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神明桜に挑んでみた

俺の通っている学校には神明桜という女子生徒がいる。

彼女は柔術の全国大会で優勝経験があり格闘技の才女として度々メディアにも取り上げられている。

若くして実家の神明流柔術道場で師範代を務めており地元でも有名人だ。


そんな有名人ではあるが、俺は最近になってその噂を聞いただけで彼女の姿さえ一度も見たことがなかった。

柔道部の主将の俺は柔術にも興味を持っていたので、彼女の実力を確かめてみたくなり会ってみることにした。


「あのー…私に何か御用でしょうか?」


道場からどんなガタイのいい屈強な女が出てくるかと思ったが…

見た目の印象としては大人しそうな文化系の女子といった感じだろうか。

喋り方も丁寧で俺が想像していた女の子とはまったく違っていた。


「あ!この格好ですか?すみません…私、道着や体操服をよく忘れたりするので…なので、すぐ動けるようにとインナーだけは着用しているんです」


彼女はセーラー服の下にスポーツ用のインナーとスパッツを履いている。

オープンフィンガーグローブも着用しており、いつでも格闘技ができるような格好ではあるが、彼女には悪いがとても強そうには見えなかった。

とりあえず、俺はいくつか会話を挟みつつ、試合をできるか彼女に申し込んでみた。


「ええ、そうです、実家が柔術道場を開いておりまして…あ、今日は道場は休みで私一人で練習していまして…」

「柔道部の主将を務めているのですか、素晴らしいですね!」

「私は寝技全般というか…関節技や絞め技が得意ですね!」


「え、私と試合ですか?それは構いませんが… 」


男相手に躊躇もなく試合を快諾したのは驚きだったが、その後の発言に俺は憤りを感じた。


「私…あまり加減するのが苦手で…ご存知だとは思いますが、極め技は我慢して耐えていると危険なので…なるべく早めに降参してくださいね!」


「私の技は強力だから手加減もできないしすぐに降参しろ」だと?

初対面の俺に対して楽にギブアップを奪えるような弱い相手といった口ぶりが挑発しているようにも取れる。単純に気に食わない。

この発言は強豪校の柔道部主将を務める俺にとって聞き捨てならなかった。


「あ!いえ…見下すわけではなくて、お互いのルールに沿って…柔術の場合ですと相手から降参を奪わないと決着がつきませんので…そのー…」


桜もまずいと思ったのか慌ててフォローするが当然、俺の怒りは収まらない。

投げ技で試合を決める柔道と極め技で試合を決める柔術。そのくらいの違いは俺も知っている。

ただ、初対面の相手に対して余裕を見せつけてきたコイツは調子に乗っているなと思った。

柔術の全国大会で優勝?実家の道場の師範代?そんなことはどうでもいい!

少し手合わせするつもりだったが柔道部主将の誇りを持って容赦なく投げ飛ばし叩きのめす!そんな思いを滾らせた。


「先程は失礼いたしました…すぐに準備をするので試合をしましょう!」


彼女の謝罪で俺は少しだけ冷静になり、ひとまず気を取り直して道着に着替えた。

こちらとしても急な試合の申し出を受けてくれたのに感謝はしているし正々堂々と戦うつもりだが、俺にとって先の発言はあまりにも屈辱的に感じた。

なので、女相手とはいえ一切容赦するつもりはまったくない。


道着に着替え終わると畳の上に戻る。

最後にお互いにルールを確認して双方が向かい合って立つと試合を開始した。


「では、はじめ!」


桜の合図で試合が始まると、間合いを取る間もなく俺は速攻で桜につかみかかった。

しかし、桜は奇襲を巧みにかわし、高速で俺の道着をつかんで背負投げに入る。

俺は為す術もなく畳に背中から落ちてズドン!!と道場に大きな音を立てた。


この時点で、柔道だと1本を取られているが今回は柔術のルールで挑んでいる。

柔術の場合、投げた後にさらに関節技や絞め技で相手を降参させて決着をつける。

寝技を警戒した俺はすぐに立ち上がろうとしたが、すでに桜は俺の視界から消えていた。



桜は俺の背後に構えており俺の首に素早く両腕を交差して裸絞め(スリーパーホールド)を極めた。


「えい!どうですか!?降参しますか?!」

…………


試合が始まってから十数秒くらいだろうか。

この時の記憶はほとんどないが、俺は抵抗する間もなく気を失っていたようだ。


………


今まで絞め技は何度も受けてきたが、桜の裸絞めはこれまで受けてきた技とはまったくの別物だった。

気を失う前のわずかな時間の中で苦しさは一切なく、頭部だけが水面に浮かんで漂う様な謎の浮遊感に不思議と心地よさを感じていた。


「降参してください!」

……


何か夢を見ていたのか、よく覚えてはいないが俺は何となく彼女に優しく包まれるような感覚に浸っていた。


「あれっ?…まだ降参しないのですか?」


桜は何度か降参の意思を確認するが気を失っている俺に当然返事はなかった。

しかし、俺が落ちていると思っていなかったのかさらに俺の首を絞め続けていた。


……ブッ!フゴー!


しばらくして俺が大きなイビキをかくとようやく彼女は俺が失神しているのに気づいた。

俺はそのまま桜の膝の上で意識なく倒れ込む。


「あ!しまった!ごっ、ごめんなさい!」



ポン!ポン!ポン!ポン!


桜は俺に活を入れたあと優しく何度か頬を叩く。

一瞬だけビクッと痙攣したあとに俺は目を覚ました。


「すみません、気づくのが少し遅れてしまいました…大丈夫ですか?」


俺が意識を取り戻すと、彼女は安心したのか「良かった…」と言って微笑んでいた。


「先程は失礼な発言をしてすみません。決してあなたを見下したわけではないのですが、安全のためにも試合前に一度確認を取っているんです…」


確かに彼女の発言に怒りを覚えて少し感情的になってしまっていた。

自分よりも目立つ活躍をしている桜にどこか嫉妬していたのかもしれない。

しかし、柔道で1本を取られた上に、柔術としても絞め技で決着をつけられたのだから俺の完敗だ。

わずか十数秒の手合わせの間に俺は自分の力の無さを痛感して、それ以上に桜との実力差があることを身をもって実感した。


指折りの実力者と思っていた自分の柔道家としてのプライドはズタボロにされたが、悔しさや怒りはそこまで感じておらず、むしろ俺は圧倒的な強さを見せた彼女を気に入っていた。

今となっては桜の鮮やかな背負投げに完璧な裸絞めを受けたからこそ先の彼女の発言にも納得している。


しばらく桜と世間話をしたあと、彼女の格闘センスに惚れた俺は女子柔道部への入部を薦めてみたが、回答も虚しく丁重に断られた。


「ありがとうございます。ですが、とあるプロレス団体からスカウトを受けまして…そこで活躍してみないかと誘われているのです…大変申し訳ないのですが、入部については辞退させていただきます」


桜はプロレス団体のO-MEGAに入団するらしい。

レスリングの技術はそこまで無いと桜は言うが、彼女ならプロレスでも一線級で活躍できる事は間違い無いだろう。

俺はデビューしたら神明桜のファン第一号として応援させてくれ!と言うと彼女は恥ずかしそうに優しく微笑んでコクリと頷いた。



おわり


時系列的には桜が入団する前のお話ですが、桜の普段は相変わらずこんな感じです

以下、おまけの眼鏡なしと台詞なし載せときます!









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Comments

コメントありがとうございます!一生懸命すぎて気づかない子なんです…(´・ω・`)

panakiman

(ごめんなさい っ 気づく の が 遅れ て) 彼女は可愛すぎます、私は彼女が大好きです。❤️

Rainbow

あなたが作った素晴らしい作品❤️。

Rainbow


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