラを感じ取った。
そこには巨大な怪人が立ちはだかっていた。なんとそれは、真っ黒なスーツに身を包んだ敵の大幹部「デモンブリンガー」だったのだ。
イエローは背筋が凍り付く。
「ジャスティの連中に嗅ぎつかれたかと思えば、黄色いチビひとりだけか。ふふっ、飛んで火に入るなんとやらだ。」
「何だとっ! お前なんか俺一人でも……!」
イエローは怪人に向かって突進する。しかし、デモンブリンガーは下級戦闘員のようにはいかなかった。イエローの攻撃を邪悪な笑みを浮かべながら余裕でかわし、たった一発の反撃をイエローのみぞおちに食らわせた。
「ぐはっ…。やっぱ、強えぇ……。」
コタロウは嘔吐して膝を付く。自分の勇み足と力不足とを痛感しながら、あっという間に倒され、頭を踏みつけられた。
「これは総帥様に良い手土産ができた。引き上げるぞ。ハッハッハッハ!」
薄れゆく意識の中で、デモンブリンガーの高笑いが頭の中に響いていた。
* * *
気がつくと、コタロウは見知らぬ場所にいた。
彼は手術台の上に拘束され、周りには薬品や機械が置かれている。そして、彼の前には白衣を着た老人のような容姿の怪人が立っていた。
「ようこそ、イエロータイガー君。ここは私たちダークアビスの研究所だ。君が私たちの実験台になってくれると聞いて、非常に喜んでいるよ。」
「ふっ、ふざけんな! 俺はそんなこと一言も言ってねぇぞ。放せっ!」
コタロウは強がってみせるが、心なしか声がうわずっている。
「おやおや……。まあ君の意思は関係ないのだよ。『タイガーイエローを実験台にして、我がダークアビスの忠実なる下僕怪人に人体改造せよ』とのデモンブリンガー様からのご命令なのでね。」
「なっ……、怪人だって……!?」
イエローは自分たちが倒してきた怪人たちを思い出す。その姿に、生きたまま体を造り変えられるというのだ。
「怪人となったあかつきには、君にジャスティーの秘密基地まで道案内をして頂こう。そして君が奴らを、ジャスティーを倒すのだ。」
「そんなことするもんかっ! 放せ、放せよっ!」
イエローは必死に抵抗するものの、手足は完全に拘束されている。白衣の男たちは、容赦なく手術を始める。
「い、いやだぁぁぁぁ! クソっ、助けてぇぇ! レッドー、ブルーっ!」
イエローの絶叫が実験室に響き渡った。
しかし、彼を救う仲間たちはここにはいない。タイガーイエロー……コタロウは、もう二度とチームメイトたちと共に戦うことができないのではないかという現実と、独断専行で功を急いだ自分の愚かさに後悔する。
「ではではではー。早速始めるとしよう。ようこそ、我が『ダークアビス』へ!」
白衣の怪人が手で合図をすると、恐ろしい機械たちがコタロウの体に差し込まれていった。数本の機械触手の先端が、コタロウの体に突き刺さる。
「ぎゃあああっ!!」
その痛みと恐怖に悲鳴を上げた。
そして、機械触手を伝って体内に特殊な物質が注入される。コタロウの細胞が怪人へと作り変えられるのだ。体中の皮膚には血管が浮かび上がり、筋肉が強化・増強され始めた。
コタロウはこれまで味わったことのない苦痛に歯を食いしばって耐えた。筋肉は猛烈な痛みを伴って増強され、体内には強烈な熱が生じている。まるで体の内側から火あぶりにされて焼け死にそうだった。骨は軋み、ゴリッゴリッと鈍い音を立てながら骨格が変化していく。それに呼応するように、喉を鳴らすような呻き声を上げ、さらに藻掻き続けるコタロウ。
「はがああーっ!!」
強化されて膨張した筋肉は、イエローのヒーロースーツを引き裂いた。
「ぐおおおっ!?」
その激痛に、失神しては何度も手術台で目が覚める。
繰り返し目を覚ますごとに、自分の体が目の前に置かれたモニタに映し出されている「完成図」の虎型獣人怪人「ジャンクタイガー」へと変貌しつつあることに気づいた。
「な、なんだこれ……。」
コタロウはしわがれた野太い声で、小さく呻く。
「ぐぐぐっ、がっ……。」
自分自身を見つめ、目の前に映るその姿に絶望した。
既に半身が、凶暴な怪人の姿へと変貌している。それはいつも、自分自身が戦ってきた敵の姿そのものだ。恐る恐る、鋭い爪の生えた手を動かしてみようと試みる。その醜く凶暴な腕は、自分の意思の通りに動いてしまう。明らかに、自分の体の一部であった。
「フフフッ。無様なものだな、タイガーイエローよ。」
不敵な笑みを浮かべて目の前に現れたのは、コタロウを拉致したデモンブリンガーだった。
「タイガー……、いや、『ジャンクタイガ』ーよ。お前は既に私たちのものだ。もう抜け出すことはできない。」
「くッ……。俺は『タイガーイエロー』だっ! お前たちの言いなりになんかなるもんかっ!」
獰猛な姿と声とは不釣り合いな、子供っぽい喋り方をするコタロウの様子が異様さを増す。
「フフフッ。そんな姿で仲間たちの元に戻れるものか。お前はやがて、完全なる怪人『ジャンクタイガー』となり、洗脳され、身も心も支配されるのだ。これを見てもまだ、自分が正義かぶれの『勇士』であると言えるのかな?」
そういうと、デモンブリンガーはコタロウの股間を覆っていた白い布を捲り上げる。白い布は先端の肉に不自然な引っ掛かりを残しながら、床にはらりと落ちていった。
「な、何だこれっ……!?」
コタロウが自分の股間に目を向けた。そこには見慣れた自分の生殖器とはまったく異なる形状のものがあった。肉色のサボテンのようなものが股間からそそり立っている。異物が乗っかっているのかと目を疑ったが、そこに触れる空気、感触は自分自身の器官であることを証明している。
コタロウは恐怖に包まれ、そこで初めて自分が別の生物に変わってしまったことを実感した。
「これが、本当に俺の、ちん……ちんなのか……? 俺の……?」
コタロウは錯乱し、不安と恐怖に苛まれた。「あそこ」まで怪人の体になってしまったことに戸惑い、絶望が質量を持って全身を押し潰しているような感覚に陥った。
「ぐっ、ぐるじぃよお……、たすけてぇ……みんなぁ……」
コタロウのすすり泣くような悲鳴をよそに、少年の人体改造は進んでいく。
徐々に、小さな悲鳴と呻き声しか発しなくなっていく。自分がジャンクタイガーであることを受け入れざるを得ないほどに、その本能と欲望とに支配されていった。
遺伝子改造を終えたコタロウは、デモンブリンガーに鏡の前に立たされる。
コタロウの肉体は人間とも、虎とも言い難い形状に変化しており、全身には黄色く黒い縞模様の体毛に覆われ、人間の手足も「前肢」と「後肢」と呼ぶ方が相応しい形状に変化していた。
コタロウは、まるで棘の付いた何か別の生き物のように見える勃起したペニスを見て絶望に絶叫した。自分の意思とは無関係に、コタロウのペニスは勃起して快感を得ている。そしてその瞬間、コタロウの自我は心の中で音を立てて崩壊したのだった。
「どうだ、ジャンクタイガーよ。新しい体は気に入ったか?」
口から唾液を垂らし、射精も知らないまま異形化した禍々しいペニスからは、粘液が漏れ出していた。コタロウは、そのペニスを握りしめる。しびれるような感覚が全身を襲い、太い尻尾をピンと伸ばした。
もうそこに、正義の少年ヒーロー、イエロータイガーの面影は微塵もなかった。
「グルルゥ。はい、デモンブリンガー様……。ダークアビスに栄光あれ!!」
* * *
ダークアビスの軍団を率いて、ジャスティーの本部を襲撃したのだった。急襲された地球防衛軍とジャスティーたちは苦戦を強いられる。
「ほほう。こんなところに奴らの基地があったとは。次元シールドで完全遮断されていたのか。なるほど、道理で発見できなかったわけだ。」
軍団の後方では、デモンブリンガーがほくそ笑みながらその様子を眺めていた。
『ジャンクタイガー』は、ダークアビスに仇名す最大の敵と対峙していた。
懐かしい声が聞こえる。
でも、それが誰であったのかを思い出せなかった。
〝コタロウ! なんでこんなことに……!〟
〝目を覚まして、コタロウ!〟
〝お前は必ず戻れる! 俺たちは、お前を救うために戦う!〟
本能のままに敵を蹴散らせるジャンクタイガー。赤いヤツ、青いヤツ、緑のヤツ、ピンクのヤツ……。そいつらが入れ代わり立ち代わりしながら、ジャンクタイガーに攻撃を仕掛けてくる。しかし、そのどれもが本気の攻撃であるとは感じられない。致命傷を避けながらの生ぬるい攻撃では、ジャンクタイガーにダメージを与えることはできなかった。
怪人の片目には、一筋の涙の跡がキラリと光る。しかし、怪人にはもう、涙も、この涙が意味するものも、理解することはできなかった。
戦いを終えたジャンクタイガーは、足元に宿敵「ジャスティー」の亡骸が転がっているのを目の当たりにした。最後まで「コタロウ!」と叫び続け、立ち上がってきた赤い奴の頭を踏みつける。殺戮の充足感が心を満たしていく。仲間だったものの変わり果てた姿を見て勃起し、それに向かって射精する。どぷどぷっと溢れ出る白濁液が、ぼろ布のように横たわるヒーローたちのスーツに滴り落ちた。
そして、一際大きな歓喜の咆哮をあげたのだった――。
こうして、偉大なる「貢献」を果たすことができた。
それは誰かに褒めてもらいたかったコタロウの念願でもあったのだ。
自分を認めてもらうための相手が、少し違っていただけなのかもしれない……。
悪の組織「ダークアビス」が世界を手中に収めるための貢献であった――。
--------------------------------------
げるげる
2023-05-02 02:57:47 +0000 UTCねじゅみ
2023-05-01 23:43:20 +0000 UTCげるげる
2023-05-01 21:23:20 +0000 UTC